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【第7回 甲南大学書評対決】 十文字青著 『いのちの食べ方』

10月26日(木)に開催された第7回 甲南大学書評対決(主催:甲南大学生活協同組合)で紹介された本です。

 

書道部甲墨会チーム 経営学部1年  大脇 悠史さんからのおすすめ本です。

書名 :いのちの食べ方
著者 : 十文字青
出版社: KADOKAWA MF文庫J
出版年:2022年

大脇さんは、人気アーティストのEveさんがプロデュースした「いのちの食べ方」というライトノベル小説を紹介してくれました。

 

以下、大脇さんからの書評です。

 

Eveさんの楽曲「いのちの食べ方」とそのMVの世界が小説となった作品で、新たな視点で物語の世界観を味わうことが出来ます。物語には「人外」と呼ばれる、人ならざる存在が登場するのですが、その人外によって日常が非日常へと書き換えられる中、中学生の飛が相棒のバクと共に立ち向かいます。ここでの、飛のバトルシーンの迫力や、対比して描かれる人外の不気味さには、この作品の魅力がとても詰まっています。また、全体的に暗めな話なのですが、終始緊張感が感じられるため、ドキドキしながらも世界観を楽しめる作品となっています。

去年には「次にくるライトノベル大賞」の1位にも選ばれ、とても人気の本作は、続きの巻も出ています。Eveさんを知らない方や楽曲を聞いたことがない方でも関係なく楽しめる作品ですので、この機会にぜひお手に取ってもらえたら嬉しいです。

 

第7回 甲南大学書評対決、生協書籍部で実施中! | 甲南大学図書館ブログ (konan-u.ac.jp)も合わせてご覧ください!

【第7回 甲南大学書評対決】 菅広文著 『京大中年』

10月26日(木)に開催された第7回 甲南大学書評対決(主催:甲南大学生活協同組合)で紹介された本です。

 

書道部甲墨会チーム 文学部1年  中田 優月さんからのおすすめ本です。

書名 :京大中年
著者 : 菅広文
出版社: 幻冬舎
出版年:2023年

中田さんの紹介してくれた本は、お笑いコンビのロザンの菅さんが相方の宇治原さんとの歩みを書かれた本です。

 

以下、中田さんからの書評です。

 

みなさんは教科書の「はじめに」の部分を読んだことがありますか?初回の授業のときにチラッと見るくらいで、実際に意識して読んだことがある人は少ないと思います。

この本は「20歳の宇治原さんへ」や「30代の教科書」のように、各章がこれまで経験してきたことを振り返り、その頃の自分たちに語りかけているような内容になっています。ロザンのお2人をテレビで見たことがある人は2人の仲の良さや、雰囲気が本からも伝わってくると思います。一方あまり知らないという方でも、菅さんの宇治原さんへの信頼感と2人の人生を知ることができます。京大卒でインテリ枠での活躍が目立つ宇治原さんは、クイズ番組などで見たことがある人も多いと思います。学生時代のお2人は特に面白い経験をしています。菅さんの宇治原さんに対する扱い方や、今までに起きた出来事が書かれており笑える部分もあります。

手紙のような文章で読みやすいので、まずはパラパラと中身を見てもらえると嬉しいです。

 

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ポートアイランドキャンパス図書室にて図書委員がPOP展示を行っています

〔フロンティアサイエンス学部〕
ポートアイランドキャンパスにあるフロンティアサイエンス学部(FIRST)では、学生が「図書」「キャリア」「生協」「レクリエーション」「広報」の各委員会を作ってさまざまな活動をしています。
今回、そのなかの図書委員さんがPOPを作って図書の紹介をしてくれました。
写真はポートアイランドキャンパスの図書室で展示しているPOPです。


(写真左の列を上から)『楽園の烏』(阿部智里)、『君は月夜に光り輝く』(佐野徹夜)、『アリス殺し』(小林泰三)
(写真中央の列を上から)『あるかしら書店』(ヨシタケシンスケ)、『オルタネート』(加藤シゲアキ)
(写真右の列を上から)『研究室で役立つ 有機化学反応の実験テクニック』(J. Leonard、 G. Procter、B. Lygo)、『独学大全』(読書猿)
POPは手書きあり、パソコン打ちあり、イラストあり、思わず本を手に取ってしまうぐらいPOPの文章も上手で、「えっ、みんな本屋さんでバイトしたことあるん?」と思うぐらいすばらしいPOPが集まりました。理系学部らしく理科ど真ん中の本もあれば小説もあり、選書のバランスもすごくよい。美術が大の苦手で文系出身の身からすると、イラストが描けて理系の知識もあって文章が上手とは、なんと頼もしい学生さんだろう!と誇りに思いました。
フロンティアサイエンス学部の図書室は、事務室の開室時間内(平日9~18時、土曜日9~13時)であれば学外の方にもご案内できますので、ぜひ一度ポートアイランドキャンパスに足をお運びいただき、学生さんの力作をご覧ください。
(ポートアイランドキャンパス事務室 山本 樹)

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遠隔地キャンパスへの訪問には、必ず学生証を持って行ってくださいね!
本は取り寄せもできます。

[藤棚ONLINE]知能情報学部・田中雅博先生コラム「本学図書館の入館システムを作りました」

図書館報『藤棚ONLINE』
知能情報学部・田中雅博先生コラム「本学図書館の入館システムを作りました」

 図書館入り口の入館の際に、通常のカードタッチの横に別のカードリーダーが設置されていて、「それもタッチしてください」という表示が、3月頃から7月末まで続きました。入館される皆さんは、よくわからないけど何か面倒だなと思っていたのではないかと思います。
 8月以後、扉を常時開放状態にする、新しい入館システムに変更になりました。現在は、旧システムを停止させ、ゲートは常にオープンな図書館になっています!

 入館時にはゲートの上に設置してあるカードリーダーにIDカードをタッチしていただき、そのまま通過してください。カードを読み取れれば読み取り成功音が出されます。カードから個人IDを読み取り、それに従って3つのメッセージ、すなわち(1)図書館からの一律のメッセージ、(2)学部ごとのメッセージ、(3)個人ごとのメッセージ(ない場合は、ここにも別の一律メッセージ)がカードタッチ後、一定時間表示されます。カウンターから呼び出しがある方は、音声メッセージも出ます。別のセンサーで通過確認をしており、通過時にも音がでます。一方、IDカードを使わずに入館した場合は、ブブーという音で警告のメッセージが出ます。また、入館ゲートから退館しようとした場合も同じく音が出ます。音と表示がいろいろ出るようになっていますから、よく確認してください。カードが別の大学のものであったり、期限切れ、再発行時に無効になったカードなどを検知したりしたときはエラー表示がなされます。同じカードを続けて読ませようとしたら、しばらく動作しませんので、注意してください(一度のタッチで複数回読み取る誤動作を避けるための措置ですので)。手作りですから、さらに今後、機能を追加したり、図書館システムと連携させたりすることも原理的には可能です。

 大学が業務として使うシステムを、教員あるいは学生を含む研究室が作るというのはあまり例がないかもしれませんが、実は大学は、大学が必要とするものを中の教員や学生らが作ってそれを実験してみるという格好の場だと思っています(本システムづくりには学生は参加していませんが)。

 私の研究室では、7~8年前から数年前頃、同じく図書館入り口にKoRo(コロ)という、ディスプレイとインタラクティブに手の動作で指示を出し、Leap Motionというセンサーでそれを読み取り、動画を自動選択して進行する図書館館内案内、さらに、入館者自動検知、ディープラーニングによる顔認証、スクレイピングによる電車の遅延情報提供や気象情報の提示と、季節や天候に基づく俳句の提示、体操判定、ロボット音声での返答をする図書館職員との音声通話など、多種多様な機能を盛り込んだロボットを作って置かせてもらっていました(KoRoのボディは和田先生が主体的に設計して作られたものです(現在は、13号館玄関にあります。「KoRo、どこに行ったのかな?」と思っている方、是非13号館に来てみてください。会えますよ!)。KoRoの場合は、図書館自身の必要性というよりも、無理を言って置かせてもらったという感じでしたが、その時も図書館にはご理解いただき、当方の研究室アクティビティは大いに高まりました。設置場所も動線の脇にあって、無視すれば何も気にしなくてよいものでした。それに比べれば、この入館システムは単機能で技術的にも特段の新規性はありませんが、これを使わなければ図書館には入館許可がおりないという、図書館が必要としている業務用のシステムであるという点がKoRoとは根本的に異なっています。大学は、このように、実験の場として、あるいは、さらに、業務への応用の場として利用が可能であることを示すことができました。

 振り返ってみるに、知能情報に限らず、それぞれの学部では、研究している内容が大学そのものに関係づけられるものもいろいろあると思います。大学そのものを研究・実験対象として利用することもできる「中規模」大学の良さを本システムの開発を通じて実感じました。

 なお、手作りですから、いろいろ粗もあると思います。何かお気づきのことがあれば、是非知らせてください。可能な範囲で改良を続けていきたいと思います。

池谷裕二著 『脳には妙なクセがある』

文学部 4年生 Sさんからのおすすめ本です。(KONAN ライブラリ サーティフィケイト)

書名 : 脳には妙なクセがある 
著者 : 池谷裕二著
出版社:扶桑社
出版年:2012年

運動でも、勉強でも、まず、5分だけやってみたら意外と続くことはありませんか?今回紹介するのは、池谷裕二さんの『脳には妙なクセがある』です。たまたま図書館でこの本を見つけ、読みました。

読了後、驚いたことは、脳がこれまでの経験から自動判定しているということです。いくら頭の中で考えていても、自分の行動は、これまでの経験で脳が自動判定する。だから、脳によりよく判定してもらうために、まず行動を起こすことが大事だそうです。本書には、

『自分が今、真剣に悩んでいることも、「どうせ無意識の自分では、考えが決まっているんでしょ」と考えれば気持ちが楽になる』

『そもそも私たちは、立派な自由など備わっていません。脳という自動判定装置に任せておけばよい』

とあり、目から鱗でした。つまり、よい経験をしていけば、よい癖が出て、困難があっても、上手に切り抜けられるということです。これを読むと、悩んでいた時にまず行動を起こせと言われる理由が分かったような気がします。

振り返ってみると、これまで落ち込んだ時は、椅子に座って紙とノートを用意して、じっと解決しようとしていました。しかし、時には走ってみたり、普段会わない人と話したりするなど、いつもと違う選択し、行動を起こしていけば、脳が勝手によりよい方向に導いてくれる、という考え方もできるのだと感じました。

今は夏休みですね。昨年、大学の講師の方に夏休みに何をすればいいか聞いた際、時を忘れるくらいスケジュールを忙しくしろと教えてくれたことを思い出しました。これも、たくさん行動し、上手くいったり、失敗したりたくさんの経験を積めば、悩んだ際に脳が適切に反射してくれるのかもしれません。

本書には、他にも、笑顔を作るから楽しくなる、姿勢を正せば自分の決断に自信が持てるなど、たくさんの体と脳にまつわる話が掲載されています。何か新しい知識を入れたい人におすすめです。

[藤棚ONLINE]経済学部・寺尾建先生コラム「〈幸せ〉と〈不幸せ〉のあいだ」

図書館報『藤棚ONLINE』
経済学部・寺尾建先生コラム「〈幸せ〉と〈不幸せ〉のあいだ」

 話題として今回取り上げる書籍は、直木賞作家である西加奈子氏の最新刊『くもをさがす』(河出書房新社、2023年)です。

 本書が今年の4月に出版されて以降、著者初のノンフィクションであることからも各方面で話題になっていることは知っていましたし、著者の西加奈子氏には会ったこともあり(正しくは、少し離れたところから見たこともあり)、そしてまた、2020年4月24日にYouTubeにアップロードされて、2023年6月26日時点までの再生回数が11万回を超えている動画(https://www.youtube.com/watch?v=F9mwmsYFh4k)を過去3年間の累計で10回以上視聴する程度には氏に関心を抱いてはいました(氏が好きだというミュージシャンが自分とまったく同じだったので、氏のことを他人とは思えなかったからです)。

 それでも、私は、本書を読むつもりはありませんでした。本書では氏が罹患した乳がんの治療についての詳細が記されていることがわかっていたので、読むと心がしんどくなるような気がして、そのことが怖かったからです。

 ところが、私が尊敬する文学部のA先生(A先生は、西加奈子氏に直接会って話をしたことがある人です)が本書を読んだ週に担当するすべての授業で本書についての話をしたという事実を人づてに聞き、すぐに取り寄せて読みました。

 読んで、心がしんどくなることがなくはなかったですが、人生とこの世界についての大切なことを学ぶことができました。それは、たとえば、「不幸そうに見える」と「不幸である」とは違うということ、そしてまた、「幸せそうに見える」と「幸せである」とは違うということ、それゆえ、「不幸そうに見えるけれども、幸せである」ということはありうるということです(同じ理由から、避けたいことではありますが、「幸せそうに見えるけれども、不幸である」ということもありえます)。

 「目に見えることは、実際のところ、どの程度がほんとうのことなのだろうか?」──このことを、人生とこの世界(そこには、自分にとって大切な人とその人生も、当然含まれます)について、忘れずにいつも心に留めておきたいという思いを、本書を読んであらたにしたところです。