澤田智洋著 『マイノリティデザイン』

 

 

文学部 4年生 Kさんからのおすすめ本です。(KONAN ライブラリ サーティフィケイト)

書名 : マイノリティデザイン
著者 : 澤田智洋著
出版社:ライツ社
出版年:2021年

受験や就活で、周囲から色々な助言をもらっても、やっぱりネームバリューが頭から離れないまま、他者と競争し、その隙間にスマホを見れば、すぐにSNSで他者の様子がわかって自分と比較ができてしまう。きっと社会に出ても、評価され、比較されることは続く。また、生活の中でなんとなく目にする商品や広告はすぐに変わり、前のものは思い出せない。私たちは、ものごとが大量に消費されていく社会の中で、強いことが良いことだと思い、強くなることを強いられているのかもしれません。

そのような中で、

「すべての弱さは、社会の伸びしろ」

この言葉は信じがたい言葉かもしれません。これは著者の言葉です。

著者はコピーライターで、視覚障害のある息子さんが生まれたことをきっかけに、一般的に弱さと考えられているマイノリティ性に目を向けて、それを生かす働き方をするようになりました。本書は、そのような背景をもつ著者が、マイノリティ性を生かす方法について、事例を交えて書いた本です。

本書では、マイノリティ性があるからこそ実現したアイデアが紹介されています。そのアイデアがユニークで面白かったです。また、マイノリティのためのアイデアが、結果としてマイノリティ以外の人も楽しませていて、弱さは社会の伸びしろだと実感できました。

一方、納期に追われながら、すぐに消費されるものを作る働き方に虚しさを感じていた著者が、マイノリティを生かす働き方に夢中になっていく様子からは、働くことについて考えさせられました。

「あなたの弱さは、だれかの強さを引き出す力」

これも著者の言葉で、発想力という強みをもつ著者とは違い、強みのない私は励まされました。強みがなくても、自身の弱さがだれかの強さを引き出せるのなら、周囲を良くすることに少しでも役立てるように思えたからです。

生活をしていく上で、ある程度の強さも必要で、強くなるための向上心や努力も大切だと思います。しかし、強さばかりでなくて良い、弱さがあっても良いと、本書を読んで思えました。自分にも他者にもやさしくなれる本だと思います。