
知能情報学部 4年生 大木 大司さんからのおすすめ本です。(KONAN ライブラリ サーティフィケイト)
書名 : ニューヨーク
著者 : 亀井俊介
出版社:岩波書店
出版年:2002年
誰にでも、「いつか必ず訪れてみたい」場所があるだろう。私にとって、その一つがニューヨーク
である。「世界最高の都市」と称されるこの街を、一度は自分の身体で感じてみたい・・・そんな
漠然とした憧れを、私は長い間抱いてきた。
しかし、その「最高」という言葉の中身について、私は驚くほど無知だった。
高層ビル、高い物価、そして多種多様な人々。そうした断片的なイメージだけで街を理解したつも
りになり、他人の評価やメディアの言葉に流されていた自分を、今振り返ると少し恥ずかしく思う。
そんな折に出会ったのが、本書である。軽い気持ちでページをめくったはずが、読み進めるうちに、私の中にあったニューヨーク像は崩れていった。
本書のニューヨークは、決して単なる富と成功の象徴ではない。そこにあるのは、世界中から集ま
った無数の「異邦人」たちが、自らの居場所を求め、必死に生き抜こうとする姿である。
ニューヨークとは、完成された都市ではなく、常に更新され続ける存在なのだと感じた。
私が憧れていた「最高」の正体は、豪華さや洗練といった表面的なものではなかった。それはむし
ろ、「未完成」であるがゆえに変化を恐れず、街に生きる者が自分自身の可能性を信じて高みを目
指す、そのエネルギーの総体だったのである。
昨年の夏、私は東南アジアを旅し、街に満ちる圧倒的な熱気に心を揺さぶられた。しかし、本書か
ら伝わってくるニューヨークの熱は、異なる。個が強く、時に孤立しながらも、同じ空間で共存す
る厳しさ。そこでは誰もが主人公になれる可能性を持つ一方、同時に「ただの異邦人」でいられる
自由も保障されている。その矛盾を抱え込む力こそが、ニューヨークという都市の強さなのだろう。
本を閉じた今、かつての漠然とした憧れは、確かな知的好奇心へと変化している。「いつか」とい
う願望ではなく、「必ず」という意志へと変わった。自らの足であの街に立ち、「世界最高の都市」
の続きを、自分自身の目で確かめたい。
