月別アーカイブ: 2023年10月

司書教諭課程 村上 幸二先生へのインタビュー

経済学部2生 Kさんが、司書教諭課程の村上 幸二先生にインタビューを行いました。(KONAN ライブラリ サーティフィケイト)

 

今回、司書教諭課程の先生でいらっしゃる村上幸二先生にインタビューさせていただきます。

 

①先生の好きな本は、なんでしょうか?

私は昔からリアリティのある内容が好きで、実話にもとづいた本が好みでした。小さい頃はもっぱら伝記を読んでいました。小学生のとき読んだ『太閤記』で、秀吉の下積み時代に信長の草履を懐に入れて温めておいたというエピソードが当時は特に印象的で、いろいろな意味で人としての生き方が学べて面白いと思いました。学校の先生が教えてくれないことも本から学ぶことができるのがいいですね。

これまで読んだ本で衝撃的だったのが、これも小学生の時に読んだ次の本です。

・『ソビエト帝国の崩壊―瀕死のクマが世界であがく』(小室直樹, 光文社, 1980年)

今の若い人には意外と思われるかも知れませんが、1980年代のソ連といえばオリンピックや軍事力で最強の国というイメージがありました。当時アメリカと冷戦の状態でしたが、子どもながらに強いものに対するあこがれのようなものがあったと思います。小学生の頃ですから部分的にしか分からなかったと思いますが、とにかくソ連が崩壊するということが書かれていて、自分はすごいことを知ってしまったという感覚でした。当時、友だちにこのことを言っても誰も相手にしてくれませんでしたが、それから10年後に本当にソ連は崩壊しました。ここから本に対する畏敬の念を感じるようになったと思います。なおこの本は2022年に復刊本がでました。

児童書にも実話に近いものがあります。次の本は著者の生涯を振り返って描かれた児童書です。

・『この楽しき日々』(ローラ・インガルス・ワイルダー, 岩波書店, 2000年)

この本を読もうとしたのは偶然というか、図書館でふと手に取った本です。開いたページがちょうど主人公が教師として働く初日の様子で、その瞬間に本の世界に引き込まれました。主人公と自分自身が重なる不思議な感覚にもなりました。大人が読んでも面白いと思います。小学校の教師をしていたこともあり、教師の生き方を描いた本は特に好きです。将来教師になりたいと思っている人におすすめです。

なお先ほど「偶然」と言いましたが、もしかしたら偶然ではないかも知れません。本との出会い方については実に面白い方法があるので、これはまた後ほどお話したいと思います。

次の本も教師の本で、ノンフィクションです。2001年に文庫本も出ています。

・『リターンマッチ』(後藤正治, 文藝春秋, 1994年)

この本は定時制高校のボクシング部顧問の先生のお話です。教師をしていると様々な壁に直面することが必ずありますが、そういった壁を乗り越える力を与えてくれる本です。

 

②先生が本を読むスタイルはありますか?

次々に新しい本を読むよりも、実は同じ本の同じ箇所を繰り返し読むことが好きで、数えきれないほど読んでいる本もあります。

 

③大学生におすすめしたい本はありますか?

ずばり学術書をおすすめします。といっても安心してください。おすすめなのはその「まえがき」です。学術書の前書きには、著者が人生をかけて研究してきた、その人生が凝縮されています。内容が難しい学術書であっても、その前書きはまた別です。自分にとって敷居が高いと思う内容の本であっても、前書きが面白いものが多くあります。学術書の前書きは、ひとつの小説と言えるかもしれません。これを読むと、人生のヒントが見つかることだってあります。なお、学術書によっては「あとがき」の方が充実しているものもあります。

 

④村上幸二先生オリジナルの本の探し方は、ありますか?

とっておきの探し方があります! まず図書館などで書架に並んでいる本を眺めます。本屋さんでもやり方は同じです。とにかく心を無にして本を眺めるだけでいいのです。そうすると本の方が自分を呼んでいる感覚になるんです。まるでおすすめの本を教えてくれるような感覚です。その本を手に取ってみて、心を無にして本をパラパラっとめくります。必ずしも最初から読むとは限りません。それも本の方が、読み始めるべきページを教えてくれるような感覚です。そこから本を読み始めます。実際こうして感動する本に出合うことが多くあります。本の方が自分を呼んでくれるということで、この探し方はおすすめです。

 

⑤司書教諭の資格は取っておいた方が良いですか? 先生が考える司書教諭の魅力を教えてください。

司書教諭は本を通して、子どもたちと触れあうことができます。例えば思春期の中高生は、小学生の時と比べると先生との距離が離れてしまいがちです。しかし本の魅力は変わりません。本の内容についての共通話題もありますが、面白い本を紹介したり本の購入リクエストに応えたりした時の心の通い合いといったものもあります。本を通しての子どもたちとの関わりは大切ですね。司書教諭の資格を持っていれば必ず司書教諭になれるという保証はありませんが、資格がなければ司書教諭になることはできませんので、もちろん取っておいた方がいいです。

 

⑥先生が司書教諭をしていて良かったと感じたことは、どんな出来事ですか?

小学校に司書教諭として勤務していた時、図書委員の指導を担当していました。ある日、図書委員の一人が、絵本の内容を劇にして発表したいと提案してきました。私はできるだけ子どもたち主体の企画を生かそうと、隣の幼稚園に依頼して劇の発表会をすることになりました。使用した絵本は『そらまめくんのベッド』(なかや みわ, 福音館書店, 1999年)です。セリフはそれぞれの役の者が言うのですが、それだけではなく実際に衣裳を着て、ベッドも段ボールで作って劇に臨みました。結果は大成功です。私は細かいことは口出しせず、ほとんど子どもたち自身にまかせて要所だけアドバイスをする形をとりました。こちらが指示をしなくても、子どもたちは積極的に企画に向けて準備をしました。衣裳も自分たちで作ってきたのです。このときの経験で、子どもが好きなことを自由にさせることは子どもの可能性を広げるのだと感じました。司書教諭をしていたからこそ実感できたことです。

 

村上幸二先生、インタビューありがとうございます。

 

【感想】

私は、③おすすめの本、④村上幸二先生オリジナルの本の探し方が心に残りました。

③おすすめの本は、なんと学術書の前書き!ということで、他の先生で同じことをおっしゃる方はいないと思います。私も学術書の前書き読もうと心に決めました。まずは私が履修している授業の先生や、私のゼミの先生の学術書の前書きを読んでみようと思います。学術書の中身は難しくて分からないかもしれませんが、前書きは、ドラマを見ているようで楽しく読めるかもしれません。初めての試みですが、読んでみたいと思います。

④村上幸二先生オリジナルの本の探し方「本が自分を呼んでくれる」というのは、素敵な探し方だと思いました。リラックスした状態で、岡本駅前の本屋さんや甲南大学図書館にふらっと入る。そして本が自分を呼んでいると思ったら、その本を手に取ってみようと思いました。この探し方は今まで読んでこなかったジャンルを読むきっかけになるかもしれません。楽しみです。早速、今日から実践してみたいと思います。

他の先生にはない、村上幸二先生独自の考え方があり、インタビューをしていて楽しかったです。

村上幸二先生、ありがとうございます。

 

(インタビュアー: 経済学部2生 Kさん

ポートアイランドキャンパス図書室にて図書委員がPOP展示を行っています

〔フロンティアサイエンス学部〕
ポートアイランドキャンパスにあるフロンティアサイエンス学部(FIRST)では、学生が「図書」「キャリア」「生協」「レクリエーション」「広報」の各委員会を作ってさまざまな活動をしています。
今回、そのなかの図書委員さんがPOPを作って図書の紹介をしてくれました。
写真はポートアイランドキャンパスの図書室で展示しているPOPです。


(写真左の列を上から)『楽園の烏』(阿部智里)、『君は月夜に光り輝く』(佐野徹夜)、『アリス殺し』(小林泰三)
(写真中央の列を上から)『あるかしら書店』(ヨシタケシンスケ)、『オルタネート』(加藤シゲアキ)
(写真右の列を上から)『研究室で役立つ 有機化学反応の実験テクニック』(J. Leonard、 G. Procter、B. Lygo)、『独学大全』(読書猿)
POPは手書きあり、パソコン打ちあり、イラストあり、思わず本を手に取ってしまうぐらいPOPの文章も上手で、「えっ、みんな本屋さんでバイトしたことあるん?」と思うぐらいすばらしいPOPが集まりました。理系学部らしく理科ど真ん中の本もあれば小説もあり、選書のバランスもすごくよい。美術が大の苦手で文系出身の身からすると、イラストが描けて理系の知識もあって文章が上手とは、なんと頼もしい学生さんだろう!と誇りに思いました。
フロンティアサイエンス学部の図書室は、事務室の開室時間内(平日9~18時、土曜日9~13時)であれば学外の方にもご案内できますので、ぜひ一度ポートアイランドキャンパスに足をお運びいただき、学生さんの力作をご覧ください。
(ポートアイランドキャンパス事務室 山本 樹)

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遠隔地キャンパスへの訪問には、必ず学生証を持って行ってくださいね!
本は取り寄せもできます。

図書館学課程(司書) 國松 完二先生へのインタビュー

経済学部2生 Kさんが、図書館学課程(司書) 國松 完二先生にインタビューを行いました。(KONAN ライブラリ サーティフィケイト)

 

今回、司書課程の先生でいらっしゃる國松完二先生にインタビューさせていただきます。

 

①先生の好きな本は、何ですか?

一冊目は、『天使のいざこざ』(ラングストン・ヒューズ著,木島始訳,晶文社)です。ラングストン・ヒューズはよく知られている黒人の詩人です。ラングストン・ヒューズは、社会で恵まれずに生きている人の気持ちを黒人の視点から詠っています。私はこの本を読むことで、本を好きになり、より読書に励むようになりました。

二冊目は、『坂口安吾 風と光と戦争と』(文藝別冊 KAWADE夢ムック 河出書房新社編)を紹介します。作品としては『堕落論』や『桜の森の満開の下』がよく知られており、若いころには、ほとんどの作品を読みましたが、この本は、三島由紀夫や中上健次など、時代時代の代表的作家の安吾に関する評論等が収録され、安吾が世の中をいかに批判的に見ていたかが、理解できる1冊です。

 

②先生の本を読む頻度は、どうですか?

若い時で多い時だと1ヶ月50冊読んでいました。今は、仕事の関係の本を読むことが多いので、せいぜい週に1冊程度ですね。

 

③先生が大学生におすすめしたい本はありますか?

移動図書館ひまわり号』(前川恒雄,夏葉社)です。大学生、特に司書課程で学んでいる人に読んでほしい本です。著者が東京の日野市立図書館で仕事をされていた時の話をまとめられたものです。私は、この本を読んで相手(図書館の利用者)が何を探しているのか考えるきっかけになりました。図書館利用者が求めているのは何か、図書館サービスの方法を考えたり、また、図書館で働くための人間関係についても学びました。

ちなみにこの本は、一回絶版になったものが復刻されたものです。初版は大手の出版社から発行されましたが、ひとり出版社のひとつである夏葉社の社長さんが、この本に感動して復刻された本です。
ひとり出版社は最近全国で多数創業されていますが、本当に世の中に出したい、読んでほしい作品だけを出版していく考え方、姿勢が好きですね。ひとり出版社の本は、おすすめです。

 

④國松完二先生オリジナルの本の探し方は、ありますか?

偶然性を大切にしてほしいです。本の背中を見て、探すのは楽しいです。世界が広がった感覚は、楽しいですよ。

 

⑤司書の資格を取るか悩んでいる大学生に向けて、司書の魅力を教えてください。

司書は、情報分析力を手に入れることができると思います。図書館にある本を評価することにより、今、よく言われているデータサイエンス力も養えることができます。また、司書は、サービス分析力を手に入れることもできると思います。相手の伝えたいことを探るために、住民とどのようにコミュニケーションするかを考えることで、サービス分析力を育てることができると思います。

 

⑥司書をしていて良かったと感じたことは、なんですか?

私は滋賀県の図書館で働いていました。私が就職したころ、滋賀県には公共図書館がほとんどありませんでした。そんな状況から市や町にひとつずつ図書館が作られていくことをサポートできたことが思い出です。図書館の中だけで仕事をするだけでは味わえない感覚でした。

 

⑦先生オリジナルの本の楽しみ方はありますか?

日本の本は海外に比べると本のつくり方がとても綺麗だと思います。日本は帯、カバーのデザイン、しおりのつくり等が丁寧ですよ。本は、文字の集まりだけではなく、帯、カバー、しおりも含めた一つの作品だと思います。私は、電子書籍も読みますし、電子書籍もっと普及すると思いますが、その一方で、紙の書籍でしか味わえない、日本の丁寧につくられた本は、好きですし、読み続けたいと思います。

 

先生、インタビューありがとうございます。

 

【インタビューを終えて感想】

最後の⑦の回答で、本は、一つの作品だというところが印象に残りました。私は、日本で出版された本しか読んでこなかったので、当たり前だと思っていたけど、丁寧に作られた一つの作品だと思いました。私は、ニュースで日本の絵本が海外でも人気だということを聞いたことがあります。それだけ、日本の本は、世界において価値が高いものだと思いました。また、これから本を探すときに、ひとり出版社の本も視野に入れようと思いました。授業の空きコマや、電車に乗るまでのちょっとした時間には、甲南大学図書館や、岡本駅前の本屋さんに寄ってみようと思いました。

 

(インタビュアー: 経済学部2生 Kさん

エントランス展示「灘五郷」

 10月4日から、図書館エントランスにて「灘五郷」をテーマに展示中です。
 灘五郷酒造組合様にもご協力もいただき、HPに掲載されている「灘五郷絵図」も大きく展示させていただきました。
 11月末頃まで 展示する予定です。ご高覧ください。

 灘五郷は、神戸市東部から西宮市にかけた5つの地域、西郷、御影郷、魚崎郷(以上神戸市)、西宮郷、今津郷(以上西宮市)からなる日本一の清酒生産地域です。

 展示している本や和古書は、甲南大学図書館が所蔵しているコレクション「金正宗文庫」のものです。
 「金正宗文庫」 は、魚崎郷の酒蔵・松尾仁兵衛商店(まつおにへえしょうてん)から、甲南大学に寄贈された和書・和古書のコレクションです。文庫名「金正宗」は、松尾仁兵衛商店が製造していた清酒の銘柄から採りました。当時の”松尾仁兵衛 “さんが、本学のご卒業生というご縁でお譲りいただきました。
 松尾家の遠祖は、お酒の神様を祭る京都の松尾大社の社人・松尾重尊とされ、戦乱を避けて魚崎に縁づいたと伝わっています。魚崎の松尾家も神道に篤く、魚崎郷の氏神「魚崎八幡宮神社」は、松尾仁兵衛商店が土地を寄進し、蔵に隣接して建立されました。「金正宗文庫」にも、神道や国学に関するものが多く収蔵されています。