2-1. 学生オススメ」カテゴリーアーカイブ

東野 圭吾著 『マスカレード・ホテル』

知能情報学部   4年生  Mさんからのおすすめ本です。

書名 : マスカレード・ホテル
著者 : 東野 圭吾著
出版社:集英社
出版年:2011年

 

この本を読んでみて、文章だけでこんなに自然に目の前にホテルマンやお客さんの表情、情景が浮かぶのはとても珍しいと感じました。

ホテルに来るお客さんについてのストーリや新田さんと山岸さんの掛け合いが面白いので、事件の進展の遅さはあまり気にせず読めました。人を信じ切るホテルマンVS人を疑いきる警察官のこの交わらない2人が相棒として未然に殺人を防ぎ犯人を確保できるのか、目的も価値観も違うけれど、相手の心を読み取ろうとするところは刑事もホテルマンも同じだと気づきました。

新田さんがだんだんホテルマンになっていく姿や刑事としても成長していく過程が素晴らしいく、山岸さんは接客業の鑑だと感じ、接客業したことある身としてはそんなにお客様のこと大切にしてなかったなと仕事ぶりに感心させられました。普通は常連客じゃなければ顔なんて覚えられないのに、それなのにホテルマン失格だと自分で思っている姿勢に責任感ありすぎと思いました。

事件に関与するにつれて山岸さんがホテルマンとしての在り方について葛藤する場面が印象的でした。このホテルコルシアのお客様には気づかれない気配りや心地よく過ごしてもらうための徹底したサービスもそれにまつわるエピソードも素晴らしくて、お客様がルールブックという山岸さんのプロ根性に驚きました。このホテルコレシアに泊まりにくるお客さんは癖のある怪しい人物ばかり、盲目の女性、チンピラ、元学校の先生、ストーカー被害を訴える女性など、疑惑を持たれるような癖のある登場人物ばかりで常に緊張感があり、犯人捜しは最後の瞬間まで一気に引き込まれました。タイトルに相応しい内容で、ちりばめられた伏線が最後回収されていくところに衝撃を覚えました。張りつめられた緊迫感の中に事件とは関係ないお客様とホテルマンの会話、ホテルの日常が挟まれていて、箸休めかと思いきやそこでの会話がキーポイントだったりして、何度も読みたくなる物語でした。

南 潔著 『質屋からすのワケアリ帳簿 上』

マネジメント創造学部   1年生  塩谷 瑠緋さんからのおすすめ本です。

書名 : 質屋からすのワケアリ帳簿 上
著者 : 南 潔著
出版社:マイナビ出版
出版年:2016年

 

 主人公目黒千里は、突然会社の社長から一か月後に会社を辞めるように言われる。会社でのミスが目立つうえに、会社の切手を横領しているとの噂が立っていたからだ。しかし、それは全くの嘘で、千里はほかの従業員から濡れ衣を着せられていたのだ。しかし社長がそれを濡れ衣だとは気づくわけもなく、千里は一か月後会社を離れることになる。会社を首になってどうしようもなくなった千里は、再就職するために、たくさんの会社に応募してみるものの、帰ってくるのは全部不採用通知…、落ち込んでいる千里にさらなる災難が訪れる。千里の父親が千里の家賃を使っていたのだ。おかげで、大家さんから家賃の支払いを催促され、千里は金銭面において限界に近づいていた。

 少しでもお金を手に入れなければならないため、千里は両親の形見である結婚指輪を家の近くにある質屋からすで売ることを決意する。そこで千里は質屋カラスのオーナー、烏島に助手として雇われる。そして二人は、行方不明になっているとある女性を探すために、この事件の依頼人である宗介と一緒に質屋カラスに入ってくるいろいろな情報と千里の不思議な力を使って調査を開始する。

 この本の一番の良いところは、モノに触るとモノに残る人の思念が見える千里が行方不明になった女性を探すために不思議な力を使って、誘拐した犯人を暴こうとするところである。不思議な力を使って問題を解決するために宗介と一緒に宗介の家である豪邸の書斎に行き、不思議な力を使った結果、行方不明になっている女性が昔から続く神社のいけにえとして誘拐されたことが判明する。しかし、生理になると不思議な力を使えなくなるので烏島に2週間休むように言われる。行方不明になった女性を探したい千里は行方不明になった神社に行って力を使おうとする。行方不明になった女性を探そうと必死になって努力する姿がとても素晴らしいと私は思いました。

旭 晴人著 『ドルフィンデイズ!』

マネジメント創造学部   1年生  塩谷 瑠緋さんからのおすすめ本です。

書名 : ドルフィンデイズ!
著者 : 旭 晴人著
出版社:KADOKAWA
出版年:2018年

 

 フリーダイビングが好きな少年、潮蒼井は、就職先がなかなか決まらず、フリーターとニートのハーフ状態を続けていた。そんな時、父親が紹介してくれた求人、それがドルフィントレーナーだった。採用試験当日、蒼井は生まれ持った視力の良さで、事前審査を通過し、実技試験も途中までは難なくこなした。しかし最後、イルカとのコンビネーション演技で、蒼井は最難度の演技、イルカロケットを成功させたにも関わらず、採用試験に落ちてしまう。納得がいかず、蒼井はずっと不合格の原因を考えていた。その時に思い出したのは、コンビネーション演技で一緒に演技したイルカ“ビビ”の存在だった。蒼井はイルカロケットを成功させることができた喜びのあまり、一緒に演技をしたビビのことを考えていなかったのだ。それに気づいた蒼井は会場に戻り、ビビに自分の過ちを謝罪し、それを見ていた試験監督、海原は周りの従業員と相談して蒼井を合格にする。

 晴れてドルフィントレーナーになった蒼井は、蒼井の相棒になったビビと共にショーデビューを目指して働き始める。しかしその矢先、イルカには致命的な異変がビビに見つかる。

 私は、この本を読んで、どうして落ちてしまったのかを考え、原因に気づき、関係者以外立ち入り禁止のバックヤードにわざわざ出向き、海原や周りの従業員に、ビビに謝らせてほしいと頼み込む蒼井の行動にとても驚かされた。私が考えるに、普通の人なら、落ちた原因も考えず、原因に気づいたとしても、ビビに謝りたいと考える人はあまりいないと思う。落ちてしまった以上、いくらイルカに謝っても意味がないからだ。しかし、蒼井はそうではなく、落ちたことによる憤りは感じていたものの、一緒に演技を成功させたビビを一人プールの中に置いてきぼりにしてしまったことに気づき、すぐに試験会場に引き返し、海原たちにビビに謝らせてほしいと一生懸命頼み込んでいた。この姿を見て私は、蒼井はとても心優しい青年なのだなと思った。この本を読んで、私は、生き物へ愛情を注ぐ大切さを学ぶことができた。
 

住野よる著 『また、同じ夢を見ていた』

知能情報学部   4年生 Hさんからのおすすめ本です。

書名 : また、同じ夢を見ていた
著者 : 住野よる著
出版社:双葉社
出版年:2016年

 

 生きる意味が分からない、自分にとっての幸せって何だろうと悩んでいる人いませんか?

 「幸せ」をテーマに1人の女の子が日々葛藤する物語。主人公の奈ノ花は小学生の女の子。読書好き。「人生は○○なようなもの」というのが口癖。この本の中に出てくる奈ノ花の独特なこの口癖がとても面白い。

 周りよりもすこしませていて、小学校で少し浮いている奈ノ花が国語に授業で課題となった「幸せとはなにか?」について答えを探す。奈ノ花は3人の女性にアドバイスをもらいながらこの答えを探す。しかしあることがきっかけで3人とも姿を消してしまう。3人は何者だったのかを読者自身が考え、推理するのもこの本のもう1つの楽しみ方だ。

 人よりも賢い小学生の女の子が、年齢も雰囲気もバラバラな出会った友達との交流を通じて考える。ちょっと不思議な、心温まる。奈ノ花の疑問を受け止めて、真摯に答えてくれる大人達。その言葉をしっかり考えて、少しずつ成長していく奈ノ花。読んでいてハッとする場面が多かった。中盤にかけて奈ノ花の周りで起こる不思議な体験も、読んでいくにつれて伏線が回収されていく心地よさもあって良き読書感。最後の最後にようやくすべてのことがつながる。大きな感動というよりは、心温まるストーリー。

 幸せとは何かを考えさせられる作品。幸せとはなにかの回答が小学生が導き出したものとは思えないものだった。人生で一度も後悔のない選択肢を取り続けるのは無理だと思う。でも、選択し続けた先にこその今があり、今幸せを感じていることが一番大切と思わされた。人生とは、幸せとは。確実に言えることは、この作品に出会えて幸せだということだと思う。

 この本を読む人すべてに幸せが訪れますように。

三浦しをん著 『きみはポラリス』

知能情報学部   4年生 Hさんからのおすすめ本です。

書名 : きみはポラリス
著者 : 三浦しをん 著
出版社:新潮社
出版年:2011年

 

 文庫本の表紙のイラストがとてもポップなものだが、胸キュンの甘い言葉がいっぱいの恋愛小説を想像していたが全く違った。ジャンルは恋愛だけど、キュンではない。「普通」の恋人じゃなく、傍らにいる人を思う話が集められている。最強の恋愛短編集。

 寝る前に読んでモヤモヤとした気持ちが湧いて眠れなくなるほど、愛や恋心の多様な形態が書かれていた。様々な愛の形の話が詰まっていて、いろんなテイストが味わえる。

 リアルかつこの広い世界であれば、どこかにこんな恋愛もたくさんあるんだろうけど、普通とは少し違う、だけどそれぞれ間違いなく正真正銘の愛のかたちを集めた恋愛小説集。

 「恋愛」と一言で表しても、そこに含まれる感情には愛しさ、寂しさ、憎さなど様々なものがある。誰かを好きだと、大切だと思う感情はだれしも持っていると思う。ただ、それを自分自身ですら認識できないこともある。後になって認識する事もある。甘く華やかな恋愛や辛く苦しい恋愛だけが恋愛ではない。そんな曖昧な感情を持つのが「恋愛」だと、この本を読んでそう思った。このすべての物語の1から10まで共感することはできなかったけど心が満たされた気持ちになる。

 11個の物語が詰まっている中で、私がいちばん好きなのは「私たちがしたこと」という話だ。主人公の朋代は高校時代、夜道で襲われた。その相手を彼氏の黒川は鉄パイプで殺してしまう。そして二人で穴を掘って埋める。許されない罪を犯したが、誰にもばれなかった。そんな大きな二人の「秘密」を抱えて話が進んでいく。サスペンス要素もありながら、この「秘密」で、二人がどんどん依存しあっていくのが面白かった。

 この物語のように、すべての物語は「秘密」がキーワードである。「秘密」がいろんな展開を生んでいく。最強の恋愛短編集。この意味が読み終わるころにわかります。

伊坂 幸太郎著 『砂漠』

マネジメント創造学部   2年生 Mさんからのおすすめ本です。

書名 : 砂漠
著者 : 伊坂 幸太郎 著
出版社:実業之日本社
出版年:2005年

 大学生活は人生のオアシスであり、いずれは外に広がる 「社会」という砂漠に出なければならない。冷めた性格でいつも物事を俯瞰的に見ている主人公の北村は、オアシスで安全な日々を送る中、砂漠で苦労する人々や厳しい現実を見て不安な感情を抱く。

 そんな北村はある日、大学で4人の友人に出会い非日常な事件に巻き込まれていく。ボウリング、合コン、 麻雀、超能力、通り魔など様々な事件に巻き込まれる北村だが、個性的な友人たちとこの事件を共有することで次第に成長し、「あり得ないことを実現できるかもしれない」と小さな希望を抱き始める。 読み進めていくうちに、私たち読者もまた希望を抱かずにはいられなくなる。

 この作品の見どころは北村の成長だけではない。 この作品では4人の個性的な友人が登場するが、その中でも西嶋はとびぬけて変人だ。 西嶋は自分に素直で信念のある熱い性格の持ち主で常に堂々としている。しかし、大学では少し浮いた存在だ。そんな西嶋は大学の飲み会でいきなり演説を始める。 最初は笑っていたものの次第に不満の色をあらわにし始める。

 そんな中、西嶋は一切動じず「この国の大半の人間たちはね、馬鹿を見ることを恐れて、何にもしないじゃないですか。 馬鹿を見ることを死ぬほど恐れてる、馬鹿ばっかりですよ。」「その気になればね、砂漠に雪を降らすことだって、余裕でできるんですよ」と強く語る。そんな西嶋の演説を冷めた目で見つめながらも北村は少し期待してしまう。 西嶋なら砂漠にオアシスを生み出せるのではないか、と。

 ここまで北村と西嶋の2人について書いたが、他にも少し軽薄な烏井、超能力者の南、不愛想な美女の東堂など魅力的な人物たちが登場し、友情や青春の良さを教えてくれる。 未熟だけど様々な経験を経て成長していく彼らからは目が離せない。

 この物語は一歩踏み出せずにいる人達に是非読んでもらいたい。この本を読めばきっと、自分には何でも叶えられるような気がして、背中を後押ししてもらえるだろう。 諦めずひたむきに努力し続ければもしかしたら私達にも砂漠に雪を降らすことができるのかもしれない。