<書籍紹介>
本書は、甲南大学名誉教授である斉藤豊治先生の古稀をお祝いして編集された論文集
である。近年、犯罪の予防と対策に対する関心が高まり、この領域における立法と
法改正が頻繁に行われている。
そこで本書には、そのような動向を反映する刑法、刑事訴訟法、少年法、刑事政策の
領域の論文、31本が収められている。
■『 刑事法理論の探求と発見- 斉藤豊治先生古稀祝賀論文集 』成文堂、2013年1月刊
■ 編集委員 前田 忠弘(法学部 教授)他
■ 先生からのお薦め本
加藤幸男・前田忠弘監修『司法福祉―罪を犯した人への支援の理論と実践―』(法律文化社・近刊)
投稿者「図書館」のアーカイブ
新入生の皆さんへ
新入生の皆さん、入学おめでとうございます。明日から授業も始まります。新しいことばかりで、不安と期待が織り混じった気持ちに満ちているかと思いますが、何事も、はじめの滑り出しが大事です。くれぐれも授業をおろそかにすることがないようにしてください。
皆さんが学校に来て腰を落ち着けるところとして、是非図書館を候補にしてください。昨今、履修科目数の上限が多くの学部で設けられています。皆さんがいくら張り切っているとしても、時間割をびっしり埋めることはできないと思います。むしろ、すかすかの状態になると思います。空いた時間をどうするか?→→→図書館に行きましょう!皆さんが快適に空いた時間を過ごすことができると思います。
今年度から、図書館内に共同学習の場(ラーニングコモンズ)を設置することも決まっています。そうなれば、友人といろいろと議論しながら勉強することもできます。もちろん、図書も雑誌もいっぱいありますよ。図書館をスマートに使いこなせるようになってください。
長濱宏治先生(フロンティアサイエンス学部)「地頭力を鍛え、クリエイティブな生き方を!!」
☆新入生向けの図書案内
著者: 細谷功
タイトル: 地頭力を鍛える : 問題解決に活かす「フェルミ推定」
出版者: 東洋経済新報社
出版年: 2007
配置場所: 図書館 2階中山文庫一般
請求記号: 336/H
今、新入生のみなさんは、胸いっぱいに大きな希望を抱いているに違いありません。一方、それと同時に、これから大人として自分の人生をどのように生きていこうか、という漠然とした不安を抱えている人も少なくないのでは…。
人生は「クリエイティブな生き方」そして「ルーチンワーカーとしての生き方」に大別できると思います。平凡な人生よりも、チャレンジングなそしてクリエイティブな生き方をしたくて、みなさんも甲南大学に入学してこられたのでしょう。クリエイティブな生き方をするためには、正しい目標の設定と、その目標を達成するための正しい戦略の選択が重要です。ただ、それらは、何となく雰囲気で決めることではありません。何を目指すのか、それをどのように達成するのか、それらは論理的に決定されなければいけません。大学を卒業した後、自分の人生を望んだように展開させるためには、今のうちから“地頭力”(論理的にものを考える力のベースとなる知的能力のこと)を鍛え、論理的に思考を築くためのトレーニングをしておく必要があります。そこで、私はみなさんに『地頭力を鍛える 問題解決に活かすフェルミ推定』という本を紹介します。
フェルミ推定とは、「日本にある郵便ポストの数」など、実際に調査するのが難しくとらえどころのない数量を、知っている知識だけをもとに、合理的な仮定と論理性を駆使して、短時間で概算することです。フェルミ推定は知的ゲームとして、とてもおもしろいものです。加えて、近年、フェルミ推定がビジネスの現場で必要な“地頭力”を鍛える手法として注目され、多くの企業の面接試験で出題されるようになりました。フェルミ推定で地頭力を鍛え、みなさんの人生を論理的に、そしてクリエイティブに設計してください。
甲南大学図書館報 藤棚(Vol.30 2013) より
高永才先生(マネジメント創造学部)「『すぐれた意思決定』印南一路著」
☆新入生向けの図書案内
著者: 印南一路
タイトル: すぐれた意思決定 : 判断と選択の心理学
出版者: 中央公論社
出版年: 1997
配置場所: 図書館 1階特設
請求記号: 336.1/I54
人生は意思決定の連続である。昼食の選択から大学受験に至るまで人は様々な意思決定を行う。「意思決定をしていない日は一日たりともない」と言っても過言ではない。そうであるにも関らず、意思決定プロセスとその質に対し分析を行う人はまれである。なぜなら、意思決定がどのようなプロセスを経て行われているか、さらにそれをどう分析すればよいか、それがどういう意味を持つのかがそもそも分からないためである。『すぐれた意思決定』印南一路(中央公論社)はこうした疑問に対し、ある種の答えを提供している。
ただ、「答え」といっても意思決定において「これが正解である」という解を提示しているわけではない。この書籍は、意思決定プロセスとその分析のあり方、さらには、そこで人々が陥りがちな罠を示すことで、意思決定プロセスで直面する課題とその解決方法に対し、事前の推測や探索を可能にする。
『すぐれた意思決定』は第一部で「意思決定とは何か」、「すぐれた意思決定とは何か」を述べると同時に、我々が一般的に世界を見る視点とその中で行っている情報処理のプロセスを示している。第二部では、人々が情報処理のプロセスにおいて犯しやすい課題に触れ、我々が限られた合理性の中で意思決定を行っている事を明らかにしている。第三部では、限られた合理性から脱出し高品質な意思決定を行うためには、規範的な意思決定論の規範性と記述的な意思決定論の実証的な根拠を同時に用いた診断的意思決定が重要であることを示している。第二部の内容は統計的推論やモデルシュミレーションなどを用いて「合理的な人間が行うだろう意思決定プロセス」の規範を導出しており、第三部の内容は「実際の意思決定がどのように行われているだろうか」という疑問のもと実験などの実証研究を通して人々の意思決定プロセスを導出している。
学生生活の中で診断的意思決定方法を活用し意思決定を行うことで、質の高い判断力と選択力を養って頂きたく、この書籍を推薦する。
甲南大学図書館報 藤棚(Vol.30 2013) より
小出武先生(知能情報学部)「プログラマのための論理パズル ―難題を突破する論理思考トレーニング―」
☆新入生向けの図書案内
著者: Dennis E. Shasha 吉平健治(訳)
タイトル: プログラマのための論理パズル : 難題を突破する論理思考トレーニング
出版者: オーム社
出版年: 2009
配置場所: 図書館 1階特設
請求記号: 007.64//2240
公務員試験には、「数的推理/判断推理」という分野があります。この本はプログラミング能力を伸ばしたい人だけでなく、公務員を目指す人にもお勧めです。難問も含まれていますが、楽しみながら論理思考力を鍛えることができます。
最初の問題を(表現を変えて)紹介します。「兄弟で同じ2つのケーキを分けるゲームを考える。兄は2つのケーキに一度ずつナイフを入れ、それぞれ2つの部分に分ける。弟は切り分けられたケーキの好きな方を選ぶことができるが、選択権があるのは2つのケーキのうちの1つのみである。ゲームの流れは以下のようになる。まず兄は1つ目のケーキを好きなように切り分ける。それを見て、弟は好きな方を選ぶか、選ばないかを選択する。選んだ場合は、2個目のケーキを切り分けた後で好きな方を選ぶのは兄になる。選ばない場合は、2個目のケーキを切り分けた後で好きな方を選ぶのは弟になる。さて、兄弟のどちらもできるだけ多くケーキを食べたいとすると、兄はどのように切ればより多くのケーキが食べられるだろうか?」
もし兄が1つ目のケーキを半分ずつに切った場合、弟はどちらを選んでも半分ですので、ここでは選択権は行使しません。弟は2つ目のケーキで大きい方を選びます。それが分かっているので、兄は自分が多く取るために、2つ目のケーキも半分に切ります。したがって、兄が1つ目のケーキを半分に切ったときには、兄弟ともに合計1個ずつ取ることになります。もし兄が1つ目のケーキを限りなく小さなかけらと残りのほとんどに分けた場合はどうでしょう?その場合、弟は1個目で選択権を行使して、ほぼ1個の大きい方を選ぶでしょう。2個目の選択権は兄にあるので、兄はまた同じ切り方をして、ほぼ1個を獲得できます。この結果も兄弟共に合計1個ずつ食べることになります。では兄はどう切ればたくさん取れるでしょうか?
この問題の答えは、「兄は1個目のケーキを1:3になるように分ける」です。実はこの問題は「ウォームアップ問題」で、本にはこの問題の発展版が本来の問題として載っています。みなさんもぜひこの本を読んで、論理思考トレーニングを楽しんで下さい。
甲南大学図書館報 藤棚(Vol.30 2013) より
水澤克子先生(スポーツ・健康科学教育研究センター)本を読もう。美しい文章を読もう。
☆新入生向けの図書案内
ネットや多くのメディアツールで配信される情報はその場限りのものである。テレビやラジオのニュースであれば、余計な修飾語は必要なく、簡潔でなくてはならない。ネットで配信される文章は、表現がおかしかったりクレームがつけば、すぐに削除されたり、書き直されてしまう。
ところが、書籍として残る小説や論文はそういうわけにはいかない。いったん、世に出てしまえば、簡単には書き直せない。
主語、述語、形容詞句、多くの要素で意味のある文が作られる。そして、全体としての形を成すためには一つ一つの文の組み合わせ方が重要になってくる。一文が美しくても、それが組み合わさった時に、全体として意味をなさねば、せっかくの美しい一文が台無しになる。
書籍として世に出る文章というのは、世に出るまでに著者や編集者がその文章を何度も推敲しているものなのである。だからこそ多くの人がその本を読んで内容がわかるし、広まっていくものであろう。ある書籍が長きにわたって読み継がれている、多くの人に読んでもらえているということは、その書籍の内容ももちろんであるが、文章が読みやすく、美しいということでもあると思う。そのような文章を読むことは、自分が使う言葉や文章も美しく、読みやすくなるということにつながるだろう。
美しい言葉、その場にふさわしい言葉を使えるようになるためにも、多くの本を読んでほしいと思う。
甲南大学図書館報 藤棚(Vol.30 2013) より