投稿者「図書館」のアーカイブ

重松清著 『きみの友だち』

 

 

知能情報学部 4年生 Hさんからのおすすめ本です。(KONAN ライブラリ サーティフィケイト)

書名 : きみの友だち
著者 : 重松清著
出版社:新潮文庫
出版年:2008年

友だちってなんなのだろう。答えはないのだろうが、分かったふりはしたくない。そんな時に出会ったのがこの本である。

この本は、小学生や中学生の8人の「きみ」が登場する。主人公が毎回変わり、様々な視点からの物語を読むことが出来る。しかし、すべて繋がっているような子供時代から大人までの複雑な人間関係を感じることが出来る。「独りぼっちは嫌だ」、「自分はここにいてもいいのだろうか」と、登場人物は皆何かしら悩みを抱えもがいている。

本作は、全編を通じて恵美という女の子が中心にいます。小学4年生の時に事故で片足を不自由にし、以後松葉杖での生活を余儀なくされている。それ以来、人気者だった恵美は不愛想になってしまい、孤立してしまうが同じように孤立していた由香と一緒にいるようになる。由香は、病気がちで、少しトロく、ニブい女の子であった。

どの作品も、恵美か恵美の周囲の人間にスポットライトが当てられ物語が進んでいく。「友だち」との関係であれこれごたごたしている人々が、「みんな」を否定し、「友だち」である由香を大切にしようとする恵美と触れることで、何かしら変わっていく、というようなストーリーを「きみ」という二人称で描いている作品である。

この作品は、学生だったことがあるすべての人に、等しく似たような経験があると言わせるような、学校の世界というのを完璧に描いているような気がした。恵美という人物を主軸とし、その周囲にいる「みんな」を否定できない人々ものにスポットライトを当てていく感じになる。そのように、「みんな」と「友だち」っていったい何なのだろうと考えさせられるような作品ではないかと感じた。そこに答えはなく、自分のなりの理解の仕方は持っていてもいいが、そこに至るヒントみたいなものを、本作が与えてくれるような気がする。

下村敦史著 『ヴィクトリアン・ホテル』

 

 

文学部 2年生 Tさんからのおすすめ本です。(KONAN ライブラリ サーティフィケイト)

書名 :ヴィクトリアン・ホテル
著者 : 下村敦史著
出版社:実業之日本社文庫
出版年:2023年

私が紹介する本は、下村敦史さんの『ヴィクトリアン・ホテル』です。この物語は、改築のため翌日に100年の歴史にいったん幕を下ろす伝説の高級ホテル「ヴィクトリアン・ホテル」が舞台のミステリー小説です。ヴィクトリアン・ホテルを訪れた女優の佐倉優美、スリの三木本貴志、作家の高見光彦、大手企業の宣伝部社員の森沢祐一郎、老婦人の林志津子の5人の視点で物語は進んでいきます。

この小説の大きなテーマは「優しさ」です。登場する5人は、優しさ、親切とは何なのかという悩みを持っています。優しいことは誰かを救うけれど、その優しさを批判的に捉えると、優しさを否定する人、傷つく人もいて、「優しさというのは難しい」というのが物語の根底にあります。しかし、この5人はヴィクトリアン・ホテルで誰かに優しさを向けたり、向けられたりと、お互いの「優しさ」が交錯することで、5人は「優しさ」とはどういうものなのか、このままでいいのかという問いに対して、答えを見つけていきます。

この小説には大きなトリックが仕掛けられており、読み進めていくうちにちょっとした違和感を抱くようになります。このトリックが明かされたとき、「なるほど、そういうことか!」と驚き、綺麗にこの違和感が解消されていくところが、この小説の大きなポイントで、面白いところです。この物語のトリックを知ったあと、もう一度始めから読むとさらに面白く感じると思います。そのため、私は2度読むことをおすすめします。

ミステリーでありながら、読み終わった後、「優しさ」に対しての答えを見つけた5人のその後に心が温かくなり、感動できる作品です。また、読者も「優しさ」について考えることができると思います。心が温かくなる作品なので、心が疲れたときにおすすめです。また、ミステリー小説を読みたいけれど、感動もしたい人におすすめの作品です。ぜひ、読んでみてください。

斜線堂有紀著 『恋に至る病』

 

 

知能情報学部 3年生 Kさんからのおすすめ本です。(KONAN ライブラリ サーティフィケイト)

書名 :恋に至る病
著者 : 斜線堂有紀著
出版社:KADOKAWA
出版年:2020年

斜線堂有紀の『恋に至る病』は、愛の持つ純粋さと狂気、そしてそれが引き起こす破滅的な悲劇を描いた衝撃的なミステリー小説です。本作では、幼なじみの宮嶺と寄河景の二人の関係を軸に、人間関係の光と影、さらには愛の危うさを丁寧に描写しています。

寄河景は、誰からも愛される善良な女子高生として登場しますが、物語が進むにつれて日本中を震撼させる自殺教唆ゲーム『青い蝶』の主催者へと変貌していきます。その変化は急激ではなく、じわじわと忍び寄るように描かれるため、読者は彼女の変貌を恐ろしくもリアルに感じ取ることができます。一方で、彼女を一途に愛する幼なじみの宮嶺は、景の変化に気づきつつも、「世界が君を赦さなくても、僕だけは君の味方だから」と彼女を支え続けます。しかし、この愛情は純粋であるがゆえに、彼女の変貌を止めるどころか、むしろ黙認する結果となり、最終的には彼自身をも巻き込む破滅へとつながっていきます。

本作の中核を成すのは、この二人の関係と、それに伴う心理描写の巧みさです。宮嶺の視点を通して描かれる景への愛情は、献身的であると同時に自己破壊的であり、その痛々しさが物語全体に深い緊張感を与えています。一方で、景自身の無垢さと狂気が混在するキャラクター性も、単なる「悪」として一括りにできない複雑さを持ち合わせており、読者の心を強く揺さぶります。

また、自殺教唆ゲーム『青い蝶』という設定は、単なる物語上の装置にとどまらず、現代社会におけるSNSの匿名性や孤独感、つながりの脆さを象徴しています。人々が抱える見えない不安や孤独が、このゲームを通じて表面化し、悲劇的な結末を生む様子は、単なるフィクションでは片付けられない普遍性を持っています。

『恋に至る病』は、恋愛がもたらす幸福だけでなく、そこに潜む狂気や破壊力を鋭く描き出した作品です。読後には深い余韻が残り、「愛とは何か?」という普遍的な問いを突きつけられることでしょう。恋愛小説やミステリーの枠を超え、人間の本質に迫った本作は、多くの人にとって心に残る一冊となるはずです。

図師宣忠(文学部)『映画で味わう中世ヨーロッパ : 歴史と伝説が織りなす魅惑の世界』

■『映画で味わう中世ヨーロッパ : 歴史と伝説が織りなす魅惑の世界
ミネルヴァ書房 , 2025.2
■ ISBN  9784623097746

■ 請求記号 778.04//2093
■ 配架場所 図書館1階・教員著作コーナー
■ 編著者 図師宣忠(文学部)編著

<自著紹介>
中世ヨーロッパを舞台やモチーフとした映画を「中世映画」medieval filmと呼びます。ジャンヌ・ダルク、ロビン・フッド、アーサー王をはじめ、中世ヨーロッパの歴史と伝説はこれまで数多くの映画の題材となってきました。また「中世映画」にはホビットやハリー・ポッターなどフィクション作品も含まれます。剣と甲冑、羊皮紙などのアイテムのみならず、魔法やドラゴンといった中世ヨーロッパのイマジネール(想像界)にまつわる要素も「中世映画」を彩っているのです。そんな「中世映画」の見どころを探る本書は、西洋中世学会の大会シンポジウムから生まれたものです。歴史・文学・美術・音楽など、西洋中世学に関する様々な切り口から「中世映画」を読み解いています。史実とフィクションの間で「中世ヨーロッパ」をどのように位置づけて捉えることができるのか、執筆陣で議論を重ねながら考えてきた成果が詰まっています。本書を入り口として「中世映画」の奥深さに触れて、その魅力を感じてもらえたらうれしく思います。

KONANライブラリ サーティフィケイト学生企画『みんなで育てる言葉の木』展示編

KONAN ライブラリ サーティフィケイト 学生企画
『みんなで育てる言葉の木』展示編

展示期間 :2025年 1月14日(火)~ 2025年5月頃まで
展示場所:図書館1階ゲート前

 

 

 

2024年9月から募集していた「本を読んでいて心に残った言葉」が、こんなに大きな木になりました!
なんと、およそ100通ものご応募がありました。たくさんご応募いただき誠にありがとうございました。この場をお借りし、お礼申し上げます。

 

小説や学芸書、洋書などたくさんの本から、たくさんの言葉が寄せられました。

どれも素晴らしい言葉ばかりなので、きっとみなさんの新しい本との出会いのきっかけになります。そしてその本の言葉が、みなさんの心の支えになることを願っています。

 

展示は5月頃まで展示予定です。ぜひどんな言葉があるのかご覧ください!
本の展示も行っていますので、借りていただくこともできます。

 

もちろんしおりもまだまだ配布しています✨

 

 

企画者: 文学部4年生  K

浅倉秋成著 『六人の嘘つきな大学生』

 

 

文学部 3年生 岡田 優花さんからのおすすめ本です。(KONAN ライブラリ サーティフィケイト)

書名 : 六人の嘘つきな大学生
著者 : 浅倉秋成著
出版社:KADOKAWA
出版年:2021年

皆さんは誰かに嘘をついたことがあるだろうか?友達を驚かすための嘘や自分をよく見せようとする嘘。私たちはたくさんの嘘に囲まれながら生活をしている。大学3年生になって就職活動を始めた今、自己分析を行うことで自分の人生を振り返り、嫌なことも思い出してしまう。そんな時に出会ったのがこの本だった。

本書は、多くの就活生が憧れを抱くエンターテインメント企業スピラリンクスの最終選考まで勝ち残った6人の物語だ。1か月後のグループディスカッションへの準備を続け、全員で内定を取ろうと切磋琢磨する。だが選考方法が急遽変更され、6人で話し合い、一番内定にふさわしい者を選ぶよう連絡がきた。

グループディスカッション当日、密室の会議室に集まった6人の前に現れたのは謎の封筒。この封筒によって6人の過去と嘘が暴かれていく。信じていた仲間の本当の姿、過去の過ち。様々なことが明らかになっていく中、犯人が自白し、1人の内定者が決定した。

これで物語は終わりかと思われたが、舞台はその8年後に至る。犯人の死によってこの一連の出来事の真相が明らかになる。真犯人はいったい誰なのか、なぜあのようなことが起こったのか。どんどん嘘が明らかになっていく。

とにかく伏線回収がすごい。最後まで展開が予想できない。続きが気になり読む手が止まらなくなる。

就職活動中は、感情が不安定になり混乱を起こしやすい。読み進めていく中で、もし私がこの場にいたらどうしていただろう、と考える場面が多々あった。自分を偽ることで、相手に好印象を持ってもらえるかもしれない。しかしそれは自分のとある一部分にすぎず、本当の自分は隠したままだ。

就職活動を進めていくうえで、自分の過去の失敗より成功に目を向けがちだが、挫折があったからこそ今がある、自分の短所だって見方を変えれば長所になる。こう考えることでより自分と深く向き合うことができる。

嘘と向き合いつつ、自分が納得のいく道へと進んでいきたいと思う。