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[藤棚ONLINE]理工学部・須佐元先生 推薦『数学に魅せられて、科学を見失う : 物理学と「美しさ」の罠』

図書館報『藤棚ONLINE』
理工学部・須佐元先生 推薦
『数学に魅せられて、科学を見失う : 物理学と「美しさ」の罠』

ザビーネ・ホッセンフェルダー (著), 吉田三知世 (訳)
みすず書房 , 2021.3

本書は最近物理学者の間で論議を呼んでいる本で、簡単に言うと現在の基礎物理学のあり方に痛烈な批判を述べている本です。そのため人によって評価も全く異なりますが、とても興味深い本ですので紹介します。

本書は素粒子理論の研究者である著者が、現在の学問の状況、すなわち実験が高価にならざるを得ず、理論に制限がかからないために理論の「美」自体が価値基準となりかけていること、に危惧と疑問をいだき、世界中の大家と呼ばれる研究者を訪ねて議論を挑む、という構成です。インタビューされる学者はいずれ劣らぬ大学者で物理学者なら誰もが知っているような人たちですが、著者との緊張感あるやり取りはそれだけで楽しく読める読みものです。

実験が国家プロジェクト級になってしまい、おいそれとは答えが得られなくなったとき、理論は内包する数学的美しさに理論の良し悪しを委ねてしまいがちになる、ということを著者はもっとも問題にしています。確かに精密な実験や数値実験などをつぶさに調べていった先にたどり着く理論は、ある種の美をまとうことが多いです。したがってより美しい理論がより真実に近いに違いないという推測はあながち間違っていません。しかしそれだけでは決して自然を表していることにはならず、必ず実験による検証が必要です。宇宙物理学者である私自身は、この世界はできる限りシンプルで美しい法則で統べられていてほしいと願いますが、それは願望にすぎません。願望には美的嗜好だけでなく、もっと世俗的な願いも含まれうるということにも著者は警鐘を鳴らしています。 途中やや専門的で難しいところもありますが、サイエンスに携わる・志す人々一般にとって、手にとってみる価値はある本であると思います。

青山 美智子著 『お探し物は図書室まで』

 

文学部 3年生  畑田 亜美さんからのおすすめ本です。(KONAN ライブラリ サーティフィケイト)

書名 :  お探し物は図書室まで
著者 :  青山 美智子
出版社:ポプラ社
出版年:2020年

コミュニティセンターにある小さな図書室、そこにはレファレンスコーナーがあります。担当している司書さんは愛想が良いとは言えない女の人ですが、「何をお探し?」と穏やかで凛とした一声をかけられると心の内を打ち明けてしまいたくなります。偶々訪れた人々が彼女にレファレンスをしてもらい、おすすめの本と付録を貰って自分の悩みの答えを見つけていきます。

この図書室を訪れる人は婦人服販売員や家具メーカー経理部の人、元雑誌編集者、ニート、定年退職者と様々です。しかし、みな社会生活を送る中で上手くいかないことや、不安なことなど悩みを抱えています。私たち学生にも当てはまることもあります。自分にとって不都合で嫌なことが起こった時、どのように考えていますか。気分が落ち込んだ時、人の視野は思っているよりも狭くなっています。少しのヒントを得て見方を変えるだけで、新しい捉え方ができるようになり悩みが解消されるかもしれません。

また、レファレンスをしてくれる司書さんの応答は司書を目指す人から見ると理想的で羨ましく思えます。ポイントは2つです。1つ目はその人の話をよく聞いて、レファレンス質問で聞かれた本以外にも適切な本をすぐに提供できることです。その図書室のことを把握していたとしても、1人1人に合った本を即座に選ぶのは難しいでしょう。それを難なくこなし来館者に喜ばれる様はレファレンス担当者の理想と言えます。2つ目は好きなことをしながら多くの人に慕われていることです。彼女はレファレンスカウンターにいながら羊毛フェルトのマスコットを作っています。これがレファレンスの付録です。このような自由は公共図書館ではなかなかできないことだからこそ羨ましく感じます。そして、彼女の居場所は図書室ですが他のコミュニティセンターの利用者や来館者、司書補の女の子に慕われています。その関係性もまた理想的で憧れるような司書の姿です。

最後に、この本は今悩みを抱えている人や司書を目指している人に是非読んでみてほしいです。将来が少し明るく見えたり、救われたりするかもしれません。

小林 義祟著 『すみません、金利ってなんですか?』

 

文学部 3年生  畑田 亜美さんからのおすすめ本です。(KONAN ライブラリ サーティフィケイト)

書名 :  すみません、金利ってなんですか?
著者 :  小林 義祟
出版社:サンマーク出版
出版年:2020年

 経済の基本事項は高校の現代社会等で習ってきました。しかし、実際に日常生活で使う金利や預金などが何かというとよくわからないということは多いです。私は大学生になるまで自分で銀行に行くこと、さらにはATMを利用することは殆どありませんでした。そのため、初めて使うときは戸惑いました。また、アルバイトを始めてから年末に貰った年末調整の表もよくわかりませんでした。正直なところ、経済はややこしいので好きではないです。しかし、知らないままで良いかと言われると不安に思います。この本は税を中心に基礎事項を丁寧に教えてくれます。

 特に印象に残ったのは預金と年金です。将来のことを考えると預金をしておいた方が良いとは思いますが、どうするべきかよくわかりません。よくわからないままとりあえず貯金しています。この本を読めばお金の貯め方や運用の仕方がよくわかります。様々な預金形式や組織、投資などがあり、どれを選ぶかは自由です。それぞれのメリットとデメリットを知り、正しく選ぶことのできるようになると感じました。

 次に年金に関しては、将来もらえなくなるのではないかなどと言われているため、現役世代からすれば不安要素です。その回答を得られるだけでも良かったと思えます。そして、学生時代の免除制度や払い損ねてしまった場合の起源やどうなるのかについても言及されています。これに関しては、払い始めたところの学生は知っておくべきことだと感じます。私は詳しいことを全然知らなかったので、学ぶことができて本当に良かったと思いました。

 以上のことから、本書は社会人になるまでに読んでおきたい1冊だと感じました。学生のうちはまだしも、社会人になれば周りは当たり前の様に知っていて尋ねにくくなってしまうと思います。この本の企画、編集を担当された梅田直希さんのように何も知らず聞く機会を逃したまま社会人になる人は非常に多いでしょう。だからこそ多くの学生に読んでもらいたい本です。

伊藤亜紗 著『目の見えない人は世界をどう見ているのか』

書名 : 目の見えない人は世界をどう見ているのか(光文社新書)
著者 : 伊藤亜紗 著
出版社:光文社
出版年:2015年

甲南大学では、人間科学、知能情報学、生物学を専攻している方と、これらの分野に興味のある方におすすめです。つまり、福祉というより「認知」に関する本です。
感覚の一つを失った「人間」を知ることで、新しい視点から人間を知ることができる1冊です。

本書の中に「リハビリと進化は似ている」という節があります。(p.112-)著者によると、「事故や病気によって何らかの器官を失うことは、その人の体に、「進化」にも似た根本的な作り直しを要求」することが、環境によって身体を作り替えてきた生物の進化に似ている、とのこと。
確かに、パラリンピック等で活躍されている方をみていると、人間が新しい可能性を掴んで、新たな地平を切り開いているように思えます。
それは、何かを失わないとできないことなのか、一度考えてみませんか。

鈴木与平著『地方を結び、人々を結ぶリージョナルジェット 』

 

 

経営学部  2年生 卜田 真輝さんからのおすすめ本です。

書名 : 地方を結び、人々を結ぶリージョナルジェット
著者 : 鈴木与平 著
出版社:ダイヤモンド社
出版年:2014年

甲南大学に最も近い空港である神戸空港に近年就航したフジドリームエアラインズ(以下、FDA)の社長がお書きになった本です。この本では、航空ビジネスの基礎から、現在の日本の航空業界、日本社会が抱ええる課題、そしてそれらを解決するために生まれたFDAの経営理念や就航までの苦労、会社の未来について記されています。
私はこの航空会社が「地方空港の救世主」と言われ話題を呼んでいた事から注目していました。本を読み進めていくと、東京一極集中が叫ばれる中、「地方同士の交流を深める事が日本を再び盛り上げるきっかけになるのではないか」という著者である鈴木与平氏の熱意やこの会社の理念には非常に共感させられました。
しかし、新型コロナウイルスが猛威を振るい人と人との交流が制限される中で、著者が大切に思われている「地方と地方の人々の交流」をどう今の生活スタイルに合わせ、維持、発展させていくのか、という疑問が湧きました。
この航空会社を利用した際には、この本の内容を思い起こしながら、また、感じた疑問について自分なりの考えを突き詰めてみたいと思います。

皆様もぜひご一読ください。

村上 龍 著『コインロッカー・ベイビーズ』

法学部  1年生  Oさんからのおすすめ本です。

書名 : コインロッカー・ベイビーズ
著者 : 村上 龍 著
出版社:講談社
出版年:2009年

 みなさんは「コインロッカーベイビー」という社会現象を知っていますか。

 コインロッカーベイビーとは、鉄道駅などに設置されているコインロッカーに遺棄された新生児のことです。コインロッカーに新生児を入れることには、遺棄した側の匿名性が保持されやすい、異変に気づいても第三者が中を確認することは難しい、そもそもコインロッカーに人間を入れることが想定外であるという特徴があります。

 そのため、1971年にコインロッカーで乳幼児の死体が発見されて以来この問題はどんどん深刻化し、1973年には大都市のターミナル駅を中心に46件の遺棄事件が発覚しました。この問題を題材にして書かれたのが、『コインロッカー・ベイビーズ』です。

 この本の主人公のキクとハシは、生まれてすぐコインロッカーに入れられます。コインロッカーに入れられた子どもは殺されてから捨てられている場合もありますし、生きたまま入れられても亡くなってしまうことが多いのですが、キクとハシは奇跡的に助かりました。

 それから2人は乳児院で育てられますが、行動から病気かもしれない、ということで精神科医に連れていかれました。そこで乳児院のシスターたちは精神医から、生後わずか数十時間でコインロッカーの中で死に直面し覚えたであろう無意識下の恐怖、自分の肉体がそれに抵抗して打ち勝ったこと、2人を生き延びさせた強大なエネルギーの3つが脳のどこかにセットされており、そのエネルギーが自分で制御できないほど強くなっている、ということを告げられます。そして、2人はそのままでは正常な成長が出来ないので、そのエネルギーを眠らせる治療をすることになります。その治療法が、胎児が母親の体内で聞く心臓音を聞かせて2人をもう一度母親の体内にいた状態(強大なエネルギーを持つ前)に戻す、というものでした。

 治療は順調に終わり、シスターたちは最後に精神医から、変化した(変化をもたらした?)のが自分たちであることや、心臓の音を聞いて治療をしたことは人には教えてはいけないと言われました。

 乳児院で過ごしていたキクとハシは小学校入学の一年前に養子縁組が決まり、それからは里親に育てられました。2人が中学生になってしばらく経ったある日、あることがきっかけで、ハシが幼い頃病院で聞いた心臓の音をもう一度聞いてしまいます。それからというもの、ハシはあの日病院で聞いた音が分かるまで学校に行かないと言いだし、家にこもり、心臓の音を探すためにテレビから流れる音をずっと聞いていました。そしてついには理由も言わず東京へ家出をしてしまいます。ですがキクにはハシの行動が、母親を探すためだとすぐに分かりました。そんなハシを追うため、キクも東京に行きます。

 ここからコインロッカーで生まれた2人の人生は大きく変わり、壮絶な人生を送ることになります。

 私たちも、思い通りにならない事がたくさんあり、誰もが見えないコインロッカーに閉じ込められているかもしれません。そんな時にこれを読むと、閉ざされたコインロッカーから1歩踏み出すヒントをもらえるかもしれません。

 ハシは自分の生みの親に出会えるのか、キクはハシを追って東京に行き何をするのか、2人の破壊劇を見届けてみませんか。