2-1. 学生オススメ」カテゴリーアーカイブ

J.K.ローリング著『幻の動物とその生息地』

 文学部 2年生 匿名希望さんからのおすすめ本です。(KONAN ライブラリ サーティフィケイト)

書名: 幻の動物とその生息地
著者: J.K.ローリング
出版社:静山社
出版年:2017年

ハリーポッターシリーズの番外編、教科書と童話シリーズのなかの一冊。この本は、ハリーポッターの中で、実際に登場するものだ。この教科書を書いたのは、映画「ファンタスティック・ビースト」の主人公、ニュート・スキャマンダーだ。

「ファンタスティック・ビースト」といえば2018年に最新作が公開され、話題を呼んでいる。筆者も映画館に足を運んだが、ハリーポッターとの関連や、今後の展開が大いに期待される内容であった。さて、そのニュート・スキャマンダーだが、彼はハリーポッターが生まれるよりも、もっと前の時代の人だ。ハリーポッターの作品の中では、魔法動物の授業があったり、魔法動物と仲良くしている場面が登場する。しかし、魔法動物は昔、危険なものとしか捉えられていなかった。

そこで、学生時代から魔法動物の研究をしていたニュート・スキャマンダーは、魔法動物の保護活動に乗り出す。世界各国を回り、各地の魔法動物を研究し、魔法動物の生態を明らかにした。魔法動物は、種類やこちらの接し方によって危険ではない動物が多く、寧ろ危険な魔法動物のほうが少ないのだ。密輸から守らなくてはならないと、ニュートは主張している。

ここまで聞くと、ただのファンタジーのお話かと思うかもしれないが、この本を読んでいて、現実世界との関連があることに気が付いた。保護や密輸禁止もどうだが、動物の特徴に現実との接点を見つけた。「アッシュ・ワインダー」という動物は、魔法火を長時間ほったらかしにしていると作り出される魔法動物だ。この魔法動物が家にいると、火事が起こる。この動物の説明を読んだときに、人の火の不始末により、家が燃えたりするなどの悲しい出来事が起こるということが示唆されているように感じられる。決め手となったのが、「アッシュ・ワインダーは世界中に存在する」という一文だ。世界中どこでも起こり得る火の不始末による火事へ注意を促しているようだった。

このように、ただの物語かもしれないが、そこから新たに学ぶことや発見できることがある。

奥野修司・徳山大樹 著『怖い中国食品、不気味なアメリカ食品』

  法学部 1年生 匿名希望さんからのおすすめ本です。(KONAN ライブラリ サーティフィケイト)


書名: 怖い中国食品、不気味なアメリカ食品
著者: 奥野 修司・徳山 大樹
出版社:講談社
出版年:2017年

今回、私がこの本を紹介したい理由は、昨今日本に入ってくるアメリカ食品や中国食品の危険性と実態をありのままに実際の調査に基づきながら解説しているという点である。特に恐ろしいと思った点は、日本国外で生産されていても最終加工が日本国内であったら「国産」表記ができてしまうという点であった。この仕組みによって、粗悪な外国産の食材と気づかずに食べてしまっているという恐れがあるということが本書を読んで特に印象に残った点である。

私たちが今では当たり前のように食べているアメリカ産の牛肉には、国産牛肉の約30~40倍の合成ホルモンが含まれており毎日食べ続けていると幼少期からガンを発生させるリスクが上がってしまうという危険性があるにも関わらず、日本国内に輸入されている牛肉は残留ホルモンの検査をしていないという。また、中国産の米にはカドミウムなどの金属で汚染されている可能性があるが、そのまま日本に輸入され煎餅やファミリーレストランなどで提供されるブレンド米として私たちは知らないうちに食してしまっているのだ。だからといって完全にこれらの食材を食べずに生活していくことは今や不可能であると思う。少しでも外食や既製品の購入を減らし、食事を自ら調理することで前述のような危険な食べ物と遭遇する可能性を減らしていくことが最も効果的ではないかという結論に最終的に至った。

今回、本書では食べ物について触れてあったが、外国から輸入されているものには食べ物以外にも生活用品や衣料品など様々なカテゴリーの商品が毎日輸入されている。私が今日感じることは、国産=安全という根拠のない一般常識が世間に広がっているということである。国産だからといって必ずしも清潔で安全な工場で生産されているという確証はどこにもない。また、昨今増加している飲食店での悪ふざけ動画のように食材を適当に扱っている人がいるようでは、いくら安全な食材を使っていても食中毒を起こしたり、本来検出されるはずのない成分が検出されたりと、国産品の安全神話は近いうちに崩壊していくのではないかと思う。つまり輸入品=悪・国産品=善ということではないのである。結局、国産品・輸入品に関わらずどちらも慎重に購入を検討し自分自身が安全だと思える食生活を送り続けていくことが健康的な食生活への近道なのではないかと思う。

庄司克宏著『欧州ポピュリズム EU分断は避けられるか』

  法学部 1年生 匿名希望さんからのおすすめ本です。(KONAN ライブラリ サーティフィケイト)


書名: 欧州ポピュリズム EU分断は避けられるか
著者: 庄司 克宏
出版社:筑摩書房
出版年:2018年

近年、欧州がポピュリズム化している現状がある。このような現状に作者は、EUの組織がどのような存在であるか、EUの運営がどのようになっているかを述べ、ポピュリズムがなぜ欧州で発生したのか、これからのEUがどうなっていくのかをこの本で解説している。

また、このポピュリズム化する欧州に対してリベラルなEUという組織がどうあるべきか述べられている。EUという組織はリベラル・デモクラシーであり、多元主義、法の支配、多文化主義があげられる。それに対して、近年欧州に現れてきたポピュリズムとは、反エリートであり、強い主導者を求める傾向がある。このようにEUとポピュリズム化する流れのある社会の中で亀裂が生じている。EU組織は今、欧州ポピュリズムを封じ込めるよう模索している点があるが、果たしてよい結果となるのだろうか。EU組織やポピュリズム化する欧州について詳しく本書で書かれていて、これからの欧州について考えるに良い本である。

興味がある人はぜひ、読んでいただきたいです。

 

細川直子著『トルコの幸せな食卓』

  法学部 1年生 匿名希望さんからのおすすめ本です。(KONAN ライブラリ サーティフィケイト)


書名:トルコの幸せな食卓
著者: 細川 直子
出版社:洋泉社

出版年:1999年

私立の図書館でこの本を見つけたことがこの本との出会いです。

トルコは地理的に様々な文化が混じり合う所です。そのため、様々な食文化があります。

例えば、トマトといえばスペインを想像するかもしれません。しかし、トルコ料理の基本的なものはトマト料理なのです。トマトだけを売っている屋台があるそうです。

トルコ料理として思い浮かぶのはシシカバブーやトルコアイスかもしれませんが、実はそれ程トルコでは食べるものではなかったりするのです。とても驚きが隠せませんでした。

この本では、写真が数多く載っていて写真を見るだけでも十分に楽しむことができます。また、一つ一つの料理を作者の思い出とともに描かれているので、クスッとできる部分があったりします。話口調で書かれているので次々と読み進めることができます。メインとして書かれているのはトルコの家庭料理ですが屋台のことや文化の違いも載っていて、読んでいるとトルコに行きたいなと思う人がたくさん現れると思います。おなかがすいているときに読むのはお勧めしにくいです。読んでいると本当におなかがすいてきます。

本の最後のほうには、トルコ料理の作り方が載っています。日本の食材で作れるトルコ料理本はなかなか無いと思います。作者の料理に対するコメントもあって作らなくても楽しく読むことができます。

東西の文化の混じり合う所であり、黒海やエーゲ海、地中海に囲まれたトルコの食べ物のおいしさ、変わった文化を文字で味わってみませんか。チャイを飲みながら読むなんてどうでしょうか。

ぜひ、トルコ料理の魅力を知ってみてください。

山田悠介著『Aコース』

  知能情報学部 4年生 匿名希望さんからのおすすめ本です。(KONAN ライブラリ サーティフィケイト)


書名:Aコース
著者:山田悠介
出版社:幻冬舎

出版年:2004年

近年は様々な技術が発達し、VR技術が身近なものになった。自宅でゴーグルをはめたら誰でもVRの世界を体験することができる。Aコースはそんな時代の到来を予期していたかのような本である。
舞台となるのはバーチャワールドというゲームセンターのアトラクション。このバーチャワールドは自分たちが選んだ設定の場所に行き、現実世界と同じように動き回ることができる。着ている衣服の感覚や呼吸の感覚、さらには痛みまで再現してしまう、という代物である。高校三年生の藤田賢治は仲間たち4人と一緒にこのバーチャワールドで遊ぶことになる。選んだ設定はAコース。燃え盛る病院からの脱出を目的に、行く手を阻む侍骸骨を躱しながら仲間たちと協力して進んでいく。
一見よくあるSF小説の設定であるが、ゲームの攻略が進むにつれてこの物語は徐々に恐ろしさを帯びていく。ゲームは人を変える。現実世界では身を潜めていた内面が仮想世界で顕わになる。このゲームで一番恐ろしいのは、病院を取り巻く炎でもなく、いかなる攻撃も通用しない侍骸骨でもなく、人間であった。そして暴かれていくAコースの真実。
この物語を読み終わったころには、所詮創作話である、と一蹴するかもしれない。少なくともこの本が出版された年であれば何一つ不自然ではないのだが、現代の技術を目の当たりにしている私たちにとって、これは無関係な創作話ではなくなってきている。SNSを通じて名前も顔も知らない人たちとつながる時代である。多くの人が現実世界の自分とは異なる自分を抱えている。現実世界で纏っている殻を脱ぎ捨てて、内なる自分がSNSで活動し、つながりを広げている。その媒体がVRの世界に代わる日が来るかもしれない。少なくとも否定はできないはずである。そのような時代が来た時に、私たちはどう対応していくのか。どんな自分が現れ、どんな人間と関わっていくのか、そういうことを考えさせられる。この本は、そんなVRの世界を身近に感じる今だからこそ手に取ってほしい一冊である。

今村夏子著『星の子』

  知能情報学部 4年生 三村亮介さんからのおすすめ本です。(KONAN ライブラリ サーティフィケイト)


書名:星の子
著者:今村夏子
出版社:朝日新聞出版
出版年:2017年

まずこの本の著作者の今村夏子氏は、デビュー作の『こちらあみ子』、2作目『あひる』共に子供の視点から見たゆがんだ家族の物語であった。今回の『星の子』も子供の視点か ら見た家族と宗教の物語である。
この物語の語り手は中学3年生の「わたし」こと林ちひろ。彼女が産まれてすぐの頃は体が弱く、産まれてから3ヵ月ずっと保育器に入っており、退院した後も熱を出し、母乳は飲まず、飲んでも吐き、中耳炎や湿疹等の症状に悩まされていた。そんなある日、ちひろの父が会社の同僚である落合さんから譲ってもらった「星のめぐみ」と呼ばれる水をきっかけにちひろの体調がよくなっていくが同時に両親が怪しげな宗教に入会することになる。
中学3年になり、ちひろは宗教の集会やイベントに行っている。高校生の姉が両親の目を覚まさせるべくあの手この手で策を試したが良い成果が得られず結局家を出て行ってしまう。親戚もちひろの身を案じ引き離そうとする。学校での立場は小学生の頃はあまり友達が出来なかったのだが、なべちゃんが転校してきてから話し相手になるようになり、何度か話さない時期があったが今では他の友達もできている。
そんなある日、なべちゃんから「あんたも?」、「信じてるの?」と聞かれるが、「わからない」とちひろは答える。このやり取りから、ちひろには怪しい集団である宗教集団もまともな集団である親戚の人たちや学校の友人達も否定できないということなのではないだろうか。
この物語は読者側から見ると、林家の悲惨な転落劇のように思えるが、語り手であるちひろは淡々と家族の内情を語っている。怪しい宗教集団を否定できないのも両親の愛情を実感しながら生きてきたからだろう。中学3年生になったちひろに変化を予兆する様も見受けられ、作者はその描写を繊細に描いている。
この物語の最後はちひろの人生の分岐点となっており、この物語で描かれたちひろの成長は自分と決別する勇気を持てたのではないだろうか。少なくとも私は、ちひろが両親と決別の道を選ぶ描写だと思っている。