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アレックス・バナヤン著,大田黒奉之訳『嫌われる勇気』

法学部1年 向井綾香さん(「基礎演習(濱谷)」リサーチペーパーより)

本の内容
 フロイト・ユングと並び「心理学の3台巨頭」と呼ばれるアルフレッド・アドラーの思想が、ある青年と哲人(哲学者)の対話を通して説明されていく。登場人物は、アドラーの思想を支持する哲人と、アドラーの思想には批判的で自分を好きになれない青年の2人のみである。哲人が悩める青年にアドラーの思想を交えて次々に解決策を提示するも、青年はそれに真っ向から反論する、という形でどのテーマでも深い議論が繰り広げられていく。アドラーの心理学というのは、自分を変えるための心理学である。例えば、人は過去の存在に突き動かされているのではないとして「トラウマは存在しない」と語ったり、「すべての悩みは対人関係である」と断言し、悩みは内面からくるものではないと主張したりする。そして、一見するとシンプルな言葉でまとめられているが、すぐには受け入れ難いものが多い。これらのアドラーの思想は、過去に原因を求めるフロイトの心理学とは真逆の考え方であり、世間一般に見ても、当時は万人に受け入れられるような思想ではなかった。
 自身が特に印象的に感じたのは、少年が哲人への反論に夢中になっているシーンである。序盤では落ち着いた態度で哲人に臨む様子であったが、会話が進んでいくにつれて少年は必死になって哲人の話を否定しようとする。言葉遣いも荒々しくなり、その時の彼は、まるで友達と激しい言い合いをしているかのようだった。しかし、目上も目下も関係なく、真正面から議論に挑む彼の姿はとてもかっこよく思えた。また、語り合うことに年齢は関係ないと感じさせられた場面でもあった。

2人の作者の出会い
 本書の作者は、岸見一郎(きしみ いちろう)と古賀史健(こが ふみたけ)という2人の人物である。岸見一郎は、哲学者でアドラー心理学を研究しており、多くの青年のカウンセリングも行っていた。また、本書の原案を担当した。大学生の頃は先生の自宅へたびたび押しかけて議論を持ち掛けていたという。そして20代の終わりにアドラーの心理学と出会う。彼の訳書として、アドラーの『個人心理学講義』(2012年出版)『人はなぜ神経症になるのか』(2014年出版)、著書は『アドラー心理学入門』(1999年出版)がある。一方、古賀史健は、株式会社バトンズ(書籍のライティング業務を行う会社)の代表であり、ライターをしている。彼は聞き書きスタイルの執筆を専門とし、インタビュー原稿を書いている。ノンフィクションやビジネス書で数多くのベストセラーを手掛ける。
 古賀氏は以前からフロイト派やユング派に引っ掛かりを感じていた。その時に、岸見氏の『アドラー心理学入門』と出会い衝撃を受ける。その後、仕事で岸見氏のもとへ取材をしに行ったことをきっかけに2人は出会い、共に本書の出版へ動き始める。古賀氏はアドラーの思想に対する読者の疑問、反発、受け入れがたい言説、理解できない提言をを丁寧に拾い上げるため、ギリシア哲学の古典的手法である対話篇形式を採用した。そのため、本の中に出てくる青年には最初から最後まで読者の気持ちを代弁させ、批判的立場をとらせている。岸見氏は古賀氏と13歳の年の差があるにもかかわらず、友人のように接していたという。

本書出版の背景
 本書が出版されたのは、2013年であった。当時はフロイトやユングと比べて、アドラーという名前は心理学を学ぶ一部の人にしか知られていなかった。また、アドラーの心理学はフロイトとユングとは考え方が反対の立場にあった。しかし、読者がこれまでの常識を覆す言葉の数々や斬新な考え方に衝撃を受けたことで、世間からの反響を大きく受けベストセラーとなった。現在でもベストセラーとして注目を浴び続けているのは、本書の対人関係を主にしたテーマにおいて、グローバル化を求められる社会の中での生活や、ソーシャルメディアなどの普及により人付き合いの難しさが徐々に増してきているという社会的な背景があるからだと考えられる。
 人生を歩む中で対人関係は欠かせないものであるが、現代では相手との距離のとり方に悩み、日々を過ごす人々が多くいるのだろう。アドラーの心理学は、人間関係の悩みを持つ我々にとって幸せに生きるためのちょっとした支えになってくれたり、人間関係で深く考えすぎることをやめさせてくれたりする心理学であると感じた。

終わりに
 世界や周囲で新しい道を開拓していく人々がいる一方で、どうせ自分は何もできない、周りより劣っている、幸せになれないと感じている人々も少なくはないだろう。けれども、哲人の説くアドラーの教えの存在を知ることで自身のもつ感情、劣等感、トラウマなどを自分の人生が上手くいかないことを言い訳の道具として使っているだけなのかもしれない、という考え方に気づかされる。そのように考えて過去にとらわれず、今この瞬間だけを見ていけば、今まで避けてきたことに臨んでみようという勇気が生まれてくるような気がしないだろうか。はじめは飲み込みがたいアドラーの心理学かもしれないが、解釈と視点を変えることで自分を変える第一歩へとつながる。そのように感じさせられた本であった。
 また、本書は日頃持っている劣等感を払拭してくれたり、対人関係との向き合い方を示唆してくれて気持ちを楽にしてくれる、そんな役割を果たしてくれている。対人関係に限らず、ありきたりな表現ではあるが、物事においても多様な視点で見る大切さが改めて分かり、自身において心に残る印象的な作品であった。今回のこのビブリオバトルとリサーチペーパーの作成は、本を読む機会と新しい考え方に触れる機会を与えてくれた。「嫌われる勇気」は、「心理学の三大巨頭」と言われているのにもかかわらず、メジャーなフロイトやユングに比べて圧倒的に知名度がなかったアドラーの心理学を、多くの人々のもとへ届けたきっかけになった本の中の1冊であろう。

東野圭吾著『マスカレード・ホテル』

法学部1年 三上怜奈さん(「基礎演習(濱谷)」リサーチペーパーより)

1.紹介する本の概要
 私が紹介する本は、昨年映画化された「マスカレード・ホテル」だ。映画では、主演を木村拓哉さん(刑事:新田浩介)、長澤まさみさん(ホテルのフロントクラーク:山岸尚美)が務めている。この本は、2008年12月から2年間「小説すばる誌」で掲載され、筆者である東野圭吾さんの小説家生活の25年記念作品の第3作である。表紙には題名の“マスカレード”が英語で仮面舞踏会を意味することから、アイマスクが描かれている。個人的には、山岸が先輩に教わったという「ホテルにくる人間は客という仮面をつけている」というセリフから、「マスカレード・ホテル」という題名になったのではないかと推測している。この作品の舞台であるホテルは、日本橋の「ロイヤルパークホテル」とされ、取材協力団体として紹介されている。また、この作品以外にもマスカレードシリーズとして、「マスカレード・イブ」、「マスカレード・ナイト」がある。

2.筆者紹介
 この本の作者である東野圭吾さんは、1985年に大阪市に生まれ、大阪府立大学電気工学科を卒業し、第31回江戸川乱歩賞を著書の「放課後」で受賞され、これを機に作家デビューを果たした。この賞にとどまらず、「秘密」で日本推理作家協会賞、「容疑者Xの献身」で直木賞と本格ミステリ大賞、「ナミヤ雑貨店の軌跡」で中央公論文芸賞、「夢幻花」で柴田錬三郎賞、「祈りの幕が下りるとき」で吉川英治文学賞を受賞している。33作品がドラマ化、24作品が映画化されている。作家としてデビューする前には、エンジニアをされていたため理系知識を生かした作品を書かれることが多い。

3.作品のあらすじ
 この作品の内容を大まかに説明すると、都内で連続殺人事件が発生し、刑事の新田が現場に残された暗号を解読したことで、次の殺人現場は山岸が勤めるホテルコルテシア東京で起こると推測する。次なる被害者を出さないために、警察はホテルに潜入捜査の協力を依頼し、山岸が新田の指導係に任命される。山岸は、新田の刑事特有の目つきや姿勢、歩き方を不満に思うが、当の新田は、山岸のお客さんは神様だと言わんばかりの対応に不信感を抱いていた。次から次へと怪しげな客が訪れる中、お互いを毛嫌いする二人は無事に事件を防ぐことができるのか…。といった内容となっている。

4.物語のキーパーソン紹介
 この作品の主役である新田、山岸だけでは決して事件を解決することはできなかった、この二人に隠れた陰の立役者を紹介する。
 能勢:劇中では小日向文世さんが演じられている。品川警察署の刑事であり、連続殺人事件の最初の事件での特捜本部で、新田と組むように言われた人物である。愚鈍そうなおっさんというのが新田の第一印象であり、新田は、能勢の動作が少しのろいため、見ていてイライラすることが多かった。新田が潜入捜査に入ることを境に、二人のコンビは解消されたものだと新田は思っていたが、解消しろと命じられていないからと能勢は今でも新田と組んでいると思っており、独自に捜査した内容を時々新田に伝えに来る役どころである。
 一見、「使えないおっさん刑事」というレッテルを張られがちな見た目や動作をしている能勢は、新田にも最初こそそのように思われていたものの、署で働きながら事件について独自で調べ、自らの推理を踏まえながら捜査し打ち込む姿は、優れた刑事であると言わざるを得ない。新田も彼の推理と行動力に圧倒され、次第に彼の本当の能力に気づくこととなる。能ある鷹は爪を隠すとはまさに彼のことであると思う。

5.この作品の見どころ・良さ
 私が思うこの作品のおすすめしたいポイントとして3つを挙げたい。
 1つ目に、細かな描写も事件への伏線となっているというところだ。様々な宿泊客が訪れるホテルであるために、日々のトラブルはつきものだ。「電車までの時間が少ししかないからチェックアウトの列に並んでいられない」という客や、「禁煙の部屋であるはずであるのにたばこのにおいがする」(客自身がたばこに火をつけてにおいがするようにしていた)という客もいる。そんなお客様に対応を強いられるホテルは、どのように行動するのか、一つ一つのトラブルでさえも事件を紐解く要素になっているため、どんなに小さな情報であっても目が離せない。
 2つ目に、3で紹介したような仲の悪さである新田と山岸の関係性は事件を追うにつれてどのように変化するのか、刑事としての考え・ホテルマンとしての考え、その違いを尊重しあうことができるのか、この2点に注目だ。またここでも、能勢刑事はいい役回りをしてくれる?!
 3つ目に、東野圭吾作品の中では殺害方法が単純であり、イメージがわきやすいという点だ。2の筆者の紹介で述べた通り、エンジニア時代に培った理系知識を駆使した殺害方法が他作品では多く見られ、こんなの想像できない、と理解に苦しむ点が多々ある。その点、他作品に比べ殺害方法が単純であるこの作品は、読み進めることで新田、山岸らと一緒に事件を突き止めている感覚を味わえる作品となっている。少しページ数が多いこの作品だが続きが気になり、気が付けば読めていたなんてことがおこる。そんなことも夢ではない。

6.映画としてのマスカレード・ホテル
 この作品は、2019年1月18日から映画館で公開され、興行収入は46.4億円に上り、大ヒット映画となった。映画サイズに縮小するため、山岸のワインに対する推理で新田が感心する描写(5で紹介した二人の関係性にかかわる場面)等が今作品では割愛されており、原作を読んでいるものからすると、少し重要な点が抜けていると感じても仕方ない点がある。しかし、本を読むのが苦手だという人には映画をお勧めしたい。というのも、監督を担当したのは「古畑任三郎」、「ショムニ」などの作品の演出を手掛けた鈴木雅之さん、脚本は「信長協奏曲」、「鍵のかかった部屋」等を執筆した岡田道尚さん、音楽を「Always 三丁目の夕日」で日本アカデミー賞最優秀音楽賞を受賞した佐藤直紀さんが手がけるなど、才能ある演出家を起用しているためだ。多くの作品を経験してきた彼らが魅せるマスカレード・ホテルの世界は可憐で圧巻である。

7.この作品から学ぶこと
 この作品には、現代を生きていく私たちに数多くの生き抜くための知恵を与えてくれる。新田、山岸はともに固有の職業についており、その職種にあった対応や求められる能力を教えてくれるのはもちろんのこと、職種に関係なく人としてどうあるべきなのか、どのように人と接するのかの『アドバイス』がこの本にはつづられていたように私は思う。
 例えば、5で紹介した新田・山岸の関係性の描写から分かるように、『まるで話が合わない人(価値観の相違などがある人)との協力の際には、相手の立場に立ったうえで、相手の意見の意味を考え、また、尊重しながら自分の意見をどのように伝えれるのが最適かを考えるべきである。この人とは合わないから関わらない、場合によってはその方が良いこともあるが、そのような対応をとるのではなく、お互いを尊重する姿勢が大切である。』、とのアドバイスや、他にも、新田の能勢に対する印象の描写から分かるように、『外見や表面上だけでその人の行動を見て、[この人はこんな人だ!]と判断してはいけない。』とのアドバイスが読み取れる。
 現在はコロナ禍により、リモートでの授業形態が進み、実際に会えなくとも同級生や先生の表情を見ることができたり、授業内での様子を見ることができる。そこからイメージを持つことは容易である。二つ目のアドバイスから分かるように、“偏りのある勝手なイメージ”を持つことはその人を傷つけたり、自分自身の視野が狭まったりと良いことは何もない。この二つ目のアドバイスというのは、コロナ禍での私たちが肝に銘じておくべきことではないだろうか。

8.最後に
 この作品は、映画化されただけでなく、2020年1月5日~1月13日の間、梅田芸術劇場で宝塚歌劇団花組の方々で舞台化もされている。舞台を現在見ることはできないのだが、様々な媒体を通じてこの作品に出合うことができるのだ。マスカレード・ホテルの本、映画のどちらかにでも触れる人が増え、新田と山岸の二人とともに、事件を解決する人が一人でも増えてほしい、また、数多くの生き抜くための知恵を盗んでほしいと思う。

:参考文献:
 東野圭吾作品ナビサイト マスカレード・ホテル https://higashinokeigo.net/detail/076.html 6月30日
 年代流行 東野圭吾 原作ドラマ作品一覧/年代流行 https://nendai-ryuukou.com/article/047.html 6月30日
 MOVIE WOLKER PRESS 東野圭吾 https://movie.walkerplus.com/person/149714/ 6月30日
 映画評価ピクシーン 2019年映画興行収入ランキング日本おすすめ(上半期/下半期/洋画/邦画) https://pixiin.com/ranking-japan-boxoffice2019/ 6月30日
 映画『マスカレード・ホテル』公式サイト マスカレード・ホテル http://masquerade-hotel.jp/staff.html 6月30日
 梅田芸術劇場 『マスカレード・ホテル』|梅田芸術劇場 https://www.umegei.com/schedule/846/#_stagepic 7月20日

参考:【映画】マスカレード・ホテル / 鈴木雅之監督 ; 岡田道尚脚本 ; 東野圭吾原作

満田拓也著『MAJOR(メジャー)』

書名:MAJOR(メジャー)
著者:満田拓也
出版社:講談社
出版年:1994年~

法学部1年 松井琴美さん(「基礎演習(濱谷)」リサーチペーパーより)

漫画の紹介
 『メジャー』は満田拓也による日本の漫画である。
 「週刊少年サンデー」(小学館)にて1994年33号より2010年32号まで全747話が連載されていた。
 同誌2015年15号より続編『メジャー2nd』が連載中である。
 第41回(平成7年度)小学館漫画賞少年部門、第2回(2011)サムライジャパン野球文学賞ベストナイン受賞。
 シリーズ累計発行部数5400万部を記録した。

あらすじ
 本田吾郎が父(おとさん)と同じ野球選手の道を志し、やがてメジャーリーグの選手になることを目指す物語です。5歳の吾郎とおとさんとの親子のふれあい、そして吾郎の最初の野球友達になる佐藤寿也(としくん)との友情を描き出します。そして、9歳・小学4年生になった吾郎はリトルリーグのチームに入ります。野球人生の始まりです。ピッチャーとして活躍する吾郎はチームメイトとの友情を育んで、としくんを始めとするライバル達と試合で対決していきます。

登場人物の紹介
 本田吾郎(主人公)
  野球一筋で、曲がったことが許せない熱い心の小学校4年生。母親代わりの桃子と二人暮らし。9歳になってリトルリーグの三船ドルフィンズに入ったが、解散しかかったチームの立て直しに必死な毎日を送る。
 本田茂治(主人公の父)
  プロ野球・横浜ブルーオーシャンズの元選手で、吾郎の父。引退の瀬戸際からバッターに転向して再起したが、ギブソンのデットボールを受けて事故死してしまう。
 星野桃子(主人公の保育園の先生)
  吾郎が通っていた保育園の先生である。結婚を約束していた吾郎の父・茂治が試合中の事故死で死んだあと、吾郎を引き取り母親として育てていく。
 佐藤寿也(主人公の幼馴染)
  吾郎の幼馴染で野球友達。吾郎が引っ越しして離ればなれになっていたが、強豪・横浜リトルの選手として再会。横浜リトルでは、強肩強打のキャッチャーとして認められていく。
 主人公の人生を簡単な紹介

幼少期
 本田吾郎は母を亡くし、父親と二人暮らしだった。彼の夢は「父親のようなすごいピッチャーになる」こと。そんな中、肘を痛めてしまい引退を申し出た父・茂治であったが、吾郎のためにバッターとして再起することを誓った。そして、テストに合格し、見事バッターとして一軍に復帰した。メジャーリーグから来たジョー・ギブソンと試合することになった茂治。レベルの高い彼から茂治はホームランを打ち、吾郎は大喜びだった。だが、茂治の第3打席、ギブソンのデットボールが頭に直撃して倒れてしまう。その試合では元気に立ち上がり、出場を続けたが、翌朝自宅で死亡してしまった。吾郎は茂治の婚約者だった保育園の先生・星野桃子に引き取られることになった。
小学生
 茂治の事故死から3年、吾郎は小学4年生になった。そして、三船ドルフィンズに入団するも、野球をするために3人足りなかったが、クラスメイトの清水薫、小森大介、沢村涼太を誘い、9人揃えることが出来た。吾郎の才能を感じた三船リトルの安藤監督から、名門の横浜リトルへの入団を勧められる。当初は前向きな考えを示したが、仲間を見捨てることを桃子から猛反対される。その後、桃子が急病で倒れたことや茂治の親友・茂野英毅の説得もあり、三船リトルで横浜リトルを倒すことを決意した。そして、トーナメントに勝ち進み、肩を痛めながらも日本一の横浜リトルに勝利した。その後、桃子と英毅の結婚、英毅が所属する福岡ファルコンズ移籍に伴い転向することになった。この際、苗字が「本田」から「茂野」となった。
中学生
 英毅が横浜に移籍したことに伴い、中3になった吾郎は横浜に戻ってきた。そして三船東中学に転入し、小森、沢村、薫と再会を果たした。しかし、吾郎は3年前に右肩を壊してしまい、左投げに転向していた。そして、高校進学後に硬式野球をやるために、中学ではサッカー部に所属して体力づくりに励んでいた。ところが、三船西中学との練習試合で相手監督に罵倒される東中をみかねて、急遽登板した。それをきっかけに野球部に入部した。しかし、県大会の1回戦で海藤学園付属中の眉村に打ち込まれて、コールド負けで敗北してしまう。これにより自分自身が海道野球部で這い上がらねばと思い、寿也たちと海道学園高校に入学する。
 この続きが知りたい方はぜひ読んでみて下さい!

まとめ
 主人公である茂野吾郎の半生を描いた作品で、彼の成長とともに所属するチームを情熱で突き動かし、チーム一丸となって目標に向かって前進していきます。「友情」や「努力」といった少年漫画として普遍的なテーマを扱いながらも主人公や家族が不幸になることはない。「逆境」は乗り越えられることをこの漫画で示してくれています。
 また、主人公の吾郎が幾多の挫折を経験しながらも、野球人として成長していくことに憧れや尊敬の念を抱くことができます。最高の仲間であり、最高のライバルである佐藤寿也という存在もこの作品を面白くしている要素であり、吾郎と周囲の人間や環境全てが絡み合って最高の作品です。
 是非、読んでみて下さい!!

アレックス・バナヤン著,大田黒奉之訳『The Third Door』

法学部1年 前田颯太さん(「基礎演習(濱谷)」リサーチペーパーより)

 The Third Doorの主人公は当時大学生であるアレックス・バナヤン。アレックスは自分の現在のただ学校に通い課題や、テストに追われる生活にうんざりしていた。そんな悶々とした生活を過ごしていく中でふとこのままでは良くないと思い、そんな悩みを解決すべくあるアイデアを思いつく。それは世界的な成功者たちにあなた達がどのようにして初めの一歩を踏み出し、成功するまでに至ったのか?というものであった。そのインタビューを実現させるために試行錯誤していくという物語である。
 この本の冒頭でアレックスは『人生・ビジネス・成功。どれもナイトクラブみたいなものだ。常に3つのドアがある。ファーストドア。99パーセントの人が並ぶ正面入り口。セカンドドア。選ばれた人だけが利用できる入り口。普通に生きていたら、この2つのドアしかないような気分になる。でも、裏道を駆け抜け、何百回もノックして窓を乗り越え、キッチンをこっそり通り抜けたその先にサードドアがある。』こう話している。私はこの最初の描き始めの部分でこの本に興味を惹かれた。  
 アレックスはインタビューの相手を決めるために大学の仲間に理想の大学を作るなら誰を教授に招くかという質問をした。仲間達とアレックスはビルゲイツ、レディーガガ、スティーブンスピルバーグ、など世界的に知られているにとたちの名前を挙げていく。これらの錚々たる人々にいかにしてサードドアをこじ開け、インタビューするまでに至ったのかがこの本の醍醐味である。そのためのポイントとしてまず初めにインサイドマンの存在が大事だと述べられている。インサイドマンとは自分の目的と自分自身をつなぎ合わせてくれるとても大切な存在である。そして次のポイントは信頼を借りるということだ。この本の中でアレックスはある一人の男に気に入られる。そしてこの男の信頼を借りることによってアレックスは飛躍的に成功へと近づいていく。最後のポイントは犠牲を払うということ。どういうことかというと、チー・ルーというヤフーショッピングの生みの親が登場し、このチーは一日24時間しかないということから睡眠時間を犠牲にし、他の残った時間を徹底的に仕事に費やす。これらの様々なポイントからアレックスは学んでいき、挑戦していくといった内容になっている。
 私はこういう類の本を何冊か読んだ中でこの本は最もわかりやすいと思った。自分たちと変わらない大学生という立場で、なんの実績もない人が成功するまでの過程を細かく書いてあるので、どこか親近感が湧いてくるからではないかと思う。この本を読むことによって普通に大学に通い与えられたことを受動的に動くのではなく、主体的に動いてこの先のビジョンを広げていくためのヒントになると私は思った。
 最後にこの作者のことについて少し簡潔に話そうと思う。アレックスは冒頭にも書いたように大学生である。しかし大学生と言っても医学部生である。このまま進めば将来は確約されているも同然だが、なぜ人生にうんざりしたのか?それは誰かに敷かれたようなレールは嫌で、レールを飛び出しひたすらにもがき成功を勝ち取るというアレックスの性格である泥臭さ書かれている。この男性を見ていると自分が過去にしてきた努力など大したことないなと思え、これからもっと頑張ろうと思える。私は何か壁に当たった時にはこの本を見て勇気をもらうことだろう。

寺嶋裕二著『ダイヤのエース』

法学部1年 堀川湧生さん(「基礎演習(濱谷)」リサーチペーパーより)

 紹介する漫画はダイヤのエースです。
 ダイヤのエースは寺島ゆうじによって書かれた野球漫画です。
 主な登場人物を紹介します。
 沢村英純と降谷暁はお互い無名の中学出身で東京の名門である青道高校という高校にスカウトされました。お互い対照的な性格であり、切磋琢磨してエース番号獲得を目指して高め合うよい関係であります。沢村栄純はまっすぐさと闘志を剥き出しにした負けん気の強い性格であります。当初は地元の高校に進学して仲間と共に野球を続けるつもりであったが、中学最後の試合を観戦した青道野球部副部長兼スカウトの高島礼にその才能を認められ、渋々ながら見学に訪れた青道で御幸一也と出会い、地元の高校に進むか野球留学で高い技術を身につけるかの板挟みになるが、自分の力を試すため、仲間の後押しと共に青道への入学を決めました。一方、降谷曉は表情はあまり変わらないが、感情の起伏が分かりやすい。いつも無愛想だが、内には並々ならぬ闘志が宿っている。他人の話を聞かないことも多く、クールに見えるがかなり天然な人物です。青道高校は毎年打撃のチームであったが、この二人が入学したことで投手層も厚くなっていきます。
 次に、青道高校は強豪校が多くいる西東京地区にあり、稲城実業や市大三校などのライバル校の中から勝ち上がって甲子園出場を目指しています。稲城実業の成宮鳴や市大三校の天久光聖、薬師高校の轟雷市など他の高校にも魅力的な選手がたくさんいて読んでいて飽きないストーリーになっています。
 最後に、この漫画は漫画の世界だけにいる異次元の選手とかがいるのではなく高校野球をリアルに再現していて、1つの強豪校が甲子園を目指して日々練習に励む中でたくさんの笑いがあったり、監督の名言などとても魅力的なシーンも多いので野球に興味がない方でも楽しめる漫画だと思います。
 私がダイヤのAという漫画を取り上げた理由は、ダイヤのAは今まで部活動などに取り組んできた人たちに共感が持てることが多いと思ったからです。そしてこの漫画はユーモアあふれる漫画になっているので気持ちが沈んでいるときなどにも最適だと思ったからです。リアルに高校野球を再現していてとても身近に感じられ、勇気や感動を与える漫画であると感じたからです。野球に限らずスポーツはすごい力があると考えており、スポーツを通して多くの人に影響を与えるのでダイヤのエースを通じて多くのことを感じてもらいたいと思い、そして楽しんでもらえると思ったのでこの漫画を取り上げました。

川口俊和著『コーヒーが冷めないうちに』

法学部1年 藤井 暖さん(「基礎演習(濱谷)」リサーチペーパーより)

 僕が選んだ「コーヒーが冷めないうちに」という本は、特定の場所でコーヒーを飲むと過去に戻ることができる不思議な喫茶店があり、それを知って過去に戻ろうとする人たちのそれぞれの物語が書かれた本です。
 しかしこの本で書かれている「過去に戻れる」という行為にはいくつかの複雑なルールがあります。
 ①過去に戻ってもこの喫茶店を訪れたことのない人とは会えない、②過去に戻って何をしても現在は変わらない、③過去に戻れる時間は淹れてもらったコーヒーが冷めるまでの間、④過去に戻ってもコーヒーを飲んだ自分の席からは動けない、というものです。
 正直、自分ならここまでして過去に戻るのは面倒だなと思ってしまいました。
 しかしこの作品に出てくる登場人物はこれらの複雑なルールがあるにも関わらず、それ以上に過去に戻りたいと強く願う人たちばかりです。
 そんな人たちがそれぞれ抱えている過去の後悔を取り戻そうとするドラマが見れ、とてもおもしろく感動できる本です。
 作者の川口俊和さんは1971年に大阪府茨木市で誕生しました。
 もともとは、小説家でなく劇団の脚本家兼演出家として活動していました。
 そこで、この小説が出版されるきっかけとなる舞台「コーヒーが冷めないうちに」を公演し第10回杉並演劇祭大賞を受賞しました。
 この舞台をたまたま見に来ていた編集者が感動し、是非小説にしたいという思いから小説の「コーヒーが冷めないうちに」の出版が実現しました。
 この作品が川口さんの小説デビュー作となり、その後2018年に映画化されるなどとても人気のある作品となりました。
 他の著書として「この嘘がばれないうちに」と「思い出が消えないうちに」という作品があります。
 この2作はタイトルからも想像がつく通り、「コーヒーが冷めないうちに」の続編として出版されました。
 しかし、これほど有名な小説を書き上げた川口さんですがなんとこの他に著書がありません。
 理由としては、本業が劇団の脚本家兼演出家であるので小説を書き上げる必要がないことだと思います。
 ですが副業としてここまで有名な小説を書いた川口さんは本当にすごいと思いますし、まだこれから新しい作品が生まれるかもしれないのでとても楽しみです。
 最後に、映画と原作では話が少し変わっているので原作を読んでから映画を見て比較をしてみてもおもしろいかもしれません。

参考:【映画】コーヒーが冷めないうちに / 川口俊和原作 ; 塚原あゆ子監督 ; 奥寺佐渡子脚本