2.おすすめの本」カテゴリーアーカイブ

今村夏子著『星の子』

  知能情報学部 4年生 三村亮介さんからのおすすめ本です。(KONAN ライブラリ サーティフィケイト)


書名:星の子
著者:今村夏子
出版社:朝日新聞出版
出版年:2017年

まずこの本の著作者の今村夏子氏は、デビュー作の『こちらあみ子』、2作目『あひる』共に子供の視点から見たゆがんだ家族の物語であった。今回の『星の子』も子供の視点か ら見た家族と宗教の物語である。
この物語の語り手は中学3年生の「わたし」こと林ちひろ。彼女が産まれてすぐの頃は体が弱く、産まれてから3ヵ月ずっと保育器に入っており、退院した後も熱を出し、母乳は飲まず、飲んでも吐き、中耳炎や湿疹等の症状に悩まされていた。そんなある日、ちひろの父が会社の同僚である落合さんから譲ってもらった「星のめぐみ」と呼ばれる水をきっかけにちひろの体調がよくなっていくが同時に両親が怪しげな宗教に入会することになる。
中学3年になり、ちひろは宗教の集会やイベントに行っている。高校生の姉が両親の目を覚まさせるべくあの手この手で策を試したが良い成果が得られず結局家を出て行ってしまう。親戚もちひろの身を案じ引き離そうとする。学校での立場は小学生の頃はあまり友達が出来なかったのだが、なべちゃんが転校してきてから話し相手になるようになり、何度か話さない時期があったが今では他の友達もできている。
そんなある日、なべちゃんから「あんたも?」、「信じてるの?」と聞かれるが、「わからない」とちひろは答える。このやり取りから、ちひろには怪しい集団である宗教集団もまともな集団である親戚の人たちや学校の友人達も否定できないということなのではないだろうか。
この物語は読者側から見ると、林家の悲惨な転落劇のように思えるが、語り手であるちひろは淡々と家族の内情を語っている。怪しい宗教集団を否定できないのも両親の愛情を実感しながら生きてきたからだろう。中学3年生になったちひろに変化を予兆する様も見受けられ、作者はその描写を繊細に描いている。
この物語の最後はちひろの人生の分岐点となっており、この物語で描かれたちひろの成長は自分と決別する勇気を持てたのではないだろうか。少なくとも私は、ちひろが両親と決別の道を選ぶ描写だと思っている。

キングスレイ・ウォード[著] ; 城山三郎訳 『ビジネスマンの父より息子への30通の手紙』

  知能情報学部 4年生 匿名さんからのおすすめ本です。(KONAN ライブラリ サーティフィケイト)

書名:ビジネスマンの父より息子への30通の手紙

著者:キングスレイ・ウォード[著] ; 城山三郎訳

出版社:新潮社

出版年:1987年

 本書は、いわゆるビジネスに携わるうえでの極意などが記されている。さらに、結婚や友情など、一見ビジネスとは無関係に思えることも、ビジネスに置き換えて何が大切であるかという価値観を問うてくる、自己啓発を促すような本となっている。そして本書の最も大きな特徴は、30通の手紙と題名にあるように、手紙ごとに内容が区切られており、今、自分が直面している場面に合わせたアドバイスを受け取ることが可能であるということだ。自己啓発の本は様々存在しているが、実際に読んでみると全く自分とは関係ない、どこか遠い話を聞いている気分になることも、中にはあると思う。しかし、本書では自分の置かれている立場に合わせて、本そのものが場面を展開してくれるため、自らのためになりやすいと私は感じた。中でも大学で勉強することについて書かれている章では今の自分の学ぶ姿勢について見つめなおす良いきっかけになったと思う。そのため本書は様々な人に的確なアドバイスをすることができるとても珍しい本であるともいえる。
 そして本書では、数々の偉人が残した名言も文章中に登場する。中でも私は「戦わないで征服する人はいない」というガブリエル・ビールの残した言葉にとても感銘を受けた。本書では、挑戦しなければ何も得ることはできない、同時に成長もないという使われ方をしている。この文章を読んだとき私は今まで、自分にはできないと決めつけ、何もしなかったことをとても後悔した。しかし、これから先何かに挑戦するときは、行動を起こさず後悔をするよりは、行動を起こし失敗して後悔したほうがいいと物事を前向きにとらえようと、そう思った。
 このように本書は様々な事についてアドバイスをくれるとても素晴らしい1冊だと私は思った。
 この書評を見た方は、是非1度、手に取ってみてほしい。

『週刊読書人』に、文学部・金澤舞奈さんの書評が掲載されました!

文学部歴史文化学科3年生、金澤舞奈さん(KONAN ライブラリーサーティフィケイト2級保持者)の書評が、2018年11月23日発行の『週刊読書人』(第3266号)に掲載されました!
金澤さんが評されたのは、J.K.ユイスマンスの『さかしま』です。週刊読書人ウェブでも、金澤さんの書評を読むことができます。
https://dokushojin.com/article.html?i=461

甲南大学図書館には、金澤さんがご紹介された河出書房の文庫版はありませんが、「さかしま」は所蔵しています。
 ユイスマン著;渋沢龍彦訳 
 『さかしま』 (世界異端の文学4)
  図書館3階書庫一般 953.7//96
読みたくなった方は、図書館2階カウンターで利用を申し込んでください。

『週刊読書人』は、書評専門の週刊新聞です。
日々出版される数多くの本の中から、各分野のプロの読み手が選りすぐった本の書評が掲載されています。
この『週刊読書人』には、全国の大学生が推薦する本の書評を書く「書評キャンパス」というコーナーがあります。大学生が投稿した書評を週刊読書人の編集者が丁寧にかつ厳しく校正した上で掲載されるコーナーです。文章力を身に着けたい大学生にとても人気があるのですが、週刊紙であるために、紙面には毎週1名しか掲載されません。
金澤さんは、KONAN ライブラリーサーティフィケイトで磨いた実力を発揮し、見事、紙面掲載を獲得されました!

『週刊読書人』の「書評キャンパス」に自分も応募してみたい、という方は、図書館2階ヘルプデスクにご相談ください。
また、『週刊読書人』には、全国の学生が薦める本、多様な分野の専門家が薦める本が多数紹介されています。これから読む本を探している方も、是非ご参照ください。
週刊読書人 https://dokushojin.com/

平川 新 『戦国日本と大航海時代』

  法学部 1年生 匿名さんからのおすすめ本です。(KONAN ライブラリ サーティフィケイト)

 

書名:戦国日本と大航海時代

著者:平川 新

出版社:中公新書

出版年:2018年

私が今回おすすめする理由は、戦国時代の武将たちが、当時ヨーロッパ諸国で盛んに行われていた新大陸発見と布教をどのようにして切り抜けていったかということが丁寧に書かれているからである。

今まで日本史か世界史どちらかの事しか書かれていない本ばかりであったが、本書は日本の戦国武将の視点から海外を見た内容が丁寧に書かれており、高校で日本史・世界史のどちらかだけしか学んでいない人に強く薦めたい。

特に私が興味を惹かれた部分は、伊達政宗が徳川家康の意向に反してキリスト教を広めようとしていたスペインと友好関係を築き、積極的に貿易をしようとしていたという解説である。なぜ、天下統一を成し遂げた強力な武士徳川家康に対して政宗はこのような大胆な政策を進めることができたのか、また、家康はどうしてここまでキリスト教を弾圧しようとしていたのかといったような鎖国に関するたくさんの疑問を丁寧に解説してあるので、今まで歴史を縄文時代から最後まで学んだけれどももう少し歴史を詳しく学びたいと思った人に特に薦めたい1冊である。

しかし、本書の最大の欠点は作者が日本史の専門家であるために、世界史の内容があまり盛り込まれていないというところである。本書の構成は、第1章でヨーロッパの大航海時代の大まかな解説があり、後の章でそれぞれの戦国武将の行った政策と対外関係について書かれているのだが、物語の中心がほとんど日本から見た視点で書かれているため世界史しか学んでいなかった人が読むとなると少し分かりにくい内容となってしまっている点が少し残念であった。

そのため、歴史の教科書を読みながら本書を読み進めていくと非常に理解しやすくなると思う。私は本を読むときには予備知識などいらないと思っていたのだが、今回の読書を終えて予備知識が必要な本があるということを知ることができた。
また、そうすることによって本の内容が頭に入ってきやすくなるということを実感することができたので、とても有意義な時間を過ごすことができた。

柚木 麻子 『終点のあの子』

  文学部 1年生 匿名さんからのおすすめ本です。(KONAN ライブラリ サーティフィケイト)

書名:終点のあの子

著者:柚木 麻子
出版社:文春文庫

出版年:2012年

本との出会いは常に偶然によるものがまるで必然のように惹きつけられているように思う。私が何気なく手に取ったこの小説も、足りないものを埋めるように、私の心に居座った。

フォーゲットミーノットブルーという色を知っているだろうか。この小説ではひとつの女子高等学校のひとクラスを舞台に、4人の主人公によるそれぞれの視点の4つの物語で、思春期特有の不安定な感情や、教室内の目に見えない階級制度など、息苦しくも現実味に溢れた青春が描かれている。

私がこの小説を読み思ったことは、登場人物の身近さと心理描写の真実さである。この小説に登場する人物は、学生時代の中にいる人や学生時代を過ごした人の、周りや記憶、自分の中に必ず存在するのである。それらは、この小説が、些細な悪意でさえも、平凡な日常でさえも突き刺さり共感できる理由だと考える。そして自分の記憶が重なり思い起こされるのである。

教室という空間は非常に異質だと考える。無作為に選ばれた複数の同年代の人間が、閉鎖的空間で毎日顔を合わさなければならないのである。心が不安定な幼い人間が浅い見識で階級を付け合う。その中には希代子のように普通の人間が戸惑いにより些細な悪意を行動に起こしてしまったり、奈津子のように成長を目指し背伸びをするが上手に好転しなかったり、華やかな美人の恭子と冴えない保田の交流の結末や、周りを下に見て自分を特別視してしまう朱里など、まるで自分の周りにいた誰かと、自分自身のような人物が経験したかのような現実味のある話が展開される。

そして、現実では人はなかなか大きく改心することはない。この物語でもそんな劇的なことは起きない。希代子との関係が悪化し、朱里はさらに自分を特別視し、本当に大切な友人でさえ無くしてしまいそうになる。そんな彼女が最後に気づく取り返しのつく失敗こそがこの物語の現実味のある大きく劇的な瞬間であると思う。彼女の終点が幸せなものであることを祈って。

川上 弘美 『神様』

  文学部 1年生 匿名さんからのおすすめ本です。(KONAN ライブラリ サーティフィケイト)

書名:神様
著者:川上 弘美
出版社:中公文庫
出版年:2001年

小説の物語は常に現実が描かれている必要は無いと私は考える。私は現実の中に当たり前のように非現実的なものが混ざり合っている物語が好きだ。共に居合わせないものが共存する短編集、それがこの小説だ。

くまにさそわれて散歩に出る。この一文から始まる「神様」から、四季折々に現れる不思議な〈生き物〉たちとのふれあいと別れが9つの物語で描かれる。この小説は一冊を通して、全ての物語に共通することとして、[不思議な生き物・出来事との遭遇、それを当たり前に受け入れるわたし]がある。そして、それに伴う[切なさ・喪失感]がテーマとなっている。

著者のデビュー作でもある「神様」は、最近3つ隣に引っ越してきた【くま】と河原に散歩に行く様子が描かれる。【くま】にまるで当たり前のように人として接する【わたし】と、【くま】の熊としての一面がとても対象的に印象深く感じられる。梨の畑に現れる不思議な生き物との夏の思い出が描かれる「夏休み」は、まるで夏の終わりのような小さな喪失感が胸に広がる物語となっている。5年前に死んだ叔父がふと現れてはとりとめのない会話を続ける「花野」では、【思ってもいないことを言えば消えてしまう】という設定が最後の叔父のひとことに切なさを含ませていると考えられる。壺から現れた【コスミスミコ】とのクリスマスが描かれた「クリスマス」では痴情の縺れで壺に閉じ込められたコスミスミコと過ごす倦怠感をまとった一夜が描かれている。雪の降る日に迷い込んだ世界で不思議な男と恋をした【カナエさん】が語る「春立つ」では、春と冬で変わる季節感の描写にちなんだ不透明な恋愛が幸せと答えの一つを描き出している。そして最後の話となる「草上の昼食」では、「神様」に続き私とくまの日常の終わりが描かれる。人として馴染めきれなかったというくまが私に永遠の別れを切り出して去ってしまう中、わたしはまた次の約束を手紙で求めてしまう。心情の描写が現れる言葉と行動が切なく、小説中で一番の喪失感を感じる物語となっている。

様々な解釈のできる独特な世界感に溺れてみてはどうだろうか。