<教員自著紹介>
植物たちは、私たち人間と同じしくみで生きており、同じ悩みを持ち、その悩みを解くために、日々頑張っています。本書では、「逆境を糧に魅力を高める植物たちの姿」や「甲南大学創立者平生釟三郎先生のモットー「常ニ備ヘヨ」を心構えにもつ植物たちの生き方」を紹介しています。「花がいわれたがっている“ほめ言葉”とは?」、「植物たちが知る“婚活成就の極意”とは?」、「植物たちの浮気心にかける“保険”とは?」などの話題もあわせてお愉しみください。
■田中 修『植物のあっぱれな生き方 生を全うする驚異のしくみ』幻冬舎新書 2013年
■請求記号 471.3//2034
■配架場所 図書館1階開架一般
■著者所属 理工学部 生物学科 教授
■先生からのお薦め本
・『植物はすごい 生き残りをかけたしくみと工夫』田中 修(中公新書)
「4.教員自著紹介」カテゴリーアーカイブ
内藤文雄(経営学部)『財務情報等の監査・保証業務』
<教員自著紹介>
本書は、企業が公表しているさまざまな情報の信頼性をどのように確保し、より有用性の高い情報に基づく意思決定を促進することにつながるのかを論じたものです。
財務諸表の監査を基本におき、他の財務情報または非財務情報の監査または保証業務がどのように異なるかについて、いろいろな視点から検討しています。
たとえば、サステナビリティ報告書。経済、環境、社会の3つの側面についての情報の信頼性の確保がグローバルにみても重要視されています。
■内藤文雄『財務情報等の監査・保証業務』 中央経済社 2012年
■請求記号 336.97//2206
■配架場所 図書館1階開架一般、サイバーライブラリ 一般和書 ほか
■著者所属 内藤文雄 経営学部 教授
西條 隆雄 他執筆『Dickens in Japan : Bicentenary Essays』
ディケンズ生誕200年を記念してディケンズ・フェロウシップ日本支部が出版した、英文記念論集。原、新野、松岡、佐々木氏を編集委員として、20篇の投稿論文の中から厳選をへて作品論8篇と小説以外の活動又は彼の文学の特徴に関する6篇が掲載されている。いずれも最新の研究成果を取り入れて論じた好論文で、本書は「日本の研究レベルの高さを全世界に知らせるとともに、ディケンズおよびヴィクトリア朝研究における世界的な里程標になろう」と編集委員代表の原氏は自負する。
作品論では、松本氏がネル(『骨董店』)に差迫る「死」があちこちで暗示されながらも中々訪れてこないのは、単なるサスペンスのためではなく、作家が理想的な死の環境を整えているからだとユングを援用して解き明かしているのは面白い。『キャロル』の夢の時間を指摘した廣野氏、そのオペラやミュージカルの出現(とくに1950年以降に集中していること)の理由を考察したチャンドラー氏の論考も興味深い。また、佐々木氏の「『ドンビー父子』の繋ぎのことば」は、従来の、作品がまとまりに欠けるという評価に対し、いかに緊密に構想されているかを論じたもの。「父と子」の「と」という繋辞(=接続詞)ひとつを取ってもそこに作品の中心テーマが如実に語られているとの指摘は鋭く、英語表現力も英米人のそれに伍してすばらしい。
作品論以外では、ディケンズと風俗画(日常生活に題材を求めた絵画)の関係を論じ、17世紀オランダの風俗画家オスターデと19世紀スコットランドの風俗画家ウイルキーが作家に与えた影響を扱う木島氏の論考は新鮮である。また、松岡氏によるディケンズの登場人物になべて見られる「心理的牢獄」、そして渡部氏の「夢うつつの状態」と創作の関係もまたディケンズ理解には必須であろう。西條氏の「ディケンズと素人演劇活動」は、作家として以外に、俳優・舞台監督・演出家としてプロも顔負けの存在であったディケンズの慈善興業の正確な記録と使われた演劇脚本を辿ったもので、世界でも数少ない研究である。脚本は容易に手にはいらないので、全24篇の脚本とそれぞれの興行プログラムを一冊にまとめた書物の出版が待ち望まれている。
■『Dickens in Japan : Bicentenary Essays』Osaka Kyoiku Tosho, 2013年
■ 西條 隆雄 (元文学部教授)執筆、原英一ほか編
川田都樹子・西 欣也(文学部 教授)『アートセラピー再考 -芸術学と臨床の現場から』(平凡社、2013年3月刊)
<書籍紹介>
アートセラピー(芸術療法)とは、絵を描いたり音楽を演奏したりすることによって、
何らかの障害や病気からの「治療」効果をもたらそうとする活動です。甲南大学の
講義科目に「芸術療法」という科目があるように、特に箱庭療法や音楽療法のような
アートセラピーは、心理療法の一手法としてすでに確立された学問的実践的地位を
もっています。もちろん、絵画作品を制作したり楽器を弾いたりすることで、どんな
治療効果があるのかを客観的に証明することは簡単ではないようです。それでも様々な
施設や病院で、求めに応じてアートセラピーの実践に取り組み、成果をあげている
専門家の方たちはたくさんいます。同時にその一方で、「癒し」という言葉が世間で
濫発されるようになるにつれて、アートセラピーも一種の流行現象としてもてはやさ
れてきた面があります。昨今では、商品やサービスの名称に意味もなく「セラピー」と
ついたものも見かけるようになりました。
このような現状を背景としながら、甲南大学人間科学研究所(KIHS)では、文部科学省
から助成を受けた研究プロジェクトの一端として、様々な専門分野の考え方をオーバー
ラップさせることにより、アートセラピーをめぐる諸問題を根本的に検討し直す試みに
取り組んできました。もともと、美しさや創造性のような価値の世界と、病の解明とその
治療を目指す科学的福祉的努力との間にはどのような関係があるのでしょうか。また、
アートセラピーの考え方が日常的に受け入れられるようになった現状から、私たちの住む
日本社会のどのような問題が見えてくるでしょうか。さらに、芸術療法をめぐる現在の
制度や価値観は、どのような歴史的経緯で形成されてきたのでしょうか。こうした数々の
問いかけは、とても興味深く、また意義のあるものです。しかしこれまでほとんどこうした
問題が正面から議論されることはありませんでした。この書物は、5年間にわたって
こうした課題に立ち向かった成果を、著書のかたちにまとめたものです。
本書は4つの部分から構成されています。創作と治癒を関連づける考え方が日本に初めて
導入された経緯を歴史的に解明する第1部。ヨーロッパやアメリカにおけるアートの歴史を
セラピーの視点から捉え直す第2部。治療や療育の現場における具体的な事例を、芸術や
哲学の視点もとりいれながらいっそう深く考察しようとする第3部。そしてアンケートや
インタビューの調査を踏まえながら、日本の現在の社会状況全体を見つめ直そうとする第4部。
それぞれの部分が、セラピストや芸術学者や学芸員や批評家による何本かの論文によって
成り立っています。全体を通読してみて、様々な観点からなる学際的研究の豊かさを感じ取って
みるのもよいでしょうし、目次に未を通して興味を持った論文だけを選んで読むこともできます。
■『 アートセラピー再考 -芸術学と臨床の現場から 』平凡社、2013年3月刊
■ 川田都樹子・西 欣也(文学部 教授)
編集委員 前田 忠弘(法学部 教授)他『 刑事法理論の探求と発見- 斉藤豊治先生古稀祝賀論文集 』( 成文堂、2013年1月刊)
<書籍紹介>
本書は、甲南大学名誉教授である斉藤豊治先生の古稀をお祝いして編集された論文集
である。近年、犯罪の予防と対策に対する関心が高まり、この領域における立法と
法改正が頻繁に行われている。
そこで本書には、そのような動向を反映する刑法、刑事訴訟法、少年法、刑事政策の
領域の論文、31本が収められている。
■『 刑事法理論の探求と発見- 斉藤豊治先生古稀祝賀論文集 』成文堂、2013年1月刊
■ 編集委員 前田 忠弘(法学部 教授)他
■ 先生からのお薦め本
加藤幸男・前田忠弘監修『司法福祉―罪を犯した人への支援の理論と実践―』(法律文化社・近刊)
大津真作訳『市民法理論』
<書籍紹介>
この本は市民法の理論となっていますし、原題は民法理論ですから、法学部の学生が
読む本だと勘違いされます。でもこの本が論じているのは、副題が「社会の根本原理」
となっていることから分るように、一体どのような事情があって人類が社会を形成して
きたのかというその謎なのです。
フランス18世紀末の社会思想家ランゲは、社会形成の謎をあっと驚く視点で解明しました。
彼によると、社会と奴隷制とは同時に生まれたというのです。ですから最初から社会には、
主人と奴隷がいたわけです。この視点は二つの意味で重要です。一つは社会形成の時に
どんなことが起こったか?です。恐ろしい「原初の暴力」によって社会は誕生したのです。
武器を持った狩猟民族が平和な孤立した農耕=牧畜民族を襲って、彼らの財産を奪い、
彼らを奴隷身分に無理やり落としたのです。この所有関係を明確にするために法律とくに
民法が作られました。
もう一つは、奴隷制は今も続いているというのです。どういう形で続いているのでしょうか。
それは日雇い労働者、つまり今で言う「自由な」派遣労働者を最底辺として、それに賃金
労働者の身分を加えた形での奴隷制が続いているというのです。でも、皆さんは誰一人
として奴隷じゃないですよね?
自由ですよね?ランゲによると、いや皆さんは最も恐ろしいものの奴隷になっていると
言うのです。それは餓死という悪魔の奴隷です。北九州市で生活保護を打ち切られた男性
が餓死していたでしょう?彼は誰にも雇われなかったから餓死したのです。また、ランゲは
「文明社会では国民の四分の三の貧困の上に国民の四分の一の富裕が築かれる」と
言います。図星でしょう?では、なんでこんな恐ろしい社会を人間は作ってしまったので
しょうか?そこから先は、この本を読んで皆さんが考えてください。
この本には、未来社会へのヒントも書かれています。ランゲは、略奪型の経済と餓死の
自由しかない社会とはシャム双生児だから、略奪型の経済をやめた時、本当に幸せな社会
を築けるのではないか、と示唆してくれています。ですからこの本はどの学部の学生も
一読すべき本だと思います。
■『市民法理論』京都大学学術出版会、2013年1月刊
■ 大津 真作(文学部社会学科 教授) 訳
■ 先生からのお薦め本
『新自由主義』デヴィッド・ハーヴェイ、作品社 ランゲの思想を延長すれば、現代の
グローバル資本主義の本質が解明されます。この本は現代社会の自由には二種類しか
ないことを教えてくれます。餓死の自由と略奪の自由です。恐ろしいでしょう?