2-2. 教員オススメ」カテゴリーアーカイブ

[藤棚ONLINE]理工学部・池田茂先生推薦『夢の新エネルギー「人工光合成」とは何か』

図書館報『藤棚ONLINE』
理工学部・池田茂先生より

 太陽エネルギーと水を使ってエネルギーになる化学物質(水素など)をつくる方法を植物の光合成になぞらえて「人工光合成」といいます。かつては夢の技術と言われていましたが最近では人類が「使える」技術になる一歩手前まで研究が進んでいます。
 ご紹介する書籍では、そんな「人工光合成」について平易に分かりやすく解説されています。私の研究室に在籍している大学院生(KK)も4年生のときに最初に手に取った本、めっちゃ真面目な感想(書評)をいただいております。
 (以下KKの書評)人工光合成について化学やエネルギー、はたまたその歴史など幅広い観点からまとめられており非常に理解しやすい内容になっている。人工光合成の定義、それに利用される生物、色素、金属錯体や半導体、これからの実用化における道筋と課題に方法について網羅されている。これからの未来に人工光合成技術がどのように活躍していくか期待が高まる一冊になっている。

光化学協会編 井上晴夫監修
「人工光合成」とは何か講談社ブルーバックス , 2016
ISBN: 978-4-06-257980-3

[藤棚ONLINE] 文学部・ファヨル入江容子先生推薦, エルザ・ドルラン著『人種の母胎―性と植民地問題からみるフランスにおけるナシオンの系譜』

図書館報『藤棚ONLINE』 (特別寄稿)
文学部・ファヨル入江 容子先生より

 7月に入りましたが、雨降りの日々、みなさんいかがお過ごしでしょうか。曇り空に憂鬱な気分になっている方もいらっしゃるかもしれません。こんなときは、図書館に足を運び、読書に耽ってみてはどうでしょうか。運が良ければ、心に晴れ間が射すかもしれません。ある書物との奇跡的な出会いが、これまで見ていた「世界」をまるっきり変えてくれることもあるからです。雲の切れ間から日の光が差し込むように、視界が開け、暗く閉ざされた世界が、実はさまざまな色彩に満ちた多様な世界だったことに気づかされることになるのです。そのような転換、目の覚めるような出来事が読書経験には秘められています。

 今回、ご紹介するのは、私にそのような気づきをもたらし、翻訳に至った書物、フランスの哲学者エルザ・ドルラン〔Elsa Dorlin:1974-〕『人種の母胎――性と植民地問題からみるフランスにおけるナシオンの系譜』(人文書院、2024年)です。
著者のドルラン氏はフランス国立トゥールーズ・ジャン・ジョレス大学教授として、現代政治哲学を講じ、性(セックス)/ジェンダー/セクシュアリティ、「人種」および階級の交差的課題、身体論、暴力論を主な研究領域として、精力的に執筆・研究活動を続けています。
本書では、17・18世紀におけるフランスを中心としたヨーロッパの医学文献・資料を丹念に読み解くことにより、現代に続く性差別および人種差別を正当化する支配原理の淵源に鋭く切り込んでいます。
 女性の身体は、いかにして、病理化、つまり「病」に苛まれる身体として規定されることを通じ、その劣等性が徴づけられ、男女間のヒエラルキーが正当化されるに至ったのか。さらには、女性間の身体もまた「病」によって、ブルジョワあるいは貴族階級の白人女性と、客体化された例外的女性たち(庶民階級の女性、農村女性、女性同性愛者、黒人女性、先住民女性)として区別されるに至ったのか。また、このような「女性」の身体と同様の問題設定において、植民地における「原住民」およびアフリカ大陸から強制移送されたアフリカ人の身体は、どのように病理化されたのか、また、この医療的操作よって、「健康」である「白人」の優位性が徴づけられ、「人種」をめぐる権力関係がいかに正当化されていったのか。これらの問いに応答しつつ、植民地が、「フランス国民(ナシオン)」を胚胎するための「実験場」であったということが明らかにされていきます。

『人種の母胎』

エルザ ドルラン 〔Elsa Dorlin〕 著,ファヨル入江 容子
人種の母胎 ― 性と植民地問題からみるフランスにおけるナシオンの系譜
人文書院, 2024/06
ISBN: 9784409041277
原書タイトル:La Matrice de la race. Généalogie sexuelle et coloniale de la Nation française, Édition la découverte

 甲南大学で本年5月に行われた翻訳刊行記念講演会では、「性」と「人種」はそれぞれ別個のカテゴリーをなしているわけではなく、前者が後者の「モデル」を提供しているというよりは、分かち難く、より複雑に結びついていることが強調されていました。原著出版から現在まで、人種差別と性差別をめぐる状況はあまり変わったとはいえないとおっしゃっていたことも印象的でした。
 ドルラン氏は、岡本キャンパスを散策の折には、なんぼーくんと記念写真を撮るなど、彼女の研究内容からは全く想像がつきませんが、日本の「かわいい」ものがお好きなようでした。なお、KAWAIIは国際語です。講演会後に、討論者を務めてくださった鵜飼哲先生(一橋大学名誉教授)と三人で訪れた元町のバーでは、おすすめした灘のお酒――中でもすっきりとした飲み心地のもの――をとても気に入ってくださり、たった1日半という短いご滞在でしたが、神戸を満喫されたようでした。また甲南大学に来てくださるといいですね。

[藤棚ONLINE]文学部・図師宣忠先生 推薦『図書館の興亡──古代アレクサンドリアから現代まで』ほか2冊

図書館報『藤棚ONLINE』
文学部・図師宣忠 先生

 みなさんは本をどのくらい読みますか? 人は一生の間に何冊の本を読むことができるでしょうか? 日本で一年間に出版される点数は、2023年のデータでは6万6885冊だったそうです。これを365日で割ると一日当たり183冊。1人の人がとても全部を読み切れる量ではありません。溢れかえる本の量に圧倒されますね。

 そこで大切になってくるのが「良い本」に巡り合えるかどうか。甲南大学図書館には学生のみなさんの学びに関わる本を中心に全体でおよそ110万冊もの本が所蔵されています。レポート作成や卒論執筆のための文献を探すために図書館を利用している人は多いと思いますが、自分にとって大切な本と出合うために書架のあいだを巡ってみてはいかがでしょうか。もちろん人によって「良い本」は異なります。図書館に所蔵されている本もじつは玉石混淆だし、その圧倒的多数は自分には響かないものかもしれません。だからこそ、今の自分にピッタリの素敵な本との邂逅を果たすことができたとき、それは今後の人生にとってかけがえのない瞬間となるはずです。そしてその本をじっくり味わってみてほしいと思います。

 おすすめの本としては、図書館をめぐる興味深いエピソードが満載の本を3冊紹介しましょう。そもそも図書館とは何のために存在するのか? 本をたくさん集めて、保管し、人々の利用に供する理由とは? 図書館の歴史を辿るとき、社会の中で必ずしも図書館が大切にされず、逆に破壊の憂き目に遭う事態も見えてきます。いずれの本も「人間にとって図書館とは何か」という根源的な問いに向き合っていて、読み応えがあります。

【第8回 甲南大学書評対決】 中村俊輔著 『察知力』

4月24日(木)に開催された第8回 甲南大学書評対決(主催:甲南大学生活協同組合)で紹介された本です。

 

 

知能情報学部講師 奥村 真善美 先生からのおすすめ本です。

書名 :察知力
著者 : 中村俊輔
出版社:幻冬舎
出版年:2008年

奥村先生1冊目のおすすめ本です。お好きな本を紹介していただきました。

 

以下、先生の書評です。

 

サッカー日本代表や海外リーグ等で数々の偉業を成し遂げた中村俊輔選手による自伝。
「壁があるときは、まだましだ。それを乗り越えればいいだけ」や「壁から逃げなければ得るものが大きい」はいまでも中々解けない問題に出会った時などに反芻します。その他にも中村選手の考え方は種目を越え、もはや業種を越え通ずるものがあると思います。

一見すると無駄に見える、失敗に見えることでも、プラスへ持っていく努力をする、そして、体験を未来にどう活かすかを分析し、足りないところは補い、できたことはさらに磨くことで「引き出し」を増やしていく。この考え方はどの分野においても大切な考え方です。また、中村選手は本書で何度か安定や満足感に対しても危機感を感じると記しており、こういった考えが、中村選手をサッカー小僧たらしめる所以なのではと感じています。

自分自身も危機感をもって常に数学とともにある研究者になれたらと思います。

 

第8回 甲南大学書評対決、生協書籍部で実施中! | 甲南大学図書館ブログ (konan-u.ac.jp)も合わせてご覧ください!

【第8回 甲南大学書評対決】 矢崎成俊著 『実験数学読本3:やりたくなる実験から考えたくなる数学へ』

4月24日(木)に開催された第8回 甲南大学書評対決(主催:甲南大学生活協同組合)で紹介された本です。

 

 

知能情報学部講師 奥村 真善美 先生からのおすすめ本です。

書名 :実験数学読本3:やりたくなる実験から考えたくなる数学へ
著者 :  矢崎成俊
出版社:日本評論社
出版年:2020年

奥村先生2冊目のおすすめ本です。数学について熱く語っていただきました。

 

以下、先生の書評です。

 

「数学って何の役に立つのだろう?」や「数学ってどういうところに応用されているのだろう?」といった疑問に対する一つの回答や示唆を与えてくれる一冊です。題材によっては小学生でも分かる or できる身近な現象や実験から、数学を応用したり、創り出したり、見出したりできる本となっており、例えば、独楽作りや紙で正四面体・正八面体を作るなど、単に実験・工作をするだけでも楽しめるのではないかと思います。個人的には対数とケプラーの第3法則についての内容が気に入っています。

この「実験数学読本」は第3弾まであり、第1弾とこの第3弾はゼミ生にも輪読してもらいました。複数人でワイワイ議論しながら読み進めていくのがおすすめです。

 

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【第8回 甲南大学書評対決】 サイモン・シン著 『フェルマーの最終定理』

4月24日(木)に開催された第8回 甲南大学書評対決(主催:甲南大学生活協同組合)で紹介された本です。

 

知能情報学部講師 奥村 真善美 先生からのおすすめ本です。

書名 :フェルマーの最終定理
著者 : サイモン・シン
出版社:新潮社
出版年:2006年

奥村先生3冊目のおすすめ本です。自分とも通ずるところがあるとのことです。

 

以下、先生の書評です。

 

フェルマーの時代から300年あまり、偉大な数学者たちがその証明を試み、敗れていった「フェルマーの最終定理」。アンドリュー・ワイルズによってこの未解決問題は解決されるのですが、その解決に至るまでのワイルズの努力、苦悩、挫折といった人間ドラマがこの本には記されています。

一度発表した照明に致命的な誤りが見つかり、ワイルズは追い詰められますが、信頼のおけるかつての教え子の協力も経て突破口を見出します。

この場面を読み返したとき、「現代科学における諸問題はかつてのように一人の天才が解決するのではなく、一人ひとりが共同でチームとして取り組み、解決していくものだ」という恩師の言葉を思い出しました。ワイルズはフェルマーの最終定理の証明という、子供時代からの夢を実現しました。私も生涯をかけて取り組み、自他共に良い仕事と言えるような研究を進められたらと願うとともに、日々精進していきたく思います。

 

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