月別アーカイブ: 2021年6月

小林 義祟著 『すみません、金利ってなんですか?』

 

文学部 3年生  畑田 亜美さんからのおすすめ本です。(KONAN ライブラリ サーティフィケイト)

書名 :  すみません、金利ってなんですか?
著者 :  小林 義祟
出版社:サンマーク出版
出版年:2020年

 経済の基本事項は高校の現代社会等で習ってきました。しかし、実際に日常生活で使う金利や預金などが何かというとよくわからないということは多いです。私は大学生になるまで自分で銀行に行くこと、さらにはATMを利用することは殆どありませんでした。そのため、初めて使うときは戸惑いました。また、アルバイトを始めてから年末に貰った年末調整の表もよくわかりませんでした。正直なところ、経済はややこしいので好きではないです。しかし、知らないままで良いかと言われると不安に思います。この本は税を中心に基礎事項を丁寧に教えてくれます。

 特に印象に残ったのは預金と年金です。将来のことを考えると預金をしておいた方が良いとは思いますが、どうするべきかよくわかりません。よくわからないままとりあえず貯金しています。この本を読めばお金の貯め方や運用の仕方がよくわかります。様々な預金形式や組織、投資などがあり、どれを選ぶかは自由です。それぞれのメリットとデメリットを知り、正しく選ぶことのできるようになると感じました。

 次に年金に関しては、将来もらえなくなるのではないかなどと言われているため、現役世代からすれば不安要素です。その回答を得られるだけでも良かったと思えます。そして、学生時代の免除制度や払い損ねてしまった場合の起源やどうなるのかについても言及されています。これに関しては、払い始めたところの学生は知っておくべきことだと感じます。私は詳しいことを全然知らなかったので、学ぶことができて本当に良かったと思いました。

 以上のことから、本書は社会人になるまでに読んでおきたい1冊だと感じました。学生のうちはまだしも、社会人になれば周りは当たり前の様に知っていて尋ねにくくなってしまうと思います。この本の企画、編集を担当された梅田直希さんのように何も知らず聞く機会を逃したまま社会人になる人は非常に多いでしょう。だからこそ多くの学生に読んでもらいたい本です。

伊藤亜紗 著『目の見えない人は世界をどう見ているのか』

書名 : 目の見えない人は世界をどう見ているのか(光文社新書)
著者 : 伊藤亜紗 著
出版社:光文社
出版年:2015年

甲南大学では、人間科学、知能情報学、生物学を専攻している方と、これらの分野に興味のある方におすすめです。つまり、福祉というより「認知」に関する本です。
感覚の一つを失った「人間」を知ることで、新しい視点から人間を知ることができる1冊です。

本書の中に「リハビリと進化は似ている」という節があります。(p.112-)著者によると、「事故や病気によって何らかの器官を失うことは、その人の体に、「進化」にも似た根本的な作り直しを要求」することが、環境によって身体を作り替えてきた生物の進化に似ている、とのこと。
確かに、パラリンピック等で活躍されている方をみていると、人間が新しい可能性を掴んで、新たな地平を切り開いているように思えます。
それは、何かを失わないとできないことなのか、一度考えてみませんか。

中村 聡一 (マネジメント創造学部)『教養としてのギリシャ・ローマ : 名門コロンビア大学で学んだリベラルアーツの真髄』

 

<教員自著紹介>

 甲南大学の皆さん。
 西宮キャンパス教員の中村聡一です。
 この度、新刊書を発売できる運びとなりました。
 以前にも以下の図書館ブログ記事にてこの旨をチラッとお知らせいたしました。

http://www.konan-u.ac.jp/lib/blog/archives/3600

 その本が、ようやく、陽の目をみることになりました。
 長く辛い研究の期間、なんと、丸々”5年”でした。そしてついに完成させた、350頁にわたり内容がぎっちり詰まった書です。
 米国のリベラルアーツ教育の中身は、ほとんど謎のヴェールに包まれていると申して差しつかえないと存じます。その全貌を明らかにすることに挑みました。
 お読みになれば、皆様が抱いている印象とは大きく異なることにお気づきになろうかと思います。
 さらに、先のブログ記事でも記しましたところ、甲南学園の創設者である平生釟三郎先生の究極の本質を見透す眼力にもお気づきになる筈です。
 現代の世界最高峰リベラルアーツ教育の真髄は、平生先生が甲南学園の設立に際して掲げた理念と見事に一致するのです。
 なお、私的にはとても記念になる出来事です。できれば、一人でも多くの皆さまにお読みいただき、感想などもお聞きしたいです。学内で見かけた際などには、気軽に声掛けください。

📰東洋経済オンラインでも紹介されました📰
↓    ↓   ↓
●米国エリート教育と第1次世界大戦の深い関係 GAFAがリベラルアーツ教育を重視する理由

●リベラルアーツ教育の最後に「進化論」を学ぶ意味 コロンビア大学教養講座が伝える「学びの核心」

●「余暇」の重要性を説いたアリストテレスの慧眼 古代ギリシャの「治乱興亡の歴史」に学ぶ教訓

●中村 聡一先生の紹介

西宮キャンパスの設立に多大な尽力をされた太田雅久名誉教授から書評を賜りました。

 現実の社会を見つめてきた賢人たちの名著を軸に、彼らが生きた現実世界の背景から、社会が発展してきた道筋やそこに生きてきた人々の考え方が軽快な論調で歴史的に語られています。それは、教養の本質である人生の意義を見出すための思索を誘発します。

 これまで私が推奨してきたこの種の名著の中にH.G.ウエルズの『世界史概観』(岩波新書)があります。中村氏の著書は世界史を概観する点では似ていますが、叙述の軸が全く違います。リベラルアーツ教育の基盤であるギリシャ・ローマ時代以降の名著の時代背景とその意図する内容を史実の中に巧みに織り込ませて明解に解き明かしているところに特徴があり、リベラルアーツ教育のための斬新な試みになっています。

 ここから読み取れるもの或は誘発されるものは何か。それは名著に基づいて人類の普遍的な社会性を偏見なく体感し、現代社会に門出しようとする学生に社会の諸問題に向けて有益な知恵を醸成する気概であるでしょう。正に教養教育の神髄を、学生一人一人の感受性に応じて支援してくれるテキストとして最適です。

 教養教育は、世界と人間性に関する考え方の体系の構築に資するためのものです。それぞれの時代の人々がもっていた考え方の体系は、その時代の賢人たちの著作から学ぶことが出来ます。それらは我々が属する時代の世界と人間性に関係した考え方の体系を構築するのに有益です。我々の時代が達成しつつある活力ある考え方の体系に気付こうとする姿勢は、その時代の高さに生きることを意味します。それを支援してくれる新しい感性を持った書物であると評価します。

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「リベラルアーツ教育により”人間性の魂”を滋養し、この基盤のうえに経済経営教育を行っていく。」

 西宮キャンパス(マネジメント創造学部)は、日本の教育界において画期的ともいえるこの理念にもとづき12年前に設立されました。太田名誉教授は、その実現に向けて理工学部から転籍されてその設立に参画されました。
 大学教員としてはほとんど経験のなかった当時の私は、太田先生の薫陶をうけ、太田先生ご退職のあと、微力ながらその”志(こころざし)”を継ぐ形で研究と教育に携わってまいりました。
 そして、この志の継承は、延いては、甲南大学の設立理念である”平生精神”に現代的なテイストも加えての発展に寄与すると考えました。
 本書をお読みになるにあたっては、西宮キャンパスでのこうした「知の系譜」があることもあわせてご承知くださいませ。


教養としてのギリシャ・ローマ : 名門コロンビア大学で学んだリベラルアーツの真髄
■ 中村 聡一著 , 東洋経済新報社 , 2021.5
■ 請求記号 231 //2035
■ 配架場所  図書館   1F 教員著作
■ 著者所属 中村 聡一 (マネジメント創造学部)

鈴木与平著『地方を結び、人々を結ぶリージョナルジェット 』

 

 

経営学部  2年生 卜田 真輝さんからのおすすめ本です。

書名 : 地方を結び、人々を結ぶリージョナルジェット
著者 : 鈴木与平 著
出版社:ダイヤモンド社
出版年:2014年

甲南大学に最も近い空港である神戸空港に近年就航したフジドリームエアラインズ(以下、FDA)の社長がお書きになった本です。この本では、航空ビジネスの基礎から、現在の日本の航空業界、日本社会が抱ええる課題、そしてそれらを解決するために生まれたFDAの経営理念や就航までの苦労、会社の未来について記されています。
私はこの航空会社が「地方空港の救世主」と言われ話題を呼んでいた事から注目していました。本を読み進めていくと、東京一極集中が叫ばれる中、「地方同士の交流を深める事が日本を再び盛り上げるきっかけになるのではないか」という著者である鈴木与平氏の熱意やこの会社の理念には非常に共感させられました。
しかし、新型コロナウイルスが猛威を振るい人と人との交流が制限される中で、著者が大切に思われている「地方と地方の人々の交流」をどう今の生活スタイルに合わせ、維持、発展させていくのか、という疑問が湧きました。
この航空会社を利用した際には、この本の内容を思い起こしながら、また、感じた疑問について自分なりの考えを突き詰めてみたいと思います。

皆様もぜひご一読ください。

尾原 宏之 (法学部)『日本思想史事典』

 

 

<教員自著紹介>

「日本思想史事典(辞典)」という名の本は過去に何度か出版されていますが、一番新しいこの本の特長は「興味深く読み通せる事典」であることです。

天皇、神道、武士道、イエ、アジア主義などの重要語を最新研究に基づいて解説するだけでなく、項目を通読することで時代の思想が立体的に把握できるように編集されています。
私は主として近代や政治関連項目の編集・執筆に加わりました。

■ 『日本思想史事典
■ 日本思想史事典編集委員会編 ,  丸善出版 , 2020.4
■ 請求記号  121.02//2021
■ 配架場所  図書館   1F 教員著作
■ 著者所属  尾原 宏之 (法学部)