図書館報『藤棚ONLINE』
経営学部・若林公美先生 推薦
『稲盛和夫の実学―経営と会計』
2022年8月24日、京セラの創業者である稲盛和夫が逝去された。日本経済新聞をはじめ、各種のメディアで大きく取り上げられ、「カリスマ経営者」として松下電器(現パナソニック)を創業した松下幸之助氏と並び称されたことからも、稲盛氏の企業経営に与えた影響の大きさをうかがい知ることができるだろう。
稲盛氏といえば、京セラの「アメーバ経営」やそれによる日本航空(JAL)の再建を想起する。京セラは急成長のなか、肥大化していく組織を事業展開にあわせて小さな組織に分割し、各組織があたかも1つの中小企業のように自らの意思と責任で事業展開ができるようにした。これを「アメーバ経営」という。「アメーバ経営」と併せて、従業員の行動を規律づける「フィロソフィ教育」が、あたかも車の両輪の機能を果たし、京セラを売上1兆円を超える高収益企業に導いたといわれる。
実は,稲盛氏の数ある著書の1つに,私の専門分野である会計にまつわるものがある。その著書、「稲盛和夫の実学―経営と会計」(日本経済新聞社)に、「経営者たるもの会計がわからんで経営ができるか!」という言葉がある。かくいう稲盛氏自身も創業当初、会計については全くの門外漢であったという。その稲盛氏がいかに会計に精通し経営者として成功を遂げたのか、その一端を知ることができる名著である。将来のビジネスパーソンを目指す人もそうでない人も、「人としてどうあるべきか」ということを考えつつ、ぜひ一読してほしい。