鶴岡孝章先生(フロンティアサイエンス学部)「良質の読書と睡眠が成績を 向上させる!?」

 皆さん子どもの頃に「本を読みなさい、賢くなるから」と言われた経験がありませんか?これって本当なのでしょうか?実は、最近ある研究グループがこの点に関して面白い報告をしていました。小学生を対象に読書時間を調査し、学業成績との相関を確認すると、確かにある一定のところまでは読書時間が長いほど成績が良いという傾向があったのに、より長い時間読書をすると成績が低下し始めるということが分かったそうです。実は、長時間読書をする小学生は睡眠時間が短いという傾向があり、いくら読書をしても睡眠時間が短いと成績は低下するそうです。つまり、適度な読書と適度な睡眠が大事ということですね。小学生を対象とした実験結果ですが、大学生は読書時間も短く、睡眠時間も短いそうなので、皆さんもこの点に注意して、適度な勉強、適度な読書、そして適度な睡眠を心がけて大学生活を歩んでください。
 さて、前振りが長くなりましたが実はこれは「新入生向けの図書案内」として書いてるので何かおすすめの図書を紹介します。それは「脳のなかの幽霊」という本で、「甲南大学生に薦める101 冊の本」のなかでも紹介しています。これは私が皆さんと同じ大学生のころに読んで「脳ってすごい働きをしているけど、意外に簡単に騙せるんだな」と思った一冊です。少しだけ中身を紹介すると、例えば神経の断裂など完全に修復不能な怪我や病気で左手が動かなくなった人に対して、左手を完全に見えない状態にし、そこに鏡を置きます。その鏡の前に右手を差し出すと右手が鏡に投影され、左手があるかのような状態に見えます。それで右手を動かすとその鏡のなかの手も動くという状況を体験させるという実験を数ヶ月行うと、何をしても動かなかった左手が動くようになったそうです。もちろん動いているのは右手だけにも関わらず左手が動いているという擬似的な状況を見て、錯覚を起こさせることで別の神経回路が構築されるというなんとも信じがたいことが起こるようです。まさに「百聞は一見にしかず」ですね。でも目で見た情報も脳が処理をしています。この本を読むと脳の不思議や重要性を実感することができると思います。話は最初に戻りますが、適度な睡眠が大事なのは脳への記憶の定着は睡眠時に起こるからですよね。これを機に自分の脳について学んでみるというのはいかがでしょうか。きっとこの先の大学生活だけじゃなくその先に生活にも活かせると思います。

甲南大学図書館報「藤棚」(Vol.36 2019) より