三浦しをん著 『舟を編む』

 

 

経営学部 1年生 射場 美雪さんからのおすすめ本です。(KONAN ライブラリ サーティフィケイト)

書名 : 舟を編む
著者 : 三浦しをん著
出版社:光文社
出版年:2015年

みなさんは辞書を引いたことはありますか。小学校の頃を思い出してください。1人1冊国語辞典を持ってきて、教科書に難しい単語が出て来る度に先生から意味を調べるように言われていたことがあるのではないでしょうか。かなり重たく、持って帰るのが面倒だった思い出があります。しかし、そんな辞書の重さはそのまま言葉の持つ重さとも言えます。この本はそんな辞書を作る人達のお話です。

主人公の馬締(まじめ)さんはその名の通り、言葉に本当にまじめに向き合います。辞書作りには根気強く作業をすることが欠かせません。日本語の語彙を過不足なく辞書にしていく必要があります。膨大な日本語の中から現代に必要な言葉たちを選び出し、誰が見ても納得できるような意味にするのは困難で果てしない道のりでしょう。作中にも様々な問題が出てきます。ふとした言葉によるすれ違いや思いを伝えるのに言葉が不足してしまったなど、私たちの日常にもありそうな問題です。しかしその度に話し合いをしたり伝えたい思いや言葉の正しい意味を伝えたりして仲直りしていきます。まじめ一辺倒だった馬締さんが言葉によって繋がっていくのは読んでいてとても嬉しいような気持ちにさせてくれます。

この本の中では辞書作りはしばしば航海に例えられます。誰にも正解が分からない道を探して進むのはまるで大海原の標識のない上を船で航海するようなものです。
馬締さんは特にその言葉の繊細さや重みを大切にする人です。一つ一つの言葉に込められた意味を紐解くうちに、そこに込められた先人達の思いまで見えてくるような気がしてきます。言葉がつないだ不思議な力によって馬締さんのまわりの縁もどんどん広がっていきます。

普段使っている日本語がどれだけ美しいものであるのかを再認識できるでしょう。
みなさんもこの本を読んでしばしの間言葉という名の大海原に舟を進めてみてはいかがでしょうか。

法学部 I先生へのインタビュー

法学部4生 Mさんが、法学部 I先生にインタビューを行いました。(KONAN ライブラリ サーティフィケイト)

 

 

Q.いつ頃から読書を始めましたか?

小学校高学年から読み始めました。当時落ち着きのない性格であった私を心配した当時の担任の先生が、本を貸してくれました。その本は、SF作家であり、「ショートショートの神様」の呼ばれた星新一さんの作品なのですが、それがとても面白くて、そこから徐々に本を読むようになりました。ですから担任の先生は、私の人生の恩人です。

 

Q.普段どのくらい読書をしていますか?

 1日あたり数時間程度読書をしています。その中でも趣味の本を読む時間は、1時間程度です。

 

Q.どのようなジャンルの本を読みますか?

 特定のジャンルの本を読むのでなくて、新しい知識を得るべく様々なジャンルの本を読んでいます。

 

Q.最近ハマっている本は何ですか?

 最近は、最先端科学に関する本をよく読んでいます。最先端技術は、世の中を変える可能性があるので、面白いと思いながら読んでいます。

 

Q.先生は紙派ですか電子派ですか?

 私は、断然紙派です。紙をめくる感覚を大事にしています。研究調査で論文を調べる際にも、重要な部分は、印刷して読むようにしています。

 

Q.どのように本を選ぶ?

 本屋さんに足を運び、興味が引かれた本を選んで読みます。

 

Q.先生にとって本の魅力とは?

 自分が、知らないことを知ることが出来る。それに尽きます。

 

Q.学生に向けて

 特定のジャンルの本だけを読むのではなく、是非とも様々なジャンルの本を読むなり、ネットを使ったりして自分の世界の知識を広げてほしいです。

 

感想

 先生の本を読むことを大事にしているという気持ちが伝わってくる、とても楽しいインタビューでした。私は、興味のあるジャンルの本しか読まないタイプなのですが、これからは、今までふれたことのないジャンルの本にもチャレンジしようと思いました。

 最後になりましたが、お忙しい中ご協力くださりありがとうございました。

 

(インタビュアー: 法学部4生 Mさん

KONANプレミア・プロジェクト「文学、あります」第3回「そんな嵐の中で、私は、いま、耳を澄ませたい:小林エリカさんにきく戦争・女性・表現」を開催

 2025年12月13日(土)に、小説家でアーティストの小林エリカさんを本学にお招きして、文芸イベント「そんな嵐の中で、私は、いま、耳を澄ませたい:小林エリカさんにきく戦争・女性・表現」を開催しました。

 小林エリカさんは、作家として『マダム・キュリーと朝食を』『トリニティ、トリニティ、トリニティ』『最後の挨拶 His Last Bow』といった優れた作品を次々と発表されているほか、インスタレーションやビデオ作品を創作される現代アーティストでもあり、また、漫画、絵本、翻訳、音楽朗読劇シリーズの脚本なども手がけるなど、きわめて多彩な活動をなさっています。
 今回は、第78回毎日出版文化賞に輝いた小説『女の子たち風船爆弾をつくる』を主にとりあげながら、文学だけに限らない小林さんの多様な表現世界をめぐってお話をうかがい、またご自身による小説の朗読もいただきました。

 『女の子たち風船爆弾をつくる』は、第2次大戦中、風船爆弾という秘密兵器をつくるために東京宝塚劇場へ集められた女学校の生徒たちの実話をもとにした作品です。小林さんは、歴史的事実の綿密な調査に基づいて、女性たち一人ひとりが体験したことを独特の文体で小説に描いています。
 公開インタビューでは、作品の中で特に印象的な「わたし」「わたしたち」という言葉の使い方に込められた意図や、小林さんが戦争の記憶とどのように出会い、それをどのように受け止めてこられたかなど、興味深いお話をたっぷりと語ってくださいました。参加者からも質問が出され、会場の方々は真摯な回答ぶりに熱心に聞き入っていました。

 また、インタビューの後ではサイン会が開かれました。小林さんが来場者お一人お一人と会話を楽しみながら丁寧に対応されている様子が印象的でした。
 来場者アンケートには、「本を読んだだけではわからなかったことが分かり、本当に有意義な時間でした」「とても丁寧に楽しくお話ししていただけて、あっという間に時間が過ぎていきました」「等身大のエリカさんのお話がきけてうれしかったです」「心ふるえる時間でした」といった感想が寄せられており、それぞれの方にとってとても充実したイベントとなったことが伝わってきます。(今回のイベントの様子は2026年1月10日までYouTubeで配信されています[動画はこちら]。)

 このイベントは、甲南大学と甲南中学・高校の教員有志からなるチーム「文学、あります」と甲南大学図書館職員スタッフの教職協働によるKONANプレミア・プロジェクトの一環として開催されるものです。毎年、文学の場で活躍している方をお招きして公開インタビューやトークイベントを開催することで、作家の生の声に触れ、学生や地域の方々とともに本格的な文学を楽しむ場を作り出すことを目的としています。
 「文学離れ」や「本離れ」が指摘される時代ですが、「文学、あります」では、読むべき作品をこの世に送り出している作家の方々を今後もお招きし、イベントを開催していく予定です。来年以降の展開にもご期待ください。

(文学部教授 西欣也)

甲南大学デジタルアーカイブに九鬼周造文庫の資料を追加し、データ修正を行いました

甲南大学図書館の九鬼周造文庫で保管されている哲学者・九鬼周造博士の原稿・ノートのうち、未公開となっていた以下の資料を甲南大学デジタルアーカイブから公開しました。
また、公開中の資料について、いくつかの修正を行いました。

【追加資料】

L00404
草稿・原稿類 / 『Propos sur le temps』に関するもの
L’ EXPRESSION DE L’ INFINI DANS L’ ART JAPONAIS

L00406
草稿・原稿類/『偶然性の問題』に関するもの
「偶然性」原稿  (①偶然性論文表紙, ②音韻の偶然性 [原稿], ③[確率論に関する研究メモ])
※同ファイルに④偶然性論文表紙 [論題が確率論に訂正されたもの], ⑤[「偶然性」の論文校正部分]が含まれるが未撮影。先行して①~③のみ公開

L00405
ノート / 研究ノート
[Phänomenologie, Ontologie. etc.]

【修正箇所】

「草稿・原稿類 / タイプ原稿」→「草稿・原稿類 / 『Propos sur le temps』に関するもの」にカテゴリー名称を変更

L00397
PROPOS Sur le TEMPS : Deux communications faites à Pontigny pendant la Décade 8-18 Août 1928
最終ページ(22枚目)の追加

L00301
草稿・原稿類/『人間と実存』に関するもの
驚きの情と偶然性 : 京都哲学会公開講演会 昭和13年11月
1~68枚目を追加公開

L00386
草稿・原稿類/『文藝論』に関するもの
日本詩の押韻 [1]
標題紙ページの追加

L00407
草稿・原稿類/『文藝論』に関するもの
文学の時間性
L00341の「文学の時間性 (奈良女高師での講演)」 から分割登録

L00322
草稿・原稿類/『偶然性の問題』に関するもの
偶然性Ⅲ [新聞切り抜き+研究メモ1枚]
新聞記事を2件(うち1件は1枚目の新聞記事の裏面)追加

上記以外に、一部の資料タイトルを原本の情報に基づいて修正しました。

なお、今回の修正の際に、以下のコンテンツの順序が誤っていることが発覚いたしました。
 草稿・原稿類/『「いき」の構造』に関するもの
 「いき」に就て 2
本資料は、 L00285, L00286 (M02) として公開している『「いき」の構造』の原稿の部分です。
しかしながら、デジタルアーカイブのデータ修正には相当の時間がかかる見込みであるため、当面の間、現状のままでの公開を継続いたします。
修正が完了次第改めて告知いたします。ご迷惑をおかけいたしまして誠に申し訳ございません。

[藤棚ONLINE]マネジメント創造学部・榎木美樹先生推薦『民際学者、アジアをあるく: 中村尚司と仲間たちの時代』

図書館報『藤棚ONLINE』
マネジメント創造学部・榎木美樹先生より

民際学者、アジアをあるく: 中村尚司と仲間たちの時代(林真司、みずのわ出版、2024年)

今年(2025年)は、戦後80年の節目の年だった。日本は、世界唯一の被爆国として広島・長崎の経験を世界に伝え、核軍縮・不拡散に中心的な役割を果たそうと努めている。
例年に比して特徴的だったのは、こうした日本の被害の側面のみならず、日本の加害の側面も直視しようとする動きだったと思う。公式サイトの閉鎖を受けて平和教育の点で話題になった漫画『はだしのゲン』(中沢啓治著)への注目も然りだ。これに著わされた主人公のゲンや、ゲンの生き方に決定的な影響を与えるゲンの父親の姿を通して、作者(中沢)は徹底的に戦争反対を貫き、戦時中の朝鮮人差別とも向き合っている。
こういう節目の年だったからこそ、若者にぜひ読んでもらいたい本がある。
戦後日本の歩みをアジア各国の人びととのかかわりの中で「アジアの一員として」「日本人として恥ずかしくないように」道筋をつけてくれた中村ら先人たち生き方と実践の記録である。
「日本はアジアの一員」を当たり前だと思ってくれる若者、あるいは「日本はアジア民衆を犠牲にしてきた責任があるのだから、それに真摯に向き合わねばならない」と考えている人なら、彼らの思想や生き方が一朝一夕にできあがったものではなく、連綿と連なる託されたバトンのリレーの中にあることを確認してほしい。
アジアに学び、共に生きていく姿勢を貫き、「民際学」を提唱する人たちの記録が『民際学者、アジアをあるく』(2024年、みずのわ出版)である。

「民際学」は、「国家」の枠組みをこえる民衆の学としての知識と実践の体系・あり方で、「あるく・みる・きく」を実践するため、フィールドワークを重視する。私自身がアジアに軸足を置き、フィールドワークに基づくヒト・モノ・コト調べをしたいと思った原点の学問体系である。
民際学を大きく打ち出した中村尚司*は、日本に暮らすマイノリティの生活条件を少しでも改善しようと、東奔西走してきた研究者であり実践家である。彼は、鶴見良行**との知的・実践的交流を通して、その思想と体系を発展させた。 中村が民際学を打ち立てる上で、多大な影響を受け、半世紀以上ともに仕事をしてきたのが田中宏***だ。田中は、在日外国人の処遇改善に長年奔走してきた、この分野におけるパイオニア的な存在である。「日本人として恥ずかしくないのか」という気持ちが、田中の仕事の原動力で、自分が取り組んできた一連の仕事について、日本という国が、どういう国なのかを示す、格好の教材になっていると言う(本書pp.135-137)。その田中の人格形成と生き方に大きな影響を与えたのは、真っ当な「人間であるために」日本人の価値を再吟味し続けた、穂積吾一**** である。
本書の筆者・林真司は、「彼らは、鬼畜米英という、敵役がいなければ成り立たぬ、反動としての興亜主義者ではない。アジア諸民族と平等な関係を作るために、全身全霊を傾け続けた、真のアジア主義者なのである」と評する(同、p.137)。
中村がともに仕事をしてきた彼らに共通するのは、仮想敵を想定して攻撃して奪い取る姿勢ではなく、戦争の加害の側面を意識しつつも、「日本人として恥ずかしくない行い」を念頭に、苦しみのただなかにある人、在日外国人の不運と不幸に対する共感(empacy)と義侠心をベースに人と人との関係性を重視する「民際」の立場で行動を起こすという点である。他者への共感と義侠がゆえの行動の上に「民際学」は立っている。
被差別部落のみならず、在日のアジア人たちも、日本社会において差別や貧困に直面してきた。有色人種に対する蔑視観は、明治以降の欧米を手本とした国家の発展観に基づく。さらに日本はアジア各地を侵略し、大勢の住民を犠牲にしたにもかかわらず、そうした責任を認めようとしてこなかった。これらの反省と義侠心ゆえの「脱欧入亜」であり、国民国家を前提とする「国際」ではない、人・民が中心の「民際」なのである。本書を読むと、民際学のよって立つ思想基盤と実践のありかたの流れが必然であることがよくわかる。

戦後80年の今、また外国人へのヘイトが日本を守るうえで正統性を持つかのような錯覚が起きやすい今だからこそ、この本を手に取り、戦後の日本人の来し方を見つめなおし、行く末を見定めてもらいたい。
中村のバトンは私や同時代に学んだ当時の大学院生・学部生・出会った人々に渡されていると思っている。そのバトンをあなたは受け取ってくれるだろうか。

*)中村尚司(1938年-現在)。経済学者。地域経済論、エントロピー論、南アジア研究などをフィールドにした「民際学」を提唱。主著は『人々のアジア』(岩波新書、1994年)など。
**)鶴見良行(1926-1994年)。アジア学・人類学者。主著は『バナナと日本人』(岩波新書、1982年)『ナマコの眼』(ちくま学芸文庫、1993年)など。
***)田中宏(1937年-現在)。経済史学者。主著は『在日外国人』(岩波新書、1993年)
****)穂積五一(1902-1981年)。社会教育家。アジア学生文化協会、アジア文化会館の創設者として知られる。

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