投稿者「図書館」のアーカイブ

宮部 みゆき著 『ブレイブ・ストーリー』

知能情報学部   4年生  団野 和貴さんからのおすすめ本です。

書名 :  ブレイブ・スト-リ-
著者 : 宮部 みゆき著
出版社:角川書店
出版年:2003年

 

主人公のワタルは,小学5年生.父と母と3人で暮らす,ありふれた普通の人生.友だちと遊んだり喋ったりする,普通の人生.しかし,そんな人生に危機が訪れる.多感な時期に,両親の離婚危機や同級生との喧嘩.踏んだり蹴ったりのワタルは,ある日,異世界「幻界(ビジョン)」に通じる扉を発見し,女神のもとへ辿り着けたら自分の運命を変えられることを知り,旅に出る.そこで,仲間たちと出会い,剣も振ることができなかったワタルが,どんどん成長していく.

以上があらすじであるが,RPGのような世界観を感じるだろう.旅立つまでに時間がかかるが,一気にこの世界に引き込まれワタルと冒険している気分になる.本作は,物理的な強さよりも,精神的な強さに重きを置いている.子供はもちろん,大人も十分楽しめる.

「運命を変える」とはどういうことなのか.この物語を読めば,それが分かるだろう.人生は思いがけないこと,未知の要素で展開されていることが多い.では,「運命を変えたい」と願うとき,何を願うことなのだろうか.そして,「運命を変える」ことが何を手に入れることができるのだろうか.この本を読んだ後に,ぜひ考えてほしい.ワタルと読んだ後の自分を重ねることで,ワタルと一緒の強さを手に入れることができるだろう.答えは,人の数だけある。

ワタルと一緒に己と世界を見つめ直す長い旅をして,その答えを手に入れてほしい.

松村 涼哉著 『15歳のテロリスト』

知能情報学部   4年生  団野 和貴さんからのおすすめ本です。

書名 :  15歳のテロリスト
著者 : 松村 涼哉著
出版社:KADOKAWA
出版年:2019年

 

「15歳のテロリスト」このタイトルから,何が想像できるだろうか.おそらく,誰もが想像しない作品になるだろう.

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「新宿駅に爆弾を仕掛けました.全て,吹き飛んでしまえ」ある日,爆破予告が顔出しで動画共有サイトに投稿された.その後,電車のホームが爆破される.記者の安藤は,この少年(実行犯「渡辺篤人」)を知っている.「少年犯罪被害者の会」にいたからだ.しかし,なぜ過去に少年犯罪の被害家族だった少年が,罪を犯したのか.

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ここまであらすじを見ても,タイトルからは予想できなかったことがたくさんあるだろう.この物語は,誰にでも分かりやすく現代社会における問題を書いている.「少年犯罪・少年法」「加害者・被害者」「犯罪に対するメディアの報道」「第三者の行動」がこの本のキーワードになるだろう.また,この本はミステリー要素もある.誰が犯人で,動機は何かということも伏線として張っている.多くの本は犯罪にあった被害者家族の目線から,どのように立ち直るかという物語の展開になることが多い.しかし,この本は加害者の目線あるいは加害者の家族という目線でも物語を展開している.そして,被害者や加害者,その家族をメディアどのように追い詰めていくのかということもありありと書かれている.さらには,事件とは無関係の第三者が,SNSを利用して犯罪に対して被害者・加害者関係なく誹謗中傷や憶測を発言する姿は,正に現代そのものである.

私はこの本を読んで,世の中の問題は一筋縄では解決できないということをよく思い知った.犯罪が起きたとき,誰かが謝って済む問題でもないし,復讐しても終わる問題ではない.フィクションでありながら,本当に現実でこんなことが毎日起こっているのではないか,だからこそ常に考えなければならない,と強く思った.

全てを知ったとき,なぜ渡辺篤人が爆破予告を行ったのか,そしてこの事件の真の狙いが明らかになる.ぜひ,皆さんの目で物語の結末を読んでほしい.

マネジメント創造学部 BLAKER Andrew D先生へのインタビュー

マネジメント創造学部 3年生  西山 叶子さんが、マネジメント創造学部  BLAKER Andrew D先生にインタビューを行いました。(KONAN ライブラリ サーティフィケイト)

Q.本を読むことは好きですか?また、どのくらいの頻度で本を読みますか?

A.大好きです。毎日は読みませんが、1週間に5日は読みます。

 

Q.どのようなジャンルの本をよく読みますか?

A.どんなジャンルの本も大好きなので、1カ月ごとにジャンルを決めて、サイクルするようにして読書を楽しんでいます。特にファンタジーものが好きです。

 

Q.本を買うときに重視しているポイントは何ですか?

A.友人やインターネットのレビューを基に購入することが多いです。

 

Q.どのくらいの頻度で書店や図書館を利用しますか?

A.電子書籍を利用することが多いので、あまり利用しません。 実は、私の母はニュージーランドで司書をしているので、ニュージーランドの図書館にはほぼ毎日通っていました。日本の図書館はあまり利用しませんが、書店は1カ月に1度程度、新しい本を探しに行くために利用します。

 

Q.最近読んだ本で気に入っているものは何ですか?

A.Terry Pratchettが書いた、『Equal Rites』というファンタジーの話が面白かったです。

 

Q.現在の分野を専攻するきっかけとなった本はありますか?

A.Bill Brysonの『The Mother Tongue』という本です。

 

Q.大学生におすすめの本はありますか?また、その理由は何ですか?

A.Albert Camusの『The Myth of Sisyphus』がおすすめです。私が大学生の時に読んで面白かったし、学生にも読みやすいと思います。

 

Q.読書の魅力とは何だと思いますか?

A.まず、ノンフィクションの小説は、新しいことを知ることができるため、その過程がとてもわくわくします。フィクションの小説は、非日常空間体験をすることができるため面白いです。例えば、今自分が辛い状況であっても、楽しいフィクションの小説を読むことでリフレッシュできます。特に、大学生は本を沢山読む方が良いと思います。学生生活が終わってしまうと、どうしても読書から遠ざかってしまうからです。今のうちに読書に親しみ、学生生活を有意義に過ごしてほしいです。

 

感想:お忙しい中、快くインタビューを引き受けてくださったため嬉しかったです。本に対する教授の考えや思いを伺うことができ、貴重な経験になりました。

 

<BLAKER Andrew D先生おすすめの本>

Albert Camus著 『The Myth of Sisyphus』 Amereon Limited,  2012年

(インタビュアー:マネジメント創造学部 3年  西山 叶子 )

横井軍平, 牧野武文著 『横井軍平ゲーム館 : 「世界の任天堂」を築いた発想力 』

知能情報学部  4年生  Hさんからのおすすめ本です。

書名 : 横井軍平ゲーム館 : 「世界の任天堂」を築いた発想力
著者 : 横井軍平, 牧野武文著
出版社:筑摩書房
出版年:2015年

 「任天堂」は今や誰もが名前を知っている有名なゲームメーカーだろう。しかし初めから今のようにテレビゲームを作っていたわけではない。はじめは花札といったアナログなおもちゃを作る会社であった。本書では、そんなアナログ時代の開発とデジタル時代の開発の両方を経験した横井軍平さんのインタビューから構成されている。「ウルトラハンド」、「ゲーム&ウオッチ」、「ゲームボーイ」といったヒット商品の開発経緯を知ることができ、レトロゲーム好きな人はその内容だけでも楽しむことができるだろう。しかしこの本はそれだけではとどまらない。本書には「枯れた技術の水平思考」というキーワードがしばしば登場する。先端技術ではなく、使い古された技術の使い道を変えてみることによって、まったく新しい商品が生まれるという考え方である。余っていて誰も使っていないもの、値段が安く大量に流通しているものから新しいヒット商品を作り出すストーリーは興味深い。今や毎日のように新しい技術は生まれているが、古いものに一度焦点を当てる考え方はすごく良い刺激だった。

 ゲームでもおもちゃでも、今から何か新しいものを作り出そうとしている人にはぜひ一度手にとってもらいたい本である。20年以上も前の本だが内容は現代の開発に通じるところがたくさんあり、未来のクリエイターにはぜひオススメしたい一冊である。

村田 紗耶香著 『コンビニ人間』

 

知能情報学部  4年生  Hさんからのおすすめ本です。

書名 : コンビニ人間
著者 : 村田 紗耶香著
出版社:文藝春秋
出版年:2016年

 「普通に生きる」って難しい。主人公は36歳で独身、コンビニアルバイト歴18年の女性。これを聞いてあなたは彼女にどんなイメージを持つだろうか。もし自分の身近にいたら、「なんで就職しないの?」、「まだ結婚しないの?」と思う人もいるはずだ。おそらく私もそう思うだろう。なぜならそれが社会において普通だから。ならば普通の基準は誰が決めるのだろうか。おそらく自分ではなく他者からの評価で生まれる。

 コンビニという様々な年齢や国籍の人が集まる場所で、主人公は他者から評価され続ける。主人公は自分以外の真似をして、自分らしさを殺し続ける。普通じゃない自分のせいで家族が悲しまないように。多様性を謳う今の社会において個性の否定はマイナスなイメージを持つ人も多いだろう。普通と呼ばれる人間らしい生き方とコンビニにあるマニュアルのような無機質な生き方はどちらの方が良いのか。どちらが幸せなのか。普通であることが正義なのか。

 結末は人によって感じ方が分かれるだろう。ハッピーエンドと捉える人もいれば、バッドエンドと捉える人もいるだろう。普通という名の圧力による生きることの難しさ、まさに今の時代が生んだ小説である。ぜひ読んでみて、判断してほしい一冊である。

高野 和明 著 『ジェノサイド』

 

経済学部  1年生  Mさんからのおすすめ本です。

書名 : ジェノサイド
著者 : 高野 和明 著
出版社:角川グループパブリッシング
出版年:2011年

 今回紹介する本は、高野和明の代表作であり、日本推理作家協会賞や山田風太郎賞など多数の賞を受賞した『ジェノサイド』である。題名である「ジェノサイド」は、大量殺戮や大量虐殺という意味の言葉である。しかし、本書のテーマは「人類の未来」となっており、その中で、人類のために何かに必死に取り組むひとが描かれている。

 本書は、世界を舞台にした、壮大で予測不能な、人類全体の平和をかけた物語である。アメリカ大統領はアフリカで新種の人類が誕生し、人類が滅亡の危機にあるという報告に対し、極秘の計画を進める。それと同時期に、アメリカ人傭兵のジョナサン・イエーガーは難病の息子の治療費のため、アフリカでの極秘任務に就くことを決断する。彼が知らされているのは「人類全体に奉仕する仕事」ということだけであった。さらに、日本では創薬科学専攻の大学院生である古賀研人のもとに、数日前に亡くなったはずの父から一通のメールが届く。それをきっかけに、研人は成功すれば10万人の命を救える難病治療の新薬を開発することになる。

 本書の見どころは、アフリカ、日本、アメリカでの場面が頻繁に切り替わり、展開していく点である。一見全くかかわりのない人々がなぜ繋がっているのか、なぜイエーガーと研人が選ばれたのか、交錯する物語の中で徐々に明らかになっていく。著者が脚本家としても活動していることもあるためか、まるで映画を見ているような感覚で読み進めることができる。また、アメリカが隠していた本当の目的、そして、死んだ父の成そうとしていたことが明らかになるとき、イエーガーと研人がどのような行動をとるのかも注目すべき点である。そこには、他人のために危険な選択をするという人間の優しさと素晴らしさが表現されている。

 以上のように本書には「ジェノサイド」という恐ろしい題名がつけられ、人類は「ジェノサイドを行う唯一の生物」であるとされている。しかし、同時に家族愛や友情なども描かれ、ハッピーエンドではないものの、読者が人類に対し希望を持てる終わり方になっている。「人間とは」ということを深く考えてみたい方に是非読んでいただきたい。