大学生になると、試験のかたちも大きく変わります。高校などの中間試験や期末試験、入学試験などのようなスタイルだけではなく、論述形式が多くなり、レポートによる試験もあります。特に入学当初は何を書いたら……ということもあります。筆者も大学入学直後、試験のスタイルの変化に戸惑いました。レポートは、母語だからこそ、きちんとトレーニングしないと書けるようにはなりません。
ここで紹介するのは、戸田山和久,『新版 論文の教室 レポートから卒論まで』,NHK 出版,2012 です。心に影響を与える良い本との出会いの勧め、というより、実用のための書ですが、敵(レポート)を知らずに戦いを臨んでもよい結果は得られません。また、大学を卒業し、進学や就職するとなると各段に文章を書く量が増えます。というより、文章で仕事をするようになります。これは、文系理系によらず、ですし、英語(外国語)で仕事をするから、といっても、変わりません。この書籍では、なぜだめなのか、を実例とともに説明しており、昨今問題となっている研究倫理の問題についても踏み込んで紹介しています。大学でのレポートとの付き合いには欠かせないと思います。一方、レポートの書き方の書籍はこの本だけではありません。自分で自分にあった書籍を探し、良い書籍に出会う、つまり、教員が指示する教科書、参考書だけでなく、大学生活では書店や図書館で本を自分で探すことが大切です。
最後になりますが、レポートを作成するためには、様々な資料を調べ、読み込むことが求められます。図書館は、資料を集め、整理するという書庫としての機能や、他の図書館を連携した複写サービス、検索データベース、など、知的活動のための基盤となります。特に大学図書館は、司書など専門職の役割が大きく、レポート作成や良い本の出会いの道しるべとなっています。図書館に積極的に足を運び、レポートと付き合ってもらえたらと思います。
甲南大学図書館報「藤棚」(Vol.36 2019) より