2-1. 学生オススメ」カテゴリーアーカイブ

ニッコロ・マキアヴェッリ『君主論』

理工学部 1年生 匿名さんからのおすすめ本です。(KONAN ライブラリ サーティフィケイト)

書名:君主論
著者:ニッコロ・マキアヴェッリ
出版社:講談社  
出版年:2004年
 

愚者は経験に学び、賢者は歴史に学ぶという。その言葉のように最近の本ばかりではなく、少し古い本にも目を受けてほしい。

さて、今回紹介する本はマキアヴェッリの書いた君主論だ。この有名な本は名前くらいは聞いたことのある人も多いだろう。私はこの本を歴史や政治に興味がある人は言うまでもないが、他にこれからリーダーになる人にも是非読んでみてほしいと思う。

この本は全26章で構成されている。

第1章では君主政体の種類とどうやってそれを獲得するのかを挙げている。

第2章からは様々な君主権について主に成立法別にまとめ、それぞれがその後に対してどのような影響を与えるのかを解説している。

第12章からは自己の軍によらない時に起こる問題と自己の軍を持つときにすべきことについてまとめている。

第15章からは君主が敵を増やさないためにどうしたらいいか、多くの君主がやっていたことは本当に有益か、他者に尊敬され指示を聞いてもらえるようにするためにはどうしたらいいか、周囲の人間が追従するようになるのを避けるにはどうしたらいいかなど、君主は普段どのようにふるまえばいいかを解説している。

第24章からは実際に書かれた時代のイタリアの現状を考え、どうしてそうなったのか、また、これからどう知ればいいのかを書いている。

 私は冒頭でリーダーになるかもしれない人にも読んでほしいと書いた。この本は多少汎用化する必要はあるだろうが、君主、つまり国のリーダーをやっていくうえで大切なことを過去の様々な事例を例に出しまとめている。

この本は目的のためなら手段をえらばないマキャヴェリズムの本の始まりだろう。この本の内容はリーダーとしてのふるまい方として現代で十分に通用することが書かれていると私は思う。

森沢明夫『ヒカルの卵』

文学部 2年生 匿名さんからのおすすめ本です。(KONAN ライブラリ サーティフィケイト) 

書名:ヒカルの卵
著者:森沢明夫
出版社:徳間書店
出版年:2015

  優しくて温かくて、元気がもらえるお話を読んでみませんか。 

 この物語は、故郷を愛する、自称ツイてる、養鶏農家の村田二郎が、村おこしのため、森の奥に世界初の卵かけご飯専門店をオープンさせようと計画するところから始まります。村落の人々の反対や幼馴染との仲違いなどの様々な困難に直面しながらも、自称ツイてる男、通称ムーさんは、周りの人々に励まされたり支えられたりしながら計画を実行していきました。

 私がこの物語をおススメする理由は三つあります。まず一つ目は、主人公のムーさんや村落の人々や幼馴染などの登場人物一人一人がすごく魅力的だからです。励まし合ったり、気遣い合ったりしながら頑張っている姿からは元気がもらえるのではないのでしょうか。

 それから二つ目は、この物語の形式が複数人の語りであるからです。このことには、様々な視点から物語が楽しめると同時に、それぞれの人の思いや抱えているものをより深く知れるという効果があるということを感じました。これにより、物語が重層的で味わい深いものになっているのではないのでしょうか。

 そして三つ目は、幸せの定義や生き方や考え方についても考えさせられる本であるからです。それは、ムーさんを始めとする登場人物一人一人が誰かを思いやって発する言葉や、地の文、物語全体、あとがきにまでも表れています。

 炊き立てのご飯で作った、ほっこりとしてふわふわの卵ご飯のような物語をぜひ味わってみて下さい。

東野 圭吾『容疑者Xの献身』

文学部 3年生 匿名さんからのおすすめ本です。(KONAN ライブラリ サーティフィケイト) 

書名:容疑者Xの献身
著者:東野 圭吾
出版社:文藝春秋 
出版年:2005年

 この作品は,テレビドラマ化もされた「探偵ガリレオ」シリーズの一つであり,映画化された作品である。

 物語は,「探偵ガリレオ」シリーズの主人公である,物理学者湯川学の大学時代の友人である石神哲哉が,隣人が殺害してしまった夫の死体の処理を手伝うところから始まる。石神は,湯川が唯一天才だと認める数学者である。そこから,石神の工作と湯川の推理との戦いが始まる。

 この作品の魅力は,やはり何と言ってもトリックにあると私は考える。犯人が石神の隣人であると分かっているため,刑事に見つかるかどうかハラハラしながら読み進めていく。しかし隣人が犯人である証拠は出てこず,石神の工作はどういうものだったのだろうと気になる。そして,最後になって石神の工作の種明かしを読んで,驚かない人はいないだろうと思う。また,すべての謎が解けた時,タイトルにもある通りの「献身」的な態度に私は思わず涙を流してしまった。これまでの伏線とトリック,そして結末は今まで読んだ中でも最高級であると私は思う。映画化もされていたのでそちらも見てみてほしい。小説ならではのトリックかと思いきや,映画でも見事に再現されていた。俳優陣の演技もすごく良く,映画でも思わず涙を流してしまった。余計な推測はせずに,純粋に読み進めて,トリックに騙されてほしいと思う。そして私と同じように,ぜひその結末に涙してほしい。

有川 浩『図書館戦争』

文学部 3年生 匿名さんからのおすすめ本です。(KONAN ライブラリ サーティフィケイト) 

図書館戦争 図書館戦争シリーズ(1) : 角川文庫(日本文学): 有川浩

書名:図書館戦争
著者:有川 浩
出版社:角川書店 
出版年:2011年

  この物語はシリーズ化されており,別冊2冊も含めて全部で6冊ある。今回はシリーズ全体の書評を書こうと思う。

 「メディア良化法」という法律が成立した仮想の時代を舞台に,メディア良化法と対立する力を持った図書隊という組織に属する主人公たちが活躍する物語である。

 映画化もしており非常に人気のシリーズであるが,私がこの物語にハマった理由は,「胸キュン」である。切迫した戦闘シーンがある一方で,主人公の笠原郁という女の子が健気に恋をしているシーンは思わずキュンとしてしまう。さらには,笠原が所属する特殊部隊内での絶妙な掛け合いも魅力である。掛け合いのシーンでクスッとし,戦闘シーンでドキドキハラハラし,恋の場面でキュンとする。このシリーズでは様々な楽しみが味わえるのである。

 個人的には一巻目の「図書館戦争」は設定のベースとなる基本情報の説明が多く,笠原の恋模様もあまり描かれないので,堅苦しい印象を受け,少々難しいと感じた。しかしその設定を理解した上で二巻,三巻と読み進めていくとどんどんおもしろくなっていく。なので,一巻目で諦めず,二巻目に手を出してほしい。ハマること間違いなしである。

 もちろん,映画化した方も見てほしい。若い女性向けだと思われがちだが,アクションシーンは本当に圧巻で見応えがあるし,コメディーシーンも笑えるため,幅広い世代に勧めたい作品である。

石川 幹人『だまされ上手が生き残る 入門! 進化心理学』

理工学部 4年生 地主 大輝さんからのおすすめ本です。(KONAN ライブラリ サーティフィケイト) 

だまされ上手が生き残る

書名:だまされ上手が生き残る 入門!進化心理学
著者:石川 幹人
出版社:光文社 
出版年:2010年

 「進化心理学」というと、このレビューを読んでいただいている方にとって若干聞きなれない言葉かも知れない。かいつまんで言うならば、進化生物学と認知心理学の間にある学問で、我々が良い出来事に関して温かみを持ったり、何か悪いことがあればそれに対して憤ったりする。こういった感情は一体いつどのようにできたのだろうか。

 例えば本書冒頭にある例を一つ紹介したい。

 ゴキブリが怖いという感情がある。ゴキブリは怖いものだと教えられてなどいないのに、少なくともかのディズニー作品のようにゴキブリと一緒に掃除しようなどとは思わない。(注:ディズニーの件は本書にはないのと、このシーンは誰もしようとは思わないから面白いのであり、批判の意図はないことを付け足しておく)ゴキブリに恐怖心を持っている生物はゴキブリがいるような不衛生な場所を避けることが出来、寿命を延ばすことができた。逆に恐怖心を持たなかった生物は淘汰され、結果として我々がゴキブリを嫌うようになったと本書は主張する。

 このレビューを書いていてふと思ったことは、遥か昔の微生物が時代とともに”形”を幾度となく変えて人類が誕生したことは気にしても、我々が恐怖を抱いたり悲しんだりすることについて、これが何故そのような出来事に対してそのように感じることができるのかについて考えたことがない。この本は、そんな人間の、「中身」について、意外な一面を教えてくれたのかもしれない。

宮部 みゆき『悲嘆の門』

理工学部 4年生 地主大輝さんからのおすすめ本です。(KONAN ライブラリ サーティフィケイト)

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書名:悲嘆の門(上)、(下)
著者:宮部 みゆき
出版社:毎日新聞社 
出版年:2015年

 宮部さんの作品は以前から読んでおり、RPG好きな宮部さんらしいファンタジー小説は好きだなと思っていました。特に印象に残っていたのは「英雄の書」という幼い女の子が行方不明の兄を探しに異世界を旅するお話が、ラストのハッピーエンドともつかない切ないものだったので印象に残っていました。で何故この本の話をするのかといえば、今回ご紹介するこの本は、じつはその本の続編であるからです。といっても今回の作品の舞台は普通の世界なので、宮部さんチックのSFがドドンと出ているものではないのですが、それでも食いついて読むことができました。 

 ここでちょっと上巻の内容をこぼすと、とあるネット監視会社でバイトをする大学生三島孝太郎の周囲で不気味な出来事が起こります。一つは妹の友人がネットでいじめられ、彼女の母親から相談を受け、二つ目に体の一部が切断される不気味な連続殺人が発生します。そして、友人の森永が失踪してしまう。孝太郎は友人が最後にたどった道を調べる……というところから物語が徐々に始まっていきます。 

 読んでいていくつか気になったところがありました。この本には、ネット社会の乱用に対する宮部さんなりの警鐘も含まれているのではないかと感じました。じつは作品中にネットの闇とも言うべき問題がいくつか登場します。例えば先に述べたネットのいじめや、再生回数稼ぎになると言って、見るに堪えないあるものをネットにばらまくなど……現実のネット社会も、社会の不満や先の不安を憂いてネット上に極めて感情に走りすぎた言動をバラまいたり、大きくバイアスのかかった種々の言葉をぶちまけたりするコメントや書き込みが大半を占めている。宮部さんはこのような状態に警鐘を鳴らしているのではないかと感じました。

 そして、この”極めて感情に走りすぎたもの”は、主人公である孝太郎も、彼にとって悲痛なある出来事によってそれに傾倒してしまいます。一体その出来事とはなんなのか、それによって彼がどんな”姿”になってしまうのか、それはみなさんが読んでからのお楽しみに取っておくことにします。