甲南大学の学生の皆さん、こんにちは。図書館長の田中雅博です。
新入生の皆さん、入学おめでとうございます。いろいろととまどうことも多いでしょうが、わからないことは学生部や教務部、指導主任の教員に早めに聞いて、不明なことを残さないようにしましょう。また、入学早々暴風警報によりガイダンス等が流れてしまいましたが、変更の情報はきちんと把握していますか?大事な履修関係の情報を聞き漏らすといろいろと大変なことになりますから、くれぐれもきちんと確認してください。
私自身、図書館長にはこの4月に就任したばかりの、館長1年生です。本を読むのは昔から好きで、忙しいときでもなるべく週に1冊くらいは読むようにしています。本を読むということは、一方的ではありますが、著者と親しくなることです。年齢が近い著者だったら、まるで友人のように感じます。何十年も同じ著者の本を読んでいたら、書かれている本を見て、その著者の成長、成熟、そして、加齢を感じます。私の場合、そういう著者として、林望さん、藤原正彦さんなどがそれに該当します。その他、私がどんな著者が好きなのか興味を持っていただいた方は、学外サイトにて、最近読んだ本(全部ではありませんが)について、内容を一言ずつ備忘録として残していますので、ご覧ください。私のホームページからリンクを張っています。
甲南大学図書館の周囲はとても美しい場所です。もうすぐソメイヨシノが満開になります。個人的には、それに少し遅れて咲く、図書館入り口そばのしだれ桜が好きです。咲いたらここに写真をアップしようと思います。
投稿者「図書館」のアーカイブ
新入生の皆さん、ご入学おめでとうございます☆
図書館では新入生の皆さんが(と在校生の皆さんも)、図書館を活用していただくために色々な企画を行います。
十分に図書館を利用して、充実した大学生活を送ってください!
【その1】新入生オリエンテーションのおしらせ
大学においては、「与えられた学習」だけではなく「自ら求める学習」が要求されます。そのためには、文献や学術情報を集めなくてはなりません。
文献や学術情報を収集する技を身につけることができれば、皆さんの大学生活を充実したものにするだけでなく、卒業後の社会生活にも活用することができます。
<対象>
新入生
<実施日時>
4月3日(火) 10:40~11:40
4月4日(水) 午前の部:10:40~11:40 午後の部:13:00~14:00
4月5日(木) 午前の部:10:40~11:40 午後の部:13:00~14:00
※両日とも同内容
<集合場所>
図書館1階エントランスホール(地階視聴覚ホールへ案内します)
<内容>
大学図書館で出来ることや、甲南大学図書館での基本的な資料の探し方について説明します。また、実際に図書館の中を歩きながら資料の配置や施設の使い方を案内します。
・ DVD『 情報の達人』「図書館へ行こう」上映
・ 基本的な資料の探し方
・ 図書館施設ツアー(図書館・サイバーライブラリ)
【その2】「教員からのおすすめ」について
図書館ブログに「教員からのおすすめ」のカテゴリが追加されました。
先生方からのオススメの本や読書術、図書館の利用方法などが掲載されます。
※図書館報「藤棚」に掲載されているものもあります。合わせて参照してください。
そのほかにも、色々な企画が発動中です。
図書館ブログでもお知らせしていきますので、チェックしていてください!
BOYLES Corinne先生(マネジメント創造学部)「Educating Yourself」
☆新入生向けの図書案内
著者:J.M. ロバーツ著
タイトル:『世界の歴史:図説』1巻~10巻
出版者: 創元社
出版年: 2002-2003
配置場所: 図書館1階開架一般
請求記号: 209/10/2001
著者:Neil MacGregor
タイトル:A History of the World in 100 Objects
出版者:Allen Lane
出版年:2010
配置場所: 図書館1階開架洋書
請求記号: 209//4011
If you study seriously your courses will keep you fairly busy, but having the wonderful resource of a university library at hand is a not-to-bemissed opportunity. While your formal courses will comprise the core of your university education, by making good use of the library, you can educate yourself on a whole range of fascinating topics. And you can also do a lot of reading just for fun. You will be able to read in full the works of literature that you might before have only seen in extract. You will be able to study subjects you didn’t have time for, or are not usually available in high school. You should be able to start finding out more about everything you wanted know but couldn’t when you were cramming for your examinations.
When I started university I knew that my education up till then had been very selective and narrow. For example I had studied no history in high school, and indeed unlike Japan, ‘world history’ did not even exist as a subject in any Australian school.So while I enrolled in Economics and Japanese courses I began my own ‘education’ beginning with reading general works in history. The university library proved to be treasure house.
World history is actually one area in which I would urge all students to gain a general knowledge. As our lives become ever more intertwined, we all need an understanding of how our societies and our international connections have evolved. Those who missed studying world history in high school, can now start filling this gap.
One very readable world history in the library is「世界の歴史 : 図説」J.M. ロバーツ著(創元社 2003). This is introduction in 10 volumes – don’t let this put you off, the original English book was only one volume in its un-illustrated edition. If you have already read a Japanese history, you might like to compare its perspectives with those of this British one. You don’t have to borrow books to read from beginning to end. You can also just browse among them when you are studying in the library and need a break from your own subject. For those of you that feel up to the challenge of reading something in English, you might be interested in a recent bestseller that brings history alive ― Neil MacGregor’s “A History of the World in 100 Objects” (Allen Lane 2010). There is a bonus. This book is based on a series of radio programmes, and you can listen to the original broadcasts (less than 15 minutes each) for free on the BBC’s radio 4 website (http://www.bbc.co.uk/ahistoryoftheworld/).
Objects from Japan in the book include a Jomon pot, a Heian mirror and the Hokusai print of “The Great Wave”. An interesting point of the book is that many of the objects, emblematic of particular cultures, were made with materials and knowledge gained from global networks. The Jomon pot is an exception being uniquely Japanese. But Hokusai’s print, a genuine symbol of Japan recognised the world over, was made using a synthetic blue dye invented by Prussians, and probably imported from China. It is a product of the global era.
甲南大学図書館報 藤棚(Vol.28 2011) より
長濱宏治先生(フロンティアサイエンス学部)推薦『実感する化学(上・下巻)』
☆新入生向けの図書案内
著者: a project of the American Chemical Society
タイトル: 実感する化学 上・下巻
出版者: エヌ・ティー・エス
出版年: 2005
配置場所: 図書館 1階特設
請求記号: 430/1/2022
これを読んでいる新入生のうち、高校で学んだ科目が「実際に何の役に立つのか?」と疑問に感じた経験がない方は、どれだけいるだろうか。
私の研究分野は生命高分子科学であり、現在はバイオ高分子化学などを教えているが、そういう私も高校生時代は「研究者になるわけでもないのに、理科の勉強が何の役に立つのか」と感じており、受験科目だから仕方ないと思いながら勉強していた。高校の学習では、大学受験の対策として「暗記する」ことに重点が置かれているので、「理科がどのように世の中で役立っているのか」ということまでを教える余裕がないのであろう。
そこで、そのような疑問を感じたまま大学に進学し、これから専門的な講義を受ける学生諸君に是非とも読んでもらいたい一冊の本を紹介したい。『実感する化学(上・下巻)』である。本書は、世界最大の科学学術団体であるアメリカ化学会の出版物として、アメリカの大学生を対象に書かれた化学入門書である。本書は、現代社会の様々な課題の中からテーマを12 件選んで、それぞれの課題における化学の居場所を提示し、次いでそこにある化学の中身を詳しく、でも解りやすく説明する、という従来の化学入門書とは大きく異なるスタイルを取っている。上巻(地球感動編)では、⑴空気汚染、⑵オゾン層破壊、⑶地球温暖化、⑷エネルギー問題、⑸飲料水汚染、⑹酸性雨という環境問題に関するテーマを扱っている。また、下巻(生活感動編)では、⑺原子力発電、⑻各種電池、⑼高分子化合物、⑽医薬と薬物、⑾栄養と肥満、⑿遺伝子操作とクローニングという私達の生活に関係するテーマを扱っている。本書はアメリカ社会についての記述が主体だが、12 件の課題はどれも普遍的な内容なので、日本の状況を考えながら読むことができる。本書を読み終えた後には、「大学4年間で習得する化学の知識・技術を世の中に活かしたい!!」という気持ちがきっと芽生えていることであろう。
甲南大学図書館報 藤棚(Vol.28 2011) より
水澤克子先生(スポーツ・健康科学教育研究センタ)「推薦する図書」
☆新入生向けの図書案内
学生時代はさまざまな本を読んでほしいと思います。
同じテーマでも著者によって視点が違うのを見つけるのも面白いです。また、名作と言われる著作に出てくる言葉遣いや美しい表現、若手作家の新鮮な表現も楽しんでください。
あなたがめくった1ページにあなたの人生の支えになる一文があるかもしれません。
著者: 司馬遼太郎
タイトル: 坂の上の雲
出版者: 文藝春秋
出版年: 2004(新装版)
配置場所: 図書館2階開架一般
請求記号: 913.6//2263
※文春文庫からも出版されています。
何度も増刷されている小説ですし、NHK でドラマ化されているので、ご存じの人も多いでしょう。私は高校3年~大学1年の間に読みました。明治維新後の小さな日本が、列強に押しつぶされないために精一杯の努力をして、かろうじて勝った日清・日露戦争を通して、当時の日本の姿が描かれています。
小説としての面白さもありますが、PDCA サイクル(Plan 計画→ Do 実行→ Check 評価→Act 改善を繰り返すこと)の具体例がここにあるとおもいます。
戦争に勝たねば日本は列強につぶされるという崖っぷちに立たされた当時の日本人が、戦争に勝つという目標達成のために、刻々と変わる戦況や日本を取り巻く世界情勢を視野に入れ、どのように相手を分析し戦いを計画し実行したのか、が書かれています。
「目標に向かって頑張る」とか「努力する」という言葉はよく使われますが、具体的な目標に対する具体的な方法がない限り、目標は達成できません。
戦争の是非はともかくとして、目標達成のためにはどうしたらよいか、というときに読んでみてほしい本です。
著者: 立川昭二著
タイトル: からだことば
出版者: 早川書房
出版年: 2000
配置場所: 図書館1階特設
請求記号: 810.4//2085
著者: 斎藤孝著
タイトル: 身体感覚を取り戻す ―腰・ハラ文化の再生―
出版者: NHK ブックス
出版年: 2000
配置場所: 図書館1階開架一般
請求記号: 361.5/Sa25
著者: 野口三千三
タイトル: 野口体操 からだに貞く,おもさに貞く,ことばに貞く
出版者: 春秋社
出版年: 2000-2004
配置場所: 図書館1階開架一般
請求記号: 498.3//2009,498.3//2006,498.3//2012
いずれの本も、「からだ、体、身体、カラダ」がキーワードになっています。
といっても、健康や体力についての本ではありません。
日本の身体文化やからだ言葉についての歴史や解説です。
“からだ”という最も身近な存在の感覚をきちんと受けて止めて、それを表現することがおろそかになっているのではないか、そして、それが最近の「ムカつく」「キレる」「コミュニケーション能力不足」につながっているのではないか、ということが書かれています。身体・ことば・表現・コミュニケーションに関心のある人にも、ない人にも読んでほしい本です。
甲南大学図書館報 藤棚(Vol.28 2011) より
金泰虎先生(国際言語文化センター)推薦『論語』
☆新入生向けの図書案内
甲南大学生の豊かな情緒を涵養させるため、推薦させて頂きたい図書は『論語』です。『論語』は、儒教経典である4書(論語・大学・中庸・孟子)の中の1つですが、簡単に言えば孔子とその弟子の言行録をもって綴った、日常生活における実践的処世や道理を説いている古典です。
『古事記』によると、応神天皇の時、百済から王仁が日本に『論語』を持ち込んだとされています。岩波書店から携帯しやすい文庫版が出ています。文庫版は、原本として日本の清原家の証本を基本に唐の開成石経と対校、そして読み下しは江戸時代における林羅山の道春点と後藤芝山の後藤点を参考にしています。
さらに、長い年月の間に数多くの注釈書が出ていますが、現代語訳には魏の何晏の集解(古注)、後漢の鄭玄注(鄭注)、南宋の朱熹の集注(新注)を参考にしています。
ところで、ある人は『論語』は社会の基盤が農業中心だった時代に書かれた書物であるため、産業社会よりも遙かに発展を遂げている今のIT(Information Technology) 時代には適応しないとか、復古主義・封建主義・行き過ぎた道徳主義を強調するなどと批評します。しかし、第1の学而篇から第20 の尭曰篇までをかみ砕いてみると、時代や社会体制とは関係なく、普遍的に通用されることを我々に提示していると思います。
大学における教養教育の弱体化、それに相まって到来したグローバル化時代は、大学生の読書生活にも大きな変化をもたらしたと言えます。つまり、多くの大学生は古典などの教養を育むような書物の読書は愚か、インターネットに流れている情報だけを頼りにしているのです。ぜひ、『論語』という古典を通して今の社会に通用する、人間の普遍的な価値観や倫理観を構築してほしいです。
甲南大学図書館報 藤棚(Vol.28 2011) より