月別アーカイブ: 2022年11月

「2022年度兵庫県高等学校ビブリオバトル大会」を開催しました

11月23日(水)に、「2022年度兵庫県高等学校ビブリオバトル大会」を開催しました。

今年度は、県下28校からご参加いただきました。
予選は5グループに分かれて実施され、各グループでチャンプを勝ち取った5名で決勝戦が行われました。

抑揚をつけて熱い思いを表現する方、俳優レベルの朗読を披露する方、淡々と染み入る語り口で心に迫る方、コミュニケーションをとりながら観客と感動を共有する方、、、。それぞれに工夫を凝らしたレベルの高い発表で、誰が優勝してもおかしくない状況でした。

白熱した接戦を制して優勝したのは、兵庫県立神戸高等学校 西田映さんです。

チャンプ本は、三秋縋『三日間の幸福』(メディアワークス文庫)KADOKAWA, 2013年でした。この本が語る「美しさ」を見事に表現された、観客を魅了する発表でした。

準チャンプ本となったのは、以下の4名がご紹介された本です。(発表順)

兵庫県立鳴尾高等学校  野村光希さん
東野圭吾『人魚の眠る家』幻冬舎, 2015

雲雀丘学園高等学校  山岡俊輝さん
夏木志朋『二木先生』 ポプラ社, 2022

白陵高等学校  野村多真希さん
重松清『青い鳥』 新潮社, 2007

神戸市立六甲アイランド高等学校  原田愛季さん
まさきとしか『完璧な母親』幻冬舎, 2016

それぞれに、素晴らしい発表でした。

今年度の大会で発表された本と参加校は、こちらをご参照ください。
ご発表いただいた皆様のこれからのご活躍に期待しています。

また、総合司会を務めていただきました、甲南大学文化会KSWL(放送部門)の中山さんをはじめ、ご協力いただいた学生スタッフの皆様もありがとうございました。

[藤棚ONLINE]マネジメント創造学部・中村聡一先生 コラム「リンカーン」

図書館報『藤棚ONLINE』
マネジメント創造学部・中村聡一先生 コラム 「リンカーン」

学生の皆さん。
西宮キャンパスの中村聡一と申します。
平穏な時代が長きにわたり続きましたが、国際社会は今戦争のリスクにさらされています。
羅針盤になる価値観は永遠に不滅です。それは、”正義”です。
アメリカの分裂危機を救ったリンカーンを紹介します。

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エイブラハム・リンカーン

リンカーン「分かたる家は立つこと能わず演説」「リンカーン・ダグラス論争」「クー パー・インスティティテュト演説」「ゲティスバーグ演説」

The first reading of the Emancipation Proclamation before the cabinet
“The first reading of the Emancipation Proclamation before the cabinet / painted by F.B. Carpenter ; engraved by A.H. Ritchie.”
(内閣における奴隷解放宣言の最初の朗読)
Abraham Lincoln Papers at the Library of Congress(米国議会図書館)より

合衆国の大統領として奴隷解放にあたったリンカーンは、敬虔なキリスト教信者である。
恵まれない移民の境遇から独学で身を興した。
真実の人として知られる。

”I am nothing but truth.”

彼自身の言明である。
建国からほぼ1世紀を経たが、19世後半に至っても自由の国アメリカは厄介な問題には蓋をしてきた。

奴隷制だ。

南部の経済は奴隷制をもっての大規模農園が主体であった。理念以上に実利が優先された。
自由憲法も、この問題には狡猾な解釈がなされる。

「奴隷は所用者の財産であって、憲法の適用範囲外である。」

南部で行われていることは南部の問題であり、合衆国政府としては関与したくない。
いわゆる無関心政策だ。

しかしパッチワークには必ずほころびが生じる。
南部の奴隷州から黒人奴隷が脱走してきたとする。
北部の自由州では奴隷制は認められていない。だから、もはや奴隷ではない。
しかし南部の奴隷の所用者は州政府を通じて、その奴隷の引き渡しを要求する。
放置すれば奴隷の大量脱走が生じる。南部諸州の没落につながる。

法の理念に照らして、引き渡すべきか、否か。
連邦政府としても無関心で通せなくなる。大いなる議論を招く。
南部諸州は、引き渡しは正当な財産の保全であると当然に主張する。

対して、それを認めれば、自由州を含めて、合衆国すべてが奴隷制を追認することになる。
煮え切らない対応に、南部諸州は、合衆国からの脱退も辞さない。大量脱走を食い止めるには自由州とのあいだに国境を作り出すしかない。
連邦政府が阻止するなら戦争も辞さない。
どちらつかずの対応に限界がきた。

「分かれたる家は立つこと能わず」

正と不正のあいだの中間的な立場を模索するというような計略は破綻した。そんなことは「生きてもいない、死んでもいない人間」を探すのと同じだ。
誰もが思うが誰も決して公には発言しない。

リンカーンが言明した。
「黒人を人間と思わず、野の禽獣と扱うとき、こうして呼び起こされた悪霊は、やがて逆に汝自身を裂き破るのではないか。アメリカの自由と独立との城壁をなすのはなにか。軍艦や軍隊ではない。われらの胸底に神が給うた自由を愛する心である。」

すべての人に天与の自由を愛する心。そして互いのそれを尊ぶ精神。
他人の権利を平気で蹂躙する。それは、すなわち、自分たちの独立の精神(本性)をも失することだ。

「正義は力であるとの信念を持ち、この信念にたってわれらの義務とするところを敢然と最後まで果たそうではないか。」

大統領に選出される。
南北戦争の決戦の場となったゲティスバーグにての戦没者追悼の式典。

「87年前、われらの父祖たちは、自由の精神にはぐくまれ、すべての人は平等につくられているとの信条に捧げられた、新しい国家を、この大陸に打ち建てた。」
「この国家が、この精神が、永続できるか否かの試練を受けている。」
「人民の人民による人民のための政治を地上から決して絶滅させないために、我々がここで固く決意することである。」

真実を語る政治家として世界史に永遠に輝く事業をなした。
しかし、大統領2期目の就任直後、凶弾によって死を迎える。

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リンカーンの演説は私の新刊書に収録されています。年明け1月に発売になります。Amazonで予約注文もできます。

『「正議論」講義~世界名著から考える西洋哲学の根源』
https://www.amazon.co.jp/o/ASIN/4492212531/toyokeizcojp-22/

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(紹介文)
NYコロンビア大学で100年以上の歴史を誇る名物哲学授業を徹底的に研究。そこから導きだした古くて新しい「正義論」を、古代ギリシャの哲学者プラトンとアリストテレスの対話形式で紹介する。
米国エリート教育の原点がここにある!
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(東洋経済ONLINE)
戦争、分断、格差…「力」の前に「正義」は無力なのか | リーダーシップ・教養・資格・スキル | 東洋経済オンライン | 社会をよくする経済ニュース (toyokeizai.net)

ウズィ・ヴァイル氏講演「ふれてみよう。イスラエルの文学の今」を開催しました

2022年11月17日(木)に、「ふれてみよう、イスラエルの文学の今:ウズィ・ヴァイル『首相が撃たれた日に』出版記念講演&朗読の夕べ」を、甲南大学文学部のチーム「文学、あります(代表:秋元孝文先生)」と共同で開催しました。

18時からと少し遅い時間の開催でしたが、オンラインを含めて多数の方にご参加いただき、ありがとうございました。

ウズィ・ヴァイル氏は、自身とその小説について真摯に語って下さり、心を打つ講演でした。個人的には、今回の日本語版の出版に際して、「(日本語が分からないので、)自分の小説なのに自分では表現をコントロールできない。それがどのように受け止められるか、それが興味深く楽しみだ」と話されたことが印象に残りました。

講演の後、ウズィ・ヴァイル氏と大谷賢治郎氏による朗読がありました。ブラックユーモアと愛にあふれる作品を、惚れ惚れとするいい声で朗読いただき、心地よい夕べになりました。
ウズィ・ヴァイル氏からも「毎晩寝るときに聞きたい」と言わせた大谷氏の朗読も流石ながら、ウズィ・ヴァイル氏ご自身も素敵な声でした。

最後のQAセッションでは、ご来場の皆様から様々な質問を頂きました。
ご質問の内容も興味深いものでしたが、国立民族学博物館の赤尾光春先生が、ヘブライ語で通訳してくださったので、日本語とヘブライ語が組み変わる不思議な体験を味わえる時間でもありました。「ヘブライ語は数千年の断絶を経て近年人工的に再生された言語であり、ずっと使われながら変化し続けてきた日本語とは違う」というご回答の一節に、異世界を感じました。

本講演・朗読は、YouTubeでアーカイブをご視聴いただけます。

ウズィ・ヴァイル『首相が撃たれた日に』出版記念「ふれてみよう、イスラエルの文学の今」
講演:ウズィ・ヴァイル(作家)
 日本語朗読:大谷賢治郎(演出家)
 QAセッションの通訳:赤尾光春(国立民族学博物館)
講演日:2022年11月17日(木)18時~

ウズィ・ヴァイル氏のご著作については、以下からご確認ください。
ウズィ・ヴァイル 著「首相が撃たれた日に」河出書房新社, 2022.10.26
ISBN:978-4-309-20868-8

本イベントは、KONAN プレミア・プロジェクト We Love Books 「文学、あります」のプレイベントとして開催いたしました。次年度も、甲南大学文学部と甲南高等学校・中学校の教員によるチームと甲南大学図書館が共同で、文学イベントを実施する予定です。
ぜひ、来年にもご期待ください。

(図書館:今野)

トライやる・ウィーク、3年ぶりの再開!

 11/7(月)~11/11(金)の5日間、神戸市立本山南中学校2年生3名と、神戸市立住吉中学校2年生2名がトライやる・ウィークとして図書館で業務を体験しました。
 図書館カウンターでの貸出・返却業務や、目録・受入・除籍等のバックヤード業務、ブックカバー・レビュー作成、語学学習室の展示を行いました。

 今回は2校が同じ日程での体験となり、始めは緊張していた中学生たちも最終日には学校の分け隔てなく協力して業務を行ってくれていた姿が印象的でした。
 利用者の皆さまも中学生に温かくお声かけいただくなど、ご協力ありがとうございました。
 中学生が作成したブックカバーとレビューは図書館1Fカウンター前で提供・展示しています。

鵤木 千加子(共通教育センター)『バドミントンの歴史 : スポーツの国際化・グローバル化の軌跡』

<教員自著紹介>

本書は、バドミントンというイギリス誕生のスポーツが、どのように世界へ広がり(国際化)、現在のヒト・モノ・カネが地球規模で動くもの(グローバル化)へと変化してきたのかを紐解く一冊です。

スポーツはその誕生から変化して今に至り、これからも変化していくでしょう。歴史を知ることは、未来を考えることに繋がります。スポーツ競技に取り組む人だけでなく、多くの人に読んでもらいたいと思います。

『 バドミントンの歴史 : スポーツの国際化・グローバル化の軌跡 』
■ 鵤木 千加子 著 , 大修館書店 , 2022.9
■ 請求記号 783.59//2011
■ 配架場所  図書館   1F 教員著作
■ 著者所属   鵤木 千加子(共通教育センター)

経済学部 上島 康弘先生へのインタビュー

経済学部2生 西田 純さんが、経済学部 上島 康弘先生にインタビューを行いました。(KONAN ライブラリ サーティフィケイト)

Q.本を読むことは好きですか.

A.「本による.」

 

Q.図書館はよく利用されますか.

A.「図書館による.なお,図書館ブログにアップするこのインタビューは,必要ならば図書館が行なう仕事のように思うが…」

 

Q.どんなジャンルの本を読まれますか.

A.「面白さはジャンルと無関係.」

 

Q.どのように読みたい本を探しますか.

A.「新聞の書評欄や,雑誌の,本に関する特集(『いま,読むべき本』など),本に関する本(『わたしのベスト3』,『Around the World in 80 Books』など)に目を通す.」

 

Q.先生が最近読んだ本で,気に入っているものは何ですか.

A.「この夏に読んだ本(カッコ内は感想)は,横山秀夫『クライマーズ・ハイ』文春文庫2006(主人公はなぜ判断ミスを繰り返すのか、私には理由が分かる),ジョン・スタインベック『エデンの東』ハヤカワ文庫2008(「(父親が泥棒で,母親が売春婦でも)人間は自分のすすむ道を選び,戦い抜いて勝利できる」と思わせてくれる),安嶋明『「学びほぐし」が会社を再生する-企業とファンドの組織変革物語』岩波書店2022(退職後,人を生産性で見ることをやめたいが,大学再生ファンドならばやってみたい),タラ・ウエストーバー『エデュケーション- 大学は私の人生を変えた』早川書房2020(宗教2世の解脱の苦しみ.読みながら何度も“That is only your imagination, Dad!”とつぶやいた),川崎二三彦『児童虐待』岩波新書2006(児相所長の対応よりも親の再教育と一時保護の制度に問題あり),OECD『PISA 2018 Results (Volume III): What school life means for students’ lives』OECD2020(日本の15歳の生活満足度が33カ国中32位である理由),養老孟司『子どもが心配-人として大事な3つの力』PHP新書2022(出生率の議論より,3つの力を育てる教育と子どもが幸せな社会を)など.通常,総ページ数の2割まで読んで面白くなければツンドクにする.」

 

Q.学生におすすめの本はありますか.

A.「自分で探しなさい.」

 

Q.学生が本を読むことは必要だと思いますか.

A.「必要だから読むという人には必要ない.理由は分からないが,手本になる友人には本を読んで義理堅い人が多い.サムライはスマホを見ない.」

 

感想:まず上島先生のアンサーが自分の予想していたものではなくて驚きました.「本は好きです.好きなジャンルは〇〇です.」という回答を想像していました.しかし返ってきたのは,上記の通り「本による.」「面白さはジャンルと無関係.」などです.ぶった切った回答が多く,驚きはしましたが,率直な意見が聴けたと思っています.

 インタビューをしてみて上島先生流の読み方が知ることができ,参考になることや自分にはない考えが伺えて楽しかったです.

 最後に,上島先生お忙しい中ご協力ありがとうございました.

(インタビュアー: 経済学部2生 西田 純さん