森 絵都 著 『カラフル』

 

文学部  3年生 Tさんからのおすすめ本です。(KONAN ライブラリ サーティフィケイト)

書名 : カラフル
著者 : 森 絵都
出版社:文藝春秋
出版年:2007年

本学で所蔵している本はこちら⇨ 森 絵都著 『カラフル』講談社 , 2011年

自分で初めて買った小説を思い出せるだろうか。私にとって「カラフル」はそんな一冊である。

死んだはずの自分の魂が抽選に当選したことにより、本来なら生まれ変われるものの生前の過ちのせいで輪廻のサイクルから外れた「ぼく」が、自殺を図った中学生である小林真の体を借りることで、天使と共に、生前に自分が犯した過ちを探るという物語である。

まるで児童文学のようなファンタジーである物語には、リアルな社会問題を抱えた登場人物たちが描かれている。ユーモアある在り得ない設定により、それが優しく描かれているため、そのバランスこそが幅広い年代の人々に親しまれ続けている理由ではないだろうか。

主人公である「ぼく」には記憶が無く、そんな状態で突然知らない環境の中へ放り込まれるわけだから、その手探りで人間関係を図りながら宿主である小林真という人物像を探そうとする姿は、楽しみながら気軽に読み進めることができる。あまりにもどうしようもない人間であった小林真を変えるために奮闘する姿も、その初々しい努力にはどこか惹きつけられるような魅力を感じるだろう。そんな中、立て続けに辛い出来事が「ぼく」を襲う。そして、10代という多感な時期に生きる登場人物たちは、その不安定な気持ちを吐露し合っていくのである。そこからは、薄暗くもどこか共感できるような感情が描かれており、言葉の一つ一つが鮮明かつ印象的に心に残るのではないだろうか。

そして、「ぼく」は本来の目的である生前の過ちを思い出すのである。
読了後余韻として残るのは、「カラフル」というタイトルの意味と、数々の名言である。

当たり前に生きる日常が、少し違った見え方をするようになるかもしれない。
まだ読んだことのない方にはぜひ一度手に取って頂きたい名作である。

尾形 真実哉 (経営学部)『若年就業者の組織適応:リアリティ・ショックからの成長』

<教員自著紹介>

本書は,企業で働く若手社員に焦点を当て,リアリティ・ショックなどの適応課題をいかに乗り越え,一人前に成長していくのか。また,若手社員を上手に適応させるための会社や職場の働きかけにも焦点を当て,若手社員の組織適応を質的データと量的データを用いて丹念に分析しています。

企業の人事担当者や管理者だけではなく,これから社会に出る学生も多くのヒントが得られるはずです。

下記、本書のレビュー記事になります。併せて参考にして下さい。
https://www.rosei.jp/jinjour/article.php?entry_no=77804

■『若年就業者の組織適応:リアリティ・ショックからの成長 
■ 尾形 真実哉 著 , 白桃書房 , 2020年2月
■ 請求記号  336.4//2576
■ 配架場所  図書館   1F 教員著作
■ 著者所属  尾形 真実哉 (経営学部)

 

<尾形先生お薦めの本>

中原淳 編(2017)『人材開発研究大全』東京大学出版会.
金井壽宏・鈴木竜太 編(2013)『日本のキャリア研究―組織人のキャリア・ダイナミクス―』白桃書房.

【学生対象】本の郵送貸出と 文献複写の郵送サービスを開始しました!

📖 学生の皆さまへ 📖

図書館では、学生の学修を支援するため 5/7(木)より、休館中の新たなサービスとして、 本の郵送貸出と 雑誌のコピーの郵送サービスを開始しました。(無料です。)

本の貸出の送料はかかりません。返却は6/15(月)ですが 通学ができるようになってから の返却で構いません。是非、自宅での学びの一助としてお役立てください。

📚 詳しくは、こちら

5/7(木)からスタートしたサービスですが、5/15(金)現在、既に約140名の申し込みがありました。通常は、会議や来客で利用している館長室を作業場として、出来るだけスムーズにお届けできるよう現在限られた人員体制ではありますが、職員一同、汗水たらして頑張っています!

お申込み中の皆さま、お届けまでもう少々お待ちください!

 

学外から利用できる電子書籍もあります。☞ 📚 詳しくは、こちら 

読むことで、目から鱗が落ちる本が見つかるかも? ぜひご活用ください。

 

KONANライブラリサーティフィケイトの皆さん、これからエントリーしようと思っている方、外出自粛の今!お家で本を選んで読める絶好のチャンスです🎵

皆さんが将来、社会に出て働くようになると、こうしたまとまった静かな時間はなかなかありません。

読書をするのも良し!家族と一緒にゆっくりと食事や話をするのも良し!爽やかな気候になってきたので散歩やジョギングをするのも良いかもしれません。

ピンチはチャンスと前向きに捉えてぜひ、知的好奇心を最大限に発揮して、限られた行動範囲のなかでも今しかできない自分だけの時間を作ってもらいたいと思います。

図書館では、頑張っている皆さんをいつでも応援しています。分からないこと、不安なことがあればメールにて、いつでも相談してください。

[藤棚ONLINE]図書館長・笹倉香奈 先生(法学部) 推薦『Factfulness:10の思い込みを乗り越え、データを基に世界を正しく見る習慣』

図書館報『藤棚ONLINE』
図書館長・笹倉香奈先生(法学部) 推薦

 皆さん、こんにちは。
 新しい年度が始まりました。大変な状況の中での新学期になりましたが、図書館ではこれからも皆さんの学修に役立つ情報を発信していきたいと思います。

 私は法学部で刑事訴訟法という科目を教えていますが、本日は専門分野とは直接の関係がないけれども、皆さんにもぜひお読み頂きたい本をご紹介します。

 『ファクトフルネス:10の思い込みを乗り越え、データを基に世界を正しく見る習慣』は、かなり話題になった本ですので、ご存知の方も多いかもしれません。
 現在の世界の状況のもと、冷静に事実に基づいて世界を見ることの重要性を説く本書の重要性は、さらに増しているように思います。

 著者はスウェーデンのカロリンスカ医科大学の医師で公衆衛生学の研究者です。生涯をかけて、「データ」をもとに事実を正しく見ることの重要性を説きました。それが「ファクトフルネス」の実践なのです。
 私たちは世界について様々な思い込みをしています。それは、私たちの様々な本能から来るものだと本書は分析します。

 分断本能(「世界は分断されている」)、ネガティブ本能(「世界はどんどん悪くなっている」)、恐怖本能(「危険でないのに恐ろしい」と考えてしまう)、単純化本能(「世界はひとつの切り口で理解できる」)、犯人捜し本能(「誰かを責めれば物事は解決する」)、焦り本能(「すぐ手を打たなければ!」)等々。著者は、これらの10の「思い込み」が何をもたらしてしまっているのか、私たちがいかに事実に基づかないで世界を悲観的に見てしまっているかということを具体的なエピソードを交えながら、わかりやすく明らかにしていきます。

 では、ファクトフルな思考をするためには、どうしたら良いのでしょうか?本書は次のように言います。

 本能を抑えて事実を正しく見ることがどれほど難しいことなのか、自分の知識がいかに限られていることを認めましょう。そして、堂々と「知りません」と答え、新しい事実を発見したら、喜んで意見を変える、すなわち「謙虚」であることが重要です。

 そして「好奇心」をもつことです。新しい情報を積極的に探して受け入れ、自分の考えに合わない事実を大切にし、その裏にある意味を理解しようと努めましょう。間違ってしまっても恥じず、間違いをきっかけに興味を持ってみましょう。

 本書が提唱する「ファクトフルなものの見方」は、冷静な対応をするためにすべての人にとって必要だと思います。こういう時期だからこそ、一読をおすすめします。


【図書館事務室より】
 2020年度が始まり早くも2週間が過ぎました。新年度最初の藤棚ONLINEは、今年度より新しく図書館長に就任されました、法学部教授の笹倉香奈先生よりおすすめ本をご紹介いただきました。
 新型コロナウイルス感染拡大防止のための様々な措置が取られる中、甲南大学も教職員・学生が一丸となって対応している最中にあります。特に新入生にとってはただでさえ不安と希望に揺れる新生活の区切りにあって、大変な心労を抱えていることと愚考します。
 今回笹倉先生にご紹介いただいた本は、いたずらに不安を煽られず冷静に対応するために必要な考え方を示してくれるものとのこと。ぜひ読んでみてもらいたいところですが、本学図書館も今は閉館中。5月以降、無事開館できたらぜひ図書館で借りてみてください!
 一日も早い終息を願う日々ですが、学生の皆さんも心を元気に過ごしてください!
 何かわからないことや不安に思うことがあれば、大学に問合せしてみてください。職員も最小限の人員で対応しているため電話はつながりにくいかもしれませんが、真摯に対応しておりますのでお気軽にどうぞ!

2019年度 KONANライブラリサーティフィケイトの活動をポスターで紹介!

 🌸 新入生の皆さま、ご入学おめでとうございます 🌸

図書館2階の閲覧席から見た景色です。現在は少し葉桜になっていますが、入学式の時は、毎年絶景ポイントとなっています!勉強や読書をしながら目と心も癒せるスポットとして人気です。

図書館は4月7日の緊急事態宣言を受けて、5月6日(予定)まで臨時休館しています。残念ながら図書館に来られない方に、2019年度KONANライブラリサーティフィケイトの皆さんの活動記録を図書館内南階段の踊り場に、ポスター展示しましたのでご紹介します!KONANライブラリサーティフィケイトとは、読書習慣及び情報探索力・表現力・行動力・企画力などを身につけた学生を評価しようという制度です。詳しくはこちら

 

ピンクと黄色のポスターには、おすすめの本をレビューとしてまとめた書評やpop、教員インタビューを紹介しています。レビューからは、紹介する本に対する熱い思いが伝わってきます。本選びの参考にしてください。又、教員インタビューでは、先生の普段と違った一面を知り、緊張したけれど楽しく貴重な経験となったという感想も多いので、学生のみなさんには是非これを機会に挑戦して欲しいと思います。

 

2級の要件、図書館が企画したイベントやボランティアに参加して取得するもの(水色)1級の要件、学生自ら企画を提案し実現するもの(黄緑)です。1級の学生企画では、3人がそれぞれ得意分野で力を発揮し魅力的な展示を提案してくれました。

新型コロナウイルスの影響で、外出が出来ないこんな時こそ、読書をおすすめします!読書をする内に、自然と文章力やコミュニケーション能力がつきます。即戦力にはならなくても、本で読んだ知識が土に種を撒くように、後々になって開花するそんな事もあったりします。

サーティフィケイトの過去の活動は、このブログ右横にあるカテゴリーから、2. 学生おすすめ (学生による書評など) 3. 教員インタビュー 9.KONANライブラリーサーティフィケイトから閲覧できますので、是非参考にしてください。

みなさま、大変な時ですがどうか健康にお過ごしください。そして、この状況が落ち着いたら開館しますので、その時は図書館で元気にお会いできるのを楽しみに待っています。

最後に、開館したら是非!2階ヘルプデスクへお越しください。ライブラリサーティフィケイトのエントリーお待ちしています!

 

[藤棚ONLINE] 共通教育センター・鳩貝耕一先生推薦『アインシュタインの反乱と量子コンピュータ』

図書館報『藤棚ONLINE』
鳩貝耕一先生(共通教育センター) 推薦

 東京2020オリンピック・パラリンピックの直前6月には日食があり、新型コロナウイルスの脅威が去っていれば、梅雨時期の日本を離れ、北回帰線まで金環日食を見に行くクルーズ船ツアーに参加したい天文ファンも多いと思います。さて回帰というと、地球面上ではなく時間軸上での過去のふりかえりと考える人も多いと思います。以下は、いろいろと回帰するお話です。
 まず、私が甲南大学4年生の時(天文同好会発足当時の1978年)に回帰すると、テニスコート、バスケットコートや藤棚のあったところに現在の図書館が竣工しました。図書館HPには、「憩いの場の思い出を大切にと、館報名を『藤棚』としました」とあります。その後、原子核理論物理学研究者のほんの端くれだった大学院生の時に、人文・社会系院生から「大学院生協議会」を立ち上げないかとの話がもちかけられ、理系院生のまとめ役として応じました。その組織活動の一環として、開館時間延長について大学執行部にお願いしにあがりました。
 以下に紹介する書籍のテーマは、院生時代に「だまって、計算」していた原子核物理学の根幹をなす「量子力学」と現在の私の研究分野である「情報科学」の両方にまたがる話題です。
 昨年末の10月に回帰すると、グーグルは開発中の量子コンピュータを用いた「量子超越(quantum supremacy)」の成功を発表しました。これは、スパコン「富岳」などでも計算には多大な時間(発表では約1万年)のかかるような問題を、極めて短時間(同3分20秒)で解けることを示したことになります。研究成果は、査読付きのれっきとした英科学誌「ネイチャー」に論文として掲載されました(ただし、IBMの量子コンピュータ研究陣からは異論が出ています)。
 量子コンピュータの話題は、実は目新しいことではなく、ほぼ十年前の2011年に回帰すればカナダのD-Wave社が製品としての商用量子コンピュータの提供を開始しました。今回のグーグルの発表よりもこちらのほうがよほどショックで、「えっ、こんなの出していいの?!」と心の中でつぶやいたのを思い出します。1996年、甲南に教員として戻って以来、量子コンピュータの研究は全く行っていませんが、情報収集はしていました。まだまだ研究の域を出ないだろうと、たかをくくっていたわけです。
 さて、この「えっ!」の背景や意味するところをまとめると本1冊ぐらいは書けるだろうなということが分かっていたので、最近になってググらずに(笑)Amazon.co.jpで検索してみました。
 京都大学名誉教授で、2001年から2014年春まで本学にも教授として在籍されていた佐藤文隆先生の『アインシュタインの反乱と量子コンピュータ』が見事ヒットしました(ここでも甲南に回帰!)。研究者の端くれの私が、碩学大儒(せきがくたいじゅ)である佐藤先生の書評を書くなどはもってのほかなので、このような回帰大作戦とあいなった次第です。

 この本のスゴイところは、D-Waveマシン以前、本学におられた2009年に出版されているところです。量子情報に関する研究が活発になっていることをリサーチした上での出版ではないでしょうか?
 本当は、近著でほぼ人文・社会科学系の言葉で書かれている『量子力学が描く希望の世界』を紹介したかったのですが、読者はあらかじめ20世紀初頭に回帰して量子力学近代史を調べておかないと、チンプンカンプンだと思います。その点、こちらの書籍では、理系の言葉とはいえ内容を理解するための説明が簡単に添えられているので、理系学部のみなさんにはオススメです。より実験志向な方には、『佐藤文隆先生の量子論』がオススメです。
 えっ、「なぜ、アインシュタインなの?」かって・・・。アルベルト・アインシュタインは、相対性理論ではなく「光量子仮説に基づく光電効果の理論的解明」によって1921年にノーベル物理学賞を受賞しています。量子の世界について最も深く考察した人だと言われています。ただし、最近のミクロな技術の進展により、量子への理解がこのころよりはより深まっています。
  五里霧中ならぬ五「黍」霧中に杖を差し込んで探るような量子の世界にミーハーな私は、「だまって、計算しろ!」TシャツをAmazon.comより購入してしまいました(笑)。学生のみなさんの中から、回帰大作戦→開基大作戦→怪奇大作戦と進まれる方の出ることを期待しています。

●書誌情報(書籍は全て1F開架に揃っています)
『アインシュタインの反乱と量子コンピュータ』,京都大学学術出版会,2009
『佐藤文隆先生の量子論:干渉実験・量子もつれ・解釈問題』,講談社ブルーバックス,2017
『量子力学が描く希望の世界』,青土社,2018
・「アインシュタインと量子」,日本経済新聞,2020年2月16日朝刊,p.32