2-1. 学生オススメ」カテゴリーアーカイブ

住野よる著 『また、同じ夢を見ていた』

知能情報学部   4年生 Hさんからのおすすめ本です。

書名 : また、同じ夢を見ていた
著者 : 住野よる著
出版社:双葉社
出版年:2016年

 

 生きる意味が分からない、自分にとっての幸せって何だろうと悩んでいる人いませんか?

 「幸せ」をテーマに1人の女の子が日々葛藤する物語。主人公の奈ノ花は小学生の女の子。読書好き。「人生は○○なようなもの」というのが口癖。この本の中に出てくる奈ノ花の独特なこの口癖がとても面白い。

 周りよりもすこしませていて、小学校で少し浮いている奈ノ花が国語に授業で課題となった「幸せとはなにか?」について答えを探す。奈ノ花は3人の女性にアドバイスをもらいながらこの答えを探す。しかしあることがきっかけで3人とも姿を消してしまう。3人は何者だったのかを読者自身が考え、推理するのもこの本のもう1つの楽しみ方だ。

 人よりも賢い小学生の女の子が、年齢も雰囲気もバラバラな出会った友達との交流を通じて考える。ちょっと不思議な、心温まる。奈ノ花の疑問を受け止めて、真摯に答えてくれる大人達。その言葉をしっかり考えて、少しずつ成長していく奈ノ花。読んでいてハッとする場面が多かった。中盤にかけて奈ノ花の周りで起こる不思議な体験も、読んでいくにつれて伏線が回収されていく心地よさもあって良き読書感。最後の最後にようやくすべてのことがつながる。大きな感動というよりは、心温まるストーリー。

 幸せとは何かを考えさせられる作品。幸せとはなにかの回答が小学生が導き出したものとは思えないものだった。人生で一度も後悔のない選択肢を取り続けるのは無理だと思う。でも、選択し続けた先にこその今があり、今幸せを感じていることが一番大切と思わされた。人生とは、幸せとは。確実に言えることは、この作品に出会えて幸せだということだと思う。

 この本を読む人すべてに幸せが訪れますように。

三浦しをん著 『きみはポラリス』

知能情報学部   4年生 Hさんからのおすすめ本です。

書名 : きみはポラリス
著者 : 三浦しをん 著
出版社:新潮社
出版年:2011年

 

 文庫本の表紙のイラストがとてもポップなものだが、胸キュンの甘い言葉がいっぱいの恋愛小説を想像していたが全く違った。ジャンルは恋愛だけど、キュンではない。「普通」の恋人じゃなく、傍らにいる人を思う話が集められている。最強の恋愛短編集。

 寝る前に読んでモヤモヤとした気持ちが湧いて眠れなくなるほど、愛や恋心の多様な形態が書かれていた。様々な愛の形の話が詰まっていて、いろんなテイストが味わえる。

 リアルかつこの広い世界であれば、どこかにこんな恋愛もたくさんあるんだろうけど、普通とは少し違う、だけどそれぞれ間違いなく正真正銘の愛のかたちを集めた恋愛小説集。

 「恋愛」と一言で表しても、そこに含まれる感情には愛しさ、寂しさ、憎さなど様々なものがある。誰かを好きだと、大切だと思う感情はだれしも持っていると思う。ただ、それを自分自身ですら認識できないこともある。後になって認識する事もある。甘く華やかな恋愛や辛く苦しい恋愛だけが恋愛ではない。そんな曖昧な感情を持つのが「恋愛」だと、この本を読んでそう思った。このすべての物語の1から10まで共感することはできなかったけど心が満たされた気持ちになる。

 11個の物語が詰まっている中で、私がいちばん好きなのは「私たちがしたこと」という話だ。主人公の朋代は高校時代、夜道で襲われた。その相手を彼氏の黒川は鉄パイプで殺してしまう。そして二人で穴を掘って埋める。許されない罪を犯したが、誰にもばれなかった。そんな大きな二人の「秘密」を抱えて話が進んでいく。サスペンス要素もありながら、この「秘密」で、二人がどんどん依存しあっていくのが面白かった。

 この物語のように、すべての物語は「秘密」がキーワードである。「秘密」がいろんな展開を生んでいく。最強の恋愛短編集。この意味が読み終わるころにわかります。

伊坂 幸太郎著 『砂漠』

マネジメント創造学部   2年生 Mさんからのおすすめ本です。

書名 : 砂漠
著者 : 伊坂 幸太郎 著
出版社:実業之日本社
出版年:2005年

 大学生活は人生のオアシスであり、いずれは外に広がる 「社会」という砂漠に出なければならない。冷めた性格でいつも物事を俯瞰的に見ている主人公の北村は、オアシスで安全な日々を送る中、砂漠で苦労する人々や厳しい現実を見て不安な感情を抱く。

 そんな北村はある日、大学で4人の友人に出会い非日常な事件に巻き込まれていく。ボウリング、合コン、 麻雀、超能力、通り魔など様々な事件に巻き込まれる北村だが、個性的な友人たちとこの事件を共有することで次第に成長し、「あり得ないことを実現できるかもしれない」と小さな希望を抱き始める。 読み進めていくうちに、私たち読者もまた希望を抱かずにはいられなくなる。

 この作品の見どころは北村の成長だけではない。 この作品では4人の個性的な友人が登場するが、その中でも西嶋はとびぬけて変人だ。 西嶋は自分に素直で信念のある熱い性格の持ち主で常に堂々としている。しかし、大学では少し浮いた存在だ。そんな西嶋は大学の飲み会でいきなり演説を始める。 最初は笑っていたものの次第に不満の色をあらわにし始める。

 そんな中、西嶋は一切動じず「この国の大半の人間たちはね、馬鹿を見ることを恐れて、何にもしないじゃないですか。 馬鹿を見ることを死ぬほど恐れてる、馬鹿ばっかりですよ。」「その気になればね、砂漠に雪を降らすことだって、余裕でできるんですよ」と強く語る。そんな西嶋の演説を冷めた目で見つめながらも北村は少し期待してしまう。 西嶋なら砂漠にオアシスを生み出せるのではないか、と。

 ここまで北村と西嶋の2人について書いたが、他にも少し軽薄な烏井、超能力者の南、不愛想な美女の東堂など魅力的な人物たちが登場し、友情や青春の良さを教えてくれる。 未熟だけど様々な経験を経て成長していく彼らからは目が離せない。

 この物語は一歩踏み出せずにいる人達に是非読んでもらいたい。この本を読めばきっと、自分には何でも叶えられるような気がして、背中を後押ししてもらえるだろう。 諦めずひたむきに努力し続ければもしかしたら私達にも砂漠に雪を降らすことができるのかもしれない。

【第3回 甲南大学書評対決】 真山仁 著 『オペレーション Z』

10月14日(木)に開催された第3回 甲南大学書評対決(主催:甲南大学生活協同組合)で紹介された本です。

経済学会チーム 松本さんからのおすすめ本です。

書名 : オペレーション Z
著者 : 真山仁 著
出版社: 新潮文庫
出版年:2020年

「日本の財政赤字1000兆円」と聞いて深刻な気持 ちになる人は今の日本にどれだけいるだろう。この本を 読むまでは私もピンとこなかった。

日本の財政を簡単 に説明すると、 「1億円以上の借金があるのに、500 万の年収で1千万使うのをやめられない」 いつ財政破 綻してもおかしくない状態だ。 総理大臣の江島隆盛 は国債頼みの政治を終わらせるべく、国家予算の半 減を決断する。

今までの私は、年々増えていく国家財政の歳出の原因を公共事業や防衛費、 公務員の給与だと無意識のうちに考えていた。しかし、それら すべてを合わせても16%。 つまり、 国家予算を半減 するためには歳出の半分を占めている社会保障費と 地方交付税交付金をゼロにするしかない。

著者は 度々ドラマ化された 「ハゲタカ」シリーズなど数多くのヒッ ト作を生み出してきた真山仁。「圧倒的リアリティ」が ありつつ、同時に読者に分かりやすく伝える 「物語の力」で気づけば引き込まれている。 私は今まで「自分には政治の話は無関係」だと思っていたし、もちろん、日本の財政に ついても無関心だった。 しかし、読み終わって気づかされた。

「問われているのは、そん な私も含めた有権者1人1人なのだと」

【第3回 甲南大学書評対決】 ナポレオン・ヒル 著, 田中 孝顕訳『思考は現実化する(上・下)』

10月14日(木)に開催された第3回 甲南大学書評対決(主催:甲南大学生活協同組合)で紹介された本です。

共通教育センター/スポーツ・健康科学教育センター 山崎俊輔 先生からのおすすめ本です。

書名 : 思考は現実化する
著者 : ナポレオン・ヒル 著 , 田中 孝顕 訳
出版社: きこ書房
出版年:2014年

成功者と呼ばれる人々は、恐怖や悲しみ、貧困、肉体的苦痛など、どのような状況のもとでも現状を打破するために、つねに積極的な思考や心構えを維持する努力をしています。

スポーツの世界でも同様のことが言えます。オリンピック ・パラリンピックで素晴らしい活躍をする選手の姿の陰には、多くの試練や困難を克服し逆境を跳ね返し、勝利に向かって弛まぬ努力を惜しまない姿があります。

私自身、これまで失敗の連続で、とても成功者とは言えない立場ですが、いかにして願望を実現するために考え、行動し、「成功」と現実化 いう階段を駆け上がったのか、その答えを解く共通したカギが本書で知ることができるように思います。

読み終わると多くの希望と勇気を頂き、得した気持ちになります。

【第3回 甲南大学書評対決】 渋沢栄一 著 『論語と算盤』

10月14日(木)に開催された第3回 甲南大学書評対決(主催:甲南大学生活協同組合)で紹介された本です。

共通教育センター/スポーツ・健康科学教育センター 山崎俊輔 先生からのおすすめ本です。

書名 : 論語と算盤
著者 : 渋沢栄一 著
出版社: 日本能率協会マネジメントセンター
出版年:2017年

渋沢栄一の名前をご存じの方は多いと思います。 現在、「日本資本主義の父」とも称され る渋沢栄一を主人公に幕末から明治までを 描く NHKの大河ドラマ『青天を衝け』 は、人気番組として2021年(令和3年)から放送されています。 私もこの番組を楽しみに視聴している一人です。

「論語と算盤」は大正5年に出版されたものを現代語訳にしたものです。 渋沢が実業を行う上での規範にし、 世の中で身を処していくよりどころに したのが、論語でした。 渋沢は江戸、明治、大正、昭和 (天保11年2 月13日 〈1840年3月16日〉 – 昭和6年〈1931年11月11日〉) と いう時代を生き、 近代日本を作ってきた一人です。

論語の基本概念とさ れる中庸に基づき、 常識、調和、節度を身に付けることを大切にし、自分の利益のみを求めるのではなく、他者や公益を優先させる姿勢を奨励し ています。 基本的には未来志向の人であり、急激な時代の流れで起こる 様々なことがらの因果関係に着目し、 原因や理由をいつも論理的に捉 え、そこから未来の仮説を立てる。 立てるだけでなく実践した人です。 「理論と実践」を一致させているところに、私自身の人生の指針としたいものを感じます。

今まさにこのコロナ禍の中で 混迷する我々に、何か大切な新しい気付きと将来を明るく夢を持って生き抜く勇気を与えてくれる一冊であると思っています。