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全学共通教育センター 辻本 桜子先生へのインタビュー

文学部4生 Kさんが、全学共通教育センター 辻本 桜子先生にインタビューを行いました。(KONAN ライブラリ サーティフィケイト)

 

 

Q. 本を読む頻度について

たくさんは読めませんが、少しずつでも毎日何かを読んでいます。日によりますが、10分~15分、まとまった時間が取れるときは1時間でも2時間でも読みます。

 

Q. 読む本の種類について

仕事関係の日本語の本を70%、ビジネス書を20%、趣味の小説を10%くらいの割合で読みます。

 

Q. 本を読む時間について

仕事の本は家でも大学にいるときにも読みます。

家では、一番のリラックスタイムである夜ご飯を食べた後に、お茶などを飲みながら読みます。

気になる本があった場合は、通勤時間にもちらちら読むという感じです。

 

Q. 印象に残っている本について

【高校時代】

紫式部著『源氏物語

高校の時は古典が好きで、古語でも現代語訳でも読みました。私の中で小説の王道といえば『源氏物語』です。1000年くらい前に昔の言葉で書かれた本ですが、今の日本人が読んでも共感できる本だと思っています。

 

【大学時代】

沢木 耕太郎著『深夜特急

著者の海外でのバックパッカー体験について書かれた本です。この本を読むと、自分も旅行をしているように感じて、現地の人の生活や食べ物を知ることができ、国際的な面で影響を与えられました。

 

鈴木 孝夫著『日本語と外国語

日本語と外国語の違いについて書かれた本で、日本語の面で影響を受けました。虹の色の見え方と表現が日本と英語圏では違うという記述に衝撃を受けました。同じものを見ているのに見方が違うということが面白く、本当の意味で言葉が違うと文化が違うと気づきました。おすすめの本です。

日本語についてより詳しく書かれた、鈴木 孝夫著『ことばと文化』も印象的でした。

 

Q. 日本語と英語それぞれの良さについて

【日本語】

天気のちょっとした違いなどを表すのに色々な言い方があり、語彙が豊かなところがきれいだと思います。

相手を大切に思う気持ちを表す敬語が豊かなところも良いところだと思います。

 

【英語】

短い言葉で端的に表せるところです。日本語は聞き手にも意図を読み取る力が必要ですが、英語にはその心配があまりありません。

 

Q. 学生におすすめの本について

・長編小説

働きだすとまとまった時間が取りにくくなるので、大学生のときに読むのが良いと思います。山崎 豊子著『大地の子』、『沈まぬ太陽』などおすすめです。

一人の人が一生のうちに色々な人生を体験することはできませんが、本からそれを学ぶことやヒントをもらうことはできます。自身の人生や生活に一見関係ない本を読むことは、想像力や感性を磨くことにつながり、人生を豊かにすると思っています。

 

・敬語の本

敬語はとくに授業では習いませんが、社会に出たら使えて当たり前と思われているので、大学生の間に敬語を勉強しておくのがおすすめです。

 

 

【感想】

本が大好きな気持ちが伝わってきて、楽しいインタビューでした。本から受けた感動や衝撃を大切にされている印象を受け、素敵だと思いました。私は時間や心にゆとりがないときには無味乾燥な読書をしがちなので、その状態に気づいた際は、人生を豊かにするための読書という辻本先生の言葉を思い出して、読書体験を大切にしたいと思いました。

 

(インタビュアー: 文学部4生 Kさん

全学共通教育センター 津田 翔太郎先生へのインタビュー

文学部4生 Kさんが、全学共通教育センター 津田 翔太郎先生にインタビューを行いました。(KONAN ライブラリ サーティフィケイト)

 

 

Q. 読む本の種類について

専門書や小説、漫画を読みます。それぞれ、自身の考え方や研究(社会学や思想)と地続きだと感じています。

 

Q. 就職後に研究の道を選ばれた理由について

経済利益を追求したり、人に合わせながら一般企業で働くよりも、個人個人の心や社会のあり方を追求する方が楽しいかなと思い、人生一回だし、専門的に学びなおしたいと思ったからですね。

決断の決め手となるような本はありませんでしたが、当時は習慣的に社会評論の本を読んでいて、難しい思想に触れたときに、学問を突き詰めたいと思いましたね。それらの本には、自分の思想をゆっくりと形成していく形で影響を受けました。

 

Q. 学生におすすめの本について

・川端 康成著『古都

戦後、日本社会が発展していく中で、失われつつある美しい街並みや人々のつながりを丁寧に表現した小説です。ノスタルジックな気持ちになったときに、自分がどういった対象にどのような思いを馳せているのかを深く考えるにあたり、支えになってくれます。

 

・宮台 真司著『14歳からの社会学』

人間同士の絆など社会学の重要な話題を凝縮し、簡単な言葉で著者の独自の思想を反映しつつ書いているので、読み物として面白く、わかりやすいです。社会学を勉強してみたい方や現代社会の特徴を学びたい方におすすめです。

(初学者向けではないですが、大澤 真幸著『不可能性の時代』も社会学の面白さが詰まっているそうです。)

 

・雨瀬 シオリ著『ここは今から倫理です。』

倫理担当の教員が、倫理の思想を用いて問題を抱える生徒に向き合い、一緒に成長していく内容の漫画です。善悪を簡単に決めるのではなく、一個の物事を色々な角度から考え、色々な見方をする、そういった深みを、教員の思想や生徒の身近な体験から学ぶことができるのでおすすめです。

 

・浅野 いにお著『デッドデッドデーモンズデデデデデストラクション』

東京の上空に突如現れた巨大UFOと人々の日常を描いた漫画です。

これまで、世界滅亡の危機を描く作品では、社会の在り方はあまり描かれることはなかったですが、本作は宇宙人の人権を認めるかなど、社会的な文脈が分厚く描かれています。僕らが考えないといけない社会問題を宇宙人という比喩を使って表している点が面白いです。また個人的に、有限性の中に人間の魅力が表れると思っているので、世界が終わるかもしれない状況で、登場人物たちが日常生活にどう意味を見出していくのかという描写には、「自分で上手に人生に意味づけをして頑張っていかないと」と思わされます。

 

 

【感想】

日常のあらゆるものを社会学や思想と結び付けて捉えている津田先生のお話は、作品に触れた時、よかったなど単純で浅い感想しか持てない私にとって、新鮮でした。社会学は、身近なものを題材にでき、そして日常に奥行きをもたらしてくれる学問のように思え、とても興味深かったです。また、本を何度も読み返すことや、読書中にメモをとること、感じたことを知人と共有し言語化することもあると話されていて、これらの行為が深く考えることにつながっているのかなと思い、真似してみたいと思いました。

 

(インタビュアー: 文学部4生 Kさん

秋田みやび著 『ぼんくら陰陽師の鬼嫁』

 

 

マネジメント創造学部 4年生 塩谷 瑠緋さんからのおすすめ本です。(KONAN ライブラリ サーティフィケイト)

書名 : ぼんくら陰陽師の鬼嫁
著者 : 秋田みやび著
出版社:KADOKAWA
出版年:2016

当時大学生だった野崎芹は、住居であったアパートを火事によって失ってしまった。彼女はカフェでのあるバイトで多少のお金は稼いでいたものの、住む場所を無くし、貯金も底をつき、経済的に困窮していた。公園で途方に暮れていた芹の目の前に突如、“皇臥”と名乗る男性と、着物を着た幼い女の子、“護里”が現れる。行き場所がない芹を見かね、皇臥は“衣食住を与える代わりに自分の妻になるのはどうか”という交換条件を提示し、芹は飛びつくようにその提案を受け入れる。しかしその後、芹は、嫁ぎ先が北衛門という代々受け継がれる陰陽師一家だったことを知り、またそれに仕える亀の式神が実は公園で出会った女の子だったことを知る。

北衛門家の妻として暮らし始めた芹だったが、ある日、芹の知り合いのペットのケージにお札を貼られるという事件が起きる。原因が分からないままその後次々と不可解な事件が起きるが、だいだい受け継がれている陰陽師の知識と式神の力を使って何とか切り抜ける。

私がこの本をお勧めする理由は、芹との夫婦としての距離がシーンを通して徐々に縮まっていることを感じることができるからだ。

初めは芹も皇臥もどこかよそよそしく、お互いにまだ相手のことを信じ切れていない部分があり、事件の真相を調査する中でぎくしゃくする部分もあったが、次第に夫婦関係について真剣に考えるようになり、いつしかお互いに頼り合えるような関係にまで発展する。また、最初は陰陽師という仕事について不信感を抱いていた芹だったが、次々と起こる不可解な事件に対し懸命に対処にあたろうとする皇臥を見て、協力的になっていく姿も個人的に一番気に入っている。

夫婦としてお互いに相手のことを信頼し、また家族である2匹の式神との関係や隣人との関係通し、夫婦とは何なのか、家族とは何なのかについて考えさせられる、そんな物語になっている。

家族関係や友人関係で悩んでいる、そんな時に読んでみてほしい小説である。

日本マクドナルド著 『日本マクドナルド「挑戦と変革」の経営 : “スマイル”と共に歩んだ50年』

 

 

知能情報学部 4年生 Mさんからのおすすめ本です。(KONAN ライブラリ サーティフィケイト)

書名 : 日本マクドナルド「挑戦と変革」の経営 : “スマイル”と共に歩んだ50年
著者 : 日本マクドナルド著
出版社:東洋経済新報社
出版年:2022年

マクドナルドは(出版年当時)世界100以上の国と地域に約4万店を展開しており、目にしたことが一度はあるでしょう。よく食べる人にとっては当たり前かもしれないですが、そんなマクドナルドも日本初上陸時には馴染みのない食べ物であり、定着できるかの不安が経営側にはありました。本書は成功や失敗、挑戦や変革によって、日本マクドナルドが今日に至るまでどのような歴史を辿ったかを追う内容となります。

実際に本書でその歴史を読んでいても、一筋縄ではいかない挑戦の連続でした。社員教育の徹底化や食材の調達方法であったり、初日の売り上げは予想の4割程度、なかなか増えない日本人の来客数であったりなど。またドライブスルー導入やレジ小型化の推進、日本人に合わせた商品の開発など、時代とともにニーズも変化することに対応し成功を続けた事例がある一方、食品の品質と安全問題、他の要因による成長の停滞、これに伴って従業員の士気が低下する問題もありました。このときマクドナルドが行った行動が、お客様のところに行き、直接声を聴くということです。当時のCEOが日本で実際に意見交換をし、その声を反映させたことは当時ニュースにもなり、非常に関心が集まったことだと考えられます。その後、お客様の声を聴き、応えるためのアプリ「KODO」も開発され、より広く声を集めることでマクドナルドの店舗体験は改善され、今日のようなマクドナルドの雰囲気が出来あがっていったと考えられます。

その後もマクドナルドのお客様のニーズに合った取り組みは止まることはなく、失敗以上に成功体験を更に磨き上げサービスとして提供する姿勢を続けたからこそ、我々が受けるサービスがあると考えます。マクドナルドの挑戦の歴史を知ってもらうことで、サービスの根幹に当たる部分へ思いを馳せて食事を楽しんでもらうためにも、本書はマクドナルドで働いたことのある人、ない人に関わらず、すべての人に読んでもらいたいと思える内容でした。

牧輝弥著 『大気微生物の世界 : 雨もキノコも鼻クソも : 気候・健康・発酵とバイオエアロゾル』

 

 

知能情報学部 4年生 Mさんからのおすすめ本です。(KONAN ライブラリ サーティフィケイト)

書名 : 大気微生物の世界 : 雨もキノコも鼻クソも : 気候・健康・発酵とバイオエアロゾル
著者 : 牧輝弥著
出版社:築地書館
出版年:2021年

一般的に微生物と聞くと、感染症や腐敗菌を思い浮かべ、よい印象を持つことは少ないだろう。実際、人に対し有害な種もあり、そのイメージは間違っているわけではない。しかし、微生物があるからこそ今の我々の生活があり、高等生物の進化につながったものもある。一概に微生物を、その恩恵や影響を考えずに悪者扱いすることは無理がある。

そんな微生物も研究が進展している最中であるが、大気中を浮遊する種、いわゆるバイオエアロゾルについてはまだわからないことだらけである。ここでも、大気中の微生物は悪影響を与えるものが想像されやすいが、実際には無害、もしくは有用な種も存在している。特に高度三千メートルの大気中の菌から納豆を作るという内容は、その先入観を覆すには十分な記事であった。本書ではここ十五年で盛んになってきた大気微生物に研究について、筆者自身の取り組みを交えながら、エッセイ風に紹介されている。

筆者の研究が一筋縄ではいかないエピソードが興味深くもあり面白く、特に衝撃を受けたのが中国の砂漠への出入りが禁止されたことに関係するエピソードである。黄砂発生源でのバイオエアロゾルの採取のためには中国の砂漠で観測する必要があり、それには中国の研究者との共同研究体制がなければ実現はしない。しかし、黄砂によって健康に良くない微生物が飛んできていると論文で発表したため、中国側からの反感を買ってしまい出入りが禁止されてしまった。

この時から、これまでのバイオエアロゾルによる悪い影響を調べるというストーリーが、よい影響を調べるというストーリーに変化した。その結果、美容医療、健康食品などにバイオエアロゾルの持つ効果を適用できないかの研究が進み、この過程で大気中の細菌から納豆を作り製品化することも実現した。実際に機内食としてこの納豆を紹介している記事を読んだことがあるが、このような背景があったことは知らなかったため、研究に対する熱意をこの本から改めて感じることができた。

微生物と聞いて、あまりよくない影響を思い浮かべてしまった方にこそ、この本を読んでもらい、様々な場面で我々の生活と密に関わっていることを知ってもらいたい。もしかすると、思わぬ形での関わりに気づくことができるかもしれない。

金成隆一著 『ルポトランプ王国 : もう一つのアメリカを行く』

 

 

知能情報学部 4年生 Hさんからのおすすめ本です。(KONAN ライブラリ サーティフィケイト)

書名 : ルポトランプ王国 : もう一つのアメリカを行く
著者 : 金成隆一著
出版社:岩波書店
出版年:2017年

「第47代アメリカ合衆国大統領はドナルド・トランプです!」

朝のニュースを見ているとアメリカの大統領選の結果が流れてきた。信じがたいニュースに驚きつつも、「なぜ彼が選ばれたのか?」という疑問が浮かぶ。そんな問いへの答えを探るために最適な本が、金成隆一氏の『ルポ トランプ王国』だ。

本書は、トランプ支持者が多く住むアメリカ中西部や南部、いわゆる「ラストベルト」地域を中心に現地取材を重ねたルポルタージュだ。著者は都市部のエリート層が理解しきれていない「もう一つのアメリカ」に光を当て、そこで生きる人々の声を拾い上げている。廃れた工場地帯や失業にあえぐ地域で、トランプ氏を支持する理由を直接聞くことで、ニュースでは報じられない彼らの本音に迫る。

本書が特に印象的なのは、トランプ支持者たちの多様な背景と動機だ。彼らは必ずしもトランプ氏を全面的に支持しているわけではない。むしろ、「現状を変えてくれる存在」としてトランプ氏を選んだという意識が強い。製造業の衰退、移民問題、教育や医療の格差など、都市部の人々には遠い現実が、地方の人々の生活を直撃している。彼らの声を聞けば、「アメリカンドリーム」がどれほど歪み、失われつつあるかがよくわかる。

また、本書のもう一つの魅力は、著者の視点があくまで中立的である点だ。トランプ支持者を非難するのではなく、彼らの思いをそのまま伝える姿勢は、読者に偏見なく考えさせる力を持つ。現地の風景描写や個々のエピソードも豊富で、まるで旅をしながらアメリカの深層を見つめているような感覚に浸れる。

『ルポ トランプ王国』は、単にトランプ支持者の声を伝えるだけでなく、アメリカ社会の深層に潜む問題を浮き彫りにする力強い一冊だ。読者に対して、トランプを支持する理由をただ批判するのではなく、彼が生まれた社会的背景を考えるように促す。この本を通じて、アメリカの分断や社会的格差の実態を知り、政治や社会について考えるきっかけを得ることができるだろう。

トランプがなぜ選ばれたのか、その答えを一歩踏み込んで考えるための手助けとなる本書は、政治に無関心な人々にもぜひ読んでほしい一冊である。