[藤棚ONLINE]図書館長・杉本喜美子先生(マネジメント創造学部)コラム「想いを繋ぐ 言葉を紡ぐ」

図書館報『藤棚ONLINE』
図書館長・杉本喜美子先生(マネジメント創造学部) コラム

 新入生のみなさん、ご入学おめでとうございます!
 そして在校生のみなさん、図書館の窓が、桜の咲き誇る春の美しい一瞬を切り取れること、すでにご存じでしょうか。

 甲南大学の特徴の一つが、彩り教育です。理解力や創造力を身につけ、社会で羽ばたくためには、専門分野以外の学びも欠かせない。一人ひとりが興味を持つ内容に、できる限り応えたい。こうした想いが形になったもので、「知のインフラ」と呼ばれる図書館こそ、こうした学びの軸となれたらと思っています。
 彩り教育の一つとして展開されるKONAN ライブラリ サーティフィケイトで、昨年度1級を取得された2023年度卒業生(なんと100冊の本を読破!)に、「2024年度入学生へ、もし一冊だけ本を紹介するなら、どの本を薦めますか?」と質問しました。その答えが、最初に紹介する辻村深月さんの『ツナグ』『ツナグ-想い人の心得-』です。ベストセラーであるこの2冊を、昨日読み返し、数ある本からなぜ彼女がこれを選んだのか、私なりの答えを、今回のタイトルで表現してみました。

      辻村深月著, 新潮社 , 2010                辻村深月著, 新潮社 , 2019

 自分の人生に責任を取る、ことは、当たり前ながら難しいことです。どう生きていくべきか、何に適性があるのか、どんな才能を持っているか、これを頑張ってどうなるのか。大学生になると、悩むことは膨大にあります。それぞれの悩みに応じて、その答えを知っている(であろう)先達に答えを聞いてみたい。両親、兄姉、先生、先輩、友達。こうした相談に適う相手は、正直な自分の心を安心して委ねられる人物なのではないでしょうか。
 常日頃から温かい気持ちで自分を見守り、激励してくれる人物。こうしたかけがえのない相手が「もはや生きていない」とき、どう相談できるのか。詳しくは本を手に取っていただけたらと思います。現実を生きるみなさんには、身近にいる「生きている」相手から学び、そしてもし大切な相手が「もはや生きてはいない」のなら、その存在を心に感じながら、その相手が望み、時には驚くような成長を遂げて生きていってほしいと願っています。
 図書館にある膨大な書籍もまた、実態はなくともあなた自身を支えています。答えの見つからない問いに悩んだときは、ぜひ一度図書館にきてくださいね。

 さて、自分の学びのなかで関心のある本を紹介します。

『技術革新と不平等の1000年史』
ダロン・アセモグル、サイモン・ジョンソン著 鬼澤忍、塩原通緒 訳

 開発経済学の視点で興味深い本です。最近のデジタル技術・AIの発展が、大多数の人々に豊かさをもたらすのか、それとも、所得格差を広げるのか。これを改めて問いかけています。人間の活動を補完し、人の役に立つ仕事を新たに生みだすために、こうした技術を開発し、活用することはできないだろうか。未来は、我々の選択次第なのだから、その処方箋たるべく、望ましい選択肢とは何なのかを考えさせてくれます。どのような世の中であっても、希望は人の選択がもたらすことを、経済学の視点からも明らかにしてくれている、素晴らしい本だと思います。


【図書館事務室より】
 藤棚ONLINE2024年度第1号は、図書館長のマネジメント創造学部教授・杉本喜美子先生より、コラムとおすすめ本をご紹介いただきました。テーマは「繋ぐ、紡ぐ」です。
 「紡ぐ」と言えば、甲南大学図書館で実施しているKONANライブラリサーティフィケイトで使用する読書記録ノートの表紙が新しく素晴らしいデザインになります。マネジメント創造学部のご卒業生であり書家でもある方が、デザインしてくださいました。

 「Journal」は旅日記という意味があります。たくさんの読書を通じて、様々な旅の記録を紡いでみてください。読書記録ノートはエントリー時に1部お渡ししていますので、ぜひ手に取ってみてください。
 また、図書館では、図書館HPだけでなくX(旧Twitter)やこの図書館ブログでも情報発信していますので、定期的にチェックしてみてくださいね。学生の皆さんのご利用をお待ちしています。