投稿者「図書館」のアーカイブ

岡田元浩先生(経済学部)「大学時代の読書」

☆新入生向けの図書案内 
 私は今でこそ経済学部の教員であるが、大学学部時代は文学部生だった。読書好きだが、他にさしたる取得も関心も無かった私は、大学生でなければできないことをやっておこうと考え、手当り次第に本を読んだ。文芸批評家の小林秀雄が学生時代に10冊以上もの本を同時に読んでいたとの話に刺戟され、自分もこれを実践してみようと思ったのだ。まず起床したら朝食前に1冊、食後の通学前に1冊、通学途中の電車内で1冊、講義時間の合間に2~3冊、帰宅途中の電車内で1冊、夕食前に1冊、夕食後・就寝前に2~3冊といった具合に。ジャンルも、カントやヘーゲルの哲学書のドイツ語原典から、まったくの専門外でちんぷんかんぷんの理工学書、さらにはここで言えない怪しげな本に至るまで、さまざま。読み方もいろいろ。川端康成の『伊豆の踊子』や太宰治の『ヴィヨンの妻』などの小説は、筆致の美しさに魅了され、全文を写本したほどだが、数百ページに及ぶ書物を1時間程度で飛ばし読みしたこともある。
 かれこれ30 年前にもなるこうした経験を振り返ってみて、その後の自分にどう役立ったのか、正直よくわからない。多様な分野の本を読んだが、お世辞にも今の私は幅広い知識・教養の持ち主だとはいえない。当時読んだ数多の書物の内容も、そのほとんどが記憶から失われてしまった。ただ、日々の雑事に追われ、読書の大半がビジネスとしての自己の研究上のものに限定されてしまった現在、30年前の読書体験は、やはり当時想い抱いたように「暇な(unoccupied)」大学時代でなければできないことだった。そして、バイトや就活に翻弄され、大学生にとって最大の、そして不可欠な特権であるべき「閑」(周知のように、ギリシャ語によれば scholar とは「閑人」のことである)さえも奪われている昨今の大学生を見るにつけ、自分は佳き時代と境遇の下に生まれ育ったと感じずにいられないのである。
甲南大学図書館報 藤棚(Vol.30 2013) より

水野健一先生(理工学部)「『「大発見」の思考法- iPS 細胞vs. 素粒子-』山中伸弥,益川敏英,文芸春秋」

☆新入生向けの図書案内 

著者: 山中伸弥 益川敏英
タイトル: 「大発見」の思考法 : iPS細胞vs.素粒子
出版者: 文藝春秋
出版年: 2011
配置場所: 図書館 1階開架一般
請求記号: 404//2090

 今年入学され、新たに大学生活を始めようとしている皆さん。
 将来にたいして大きな夢をもって勉学に挑むにあたり、本書を推薦いたします。著名な先生方が自然科学における研究に挑んだ成功例として読んで頂きたい。本書は、2012 年のノーベル医学・生理学賞受賞者である山中伸弥京都大学教授と、2008 年度のノーベル物理学賞の受賞者である益川敏英京都大学名誉教授(現在京都産業大学教授)が両者のノーベル賞受賞にまつわる大発見に至るお話やエピソードを対談形式で綴った大変興味深い内容です。
 どちらの先生の研究内容も説明するには専門用語が多く出現して、馴染みがない話題と思われるかもしれませんが、本書は素人にも分かりやすい対談形式で内容が解きほぐされています。それぞれの「謎を解く」に至るブレークスルーの瞬間をこの本より雰囲気だけでも体験してください。両先生のお話を聞いてしまえば、「コロンブスの卵」と思えます。しかし、その間の努力や発想の展開は誰にでも真似の出来るものでないことはすぐに想像できます。大学での新たな学生生活を始めるに当たり、この本から新たな気力と勇気を得て、決意新たに出発しましょう。そして、皆さんも「自然界の謎解きに参加しよう」という気持ちが起こることを期待しています。
 最後にもう一言、益川先生は、元名古屋大学理学部教授・坂田昌一先生の門下生です。坂田先生は、本学の前身である旧制甲南中学・高校のご出身で、素粒子理論物理学者の第一人者です。本書には、研究室はみんな対等で自由な雰囲気であったと記されています。そんな校風は本学に今なおどこかに残っていて欲しいと願っています。
甲南大学図書館報 藤棚(Vol.30 2013) より

中島俊郎先生(文学部)「乱読のすすめ」

☆新入生向けの図書案内 
 読書には読者の数だけ読み方があるでしょう。それでも誤解を恐れずにいえば、読書の要諦は乱読につきると思います。乱読とは好きなものを、脈絡なく手当たり次第に読むことです。日常生活が細分化され、学問の専門化がいきとどいている現代こそ、ひとつの全体像を把握するためには乱読という読書法が必要なのです。全体の見通しなくして、個は何も見えてきませんから。
 乱読の強みは読む主体である読み手が中心にいることです。学問、研究の専門化が陥りやすい弊害は、ひとり言に終始して、やがてくり言に堕していく危険をはらんでいます。つまり、精神の自由が硬直してしまうのです。精神を活性化させるためにはつねに対話を交わす精神の開放を忘れてはなりません。
 読書という、読者と作者の対話の場で相互に作用し合うことなくして、知の新しい地平が拓けるはずがありません。読者とは、作者から何かを教えてもらう受け身ではなく、自ら意味をつむぎ出していく主体なのです。そもそも読書は作者と読者が意味を織りなす共同作業なのですから。
 乱読は統一性、一貫性に欠けて自己中心的で閉鎖的な世界にこもりがちであるという批判をよく受けます。たしかにそうした欠点があるでしょう。だが、そうした短所をうわまわる長所が乱読にはあります。さらに自己の好みに応じて気の向くものだけを猟歩していくから断片的なものしか身につかないととがめられますが、こうした断片で終わる知識の集積はあなどれないものがあります。断片など耳学問に過ぎないと否定されてしまいますが、耳学問は意外と頭を活性化させるのです。知らないことを聞いた時に覚える新鮮な驚きを思い出して下さい。耳学問は頭脳内で連鎖作用を起こします。この連鎖作用によって自分が追究している全体像が徐々に結晶していくのです。
 読書とは元来、自分のなかに未知を読み込む営為なのですから、自己本位で読みすすむしかない。だから未知を読むのは自己を読み込むことと同意なのです。乱読が創造的読書になるゆえんです。
甲南大学図書館報 藤棚(Vol.30 2013) より

ご入学おめでとうございます!

満開の桜に迎えられ、新入生の皆さんの意気も揚々としているのではないでしょうか。
図書館前の桜も、とてもきれいに咲きました。
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新入生のみなさんに、図書館の使い方をご案内する『オリエンテーション』を開催します!
4月2日(火) 10:40~11:40
4月3日(水) 午前の部:10:40~11:40  午後の部:13:00~14:00
4月4日(木) 午前の部:10:40~11:40  午後の部:13:00~14:00

図書館前にも大きな掲示を張りました。
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どの回も内容は同じですので、ご都合のよい時間に参加して下さい。
入学式の日も図書館は開館しています。
新入生の皆様も、学生証を受取られたら、図書館に入館できます。
もちろん、本も借りられますよ。
この時期のおすすめスポットは2階の閲覧席です。
図書館前の桜を上から眺めることができますよ。
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(写真ではうまく撮れなかったので、是非見に来て下さい。)
それでは、みなさま、これから宜しくお願いいたします。

図書館は卒業生も利用できます。

ぴかぴか(新しい)ご卒業される皆様、おめでとうございます。
卒業式以降は、「卒業生」として、図書館・サイバーライブラリを利用することができます。学生と同じように本や雑誌が利用できますので、卒業後もご活用下さい。
(パソコンやインターネット、視聴覚資料は利用できません。)
<利用申請受付場所・時間>
図書館1階カウンター 平日9時~17時
*土曜・日曜・祝日は、サイバーライブラリで受け付けます。
(卒業式当日は、サイバーライブラリで受け付けています。)
<必要書類>
氏名・住所を確認できる証明書
卒業生への利用案内はこちらをご覧下さい
http://www.adm.konan-u.ac.jp/lib/riyou/guide/alumnus.htm

シンガポールの図書館訪問しました

このほど、シンガポール国立大学(NUS)での講演出張の際に、当大学と、別大学(南洋工科大学;NTU)の図書館を訪問し、説明を受けてきました。
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NUSは非常に広いキャンパスを持っていて、学内を横切る道路に、バスが早朝から深夜まで走ります。それも、時刻表はなく、数分おきに来ます。学生は3万人ということですから、それほど多いわけではありませんが、ともかく学内は活気があります。図書館は7つありますが、central libraryが中心です。4層あり、ともかく広く、学生が座ることが出来る席がたくさんありました。人気があるのは窓際というのは、万国共通です。
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授業の本を借りることができるところは複数の同一本がありましたが、他は館内1冊というのは日本と同じです。どこも、本の保管には苦労しているようです。授業の本は2時間が限度。コピーはできますが、10%が制限ということでした。シンガポールはご存じのとおり、社会ルールを破ると非常に大きな罰則がある国なので、ルールを破る学生のことは心配していないということでした。他の本は2週間ということでした。中国語の本のエリアは大きく、日本語の本はそこの片隅程度のエリアでした。また、シンガポール・マレーシアコレクションは貴重書としてエリアがありました。また、共同学習の場も随所にありました。
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行ったのは午前10時から12時頃ですが、概して静かで、学生達は皆さん懸命に勉強していました。設置パソコン、持ち込みパソコンを含めて、ほとんどの学生がパソコンを使っていました。飲み物は自由、食事はダメというルールでした。チャットルームは携帯電話用、チャットは図書館職員にリアルタイムで質問するシステムです。
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当番が決まっていて、常に誰かが答えるということです。2時間でしたが、実にいろいろと参考になりました。この中央図書館は10年前に建ったということで、その後、AV機器などをフルに活用したコモンズのエリアを持つすばらしい建物が別の建物にあり、そちらも見せてもらいました。こういう図書館がある大学でもう一度学生をしてみたいと思いましたよ。
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NTUは、アポなしでいきなり訪問して、見せてもらいました。親切な職員さんたちばかりで、若くて魅力的な方々で、私は、会話を楽しみました。NTUの図書館は中央図書館というのはなくて、中規模の図書館(といっても、本学の図書館くらいの閲覧エリアはありますが)が学内に多数ありました。ラーニングコモンズを全面的に取り入れており、Quiet Area以外では、随所に共同学習の場がありました。
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国は違っても、図書館の雰囲気は日本とよく似ていました。また、共同学習の場が求められていること、そこでは、PCが必須であること、飲み物や電源など、そういう場での必須アイテムであることなど、大いに参考になりました。今後も、外国に行ったら図書館を訪問してみたいと思います。