エントランス展示更新 ~感染症の歴史~

 新しい年が始まりました。新型コロナウイルス感染症はまた感染拡大傾向にあり予断を許さない情勢ではありますが、だからこそ体調管理をしっかりとして、明るい気分で元気に過ごせるように頑張っていきたいところです。

 2020年はコロナに始まりコロナに終わるといった感じの1年でしたが、世界にとっても日本にとっても、こういった状況は初めての経験ではありません。
 今回更新したエントランス展示は「感染症の歴史」ということで、多様な感染症について世界と日本の歴史を年表で比較したり、関連する資料を展示しています。
 いろいろなシーンで話題になったため知っている学生も多いと思いますが、スペイン風邪、ペスト、天然痘やコレラなど、人間社会は様々な疫病、パンデミックを経験してきており、どの病も何年にもわたって大きな被害をもたらしてきました。
 しかしながら、多くの人々の努力によりそれらを乗り越えてきた歴史があり、そのうえで現在の私たちがあります。
 ただウイルスを恐れ鬱々と過ごすのではなく、私たちはいずれそれらを乗り越えるだろうということを認識し、未来へ向かっていく。過去を知ることはそのための手助けとなるでしょう。

 今回の展示は3月まで継続予定です。ぜひ一度図書館1階エントランスに足を運んでみてください。また、展示されている本を借りたいときは、図書館2階ヘルプデスクにお申し出ください。
 なお、 『KONAN TODAY』No.58で「甲南学園の新型コロナウイルス感染拡大防止対策」について特集記事でまとめられており、あわせて展示・配付していますので、こちらもぜひご覧ください。

京極 夏彦 著 『巷説百物語』

 

文学部 2年生  畑田 亜美さんからのおすすめ本です。(KONAN ライブラリ サーティフィケイト)

書名 :  巷説百物語
著者 :  京極 夏彦
出版社:角川書店
出版年:1999年

 百物語とは、古来暗い夜に青い紙を貼った行燈に百筋の灯心をともして語る。1つ物語を終えるごとに灯心を1つずつ引き去っていくと、座中が次第に暗くなり、青い紙の色が様変わりして恐ろし気な雰囲気となる。それでもなお語り続けると必ず怪しい出来事が起こると言われている。有名な百物語小説の1つである本書はその特性を受け継ぎながら、謎解き的な素養も持ち合わせている。

 百物語ということもあり、本書も7つの話からなる。舞台は江戸時代末期、過去の出来事による怨恨を晴らすことを望む者が小悪党たちに解決を依頼する。主なメンバーは小股潜りの又市、山猫廻しのおぎん、考者の百介、事触の治平だ。彼らは様々な依頼を見事な手腕でこなしていく。内容は現代のように犯人を捕まえるわけではない。犯人の罪の意識を高め自滅させたり、うまく立ち回り同士討ちさせたりする。その場を用意するために彼らは情報を集め、犯人のもとに取り入る。彼らは犯人の近辺に紛れ込んで仕えていたり、客として紛れていたりする。一部のメンバーがそうであれば、他方は被害者の霊や化け狐を演じて見せる。

 私は特に種明かしの場面が好きだ。作者は誰がどのような役割を担当しているかを依頼が完了するまで教えてくれない。そもそも依頼内容も教えてくれない。そのため、誰がどんな役割を担っているのか、依頼内容は何なのかを考えながら読むのが面白い。普段推理小説を読むことはほとんどないので予想には慣れていない。そのためか予想が当たったことはない。反対に、普段推理小説を読む人でも、現代小説とは異なるので当てられないかもしれない。見えそうで見えない真実を探しながら読んでいくのはもちろん楽しい。しかし、流れに任せて読んでいくのもまた楽しいだろう。読む人によって楽しみ方を変えることのできる1冊である。

(KONANライブラリ サーティフィケイト学生企画)『本に「ふれる」本。』第1回

KONAN ライブラリ サーティフィケイトの学生企画
『本に「ふれる」本。』第1回

初めまして。

 本日から、ライブラリサーティフィケイトの企画としてブログ掲載をさせて頂く法学部3年のK・Rです。1月、毎週火曜日にブログ内で連載を行っていきます。

 サーティフィケイト企画のテーマ名は、『本に「ふれる」本。』としました。これは、本をあまり読まない方でも気軽に本に触れてもらいたいという気持ちからつけさせて頂きました。お時間がありましたら、是非、読んで頂ければと思っております。

 今週のおすすめする本は、若松英輔さんによる『本を読めなくなった人のための読書論』(亜紀書房、2019)です。

 読書術や読書論といえば、速読、暗記や知識を身に付けるための工夫と想像される方が多いと思います。

 しかし、そのような想像とは違い、読書に向かい合うための一冊です。

 近年、SNSやインターネットが発達し、本に触れなくなった方や、忙しい日々の中で本が読めなくなってしまい、心苦しい思いをしている方が多いのではないでしょうか。

 この本は「本が読めないときは、無理をして読まなくてもよい」、「全部読んでもよいし、読まなくてもよいのです。大切なのは、言葉に出会い、言葉を糧にできるかどうかであって、多く読むことではありません。」と語りかけてくれます。この言葉に、私は心が軽くなったように思いました。

 KONANライブラリサーティフィケイトにエントリーしている、私が言っても説得力が欠けてしまいますが、本を無理に読む必要はないと感じました。

 このような無理は「読む」という行為を苦行に変えてしまっています。本は楽しんで読むものです。

 なので、ゆっくりと自分のペースで、自分なりの読み方で、本とふれあってみてはどうでしょうか。

 少しずつ自分と本を慣らしていく、準備体操のような一冊としてこの本をおすすめします。

 次回は、「ちょっと変わった本とのふれあい方」を教えてくれる一冊をご紹介します。

 また、次週お会いしましょう。

 法学部法学科3年 K・R

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【紹介した本】

本を読めなくなった人のための読書論』、若松英輔、亜紀書房、2019

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図書館に所蔵している本は、連載期間中、図書館入館ゲート前の特設コーナーで展示しています。
貸し出しもできますので、お手に取ってご覧ください。(本が貸出中の場合は、MyLibraryから予約できます。)

2020年度 KONANライブラリサーティフィケイト取得申請受付中です!

KONANライブラリサーティフィケイトにエントリーされている皆さまへ

2020年度のKONANライブラリサーティフィケイトの取得申請期間は、2021年1月4日(月)から1月30日(土)までです。
今年度、取得申請をされる方は、図書館2階ヘルプデスクにお越しください。
申請手続きについて、詳しくはこちらをご確認ください。

登学しての申請が難しい方は、今年度は郵送での申請も受け付けますので、お問い合わせフォームからご一報ください。
図書館から折り返しご提出いただきたい書類等のご連絡をします。

要件を満たしているかわからない、進め方がわからない、とお悩みの場合も、ご遠慮なくお問い合わせください。
あきらめずに、もうすこし、頑張れ!

 

※KONANライブラリサーティフィケイトとは、読書習慣及び情報探索力・表現力・行動力・企画力などを身につけた学生を評価する制度です。

稲盛 和夫 著 『生き方』

経済学部  4年生 Sさんからのおすすめ本です。(KONAN ライブラリ サーティフィケイト)

書名 :  生き方
著者 :  稲盛 和夫
出版社:サンマーク出版
出版年:2014年

人は生きているうえでどうしても他人に嫉妬してしまったり、己の利益を優先して行動してしまったりする。このようなことがなく心に余裕を持つにはどうすればよいのだろうか。

この本は京セラやKDDIを創設した稲盛和夫氏の考え方や心がけていることについて書かれた人生哲学の本である。仕事に対しての心の持ちようや困難に直面した時の考え方が、稲盛氏の実体験を通して書かれているので非常に説得力がある。

その中でも「同じような能力を持ち、同じ程度の努力をして、一方は成功するが、一方は失敗に終わる。この違いはどこから来るのか。―中略― 願望の大きさ、高さ、深さ、熱さの差からきているのです。」という言葉がとても印象に残った。確かに、私も就職活動を通してここで働きたいと強く思ったところとそうでないところでは結果が異なった。こうなりたい、そうでありたいと強く切望することでその願いをかなえるために自分自身の行動が変わってくる。能力だけではなく思いの強さも結果に影響するのだ。

また、稲盛氏は仕事への意欲がなくなった場合にどうすればよいのかも説いている。稲盛氏いわく、どんな仕事であってもそれに全力で打ち込んでやり遂げれば、大きな達成感と自信が生まれ、また次の目標へ挑戦する意欲が生まれてくる。そうなれば、どんな努力も苦にならなくなり、すばらしい成果を上げることができるそうだ。

この本はよく読んでみると当たり前のことではないかと感じることが多々ある。例えば、一生懸命働くことや感謝の心を忘れないことである。しかし、これらの当たり前を現代の人々は忘れているからこそ心に響き納得させられるのだろう。特に2020年は新型コロナウイルスの影響で例年と異なる部分が多く、リモートワークやオンライン授業、マスクの常時着用など変化に対応しなければならない1年であった。今までできていたことができなくなり、不満やストレスを感じる今だからこそ自分の考え方や生き方を見つめなおす良いきっかけになるのではないかと思う。

[藤棚ONLINE]国際言語文化センター・MACH Thomas先生推薦『Just Enough: Lessons in Living Green from Traditional Japan(江戸に学ぶエコ生活術)』

図書館報『藤棚ONLINE』
国際言語文化センター・MACH Thomas先生推薦

Do you enjoy studying history? Some people will answer “yes” to this question, but I think most people will answer “no” or “not much.” In other words, history is probably not a very popular subject for most people nowadays. That’s too bad, and I guess it is caused by how it has typically been taught. Too often, students view history as mostly just names and dates and events that they feel pressure to memorize. An episode in history, though, can suddenly become fascinating for us when we find a teacher or a book that concretely shows us how something from the past can connect to us now and help our modern lives.

I felt this sort of jolt of fascination when I first came across Just Enough, a book about Japan’s Edo Era. The author is an architect (建築者)who is mainly concerned about sustainable living(持続可能な暮らし方). So, he approaches Edo Era history with a very specific purpose in mind: he wants to show us practical techniques and lifestyle hints that we can rediscover from the Edo Era. He then helps us to see how those things could help us to live in more eco-friendly ways today.

Most history books focus mainly on powerful or famous people. When you think of the Edo Era, you probably first imagine samurai, right? But, of course, samurai were actually only a small percentage of the overall population at the time. Just Enough does include a chapter on the lifestyle of samurai, but most of the book focuses instead on things like the home design, neighborhood layout, and daily lives of ordinary people. Where did they get their drinking water from? How did they get their shoes repaired? What did they do with the ash from their cooking stoves? How often did they bathe? And why did Japanese homes develop to include engawa in their design? And sliding doors? And tatami? These are the sorts of lifestyle and design questions that the book explores.

Here is the most important point: The reason the author looks so carefully at ordinary Edo lifestyle is because the Edo Era was a time of relatively large population combined with limited resources. A big reason for resource scarcity was the sakoku policy, meaning Japan was mostly cut off from global trade and so people had to figure out how to make their lives better with the limited goods and resources available to them. Since Japan is a mountainous island country that hardly has enough farmland to feed its people, this was a huge challenge! Throughout most of world history, when you mix these two conditions together (many people and scarce resources), the end of the story is usually tragic – things like devastating wars, out of control pandemics, or enslavement. So, especially from a sustainability perspective, the Edo Era is one of world history’s very few success stories. Despite scarce resources, people at the end of the Edo Era were generally more healthy, better fed, better educated, and living longer compared to the beginning. Also, the forests had been expanded and the farmland had become more fertile than before.

How did Edo society generally manage to improve despite all the limits? This is the key question that Just Enough explores. And the reason it is so important for us today is because it is the same challenge we now face on a global scale. As world population grows and people consume more and more, environmental damage is increasing and we are feeling the limitations of global resources. How can we reverse the negative trends and actually improve our lives and our environment despite the limits? Just Enough is one history book that can inspire us to think of new solutions based on traditional know-how. At the very least, it will help you to rediscover the Edo Era by helping you to look at it through a new lens – the lens of sustainability.