2.おすすめの本」カテゴリーアーカイブ

益澤彩先生(法学部)『君たちはどう生きるか』

☆新入生向けの図書案内

著者: 吉野源三郎
タイトル: 君たちはどう生きるか
出版者: 岩波書店
出版年: 1982
配置場所: 図書館 1階特設
請求記号: S081.6/青158/5

 新入生の皆さん、ご入学おめでとうございます。今回、入学したばかりの皆さんに、次の一冊を提示してみたいと思います。
  吉野源三郎『君たちはどう生きるか』
  (岩波書店、1982年(岩波文庫・青158-1)) 
本書は、1937年に新潮社から『日本少国民文庫』第5巻として出版された同名の本を底本としたもので、さらに、丸山真男による「『君たちはどう生きるか』をめぐる回想」(初出・世界1981年8月号)やその追記も収録しています。そして、今でも、幅広い年齢層の人々に読まれています。
 この『君たちはどう生きるか』の問いかけるものは、その題名の示すとおり。もし、今、少しでも関心を持たれたら、さっそく一読されたらよいのではと思います。
 長いようで短いといわれている大学生活です。そのような中で皆さんがなるべく多くの本に出会うことができるよう、心より願っています。
甲南大学図書館報 藤棚(Vol.30 2013) より

岡田元浩先生(経済学部)「大学時代の読書」

☆新入生向けの図書案内 
 私は今でこそ経済学部の教員であるが、大学学部時代は文学部生だった。読書好きだが、他にさしたる取得も関心も無かった私は、大学生でなければできないことをやっておこうと考え、手当り次第に本を読んだ。文芸批評家の小林秀雄が学生時代に10冊以上もの本を同時に読んでいたとの話に刺戟され、自分もこれを実践してみようと思ったのだ。まず起床したら朝食前に1冊、食後の通学前に1冊、通学途中の電車内で1冊、講義時間の合間に2~3冊、帰宅途中の電車内で1冊、夕食前に1冊、夕食後・就寝前に2~3冊といった具合に。ジャンルも、カントやヘーゲルの哲学書のドイツ語原典から、まったくの専門外でちんぷんかんぷんの理工学書、さらにはここで言えない怪しげな本に至るまで、さまざま。読み方もいろいろ。川端康成の『伊豆の踊子』や太宰治の『ヴィヨンの妻』などの小説は、筆致の美しさに魅了され、全文を写本したほどだが、数百ページに及ぶ書物を1時間程度で飛ばし読みしたこともある。
 かれこれ30 年前にもなるこうした経験を振り返ってみて、その後の自分にどう役立ったのか、正直よくわからない。多様な分野の本を読んだが、お世辞にも今の私は幅広い知識・教養の持ち主だとはいえない。当時読んだ数多の書物の内容も、そのほとんどが記憶から失われてしまった。ただ、日々の雑事に追われ、読書の大半がビジネスとしての自己の研究上のものに限定されてしまった現在、30年前の読書体験は、やはり当時想い抱いたように「暇な(unoccupied)」大学時代でなければできないことだった。そして、バイトや就活に翻弄され、大学生にとって最大の、そして不可欠な特権であるべき「閑」(周知のように、ギリシャ語によれば scholar とは「閑人」のことである)さえも奪われている昨今の大学生を見るにつけ、自分は佳き時代と境遇の下に生まれ育ったと感じずにいられないのである。
甲南大学図書館報 藤棚(Vol.30 2013) より

中島俊郎先生(文学部)「乱読のすすめ」

☆新入生向けの図書案内 
 読書には読者の数だけ読み方があるでしょう。それでも誤解を恐れずにいえば、読書の要諦は乱読につきると思います。乱読とは好きなものを、脈絡なく手当たり次第に読むことです。日常生活が細分化され、学問の専門化がいきとどいている現代こそ、ひとつの全体像を把握するためには乱読という読書法が必要なのです。全体の見通しなくして、個は何も見えてきませんから。
 乱読の強みは読む主体である読み手が中心にいることです。学問、研究の専門化が陥りやすい弊害は、ひとり言に終始して、やがてくり言に堕していく危険をはらんでいます。つまり、精神の自由が硬直してしまうのです。精神を活性化させるためにはつねに対話を交わす精神の開放を忘れてはなりません。
 読書という、読者と作者の対話の場で相互に作用し合うことなくして、知の新しい地平が拓けるはずがありません。読者とは、作者から何かを教えてもらう受け身ではなく、自ら意味をつむぎ出していく主体なのです。そもそも読書は作者と読者が意味を織りなす共同作業なのですから。
 乱読は統一性、一貫性に欠けて自己中心的で閉鎖的な世界にこもりがちであるという批判をよく受けます。たしかにそうした欠点があるでしょう。だが、そうした短所をうわまわる長所が乱読にはあります。さらに自己の好みに応じて気の向くものだけを猟歩していくから断片的なものしか身につかないととがめられますが、こうした断片で終わる知識の集積はあなどれないものがあります。断片など耳学問に過ぎないと否定されてしまいますが、耳学問は意外と頭を活性化させるのです。知らないことを聞いた時に覚える新鮮な驚きを思い出して下さい。耳学問は頭脳内で連鎖作用を起こします。この連鎖作用によって自分が追究している全体像が徐々に結晶していくのです。
 読書とは元来、自分のなかに未知を読み込む営為なのですから、自己本位で読みすすむしかない。だから未知を読むのは自己を読み込むことと同意なのです。乱読が創造的読書になるゆえんです。
甲南大学図書館報 藤棚(Vol.30 2013) より

水野健一先生(理工学部)「『「大発見」の思考法- iPS 細胞vs. 素粒子-』山中伸弥,益川敏英,文芸春秋」

☆新入生向けの図書案内 

著者: 山中伸弥 益川敏英
タイトル: 「大発見」の思考法 : iPS細胞vs.素粒子
出版者: 文藝春秋
出版年: 2011
配置場所: 図書館 1階開架一般
請求記号: 404//2090

 今年入学され、新たに大学生活を始めようとしている皆さん。
 将来にたいして大きな夢をもって勉学に挑むにあたり、本書を推薦いたします。著名な先生方が自然科学における研究に挑んだ成功例として読んで頂きたい。本書は、2012 年のノーベル医学・生理学賞受賞者である山中伸弥京都大学教授と、2008 年度のノーベル物理学賞の受賞者である益川敏英京都大学名誉教授(現在京都産業大学教授)が両者のノーベル賞受賞にまつわる大発見に至るお話やエピソードを対談形式で綴った大変興味深い内容です。
 どちらの先生の研究内容も説明するには専門用語が多く出現して、馴染みがない話題と思われるかもしれませんが、本書は素人にも分かりやすい対談形式で内容が解きほぐされています。それぞれの「謎を解く」に至るブレークスルーの瞬間をこの本より雰囲気だけでも体験してください。両先生のお話を聞いてしまえば、「コロンブスの卵」と思えます。しかし、その間の努力や発想の展開は誰にでも真似の出来るものでないことはすぐに想像できます。大学での新たな学生生活を始めるに当たり、この本から新たな気力と勇気を得て、決意新たに出発しましょう。そして、皆さんも「自然界の謎解きに参加しよう」という気持ちが起こることを期待しています。
 最後にもう一言、益川先生は、元名古屋大学理学部教授・坂田昌一先生の門下生です。坂田先生は、本学の前身である旧制甲南中学・高校のご出身で、素粒子理論物理学者の第一人者です。本書には、研究室はみんな対等で自由な雰囲気であったと記されています。そんな校風は本学に今なおどこかに残っていて欲しいと願っています。
甲南大学図書館報 藤棚(Vol.30 2013) より

梨木香歩著『エストニア紀行 森の苔・庭の木漏れ日・海の葦』

『エストニア紀行 森の苔・庭の木漏れ日・海の葦』 梨木香歩著
図書館2階 中山文庫 915/N

エストニアという日本人にとっては馴染みの薄い国の紀行。
エストニアの人々の祖国への深い愛情を静謐を感じさせる文章で綴られています。

沢木耕太郎著『深夜特急』

『深夜特急』 沢木耕太郎著
図書館2階 中山文庫  915/SA/1~3 

 インドのデリーからイギリスのロンドンまで、バスだけを使った旅行の物語。『第一便』から『第三便』まで3冊あります。
 香港、バンコク(タイ、マレーシア、シンガポール)に始まり、ユーラシア大陸を横断。ロンドンに至るまで、バックパッカーとして旅をしていきます。自分自身を確かめる旅であり、様々な出会いが描かれています。
 『最終便』として出版された続編の『旅する力 ― 深夜特急ノート』も、中山文庫にあります。こちらは、「一人でも多くの人にバックパッカーを体験して欲しい」との著者の願いによるエッセイです。