11月30日に、甲南大学の属する「五大学図書館懇談会」に参加するため、成蹊大学に出張してきました。五大学とは、学習院大学、成蹊大学、成城大学、武蔵大学、それに本学です(順不同)。関西は本学だけのため、2年後の懇談会は皆さん楽しみにされているようでした。
私はこの役職に就いてから、私立大学の図書館事情について初めてある程度詳しく知ることになりましたが、どこの図書館も立派です。そして、大学図書館は、ちょうどいま、図書館が静かに本を読む場所であるだけでなく、図書館が保有しているデータベースの利用、ネットワークを利用した知識の探索、そして、グループ学習の場として大きく変わりつつあります。最近訪問した、立教大学も成蹊大学も、図書館は新築でしたので、やはり、衝撃的でした。
下の写真は成蹊大学図書館です。キノコのようなグループ学習室がとても衝撃的でした。人気があるそうです。こういうところは、「入ってみたい」という人間の本能が働くのかもしれません。
本学図書館も、これから大きく変わっていかなければならないと考え、我々もいろいろと模索中ですが、学生の皆さんには、まず、現在の図書館に足を運んでみてほしいと思います。そうすることで、我々も、学生が利用する状況をみることができ、何が必要なのか、甲南大学の学生にとってよりよい図書館がどういうものか、わかってくることもあると思います。
投稿者「図書館」のアーカイブ
大津眞作著『思考の自由とはなにか -スピノザとシモン・ランゲにおける自由-』
<教員自著紹介>
この本は題名の通り、思考の自由について考察したものです。
思考というのは、皆さんは初めから「自由」だと思っているでしょう?
でも、決して思考は自由ではないのです。人間がやっていることは、
神様がやっていることと決定的に違っていて、すべてが限界を持って
います。その限界とは何かというと、恐ろしいことに、それは「現実」
の限界、つまり本当にこの世に存在する物質的条件や環境の限界性なの
です。想像力を考えてみて御覧なさい。それはすべて現実に「切れ端」
として存在しているものばかりでしょう?鉄腕アトムは、原子力エネル
ギーの物理学的発見がなければ、想像できなかったことでしょう?
私はこの本で、人間の思考はすべて必然的であって自由ではない、と
主張しています。そうすると、思考を変えるには、考え方を変えるには、
現実を変えなければなんともならない、ということになるでしょう?
そしたら私たちは、すぐに卵が先か、ニワトリが先かという問題にぶつ
かります。私は、この本のなかで、思考の自由を主張する哲学者を取り
上げて、彼がなぜ自由を主張したのかを研究し、一つの結論に至りました。
すなわち、自由を主張する人々は、すべて現実に自由を持っていない人々
なのだ、というのがその結論です。ワイルドでしょう?
ですから、思考を現実につなげることがとても大事なことなのです。
■『思考の自由とはなにか – スピノザとシモン・ランゲにおける自由 – 』
■著 者 大津 眞作 文学部社会学科 教授
■請求記号 133// 2021
■配架場所 1階開架一般
■ 先生からのお薦め本
『倫理の大転換』(行路社) 私の本です。私が翻訳したランゲの
『市民法理論』(京都大学学術出版会)。高い本ですが、現在の貧困な
現実を考えるのにとても役に立つ本です。
『Cup of Death』Shannon Gilligan
語学学習室からのBookReviewです☆
【レベル1】 837/C/1
Title: Cup of Death
Author: Shannon Gilligan
Series: Choose Your Own Adventure
読者が主人公となり、読み進めるページを選択するシリーズです。
この本には22の結末があります。
あなたは私立探偵です。ニューヨークでの仕事を終え、休暇で日本へやって来ました。
事件の舞台は京都。初釜に使うはずの国宝の茶碗が裏千家から盗まれてしまいます。
あなたは茶会に招かれる四人の人物に目をつけます。
さあ、誰から調査を始めますか?
初回は8ページで話の展開も少ないまま終わり、物足りなさを感じ、
2回目は別の選択をして読み進めました。かなりストーリー展開が違い楽しめました。
何度もいろいろなパターンで読んでみてください。
『The bird of happiness and other wise tales』
語学学習室からのBookReviewです☆
【レベル2】 837/D/2
Title: The bird of happiness and other wise tales
Series: Dominoes ; level 2
私は以前ロシアに留学していました。帰国の際、ロシア人の友人よりもらったプレゼントの中に、この鳥があったのです。それは木でできており、きれいに細工されて、羽一枚一枚が別々のパーツで作られたのち、丁寧に糸で縫いあわされていました。立体的に羽を広げた鳥のようになっていて、とても細かな作りに私は目を見張りました。彼女にこの鳥について訊ねると「これは幸せの鳥よ。部屋の上のほうに吊るすようにして飾ると幸せが降り注ぐのよ。」とだけ教えてくれました。私は詳しいいわれなど気になりながらも、友人との別れに胸がいっぱいで、この鳥についてはそれ以上話にはのぼりませんでした。
帰国したのち、私は部屋の上のほうにこの鳥を飾りました。糸に吊られてゆらゆらと羽ばたいているような鳥を見るたびに友人を思い出し、と同時に何故これが幸せの鳥なのかという疑問が浮かびました。
今回偶然にこの本に出会い、表紙を見てあの鳥だとすぐに判りました。
元気な男の子と、彼を大切に思う木こりのお父さんと優しいお母さん。毎日森を駆け回り、様々な鳥のさえずりを聞いて元気に育っていた男の子が、ある日多くの人が亡くなる流行病にかかってしまいます。きらきらと輝いていた少年の瞳から日々光が失われて行きます。お父さんは苦しみもがき、再び息子の瞳に希望の光を見出そうとします。それがこの鳥でした。
他にアメリカ、ビルマ、中国、エジプト、メキシコ、ギニア・西アフリカ、インドのお話も掲載されています。
『Hard Times』Charles Dickens
語学学習室からのBookReviewです☆
【レベル3】 837/D/3
Title: Hard Times
Author: Charles Dickens
Series: Dominoes ; level 3
クリスマスキャロルで有名なディケンズの作品です。産業革命時イギリスの工業都市が主な舞台で、資本者階級と労働者階級の関係性など、当時の世相がドキュメンタリーのように鮮明に描かれています。
資本家グラッドグラインド氏は、自分の信条を我が子に押し付け、想像や感情を排除した教育を徹底します。大きな重圧の中で成長した子供たちはやがて、それぞれ道を踏み外し、氏は自分の誤った教育の仕方を悔やむ事になります。精霊による不思議な悪夢を見て改心するクリスマスキャロルの主人公と重なりますが、こちらは醒める事のない現実だけに、皮肉で残酷です。この家族に巻き込まれる不運なブラックプール氏の他、『家政婦は見た!』を連想させるミセススパーシットや、愛情深いシシーなど、沢山の人がこの家族と関わり、物語に彩りを与えています。
自分だけが正しいという考えで他者を思いやれない生き方は、自分だけでなく、周囲の人にも悪影響を及ぼし、とても罪だという教訓を感じました。