今年2015年は「フェルマーの最終定理」が証明されてから20年になる記念の年です。
それが何?と思った方、むしろ大多数の方がそう思われたでしょうが、この難問を証明することは人類の悲願だったのです。
サイモン・シン著,青木薫訳
『フェルマーの最終定理:ピュタゴラスに始まり、ワイルズが証明するまで』
412.2/Si8 図書館1階開架一般
「ピュタゴラスの定理」を覚えているでしょうか?
直角三角形の斜辺の長さをz,他の辺をx,yとした場合、「xの2乗+yの2乗=zの2乗」となる数学の定理です。
数学は「完全」を具現できる唯一の学問です。
他のあらゆる分野の学問は、仮説を裏付ける実験によって証拠を積み重ね、「科学理論」とすることはできますが、数学と同じレベルでの「証明」はできません。
たとえば、生物学。iPS細胞で作成した網膜組織の移植を世界で初めて成功させた理化学研究所の高橋先生も、「10人の研究者が培養にチャレンジしても3人くらいしかきれいに作れません」と話されています。(朝日新聞 2015.1.5朝刊)
「科学理論」では、「手に入るかぎりの証拠にもとづいて、「この理論が正しい可能性はきわめて高い」(本文48p)」と言うことしかできません。重ねて言えば、正しくない可能性のほうが高いことも多いのです。
それに比べ、数学で「=(イコール)」が使用される場合、その右側と左側は、完全に、絶対に、100%、一致すると断言できます。
これで、数学だけが「真」を語ることができる、ということをまずご理解いただけたでしょうか?
これを踏まえて、「ピュタゴラスの定理」に話を戻しましょう。
ピュタゴラスは紀元前500年前後の数学者です。「ピュタゴラスの定理」はもっと古い時代から知られていたそうですが、ピュタゴラスによって正しいと証明されて以降、「ピュタゴラスの定理」と呼ばれるようになりました。
測量や建築にとても便利な定理なので、人類史上最も活用されてきた定理の一つです。
そして、約2千年後、フランスの天才数学者ピエール・ド・フェルマーが、「ピュタゴラスの定理」が説明された本の余白に、いわゆる「フェルマーの最終定理」を書き遺しました。
「xのn乗+yのn乗=zのn乗
この方程式はnが2より大きい場合には整数解をもたない。
この定理に関して、私は真に驚くべき証明を見つけたが、この余白はそれを書くには狭すぎる。」
以後358年間、だれもにもできなかった「フェルマーの最終定理」の証明を、1995年にイギリス人のアンドリュー・ワイルズが「谷山・志村予想」を証明することで成し遂げたのです。
・一見簡単そうに見える証明がなぜ解けなかったのか?
・フェルマーは、なぜこんな意地悪をしたのか?
・「谷山・志村予想」とは?
・そもそも数学の研究は人類の役にたっているのか?
数学が好きな方も、さっぱりわからない方でも、興味深々で読める1冊です。
むしろ、数学の分からない方が、数学の世界を垣間見れる本かもしれません。
(補足)
「フェルマーの最終定理」を証明したワイルズの論文は以下の雑誌に掲載されました。
著者:Andrew Wiles
論題:Modular Elliptic Curves and Fermat’s Last Theorem”
掲載雑誌名:Annals of Mathematics
掲載巻号:Vol. 141, No. 3 (May, 1995), pp. 443-551
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(Konno)