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第4回知的書評合戦ビブリオバトルを開催しました!

11月2日(水)12:10より、図書館カフェにて第4回ビブリオバトル(「全国大学ビブリオバトル2016~京都決戦」の予選会)を開催しました。
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5名の発表者がおすすめ本を紹介し、40名程度の観覧者が来られました。
発表者も観覧者も笑いが溢れ、盛会のうちに幕を閉じました。
文学研究会をはじめ、ご協力いただいた皆様、ありがとうございました。

★『ラブ&ポップ:トパーズⅡ/村上龍著』文学部人間科学科2年次生 磯野友里子さん
★『帰宅部ボーイズ/はらだみずき著』知能情報学部知能情報学科1年次生 大字瑛豊さん
★『挫折を経て、猫は丸くなった。:書き出し小説連作集/天久聖一編』文学部日本語日本文学科3年次生 中西聖也さん
★『消失グラデーション/長沢樹著』法学部法学科3年次生 吉井悠真さん
★『教師の心が折れるとき:教員のメンタルヘルス実態と予防・対処法/井上麻紀著』文学部人間科学科4年次生 水口正義さん
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チャンプ本は中西聖也さん発表の『挫折を経て、猫は丸くなった。:書き出し小説連作集』に決定しました。
中西さんは、12月3日(土)甲南大学ポートアイランドキャンパスで行われる地区決戦に出場します。
ビブリオバトルで発表された本は、図書館1階カウンター前に一部展示しています。(11月30日(水)まで展示予定)
ぜひ、ご覧ください!

瀬尾まいこ『戸村飯店青春100連発』

  文学部 3年生 匿名さんからのおすすめ本です。(KONAN ライブラリ サーティフィケイト)

書名:戸村飯店青春100連発
著者:瀬尾まいこ
出版社:文藝春秋
出版年:2012年
 *図書館所蔵分は、理論社から2008年に発行されたものです。

 この作品は、大阪の下町の中華料理店、戸村飯店で育った、外見も性格も異なる兄弟を描いた連作短編集です。人情味溢れ、吉本新喜劇が大好きで、阪神タイガースを熱烈に応援するという大阪の気質に馴染めず、東京の小説の専門学校に通い、家を出て行った要領のよい兄のヘイスケと、先述した大阪気質に馴染み、陽気でひょうきんで何事にも全力で取り組む弟のコウスケ。この物語は、彼らの青春や葛藤を如実に味わわせてくれます。  

 この作品の最大の魅力は、意外性だと私は感じています。陽気で悪知恵の働きそうな表情を浮かべた兄弟が描かれた表紙とは異なり、ヘイスケもコウスケもそれぞれ悩みを抱え、繊細で傷つきやすい部分も持つ少年として描かれています。また、2人が、それぞれに対して抱いていたイメージが、それぞれの本心とは違っている点も楽しめると思います。このことは、章ごとにヘイスケとコウスケの交互の視点で展開されているからこそ、味わえるものであると思います。読み進めるにつれて、周りが思う自分と本来の自分のギャップに苦しむという思春期ならではの苦しみに共感し、彼らを応援したくなってしまうはずです。そして、ヘイスケとコウスケは離れてみて初めて、相手の立場や事情や思いに気づき、自分が抱くイメージと相手の本心のギャップを埋めていき、少しずつ歩み寄っていきます。2人が心の底では、お互いを心配したり、理解しようとしたりしていることが感じられる文章も多く見られます。これらのことから、この物語を読むことは、兄弟の大切さや絆を再確認し、自分の家族との関わり方を見つめ直すきっかけになるということが言えるのではないのでしょうか。それに、目の前のことに全力で取り組むことで、見えてくるものや得られるものがあるということをすごく感じさせてくれる作品であるとも思います。生まれ育った場所に馴染めず、居場所を求めて新しい世界に飛び出したヘイスケと、居心地の良い場所から外に出るのを恐れながらも新しい世界に羽ばたいていこうとするコウスケ。それぞれの目的は違うけれど、彼らの心の奥底には“戸村飯店”があります。“戸村飯店”を主軸に展開される、青春群像劇を楽しんでみて下さい。

大沼紀子『ばら色タイムカプセル』

  文学部 3年生 匿名さんからのおすすめ本です。(KONAN ライブラリ サーティフィケイト)

ばら色タイムカプセル

書名:ばら色タイムカプセル
著者:大沼紀子
出版社:ポプラ社  
出版年:2012年

 この小説では、La vie en rose 「あなたたちの人生が、薔薇色であることを祈っています」という意味が込められた、女性専用有料老人ホームが舞台となっています。父と、その再婚相手のことを思って、家出を決行したが、何もかもに疲れて崖へと駆け出してしまった、主人公の森山奏(13才)は、先述した老人ホームの入居者達に助けられ、自分の年齢を20才と偽り、食事と住居完備の条件で雇われ、入居者達と深く関わっていき、自分が忘れていた大事なことを思い出したり、「生きること」「死ぬこと」について教わったりしながら、自分の人生を見つめ直していくというストーリーです。

 この作品に登場する、入居者達は、皆すごく魅力的です。バラの手入れに力を注ぐ遥さん、クラブ登紀子を営業する登紀子さん、明るくかしましくプロの乙女の友情を育む仲良し3人組の佐和子さん・千恵さん・万里さん、健康を気にせず、自分が食べたいものを作って食べる長子さん。彼女達は、自分に正直で、自由気ままに伸び伸びと過ごしている点は共通しているけれど、それぞれ個性的で愛すべきところや面白みがあるように描かれていると感じられました。そして、主人公の奏が、彼女たちの行動や姿から感じ取ったことや、彼女達が奏にかけた言葉を、読者が、自分の中で反芻し、「生きること」「死ぬこと」について考えを巡らせるように自然と促されてしまう点も、この作品の魅力の1つだと感じました。また、気を張って、物わかりのよい子であろうと背伸びしていた奏が、入居者達や等身大の中学生の山崎和臣との関わりを通して、少しずつ変わっていく様子も、読み応えがあります。   

 この物語を通して、あなたの人生が薔薇色であるためのヒントを見つけてみませんか。

ニッコロ・マキアヴェッリ『君主論』

理工学部 1年生 匿名さんからのおすすめ本です。(KONAN ライブラリ サーティフィケイト)

書名:君主論
著者:ニッコロ・マキアヴェッリ
出版社:講談社  
出版年:2004年
 

愚者は経験に学び、賢者は歴史に学ぶという。その言葉のように最近の本ばかりではなく、少し古い本にも目を受けてほしい。

さて、今回紹介する本はマキアヴェッリの書いた君主論だ。この有名な本は名前くらいは聞いたことのある人も多いだろう。私はこの本を歴史や政治に興味がある人は言うまでもないが、他にこれからリーダーになる人にも是非読んでみてほしいと思う。

この本は全26章で構成されている。

第1章では君主政体の種類とどうやってそれを獲得するのかを挙げている。

第2章からは様々な君主権について主に成立法別にまとめ、それぞれがその後に対してどのような影響を与えるのかを解説している。

第12章からは自己の軍によらない時に起こる問題と自己の軍を持つときにすべきことについてまとめている。

第15章からは君主が敵を増やさないためにどうしたらいいか、多くの君主がやっていたことは本当に有益か、他者に尊敬され指示を聞いてもらえるようにするためにはどうしたらいいか、周囲の人間が追従するようになるのを避けるにはどうしたらいいかなど、君主は普段どのようにふるまえばいいかを解説している。

第24章からは実際に書かれた時代のイタリアの現状を考え、どうしてそうなったのか、また、これからどう知ればいいのかを書いている。

 私は冒頭でリーダーになるかもしれない人にも読んでほしいと書いた。この本は多少汎用化する必要はあるだろうが、君主、つまり国のリーダーをやっていくうえで大切なことを過去の様々な事例を例に出しまとめている。

この本は目的のためなら手段をえらばないマキャヴェリズムの本の始まりだろう。この本の内容はリーダーとしてのふるまい方として現代で十分に通用することが書かれていると私は思う。

森沢明夫『ヒカルの卵』

文学部 2年生 匿名さんからのおすすめ本です。(KONAN ライブラリ サーティフィケイト) 

書名:ヒカルの卵
著者:森沢明夫
出版社:徳間書店
出版年:2015

  優しくて温かくて、元気がもらえるお話を読んでみませんか。 

 この物語は、故郷を愛する、自称ツイてる、養鶏農家の村田二郎が、村おこしのため、森の奥に世界初の卵かけご飯専門店をオープンさせようと計画するところから始まります。村落の人々の反対や幼馴染との仲違いなどの様々な困難に直面しながらも、自称ツイてる男、通称ムーさんは、周りの人々に励まされたり支えられたりしながら計画を実行していきました。

 私がこの物語をおススメする理由は三つあります。まず一つ目は、主人公のムーさんや村落の人々や幼馴染などの登場人物一人一人がすごく魅力的だからです。励まし合ったり、気遣い合ったりしながら頑張っている姿からは元気がもらえるのではないのでしょうか。

 それから二つ目は、この物語の形式が複数人の語りであるからです。このことには、様々な視点から物語が楽しめると同時に、それぞれの人の思いや抱えているものをより深く知れるという効果があるということを感じました。これにより、物語が重層的で味わい深いものになっているのではないのでしょうか。

 そして三つ目は、幸せの定義や生き方や考え方についても考えさせられる本であるからです。それは、ムーさんを始めとする登場人物一人一人が誰かを思いやって発する言葉や、地の文、物語全体、あとがきにまでも表れています。

 炊き立てのご飯で作った、ほっこりとしてふわふわの卵ご飯のような物語をぜひ味わってみて下さい。

東野 圭吾『容疑者Xの献身』

文学部 3年生 匿名さんからのおすすめ本です。(KONAN ライブラリ サーティフィケイト) 

書名:容疑者Xの献身
著者:東野 圭吾
出版社:文藝春秋 
出版年:2005年

 この作品は,テレビドラマ化もされた「探偵ガリレオ」シリーズの一つであり,映画化された作品である。

 物語は,「探偵ガリレオ」シリーズの主人公である,物理学者湯川学の大学時代の友人である石神哲哉が,隣人が殺害してしまった夫の死体の処理を手伝うところから始まる。石神は,湯川が唯一天才だと認める数学者である。そこから,石神の工作と湯川の推理との戦いが始まる。

 この作品の魅力は,やはり何と言ってもトリックにあると私は考える。犯人が石神の隣人であると分かっているため,刑事に見つかるかどうかハラハラしながら読み進めていく。しかし隣人が犯人である証拠は出てこず,石神の工作はどういうものだったのだろうと気になる。そして,最後になって石神の工作の種明かしを読んで,驚かない人はいないだろうと思う。また,すべての謎が解けた時,タイトルにもある通りの「献身」的な態度に私は思わず涙を流してしまった。これまでの伏線とトリック,そして結末は今まで読んだ中でも最高級であると私は思う。映画化もされていたのでそちらも見てみてほしい。小説ならではのトリックかと思いきや,映画でも見事に再現されていた。俳優陣の演技もすごく良く,映画でも思わず涙を流してしまった。余計な推測はせずに,純粋に読み進めて,トリックに騙されてほしいと思う。そして私と同じように,ぜひその結末に涙してほしい。