倉本宜史先生(マネジメント創造学部)「私は、甲南大学生だから サイエンスします」

 ご入学おめでとうございます。甲南大学というミディアムサイズの総合大学に入学され、学び始める皆さん向けの図書として池上(2016)を紹介します。まず、池上(2016)の書籍名は『はじめてのサイエンス』なのですが、「サイエンス」と聞いて、「理系」や「難解」と思う人が多いのではないでしょうか。なぜ「文系」に区分されるマネジメント創造学部の教員がこの本を紹介するかと言いますと、「サイエンス」は文系と理系を区別する言葉ではなく、どの学部の学問領域も「サイエンス」を行うのだと、まずは皆さんに理解してほしいからです。つまり学生は、分析対象や分析手法は学部や学科によって異なりますが、「サイエンス」の考え方を学びに来ていると言えます。
 では次に「サイエンス」とは何でしょうか。池上(2016)を要約すると、世の中には様々な物事の「法則」や「理論」がありますが、それらを100%正しいものだとは考えずに疑うことから始めます。「例外なく100%正しい」ということは多くの場合で断言できないからです。そして、真実(真理)があるかもしれないという気持ちで、その真実を明らかにするために、自分たちで「もしかすると、こうかもしれない」という仮説を立てて、確かめます(検証します)。この一連の作業が「サイエンス」です。なお、池上(2016)では物理や化学、環境問題などの基礎知識を、数式を使わずに丁寧に説明しており、「サイエンス」の考え方を教養として理解できる構成になっていますので、興味のある人は読んでみてください。
 そして「サイエンス」は地道です。一人の人間で確かめられる真実は氷山の一角です。しかし、そのわずかな学問の進化は、人類の進化を意味します。みなさんと4 年間、ミディアムサイズの総合大学ならではの仲間や教員との距離の近さの中で、一緒にそんな「サイエンス」を楽しめればと思います。
紹介文献:池上彰(2016)『はじめてのサイエンス』,NHK 出版.

甲南大学図書館報「藤棚」(Vol.36 2019) より