川上アキラ『ももクロ流:5人へ伝えたこと5人から教わったこと』

  知能情報学部 4年生 小林雅幸さんからのおすすめ本です。(KONAN ライブラリ サーティフィケイト)

書名:ももクロ流:5人へ伝えたこと5人から教わったこと
著者:川上アキラ
出版社:日経BP社
出版年:2014年

 この本は、人気アイドルグループ「ももいろクローバーZ」のチーフマネージャーとして活躍する著者が、グループ結成からこれまでを振り返りながら著者のマネジメント論を述べたものです。 「アイドル戦国時代」とも言われる近年、様々なアイドルグループが結成される中、「ももいろクローバーZ」が結成から5年近く(出版当時)経過しても人気アイドルグループとして成功した秘訣が、筆者のマネジメント論から読み取れます。
 筆者の特徴として、「現場主義」が挙げられます。著者はイベントの企画や演出、タレントの送迎など、とにかく現場での仕事を重視しています。それは、「タレントが最も気持ちよく仕事ができる環境を作る」ことがマネージャーにとって重要であるという著者の考えがあるからです。これはタレントマネージャーに限った話ではなく、例えば上司が部下の働く姿を間近で見ずに後で持ってきた書類だけを見て能力を判断しているのでは部下にとってモチベーションが上がらず、せっかく持っている才能を開花させることができないままになってしまう可能性があるということと同じではないでしょうか。こうして著者が常にタレントを近くで見守ってきたことで、次の仕事へのプランを立てることに役立ち、さらにはタレントとの信頼関係を築くことに成功してきたのではないでしょうか。
 そして、タレントに「場」を与え、時には無謀とも思えるようなことも含めてタレント自身に様々な経験をさせた積み重ねが、やがてタレント自身が自分をプロデュースできる力になって、結果グループが成長していくという考え方は共感しました。誰かに守られているという安心感があると、人はやがて努力をしなくなっていきます。しかし、しっかりと実になるような刺激を矢継ぎ早に与えることで、人は自分で考えるようになり気づかぬ間にそれが経験となって人を成長させ、その個人の成長がグループにとって大きな成果として帰ってくるのです。
 この本は単にアイドルグループの歴史を辿っただけの本ではなく、人が、そして組織が成長するためには自分がどう動くべきかということを、具体的なエピソードを交えて述べたれっきとしたマネジメント論の本であると私は考えます。