2-2. 教員オススメ」カテゴリーアーカイブ

前田忠弘先生(法学部)推薦 外山ひとみ著『ニッポンの刑務所30:all color』

『ニッポンの刑務所30:all color』外山ひとみ著 光文社
1階開架一般 326.52//2024

   女子刑務所での盆踊りやネイルアート、暴力団受刑者たちのド迫力運動会から、
   一足4万円の手作り最高級紳士靴、うどん製造、墓石の加工、大型船の建造など
   多岐にわたる仕事まで、全国の30施設を取材、撮影。-出版社HPより

 法学部 前田忠弘先生のお薦め本です。
 刑務所の中の様子が撮影されたオールカラーの写真集。
 一言で刑務所といっても105年の歴史を持つ奈良少年刑務所から
 ハイテク刑務所と呼ばれる美祢社会復帰促進センターまでいろいろ、
 そこに収容されている受刑者の生活や仕事もいろいろです。
 普段なかなか知ることのできない刑務所の構造や受刑者達のリアルな暮らしぶりを
 垣間見ることができる1冊になっています。
 
 著者の外山ひとみ氏は24年に渡り刑務所の取材をしてきました。
 同著者の『ニッポンの刑務所(講談社現代新書)』(1階開架小型 S081.6/2042/23)も
 併せて読んでみてください。

長濱宏治先生(フロンティアサイエンス学部)「地頭力を鍛え、クリエイティブな生き方を!!」

☆新入生向けの図書案内

著者: 細谷功
タイトル: 地頭力を鍛える : 問題解決に活かす「フェルミ推定」
出版者: 東洋経済新報社
出版年: 2007
配置場所: 図書館 2階中山文庫一般
請求記号: 336/H

 今、新入生のみなさんは、胸いっぱいに大きな希望を抱いているに違いありません。一方、それと同時に、これから大人として自分の人生をどのように生きていこうか、という漠然とした不安を抱えている人も少なくないのでは…。
 人生は「クリエイティブな生き方」そして「ルーチンワーカーとしての生き方」に大別できると思います。平凡な人生よりも、チャレンジングなそしてクリエイティブな生き方をしたくて、みなさんも甲南大学に入学してこられたのでしょう。クリエイティブな生き方をするためには、正しい目標の設定と、その目標を達成するための正しい戦略の選択が重要です。ただ、それらは、何となく雰囲気で決めることではありません。何を目指すのか、それをどのように達成するのか、それらは論理的に決定されなければいけません。大学を卒業した後、自分の人生を望んだように展開させるためには、今のうちから“地頭力”(論理的にものを考える力のベースとなる知的能力のこと)を鍛え、論理的に思考を築くためのトレーニングをしておく必要があります。そこで、私はみなさんに『地頭力を鍛える 問題解決に活かすフェルミ推定』という本を紹介します。
 フェルミ推定とは、「日本にある郵便ポストの数」など、実際に調査するのが難しくとらえどころのない数量を、知っている知識だけをもとに、合理的な仮定と論理性を駆使して、短時間で概算することです。フェルミ推定は知的ゲームとして、とてもおもしろいものです。加えて、近年、フェルミ推定がビジネスの現場で必要な“地頭力”を鍛える手法として注目され、多くの企業の面接試験で出題されるようになりました。フェルミ推定で地頭力を鍛え、みなさんの人生を論理的に、そしてクリエイティブに設計してください。
甲南大学図書館報 藤棚(Vol.30 2013) より

高永才先生(マネジメント創造学部)「『すぐれた意思決定』印南一路著」

☆新入生向けの図書案内

著者: 印南一路
タイトル: すぐれた意思決定 : 判断と選択の心理学
出版者: 中央公論社
出版年: 1997
配置場所: 図書館 1階特設
請求記号: 336.1/I54

 人生は意思決定の連続である。昼食の選択から大学受験に至るまで人は様々な意思決定を行う。「意思決定をしていない日は一日たりともない」と言っても過言ではない。そうであるにも関らず、意思決定プロセスとその質に対し分析を行う人はまれである。なぜなら、意思決定がどのようなプロセスを経て行われているか、さらにそれをどう分析すればよいか、それがどういう意味を持つのかがそもそも分からないためである。『すぐれた意思決定』印南一路(中央公論社)はこうした疑問に対し、ある種の答えを提供している。
 ただ、「答え」といっても意思決定において「これが正解である」という解を提示しているわけではない。この書籍は、意思決定プロセスとその分析のあり方、さらには、そこで人々が陥りがちな罠を示すことで、意思決定プロセスで直面する課題とその解決方法に対し、事前の推測や探索を可能にする。
 『すぐれた意思決定』は第一部で「意思決定とは何か」、「すぐれた意思決定とは何か」を述べると同時に、我々が一般的に世界を見る視点とその中で行っている情報処理のプロセスを示している。第二部では、人々が情報処理のプロセスにおいて犯しやすい課題に触れ、我々が限られた合理性の中で意思決定を行っている事を明らかにしている。第三部では、限られた合理性から脱出し高品質な意思決定を行うためには、規範的な意思決定論の規範性と記述的な意思決定論の実証的な根拠を同時に用いた診断的意思決定が重要であることを示している。第二部の内容は統計的推論やモデルシュミレーションなどを用いて「合理的な人間が行うだろう意思決定プロセス」の規範を導出しており、第三部の内容は「実際の意思決定がどのように行われているだろうか」という疑問のもと実験などの実証研究を通して人々の意思決定プロセスを導出している。
 学生生活の中で診断的意思決定方法を活用し意思決定を行うことで、質の高い判断力と選択力を養って頂きたく、この書籍を推薦する。
甲南大学図書館報 藤棚(Vol.30 2013) より

小出武先生(知能情報学部)「プログラマのための論理パズル ―難題を突破する論理思考トレーニング―」

☆新入生向けの図書案内

著者: Dennis E. Shasha 吉平健治(訳)
タイトル: プログラマのための論理パズル : 難題を突破する論理思考トレーニング
出版者: オーム社
出版年: 2009
配置場所: 図書館 1階特設
請求記号: 007.64//2240

 公務員試験には、「数的推理/判断推理」という分野があります。この本はプログラミング能力を伸ばしたい人だけでなく、公務員を目指す人にもお勧めです。難問も含まれていますが、楽しみながら論理思考力を鍛えることができます。
 最初の問題を(表現を変えて)紹介します。「兄弟で同じ2つのケーキを分けるゲームを考える。兄は2つのケーキに一度ずつナイフを入れ、それぞれ2つの部分に分ける。弟は切り分けられたケーキの好きな方を選ぶことができるが、選択権があるのは2つのケーキのうちの1つのみである。ゲームの流れは以下のようになる。まず兄は1つ目のケーキを好きなように切り分ける。それを見て、弟は好きな方を選ぶか、選ばないかを選択する。選んだ場合は、2個目のケーキを切り分けた後で好きな方を選ぶのは兄になる。選ばない場合は、2個目のケーキを切り分けた後で好きな方を選ぶのは弟になる。さて、兄弟のどちらもできるだけ多くケーキを食べたいとすると、兄はどのように切ればより多くのケーキが食べられるだろうか?」
 もし兄が1つ目のケーキを半分ずつに切った場合、弟はどちらを選んでも半分ですので、ここでは選択権は行使しません。弟は2つ目のケーキで大きい方を選びます。それが分かっているので、兄は自分が多く取るために、2つ目のケーキも半分に切ります。したがって、兄が1つ目のケーキを半分に切ったときには、兄弟ともに合計1個ずつ取ることになります。もし兄が1つ目のケーキを限りなく小さなかけらと残りのほとんどに分けた場合はどうでしょう?その場合、弟は1個目で選択権を行使して、ほぼ1個の大きい方を選ぶでしょう。2個目の選択権は兄にあるので、兄はまた同じ切り方をして、ほぼ1個を獲得できます。この結果も兄弟共に合計1個ずつ食べることになります。では兄はどう切ればたくさん取れるでしょうか?
 この問題の答えは、「兄は1個目のケーキを1:3になるように分ける」です。実はこの問題は「ウォームアップ問題」で、本にはこの問題の発展版が本来の問題として載っています。みなさんもぜひこの本を読んで、論理思考トレーニングを楽しんで下さい。
甲南大学図書館報 藤棚(Vol.30 2013) より

水澤克子先生(スポーツ・健康科学教育研究センター)本を読もう。美しい文章を読もう。

☆新入生向けの図書案内 
 ネットや多くのメディアツールで配信される情報はその場限りのものである。テレビやラジオのニュースであれば、余計な修飾語は必要なく、簡潔でなくてはならない。ネットで配信される文章は、表現がおかしかったりクレームがつけば、すぐに削除されたり、書き直されてしまう。
 ところが、書籍として残る小説や論文はそういうわけにはいかない。いったん、世に出てしまえば、簡単には書き直せない。
 主語、述語、形容詞句、多くの要素で意味のある文が作られる。そして、全体としての形を成すためには一つ一つの文の組み合わせ方が重要になってくる。一文が美しくても、それが組み合わさった時に、全体として意味をなさねば、せっかくの美しい一文が台無しになる。
 書籍として世に出る文章というのは、世に出るまでに著者や編集者がその文章を何度も推敲しているものなのである。だからこそ多くの人がその本を読んで内容がわかるし、広まっていくものであろう。ある書籍が長きにわたって読み継がれている、多くの人に読んでもらえているということは、その書籍の内容ももちろんであるが、文章が読みやすく、美しいということでもあると思う。そのような文章を読むことは、自分が使う言葉や文章も美しく、読みやすくなるということにつながるだろう。
 美しい言葉、その場にふさわしい言葉を使えるようになるためにも、多くの本を読んでほしいと思う。
甲南大学図書館報 藤棚(Vol.30 2013) より

池田公司先生(経営学部)「『失敗の本質』に学ぶ経営学」

☆新入生向けの図書案内

著者: 戸部良一 ほか
タイトル: 失敗の本質 : 日本軍の組織論的研究
出版者: ダイヤモンド社
出版年: 1984
配置場所: 図書館 1階特設
請求記号: 391.3/Sh79

著者: 野中郁次郎 ほか
タイトル: 失敗の本質 : 戦場のリーダーシップ篇
出版者: ダイヤモンド社
出版年: 2012
配置場所: 図書館 1階特設
請求記号: 391.3//2010

 野中郁次郎教授(一橋大学名誉教授)は、わが国を代表する経営学者の一人であり、欧米や世界各国でIkujiroNonaka の名は広く知られている。野中教授が、竹内弘高教授(一橋大学名誉教授、ハーバード・ビジネス・スクール教授)との共著で出版した『知識創造企業』(TheKnowledge-Creating Company )は、「暗黙知」と「形式知」の相互作用によるダイナミックな知識創造プロセスを明らかにしたことから、新しい経営学の理論として国際的に高く評価されている。英語版(Oxford University Press)が1995 年に出版され、全米出版家協会の「ベストブック・オブ・ザ・イヤー」が授与されている。同書の日本語版(東洋経済新報社)は1996 年に出版されている。
 野中教授の著書としては、この『知識創造企業』が代表的であるが、2011 年に起こった福島第一原発の事故をうけて、同教授が30 年ほど前に執筆した古典的名著『失敗の本質:日本軍の組織論的研究』(ダイヤモンド社、1984 年)が再び熱い注目を集めている。ここで、読者の多くは、書名の中の「日本軍の」という文言に戸惑うかもしれない。著書を英語で書くような国際派の経営学者が、なぜ第2次世界大戦における旧陸海軍の失敗を研究しているのか疑問に感じるであろう。
 組織論の立場からみると、旧陸海軍の失敗には学ぶべき点が多い。野中教授は、こうした観点から戦況を左右した旧陸海軍の主要な六つの作戦を取り上げ、組織の抱える問題点を抽出し、その分析と解釈によって行政機関や企業など現代の組織にも当てはまる教訓を導いている。
 野中教授は、福島原発事故独立検証委員会のメンバーを務めた経験から、2012 年7 月に続篇、すなわち『失敗の本質:戦場のリーダーシップ篇』(ダイヤモンド社)を公表している。1984年に公表された『失敗の本質:日本軍の組織論的研究』と合わせて読むことをお勧めしたい。なお、1984 年の『失敗の本質』は、中公文庫から廉価な文庫本としても出版されている。
甲南大学図書館報 藤棚(Vol.30 2013) より