月別アーカイブ: 2021年5月

[藤棚ONLINE]文学部・安武留美先生 推薦『夢酔独言/Musui’s Story』

図書館報『藤棚ONLINE』
文学部・安武留美先生 推薦『夢酔独言/Musui’s Story』

 最近話題を呼んだNHK BS ドラマの「小吉の女房」をご存知ですか?

 このドラマは、勝海舟の父親小吉が、自分の歩んだハチャメチャな人生を猛反省し自ら反面教師となるよう子孫に書き残した話がベースになっています。勝海舟の伝記や研究書で引用され『海舟全集』にも収録されたというこの話は多くの人の目にとまり、編集されて勝小吉の自叙伝『夢酔独言』として日の目を見ました。

 BSドラマで古田新太演じる小吉は、原作を基に書かれた子母澤寛の小説『父子鷹』に出てくる「正義の味方」的要素の強い善良な人物ですが、『夢酔独言』から浮かび上がる小吉と家族の姿はもっと複雑です。小吉は、特権階級である下級武士の妾の子として生まれ、幕末の大きな社会変化に対応できない旧態依然の身分社会で永久的失業者として生きていかねばならず、決死の覚悟でその不運や社会の矛盾に抗う不良者です。またドラマでは沢口靖子演じる良妻賢母の「小吉の女房」が原作に登場することはほとんどなく、唯一の逸話には、小吉が他の武家の女性に惚れ込んだ時、彼女が自分の命と引き換えにその女性の家族と談判しようと申し出る様子、そして小吉がその妻の苦労と献身に周りの助言で気づくことが書かれています。一家は幕府から授かる扶持(年金)だけでは極貧の生活を強いられるのに、小吉は武士、町人、農民、乞食、ならず者の境界線を行き来しながらやりたい放題、つまり『夢酔独言』は今の常識−特にフェミニスト的視点−からするととんでもない話ばかりです。それでも、矛盾に満ちた社会の中で一本筋を通しながら着実に自分の居場所を築いていった小吉とその周りの人々の姿には、考えさせられたり気づかされたりすることも多いのです。

 ここに挙げたのは入手しやすい勝部真長氏の編集した当時の文体そのままの『夢酔独言』です。勝部氏による現代語訳版は絶版なので、Teruko Craig氏が平易な英語に訳したMusui’s Storyも挙げておきます。実はMusui’s Storyはアメリカの大学の(学部生向け)日本史授業の副読本として人気があり、古文書に読み慣れない方々にお薦めします。

谷川浩司 著 『谷川浩司全集 』

理工学部  1年生 石山 遥希さんからのおすすめ本です。(KONAN ライブラリ サーティフィケイト)

書名 : 谷川浩司全集
著者 : 谷川浩司 著
出版社:毎日コミュニケーションズ
出版年:1994年

兵庫県神戸市出身で終盤戦の寄せが早いことから「高速の寄せ」と呼ばれた谷川浩司先生による自戦記本です。一つ一つ丁寧に谷川浩司先生が解説、さらに当時の心境など余すところなく語ってくれている本になっています。
谷川浩司ファンや将棋中級者以上の方におすすめできる本です。

50冊多読チャレンジ 達成者インタビュー

50冊多読チャレンジ 達成者インタビュー
飯塚華乃(いいづか かの)さん
文学部社会学科 3年次生

 2021年5月15日に『多読チャレンジ』50冊を達成されました。
『多読チャレンジ』にエントリーしてからわずか1ヶ月弱での読破です! 

 大学に入学してから、語学学習室内の『多読チャレンジャー募集』のポスターを見て興味を持っていましたが、1年次生の時は忙しく、2年次生はコロナウイルス感染症の影響により断念されました。

 3年次生になった今年、英語克服のために『多読チャレンジ』に挑戦することにされました。就職活動が6月に解禁されるので、その前に読破を目指されたそうで、図書館や自宅、通学時間を活用して読み進め、今までに日本語で読んだ事がある絵本や児童書を中心に、50冊達成されました! 

 以下は、ご本人のアンケートによるものです。


○『多読チャレンジ』達成の感想を教えてください。または、『多読チャレンジ』達成の為に工夫した事を教えてください。

―― 最初は50冊も読めるのか不安でしたが、だんだん慣れていきました。
工夫したことは、積極的に図書館に通って本にふれる回数を増やしたことです。

○『多読チャレンジ』を終えて実感した効果を教えてください。

――英語の文を読むスピードが速くなりました。また、英語に対する苦手意識がなくなりました。

○チャレンジする図書はどのように選びましたか?

――1度日本語で読んだことがあるものや、興味をひかれたものを選びました。
6月までに50冊達成を目標にしていたので、レベル0~2のものを中心に読みました。

○現在チャレンジ中の『多読チャレンジャー』へメッセージをお願いします。

――最初は難しいと思いますが、慣れてくるととても楽しいです。
苦手意識のある方はレベル0からはじめて、徐々にレベルを上げていく読み方をするとよいと思います。


 甲南大学図書館では、多読チャレンジャーを随時募集中です。
 英語多読学習に興味のある方は図書館1階カウンターでエントリーしてみてください!
 達成すればKONANライブラリサーティフィケイトの2級以上の要件にも適用されますよ!

文学部 佐藤 泰弘先生へのインタビュー

文学部 3年生 畑田 亜美さんが、文学部  佐藤 泰弘 先生にインタビューを行いました。(KONAN ライブラリ サーティフィケイト)

Q.どれくらいの頻度で本を読まれますか。

A.少し前までは週一冊くらいは読んでいました。今は月に一冊くらいです。

 

Q. 図書館にはよく行きますか。

A. 基本的に行きません。本は図書館で借りるのではなく、買うようにしています。現在は読むのに時間がかかるので、買った本が結構溜まっています。学生時代は読み始めて面白くなかったとしても最後まで読みましたが、今は読むのをやめるようになりました。

 

Q. 書店にはどのくらいの頻度で行きますか。

A. 学生時代は毎日行っていましたが、現在は週に3回くらいです。閉店してしまいましたが、京都の銀林堂という書店が好きでした。現在はくまざわ書店の四条烏丸店や大垣書店の本店の選書が好きです。作家買いしていることが多いです。

 

Q. 最近読んだ本で気に入っているものは何ですか。

A. 森見登美彦や小松左京の『果てしなき流れの果てに』です。

 

Q. 大学生時代にはどのような本を読んでいましたか。

A. 何でも読んでいました。中でも多かったのはSFや長編小説です。作家では神林長平や村上春樹、翻訳ではアーサー・クラークが好きでした。『文藝』の新人賞を受賞した作家はたいてい読んでいましたが、現在はそうでもないです。川西蘭はデビュー作から買っていましたが、作風が変わってからは読まなくなりました。

 

Q.現在の分野を専攻するきっかけとなった本はありますか。

A.戸田芳実『日本領主制成立史の研究』です。その他では保立道久や黒田日出男です。これらのイメージの豊かな書きぶりに惹かれました。

 

Q.研究室にはどれくらいの本がありますか。

A.16700冊以上の蔵書の3分の1ほどがあります。コアな専門領域の本は自宅にあります。研究室移動時に整理したので、どこに何があるかは把握しています。本は基本的に一度しか読まないので、どんどん溜まっていきます。

 

Q. 大学生におすすめしたい本は何ですか。

A.最近多い系統であやかしなら西條奈加の『千年鬼』、食べ物系なら瀬尾まいこの『戸村飯店 青春100連発』です。

 

感想:自身のゼミの先生であり、本も似たようなジャンルに興味があるのではないかと予想していたので全体的に意外な点が多くありました。

特に専門書は借りないということと、漫画も読まれるということに驚きました。やはり本の好みは聞いてみないとわからないのだと感じました。

 

< 佐藤 泰弘 先生おすすめの本>

つか こうへい 著 『広島に原爆を落とす日』 光文社 , 1998年

(インタビュアー:文学部  3年  畑田 亜美  )

(KONANライブラリサーティフィケイト学生企画)『#おうちで読書』

KONAN ライブラリ サーティフィケイトの学生企画
『#おうちで読書』

思いがけずに増えてしまった「おうち時間」を利用して、読書をしてみませんか?
今が、これまで読んだことがないジャンルの本や、時間がないと読めない本に挑戦するチャンスです!

甲南大学図書館公式Twitterで、毎週月水金にハッシュタグ「#おうちで読書」を付けておすすめの本を紹介します。
みなさんも、自分の推し本や、今読んている本を「#おうちで読書」を付けてツイートしてください。

期 間:2021年 5月12日(水)~6月25日(金)
企画者:文学部3年  畑田  亜美

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甲南大学図書館も、4月からTwitterをはじめました。
まだ慣れないツイートにどきどきしていたところ、さっそく、ライブラリ サーティフィケイトに参加されている畑田さんから、Twitterを活用した企画が届きました。

企画者の畑田さんは、サーティフィケイト1級の要件でもある読書記録100冊をすでにクリアし、語学学習室の『多読チャレンジ』でも洋書100冊を読んでいる強者読書家です。
この企画が、皆様と本の新しい出会いになることを期待しています。

ぜひ、#おうちで読書 を応援してください!

<追伸>
図書館は、本の郵送貸出も行っています。
来館が難しい方は、ご活用ください。

富樫 公一 (文学部・公認心理師養成センター)『当事者としての治療者:差別と支配への恐れと欲望』

 

 <教員自著紹介>

「人の心を支えたい」「カウンセリングをやりたい」――そう思う人の心の中に、他者を支配し、モノのように動かしたいという欲望はないでしょうか。他人を分析し、「あの人はおかしい」とラベルを貼って安心したい思いはないでしょうか。

この本は、対人援助職の人たちの心に潜む、そうした心の隙間について論じたものです。対人援助に携わる人は、ほとんどの場合は善意で相手のために仕事をしようとしています。その姿に偽りはないでしょう。それでも、心にちょっとした隙間風が吹くことがあります。それに自覚的であるには、どうしたらよいのでしょうか。皆さんの意見を聞かせてもらえればと思います。

■ 『当事者としての治療者 : 差別と支配への恐れと欲望
■ 富樫公一著 , 岩崎学術出版社 , 2021.4
■ 請求記号  146.1//2407
■ 配架場所  図書館   1F 教員著作
■ 著者所属 富樫 公一 (文学部・公認心理師養成センター)