月別アーカイブ: 2020年2月

文学部 稲田 清一先生へのインタビュー

文学部  4年生 Nさんが、文学部 稲田 清一先生にインタビューを行いました。(KONAN ライブラリ サーティフィケイト)

Q.  週にどれぐらいのペースで本を読まれますか。また、最近読まれたものの中で、よかったものは何でしょうか。

A. 仕事以外の本ですと、決まってはいないですが、週に1冊くらいでしょうか。年間だと大体40~50冊ぐらいだと思います。ここ最近ですと、王力雄の『セレモニー』(藤原書店、2019年)が一番面白かったです。中国共産党総書記の暗殺計画に巻き込まれた一技術者を描いたSF小説です。また、劉 慈欣のSF小説『三体』も読みました。今、アメリカや日本では、一部で中国SFブームとなっていることもあり、おすすめです。

Q. 学生の頃、どのような本を読まれていましたか。

A. 陳舜臣の探偵ものや歴史小説をおもしろく読みました。『阿片戦争』や『秘本三国志』などが印象に残っています。そのほか小説だと、1970年代の文庫のブームなどもあり、筒井康隆、野坂昭如といった作家をよく読みました。小説は昔も今も変わらず好きです。

Q. 学生に向けて、研究の際の文献の調べ方、図書館の利用法など教えていただきたいです。

A. 私自身は買う主義で、手元に置いておきたい本は基本的には買います。図書館だと、借りたいときに貸し出しになってしまっていることもあるのでそうしています。しかし、高価な本など入手が難しいものもあるので、そこは効率の問題ではないでしょうか。レファレンスは卒業論文の指導の際、よく学生に行くことを勧めています。レファレンスに質問をすることで見つかる答えがありますし、何より自身が何を知りたいのかわかっていないと人にうまく質問することができません。自分の理解のためにも、レファレンスは積極的に使っていくべきだと思います。

また学生の皆さんにぜひ勧めたいのは、相互利用で本を取り寄せられることです。甲南大学の図書館に無いからと借りるのを諦めるのはもったいないです。

Q. アジア史、中国史に触れる際、おすすめの本は何かありますか。

A. 小説ですと、先ほども紹介した『セレモニー』がいいと思います。小説以外ですと、上田信著『海と帝国:明清時代』がいいのではないでしょうか。歴史を学ぶうえで、国単位で歴史を見ることはやめたほうがいいと思うのですが、この本はその視点がよくあらわれた概説書だと思います。

感想  :   稲田先生はすでに一度インタビューを受けていらっしゃったということで、新しい質問項目を考えるのが難しかったです。しかし、先生の本に対する考えを聞くことができたのはとてもいい経験となりました。劉 慈欣の『三体』は私も買ったのにまだ読めていない本だったので、これを機に読んでみようと思います。

<稲田 清一先生おすすめの本>

劉慈欣著 ; 大森望, 光吉さくら, ワン・チャイ訳『三体』早川書房 , 2019年

陳舜臣著『阿片戦争』講談社 , 1987年

陳舜臣著『秘本三国志』講談社 , 1986年

上田信著『海と帝国 : 明清時代』講談社 , 2005年

(インタビュアー:文学部 4年 N

 

法学部 中井 伊都子先生へのインタビュー

法学部  3年生  清水 優也さんが、法学部 中井 伊都子先生にインタビューを行いました。(KONAN ライブラリ サーティフィケイト)

Q.  本はよく読まれますか。

A.  本はとてもよく読みます。特に歴史ものが好きです。司馬遼太郎や、最近ではクリスチャン・ジャックなど、その人の視点で歴史や時の流れを追っていくような作品が好きです。

Q.  学生時代に読んでいた本を教えて下さい。

A.  学生時代から歴史小説が好きでした。気に入った作家が見つかればその作家の本をすべて読まないと気が済まない質です。その時々に話題になるような単発のものも読みましたが、長い歴史の本が好きなため、あまり心に残らなかったですね。

Q.  先生は国際法、その中で特に国際人権法を研究されています。国際法というものに興味を持ったきっかけを教えて下さい。

A.  大学生のとき、恩師に「国際社会を見る目を養い、より深く知っていくためには、歴史か法律を自分のものの見方の枠組みとしてしっかり持ちなさい」と教わり、大学院に進むにあたって、国際法を専攻しました。その中で国際人権法を選んだ理由は、人権によって国家主権に揺らぎを与えられる可能性を感じたからです。絶対的なものであるはずの国家主権と「人権」の関係に惹きつけられました。

Q.  国際法を研究していて、やりがいを感じるときを教えて下さい。

A.  自分の研究のよって社会貢献ができたときです。行政が日本の国内法でカバーできない問題や分野について対策を講じる際に、国際的な基準や法律についてお話をする機会などがあります。大阪市のヘイトスピーチ条例の作成に携わったことなどがその一例です。自分の研究者としての営みが、条例作成というかたちで社会に役立っているところに喜びを感じます。

Q.  国際法に関心がある人に薦める本を教えて下さい。

A.  国際法に関心がある方が、必ずしも国際法の本を読めばいいとは思いません。国際法に興味があるならば、まず国際社会について知ることが重要です。なので、どんな本でもいいので、自分と違う考えや宗教、経済体制に関心を持ち、それらを国際社会に向けて広げていってほしいです。

Q.  最後に、甲南大学の学生にメッセージをお願いします。

A.  自分と違うものを怖がらないでください。自分と違う考え方、宗教、性的指向、人種などを恐れるのは、知識がないことが原因です。知識を得て、結局は同じ「人間」なんだという感覚を持つことで、人と人の交流が始まります。人と人との交流は国と国との交流に繋っていき、やがてどのように国家が共存していくかということに繋がります。大袈裟ではなく、小さな心がけが大きな歩みにつながるのだと思うのです。なので、自分と違うものを恐れないで、そして恐れないために十分な知識を得てください。

感想  : 「視点」というものを大事にされているように感じました。視点を増やすことで、相手を慮ることができたり、正しい判断ができる。その視点を増やすためには、知識を得なければならない。この考えは、なぜ人は学ぶのかという問いに対する、一つの答えではないかと思いました。

そして、インタビューを通じて、研究分野だけでなく歴史や経済といった多様なものを吸収しようとする姿勢がひしひしと伝わり、改めて尊敬の念を抱きました。

(インタビュアー:法学部 3年  清水 優也

 

文学部 A先生へのインタビュー

文学部  4生 H さんが、文学部 A 先生にインタビューを行いました。(KONAN ライブラリ サーティフィケイト)

Q.  これまで特に力を入れて取り組まれた業務はありますか?

A. 大学図書館員だったときは利用教育と情報リテラシー教育に力を入れていた。図書館員全員で4月から5月にかけて1限から5限まで、新入生3,000人全員に対して行っていた。

Q. 利用教育を行って、手ごたえを感じましたか?

A. レポートや論文をこれから書くという人には役に立てたと思う。それだけではなくて、図書館には専門書だけではなく、小説や視聴覚資料、電子資料などもたくさんあるということを新入生の段階で知ってもらうきっかけにもなった。

Q. 情報化により剽窃がよく問題として取り上げられるようになりましたが、どのようにお考えですか?

A. 意図せずやってしまったことでも、とんでもないことになる。よくWikipediaを使う人がいるが、見るのは構わないが、レポートや論文の根拠としては責任の所在がない。著作権法や研究倫理については授業で積極的に伝えたい。

Q. 図書館はどのように対処できるでしょうか?

A. これからの図書館は、利用教育の際に、情報倫理や研究倫理を含めた1つ上のレベルを目指さなければならない。

Q.甲南生の図書館利用についてどう思いますか?

A.自習をしている人が多いが、図書館を利用するというのは図書館を単に場所として利用するということではなく、「図書館資料を利用・活用する」ということ。

Q. 図書館学の受講者、司書を目指している人に向けて一言お願いします

A. 資格を生かして、図書館で是非働いてほしい。人の役に立つだけでなく、自分も向上できる素晴らしい仕事。もし司書にならなくても、利用者として図書館を活用して欲しい。図書館で資料情報を自由に見られるのはもはや当たり前になっているが、そうではない時代も過去にはあった。情報を自由に入手できることは民主主義社会の基盤であり、その素晴らしさを図書館で実感して欲しい。

感想:授業内だけではなかなか知る機会がない先生の研究内容や、思いを知る場となり、大変貴重な時間になりました。司書を目指す方は、司書の方にインタビューをして、より詳しく学んで欲しいです。そうでない方も、是非所属する学部の先生にこのような機会を設けて頂き、自分の学ぶ分野により深く興味を持つきっかけになればと思います。ご協力頂きました皆さまにこの場をお借りしてお礼申し上げます、有難うございました。

(インタビュアー:文学部 4年 H )

 

ときど 著 『東大卒プロゲーマー  論理は結局、情熱にかなわない 』

 

知能情報学部  4年生 Aさんからのおすすめ本です。(KONAN ライブラリ サーティフィケイト)

書名 :  東大卒プロゲーマー 論理は結局、情熱にかなわない
著者 :  ときど
出版社:PHP研究所
出版年:2014年

東大卒のプロゲーマーとして知られているときど氏。東大卒の超エリートである彼が東大卒という肩書を捨ててまでなぜプロゲーマーという道を選んだのか。

ときどは小学生のころ父親の仕事の関係で引っ越しを繰り返していた、それによりなかなか友人もできずいじめられることもあった。そんななかおちびと呼ばれている友人ができ毎日のようにゲームに没頭したのである。ときどは中学校、高校ともに進学校を選択し勉強をしながらゲームを楽しんでいた。ときどにとって勝つことがすべてで勝つために論理的にゲームを展開し勝つことを楽しんでいた。大学受験をしながらもゲームを楽しんでいたときどに不合格という現実が待っていた。それを機にゲームをきっぱりやめ浪人しながらも東京大学に入学した。大学の大学院で出会った恩師Sさんの熱意に触発されてときどは自身の研究に没頭していった。その際の成果が評価され賞を受賞するまでになった。しかし大学院入試に落ちたこと、相次いだ不運な出来事からいつしかときどの情熱はなくなってた。ときどは情熱を持って打ち込めることを探し小さいときに熱中していたゲームに打ち込んでいく。そんな中、梅原大吾が日本初のプロゲーマーになったと知ったときどはゲーム業界でプロゲーマとして生きていくことを決意した。理論で突き詰めた合理性のプレーだったものが徐々に楽しませるためのものに変わっていった。理論で突き詰めていく研究も大切だがその中でいかに情熱を燃やし続けられるのかを考えさせてくれる作品になっている。

 

川村 元気 著 『億男 』

 

 

知能情報学部  4年生 Aさんからのおすすめ本です。(KONAN ライブラリ サーティフィケイト)

書名 :  億男
著者 :  川村 元気
出版社:文春文庫
出版年:2018年

本学で所蔵している本はこちら→ 川村 元気 著 『億男』マガジンハウス , 2014年

映画「君の名は。」などをプロデュースし現代の映画を支えているプロデューサー、川村元気の「億男」にはお金の大切さを教えてくれる作品である。

その物語はお金がなくその影響で家族とうまくいかなかった主人公一男が突如大金を手に入れお金とは何かを考えていく。3億円という大金を使えばよいか学生時代の友人で現在は大富豪である九十九に相談に行ったが、次の朝には3億円と九十九の姿はなかった。なぜ九十九は消えてしまったのか?また、大富豪である彼が3億をもっていった理由とは?その答えを探すべく一男は九十九の知り合いを訪ね歩き答えを探していく。訪ね歩くうちにお金と幸せとは何かを、その答えを探し続ける物語になっている。一男が出会う人には「愛人ではなくお金を愛する」、「お金を捨てたくて仕方がない」、「お金の宗教に浸る」といった突如手にした大金により人生が狂ってしまった生活を知ってしまう。働けばその対価として手に入れることができる「お金」は物と交換するためのいわゆる交換手段である。「お金」があれば気持ちや生活に余裕が生まれ、「お金」がなければ不安などの人間の負の感情が働く。「お金」があたえる影響とはそれほどまでに大きくお金の大小によってその人の信用まできまるのだ。お金は人を幸せにしてくれると誰もがそう望んでいる。しかし、大金を得ればお金によって人生を狂わせてしまった人もいる。

お金とは何か幸せとはどこにあるのかということの答えを生々しいお金の世界と私たち人間の生活のつながりを考える機会になる作品である。

中島 京子著 『長いお別れ 』

 

 

法学部 3年生Sさんからのおすすめ本です。(KONAN ライブラリ サーティフィケイト)

書名 :  長いお別れ
著者 :  中島 京子
出版社:文藝春秋
出版年:2015年

ロンググッドバイ。長いお別れ。少しずつ記憶をなくしていき、長い時間をかけてお別れしていくとき、人は何を思うのだろうか。忘れていく人は。忘れられていく人は。

本作は、認知症と診断された東昇平が、妻、三人の娘、孫などと過ごす十年を描いた物語である。八章で構成されており、章が進んでいくごとに昇平の症状は進行していく。こう書くと、シリアスで重い作品、またはお涙頂戴小説のように思う人もいるかもしれない。しかし、見当外れ。そんな予想は見事に裏切られる。この作品は「認知症」がテーマでありながら、笑えるシーンも随所に見られる。泣かせてやろう、という意思は全く感じられない。そしてなにより、本作は病気そのものではなく、病気に直面した家族のあたたかさに主眼が置かれている。

アメリカでは認知症のことを「ロンググッドバイ」と言うらしい。直訳で、長いお別れ。徐々に周囲の人のことを忘れていき、少しずつ時間をかけてお別れしていくことが由来になっている。長いお別れも、きっと突然のお別れと同じくらい悲しい。作中でも、昇平の妻である曜子は、自分のことを忘れてしまった夫を介護することについて、気の毒と思われている。だが曜子は、「言葉は失われた。記憶も。知性の大部分も。けれど、長い結婚生活の中で二人の間に常に、あるときは強く、あるときはさほど強くなかったかもしれないけど、たしかに存在した何かと同じものでもって、夫は妻とコミュニケーションを保っているのだ」と考えている。その人がその人として生きている限り、その人は確かにそこに存在していると信じている。そして、そこに存在している夫は、例え自分のことを忘れてしまっても、なにかでつながった自分の夫であることに変わりはないのだと訴えてくる。

昇平は、曜子のような人と人生の大半を過ごせて幸せだっただろうと心底思った。二人の関係を羨ましく思った。インターネットの発達に伴い、繋がれる世界は一気に拡がった。それにより、個人の関係は希薄になっているとも言われている。そんな時だからこそ、認知症をテーマに、夫婦や家族といった小さくて狭い、けれどもあたたかい個人の関係を描いた本作は読まれるべき作品なのではないだろうか。