投稿者「図書館」のアーカイブ

田中修先生(理工学部・図書館長)「新聞を読もう!」

☆新入生向けの図書案内
2009年に、65の国と地域の15歳の男女47万人を対象に、国際学力調査が実施されました。昨年12月に、その結果が発表されました。それによると、世界のどの地域でも、新聞をよく読んでいる生徒ほど、読解力が高いことが明らかになりました。日本では、読解力を向上させるため、全国の小・中学校で朝読書や、新聞を読む取り組みを奨励してきました。その効果があり、読解力で、前回の15 位から8位に順位を上げました。世界的に、読解力を高めるために本や新聞を読むことの大切さが、再認識されたのです。
本学図書館とサイバーライブラリには、読売、朝日、産経、日経、ジャパンタイムズなどの新聞がそろっています。昼休みでも授業の空き時間でも、図書館を利用して、新聞を読む習慣をつけてください。社会や時代を知り、科学の進歩を見ることができ、予期せぬ情報を得ることもあります。新聞を読んで高められる読解力は、あらゆる学問の勉強に生きるはずです。
甲南大学図書館報 藤棚(Vol.28 2011) より

長濱宏治先生(フロンティアサイエンス学部)推薦『世界で一番美しい元素図鑑』

☆新入生向けの図書案内

著者: セオドア・グレイ
タイトル: 世界で一番美しい元素図鑑
出版者: 創元社
出版年: 2010
配置場所: 図書館 2階参考図書
請求記号: 431.11//2012

理系、文系を問わず、すべての新入生諸君にぜひとも読んでもらいたい一冊の本を紹介します。それは『世界で一番美しい元素図鑑』です。
ルクレティウス(紀元前60 年ごろ)はその著書『事物の本性について-宇宙論-』の中で、「いかなるものも無に帰ることはできえない、万物は分解されて元素に帰する。」と記しています。皆さんもご存知のように、この世で検知可能なあらゆるものは元素でできています。元素には二つの別の顔があります。ひとつめは純粋状態で、ふたつめは他の元素と結合した化合物の状態です。どの元素も純粋状態と並んで、私たちが日常生活で見かける化合物や製品としての顔をもち合わせています。この本は、世界をかたちづくる根源である118個の元素の両方の顔を突き合せて私たちに見せてくれます。つまり、この本は世界の根源の百科事典であると言えます。また、各元素の科学的知見に基づいた解説はユーモアにあふれ、その元素の発見・性質・用途などについて、様々なエピソードや意外な物語を教えてくれます。この本を読んだ後には、この世界をかたちづくっている元素に対するあなたの見方は大きく変化していることでしょう。Let’s Enjoy the Elements.
甲南大学図書館報 藤棚(Vol.29 2012) より

永田亮先生(知能情報学部)「2500/life」

☆新入生向けの図書案内
「人は一生にどれぐらいの本を読むのだろうか?」。皆さんは、そんなことを考えたことがありますか。私は、大学生のころ、ある時思い立って、一年間の読書数を数えることにしました。
その結果は約50 冊でした。平均すると週一冊のペースです。50 年間、同じペースで読み続けたとしても、2500 冊しか読めないことになります。数えているということもあり、積極的に読書をしていたにもかかわらず、たったこれだけしか読めないことに気付き、愕然としたことを覚えています。その時に、「良い本をたくさん読もう」と決心したこともよく覚えています。ちなみに、甲南大学の図書館に所蔵されている本は、約50万冊で、一年間に約2万冊が登録されるそうです。この数字から見
ても、2500冊というのがいかに少ないかわかります。
本をたくさん読むことが、一つの財産になるということはよく言われることです。積極的に本を読むことも大切ですが、上述の通り、読むことのできる冊数は限られていますので、良い本を選ぶことも大切かと思います。本をたくさん読んでいる人から推薦してもらうのは良い方法でしょう。お気に入りの作家を見つけることも効果的です。また、世の中、良い本ばかりではないので、時には途中でページを閉じてしまう勇気も必要かも知れません。

著者: 結城浩
タイトル: 数学ガール
出版者: ソフトバンククリエイティブ
出版年:  2007
配置場所: 図書館 1階開架一般
請求記号: 410.4//2015

著者: 小川 洋子
タイトル: 博士の愛した数式
出版者: 新潮社
出版年: 2003
配置場所: 図書館 2階中山文庫一般
請求記号: 913/O

次に紹介する2 冊は私がお勧めする本です。今回は、本の素晴らしさの一つ、分野の壁を自由に超えられるという点を意識して紹介します。1 冊目は、「数学ガール(結城浩 著)」です。数学の知識がなくても楽しく読める小説です。文系の学生さんにも、数学の魅力を感じてもらえるのではないかと思います。2 冊目は、「博士の愛した数式 (小川 洋子 著)」です。そのまま読んでも十分に楽しめますが、物語の中に出てくる数式の意味が分かると、この小説の真の意味を理解することができます。理系の学生さんはぜひ数式の意味にチャレンジしてみてください。
甲南大学図書館報 藤棚(Vol.29 2012) より

金泰虎先生(国際言語文化センター)推薦『異文化理解の座標軸』

☆新入生向けの図書案内

著者: 浅間正通
タイトル: 異文化理解の座標軸
出版者: 日本図書センター
出版年: 2000
配置場所: 図書館 1階開架一般
請求記号: 361.5//2235

今、我々はグローバル化時代の真っ直中に住んでおり、ご存じの通り、人・物・情報などが国境を超えて激しく行き交っています。そして日本に居ながらにして諸外国の人々と接する機会が増えていることから、異文化・他文化に対する理解が重要になってきています。そこで、異文化・他文化と共生するための道しるべとして、上記の本を推薦したいと思います。
本書は、編者の浅間正通氏を含む6人が書いた文章を綴ったもので、3部構成となっています。
第1部では、歴史における「異人」の意味を紐解き、日本における異文化理解の実際を明確にし、そこで生じる問題点を克服するための視座に転換して「共感」を提案しています。第2部では、日本における異文化理解教育の現状と課題について述べており、その異文化理解の核心は「人間理解」であると提言しています。第3部では、異文化理解における「外なる国際化」、「内なる国際化」を絡ませて他文化共生社会に向けての提案を行っています。取りも直さず、日本における異文化理解に対する歴史的歩み、そして異文化理解のための人間理解、ひいては異文化理解の体験、さらには望ましい海外留学とは何かについて言及しており、今後、学生諸君にとって増えてくるはずの異文化・他文化の体験時には、大いに参考になるものと思われます。
ところで、自己表現を慎むことを美徳とする観念が色濃く残る日本社会では、積極的な姿勢が求められる異文化理解に対し、場合によっては、戸惑いを感じることもあると思います。本書が、日本社会におけるグローバル化の中で、異文化・他文化を理解するのに、役立てられることを期待しています。
甲南大学図書館報 藤棚(Vol.29 2012) より

三上和彦先生(経営学部)推薦『方法序説』

☆新入生向けの図書案内

著者: ルネ・デカルト
タイトル: 方法序説 (ちくま学芸文庫)
出版者: 筑摩書房
出版年: 2010
配置場所: 図書館 3階書庫小型
請求記号: S081.6/テ6/79

経営学部では一年次生向けに、「基礎演習」という科目を設置しています。その授業の最初で、私はいつも次の事を伝えています。「皆さんにとって、大学は「学び」の総決算。高校まで学んできた知識を生かして、自ら考えることのできる人間になってほしい。」これまでは教科書がお手本だったと思います。教科書に書いていないことを自ら考えるにはどうしたらいいのでしょうか?その一つの指針として、『方法序説』を一読されることを勧めます。
本書の一節で有名なのは「われ思う故に我あり」という文言です。方法的懐疑という、あらゆるものの真偽を問い、最終的に疑いきれないものとして、自分の存在を発見していきます。哲学、あるいは近代合理主義に関して関心を持っている方は、ぜひ、この基礎的な文献にトライしてみてください。
しかし、本書を勧める対象はそうした関心を持つ方たちだけではありません。実はこの本は『理性を正しく導き、学問において真理を探究するための方法序説』という長い正式名称を持っています。すなわち、デカルトはこの本で考える「方法」を提示しているのです。真理の探究の方法として、デカルトは以下の4つをあげています。
1 .明証的に真であると認めるものでなければ、どんなことも真として受け入れない。
2 .検討する難問の一つ一つを、必要なだけの小部分に分割する。
3.思考を順序にしたがって導く。
4 .完全な枚挙と全体にわたる見通しをたてる。
彼は、この原則に従えばどんな困難な問題も解決できる、と言っています。本当にそうなのか?みなさん、是非読んで確認してみて下さい。
今の時代、ネットを通じて「知ること」は容易になりました。これからは、持っている知識から何を言うことができるのか、それが問われている時代になっていると思います。覚えていればいい、という発想から脱却して、本書を通じて考えることのできる大学生になることを目指してほしいと思います。
甲南大学図書館報 藤棚(Vol.29 2012) より

高野清弘先生(法学部)「教養小説あるいは「憧れ」のすすめ」

☆新入生向けの図書案内

著者: ゲーテ
タイトル: ヴィルヘルム・マイスターの修業時代 (ゲーテ全集 第5巻)
出版者: 人文書院
出版年: 1960
配置場所: 図書館 3階書庫一般
請求記号: 948.6/5/3

数年前、還暦を迎える頃、ふとしたはずみで、ゲーテの『ヴィルヘルム・マイスターの修業時代』を読み返した。驚いたことに、たちまちのうちに、私は少年の日に戻ってしまった。ヘッセやカロッサなどの教養小説に読みふけった日々、あの十五・六の頃のときめきを六十歳を間近にした私が確かに感じたのである。
教養小説は、辞典的な定義だと、教養= 自己形成小説ということになる。一人の少年が青年に至る過程で、友人との交歓と対立、美しい異性への憧れと恋の挫折、向上を求めるひたむきな格闘を経験し、傷つきながら成長していく。これが教養小説の典型だといえるだろう。ところで、人は知らず、私の場合、なぜ教養小説に惹かれたかといえば、そこに必ずといっていいほど出てくる異性への憧れのせいだったと思う。現代ではないのである。住み着いた猫も雄猫だけといううわさのカトリックの男子校。姉妹校の女子校との共同礼拝の時、聖堂のステンドグラスを通して光が斜めに差し込んでくる中、浮かび出るような、跪く美少女の横顔を見たことはある。だが、ただそれだけのことなのである。教養小説は、私にとっていわばロールプレイングゲームであった。教養小説の恋愛はたいていかなえられない。その主人公に自らを擬して、憧れを楽しんでいたのだ。
近頃、教養教育の重要性が叫ばれている。だが、私に教養を教える自信はない。自分に教養を教えるだけの力があるなど思うならば、ニーチェによって「教養俗物」とからかわれた一九世紀のドイツの教授たちに申し訳ない。しかし、教養を教えられない教師として、私は教養小説を読んでいただきたいと切に願う。教養小説は読者の心に憧れを生み出す。その憧れは一切の学問の出発点としての知的好奇心とつながっていると信じるからである。
甲南大学図書館報 藤棚(Vol.29 2012) より