三好大輔先生(フロンティアサイエンス学部)「「才能」ありますか?」

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 いきなり私事ですが、44 歳になりました。大学4年生、大学院修士課程2年間、博士課程3年間、博士研究員、大学教員として、皆さんが生まれる前から研究しています。最初の3年間ほどは、努力もせずに、ある程度の研究結果を出していると満足していました。非常に恥ずかしいのですが、学会などに行っても、「俺って結構才能ある」と思っていました。でも、今思い返すと、研究課題に対して、すべきことをやり切ったことはなかったように思います。でも、「これくらいで十分やろ」と自分に言い聞かせていたと思います。博士課程に進学すると、研究成果が自分の生活や将来に直接影響してくるようになります。気が付くと、同年代の研究者は、どんどん素晴らしい成果を出しています。今更ほかの道もありません。まずい!ようやく私も気が付きました。そのとき私が思ったことは、「とにかく博士課程の3年間は必死で頑張ってみよう」でした。必死で頑張ると、思い通りかどうかは別にして、結果が出ます。思い通りだと、「次は、これもうまくいくかも!」と調子に乗ります。思い通りでなければ、悔しく思いながら「次は、こうしたらうまくいくはず!」となります。頑張れば頑張るほど、すべきことが増えてくるのです。逆に、「これくらいでいいやろ」と思うと、研究(仕事、勉強、生活、、、何にでも置き換えてください)の進展や展開はありません。研究を進めるためには、一生懸命に取り組むこと、そして継続する必要があることに気が付きました。つまり、「目の前の課題に継続して必死で取り組める才能」が必要だと思うのです。「努力に勝る才能のなし」と謳われる最強の「努力する才能」は、与えられたものではなく、自らの意志で獲得できるはずです。
 前置きが長くなりましたが、上記の中年の戯言に同意できない皆さんは、次の書籍を読んでみて欲しいと思います。サミュエル・スマイルズ著、竹内均訳の「自助論」(三笠書房)です。「天は自ら助くる者を助く」で知られる不朽の名著です。格言のオンパレードのような書籍ですが、例えば、「天性の才能に恵まれていれば、勤勉がそれをさらに高めるだろう。もし恵まれていなくても、勤勉がそれに取って代わるだろう」とあります。また著者は文中で、時間が最も大切だとも述べています。例えば、「失われた富、知識、健康は取り戻せるが、時間は戻ってこない」とあります。20 歳前後の皆さんは、それだけで最も得難い財産を持っています。特に大学にいる間の時間は、その後の人生よりもとても自由度が高いものです。
さあ、どうやって過ごしますか?とりあえず、読書してみませんか。

甲南大学図書館報「藤棚」(Vol.33 2016) より