月別アーカイブ: 2017年12月

中井久夫著『徴候・記憶・外傷』

徴候・記憶・外傷

書名: 徴候・記憶・外傷
著者: 中井久夫
出版者: みすず書房 , 2004.4   出版年: 2004年(初出2002年)
場所: 1階開架  請求記号: 493.7//2014

日本には、「中井久夫」という、精神科医がいます。
旧制甲南高校のご出身で、神戸大学医学部をご退官後、甲南大学大学院人文科学研究科でも教鞭をとっていただきました。阪神大震災直後から被災者の「こころのケア」に取り組まれ、平成25年度には文化功労者に選出されています。
つまり、この人が日本にいてよかったと思える人物の一人です。

本書は、1995年(阪神大震災)から2004年までに、中井先生が本学の臨床心理学専攻の学生・大学院生に向けた「心的外傷(PTSD)」や「記憶」についての講演や論文を集めたものです。
専門的な内容も含まれるので簡単ではありませんが、専門家外の人でも読むことができる本です。

まず、『「踏み越え」について』(p.304~328)を、読んでみていただけないでしょうか。
この論文は、甲南大学大学院人文科学研究科が行ったシンポジウムで発表され、同研究科の紀要『心の危機と臨床の知』4巻(2002.12)に掲載されたものです。
 http://doi.org/10.14990/00002486

論文中の「踏み越え」(transgression)とは、「広く思考や情動を実行に移すこと」です。
実行するために「壁を越える」ことが必要な行為のことで、例えば、大学入学やファーストキスといった個人の成長に係る事例から、薬物や暴力、殺人といった犯罪や、テロや戦争などの反社会的な事例まで、様々なケースがあります。
思い返してみると、人生を決定する「踏み越え」は、熟慮した後に実行に移すことより、その場の雰囲気や勢いで行動してしまったことが多いのではないでしょうか。

中井先生は、太平洋戦争開戦時のご自身の体験や、精神科医として携わった症例などを基に、「踏み越え」を容易にする条件を整理・分析されました。そして、「実行に移さないように衝動に耐えて踏みとどまる」ためには、「自己コントロール」が重要であると結論付けられています。
とはいえ、どうすれば自己をコントロールできるようになるのでしょう。引用が少し長くなりますが、中井先生はこう述べています。

” 私たちは、「自己コントロール」を容易にし、「自己コントロール」が自尊心を増進し、情緒的な満足感を満たし、周囲よりの好意的な眼差しを感じ、社会的評価の高まりを実感し、尊敬する人が「自己コントロール」の実践者であって、その人たちを含む多数派に自分が属することを確信し、また「自己コントロール」を失うことが利益を生まないことを実際に見聞きする必要がある。
 抑制している人が嘲笑され、少数派として迫害され、美学的にダサイと自分も感じられるような家庭的・仲間的・社会的環境は、「自己コントロール」を維持するために内的・外的緊張を生むもので、長期的には「自己コントロール」は苦行となり、虚無感が忍び寄って、破壊するであろう。戦争における残虐行為は、そういう時、呆れるほどやすやすと行われるのではないだろうか。
 もっとも、そういう場は、短期的には誰しも通過するものであって、その時には単なる「自己コントロール」では足りない。おそらく、それを包むゆとり、情緒的なゆるめ感、そして自分は独りではないという感覚、近くは信頼できる友情、広くは価値的なもの、個を越えた良性の権威へのつながりの感覚が必要であろう。これを可能にするものを、私たちは文化と呼ぶのであるまいか。”

この本には、他10数編が収録されています。
他にも、評論や翻訳などが多数ありますので、一度蔵書検索してみてください。

また、『甲南Today』No.45,2014には、中井久夫先生へのインタビューも掲載されています。
合わせてご参照ください。
http://www.konan-u.ac.jp/kouhou/pdf/today45.pdf

 

尾形真実哉 (経営学部) 『人材開発研究大全』

人材開発研究大全

<教員自著紹介>
本書は、多くの研究者が理論や実際のデータ分析に基づき、人材育成に関する知見を分かり易く解説した大作です。これまでも人材育成に関する著書はありますが、これほどのボリュームのある著書は初めてかもしれません。学生でも、アルバイトやクラブ活動において、人の育成にかかわることは多いはずです。しかし、人の育成は非常に難しい!そんな人材育成に悩んでいる人に解決のヒントや気づきを提供できるのが、本書です!

■『人材開発研究大全
■中原淳編 東京大学出版会,2017年4月
  *尾形先生は、第2部 第9章「組織社会化研究の展望と日本型組織社会化」、
  第14章「新人研修」を執筆されました。
■請求記号 336.4//2484
■配架場所 図書館1F 教員著作
■著者所属 経営学部 教授

コピー機の利用に関すること

後期試験が近づいてきました。学生の皆さんもノートやプリントのコピーに走り回るころでしょう。
さて、図書館内のコピー機は、著作権の問題があり、図書館の本や雑誌しかコピーしてはいけないことはご存じでしょうか?

ノートなどをコピーしていると声掛けして注意しています。
ではノートなどはどこでコピーできるのか、というと甲南大学生協が提供しているコピーサービスを利用する必要があります。

>>生協さんのコピーサービスのご案内ページはこちら<<

iCommonsができてコピー機の場所などサービスが変わりましたのでチェックしておきましょう!

文学部 佐藤泰弘先生へのインタビュー

文学部 2年生 金澤舞奈さんが、文学部の佐藤泰弘先生にインタビューを行いました。(KONAN ライブラリ サーティフィケイト)

今回は本の読み方と推薦する本を紹介していただきます。

1.どのような方法で本を探しますか
 本屋でとにかくすべての分野を見てまわり、本を選んでいます。また、新聞や学術雑誌の新刊紹介、書評も参考にしています。学生時代では、友人に面白い本を紹介してもらったりもしていました。

2.どういった時間帯に本を読みますか
 通勤電車やちょっとした空き時間に読んでいます。とはいえ、基本的には気が向いたときに読書をしています。

3.最近は電子書籍が増加してきましたが、先生はそれで読書をしますか
 電子書籍では読みません。紙の本で読みます。

4.おすすめの本は何ですか
 神林長平の『あなたの魂に安らぎあれ』です。私は滅多に再読しませんが、この本は何度も読み返しました。漫画であれば、田島列島『子供はわかってあげない』です。これは最近、読んで面白かった本です。萩尾望都の作品もおすすめです。

5.学生時代に読んで、影響を受けた本は何ですか
 サマセット・モームや光瀬龍『百億の昼と千億の夜』です。サマセット・モームの本は高校英語の教科書に掲載されていました。これらの本はその後の人生観や感性に影響を及ぼしたと思います。専門書であれば、保立道久『中世の愛と従属』に影響を受けました。

6.いま、私たちに月どのくらいの本を読んでほしいと思っていますか
 私からはとくに言うことはありません。読みたくなければ読まなくてもいいと思います。無理に読む必要はありません。とはいえ、講義を聞いている先生の著作くらいは読んで見てください。

7.インタビューを終えて
 約30分の短い時間ではありましたが、貴重な話を聞くことができました。お恥ずかしながら、私は先生方の著作を読もうと思ったことは非常に少ないです。小説を読もうということばかり考えていました。先生方の著作は大学図書館にあるので、これを機に読んでいこうと思います。お忙しい中、インタビューに答えてくださってありがとうございました。

 

<佐藤泰弘先生おすすめの本> 
神林長平著  『あなたの魂に安らぎあれ』 早川書房,1986年
  

  
  

(インタビュアー:文学部 2年 金澤舞奈)

理工学部 平井崇晴先生へのインタビュー

理工学部 1年生 村上一寿さんが、理工学部の平井崇晴先生にインタビューを行いました。(KONAN ライブラリ サーティフィケイト)

  • おすすめの本は何ですか

 たくさんあるので一番は決められないですが、数学的なもので言えば「今、なぜ和算なのか」「数学はいつも苦手だった」などです。数学関係でなく一般的なもので言えば「いろはにほへと」というお坊さんの説法集です。分かりやすいけど深いことが書いてあり、数学的に読んでみても面白いです。(笑)
真とは何かを突き詰めていることが数学であるとするなら、やっぱり共通するところがあると思います。そんなことを考えずに読んでも面白いですが… 
 結局は、何でも先生だと思わなきゃいけないです。本からでも学べるし、人からでも学べるし、先生でも生徒からでも学べると思います。その究極は物からでも学べるということです。その最たる例が、横綱双葉山という連勝記録を持った力士が負けた時に言った言葉が「未だ木鶏たりえず」というのであり、木鶏のように不動の気持ちでいられなかったという意味です。つまりは、森羅万象何からでも学ぼうとする気持ちが大事です。そうすると、本を読むときに、数学にでも、今考えていることにでも関係づけることができます。だから別に「おすすめの本」とか言わなくても、なんでもいいと思います。(笑)

  • 授業などで人に何かを伝えるときに大事だと思うこと

 あんまりいろいろ考えてないよ(笑)唯一考えていることとすれば、自分が面白いと思っているかです。普通の畏まった人からするとふざけていると思われるかもしれないですが、それでも自分が面白いと思うことは曲げずに、問題があったら後であやまります。それに派生して、結果として気を付けていることは、相手も面白いと思っているかどうかです。自分が面白いと思っていても相手が面白いと思っていなければ、こちらも面白くないので。だから、「分かった」よりも「ウケがとれたか」です(笑)

  • あとがき

 とてもおもしろいインタビューをさせてもらえました。「なんでもいい」という奇抜な答えに驚きましたが、確かに周りのもの全てから学ぶことが大事だと思いました。

 <平井崇晴先生おすすめの本>
田村三郎著  『今、なぜ和算なのか』 現代数学社,2015年
 

 
 

 

 

 

(インタビュアー:理工学部 1年 村上一寿)

理工学部 中島裕夫先生へのインタビュー

理工学部 1年生 村上一寿さんが、理工学部の中島裕夫先生にインタビューを行いました。(KONAN ライブラリ サーティフィケイト)

  • どのような本を読みますか

 主に科学と思考に関係した本ですが、いつも疑問に思っていることや意外に感じたことについて書かれている本を見つけた時には、生物学にかかわらずどの分野の本でも読みす。
 最近は時間がなく読む機会がなく残念ですが、小説では医学、科学に関した本が多いです。つじつまが合っているものであれば、SFやファンタジーもありです。
 大学生の時は、ロビン・クック、マイケル・クライトン、渡辺淳一など、子供の時はコナン・ドイルの本を殆ど読みました。

  • お勧めの本は何ですか

 思考の整理学 外山滋比古著 筑摩書房 1986年
 脳のなかの幽霊 V.S.ラマチャンドラン, サンドラ・ブレイクスリー著 角川文庫 1999年
 徳川将軍家十五代のカルテ 篠田達明著  新潮社 2005年
 命を守る生体の機構と科学 伊勢川裕二著 武庫川女子大学出版部 2015年
 放射線必須データ32:被ばく影響の根拠 田中司郎著  創元社 2016年
 美女の骨格 名画に隠された秘密 宮永美知代著 青春出版社 2009年

  • 授業などで人に何かを伝えるときに大事だと思うことは何ですか

 できるだけシンプルに表現するように努めて、どのように受け取られるか、この表現で伝えたい事とは違う意味に伝わらないか(別の意味にも取られないか)を考えます。また、いくつかの表現を使って説明するように努めています。 

  • あとがき

 もともと医学生物学に興味があったためロビン・クックや渡辺淳一、お薦めの本(上の6つ)の概略を聞かせてもらう時、とても興味が湧きました。「思考の整理学」は学問を修める上で重要だと強く薦められ自分もそう思うので、また読んでみようと思いました。

 <中島裕夫先生おすすめの本>
外山滋比古著  『思考の整理学』 筑摩書房,1986年
V.S.ラマチャンドラン, サンドラ・ブレイクスリー著  『脳のなかの幽霊』 角川文庫,1999年
篠田達明著  『徳川将軍家十五代のカルテ』 新潮社,2005年
伊勢川裕二著  『命を守る生体の機構と科学』 武庫川女子大学出版部,2015年
田中司郎著  『放射線必須データ32:被ばく影響の根拠』 創元社,2016年
宮永美知代著  『美女の骨格 名画に隠された秘密』 青春出版社,2009年

 

 

 

(インタビュアー:理工学部 1年 村上一寿)