中村 聡一 (マネジメント創造学部)『教養としてのギリシャ・ローマ : 名門コロンビア大学で学んだリベラルアーツの真髄』

 

<教員自著紹介>

 甲南大学の皆さん。
 西宮キャンパス教員の中村聡一です。
 この度、新刊書を発売できる運びとなりました。
 以前にも以下の図書館ブログ記事にてこの旨をチラッとお知らせいたしました。

http://www.konan-u.ac.jp/lib/blog/archives/3600

 その本が、ようやく、陽の目をみることになりました。
 長く辛い研究の期間、なんと、丸々”5年”でした。そしてついに完成させた、350頁にわたり内容がぎっちり詰まった書です。
 米国のリベラルアーツ教育の中身は、ほとんど謎のヴェールに包まれていると申して差しつかえないと存じます。その全貌を明らかにすることに挑みました。
 お読みになれば、皆様が抱いている印象とは大きく異なることにお気づきになろうかと思います。
 さらに、先のブログ記事でも記しましたところ、甲南学園の創設者である平生釟三郎先生の究極の本質を見透す眼力にもお気づきになる筈です。
 現代の世界最高峰リベラルアーツ教育の真髄は、平生先生が甲南学園の設立に際して掲げた理念と見事に一致するのです。
 なお、私的にはとても記念になる出来事です。できれば、一人でも多くの皆さまにお読みいただき、感想などもお聞きしたいです。学内で見かけた際などには、気軽に声掛けください。

📰東洋経済オンラインでも紹介されました📰
↓    ↓   ↓
●米国エリート教育と第1次世界大戦の深い関係 GAFAがリベラルアーツ教育を重視する理由

●リベラルアーツ教育の最後に「進化論」を学ぶ意味 コロンビア大学教養講座が伝える「学びの核心」

●「余暇」の重要性を説いたアリストテレスの慧眼 古代ギリシャの「治乱興亡の歴史」に学ぶ教訓

●中村 聡一先生の紹介

西宮キャンパスの設立に多大な尽力をされた太田雅久名誉教授から書評を賜りました。

 現実の社会を見つめてきた賢人たちの名著を軸に、彼らが生きた現実世界の背景から、社会が発展してきた道筋やそこに生きてきた人々の考え方が軽快な論調で歴史的に語られています。それは、教養の本質である人生の意義を見出すための思索を誘発します。

 これまで私が推奨してきたこの種の名著の中にH.G.ウエルズの『世界史概観』(岩波新書)があります。中村氏の著書は世界史を概観する点では似ていますが、叙述の軸が全く違います。リベラルアーツ教育の基盤であるギリシャ・ローマ時代以降の名著の時代背景とその意図する内容を史実の中に巧みに織り込ませて明解に解き明かしているところに特徴があり、リベラルアーツ教育のための斬新な試みになっています。

 ここから読み取れるもの或は誘発されるものは何か。それは名著に基づいて人類の普遍的な社会性を偏見なく体感し、現代社会に門出しようとする学生に社会の諸問題に向けて有益な知恵を醸成する気概であるでしょう。正に教養教育の神髄を、学生一人一人の感受性に応じて支援してくれるテキストとして最適です。

 教養教育は、世界と人間性に関する考え方の体系の構築に資するためのものです。それぞれの時代の人々がもっていた考え方の体系は、その時代の賢人たちの著作から学ぶことが出来ます。それらは我々が属する時代の世界と人間性に関係した考え方の体系を構築するのに有益です。我々の時代が達成しつつある活力ある考え方の体系に気付こうとする姿勢は、その時代の高さに生きることを意味します。それを支援してくれる新しい感性を持った書物であると評価します。

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「リベラルアーツ教育により”人間性の魂”を滋養し、この基盤のうえに経済経営教育を行っていく。」

 西宮キャンパス(マネジメント創造学部)は、日本の教育界において画期的ともいえるこの理念にもとづき12年前に設立されました。太田名誉教授は、その実現に向けて理工学部から転籍されてその設立に参画されました。
 大学教員としてはほとんど経験のなかった当時の私は、太田先生の薫陶をうけ、太田先生ご退職のあと、微力ながらその”志(こころざし)”を継ぐ形で研究と教育に携わってまいりました。
 そして、この志の継承は、延いては、甲南大学の設立理念である”平生精神”に現代的なテイストも加えての発展に寄与すると考えました。
 本書をお読みになるにあたっては、西宮キャンパスでのこうした「知の系譜」があることもあわせてご承知くださいませ。


教養としてのギリシャ・ローマ : 名門コロンビア大学で学んだリベラルアーツの真髄
■ 中村 聡一著 , 東洋経済新報社 , 2021.5
■ 請求記号 231 //2035
■ 配架場所  図書館   1F 教員著作
■ 著者所属 中村 聡一 (マネジメント創造学部)

鈴木与平著『地方を結び、人々を結ぶリージョナルジェット 』

 

 

経営学部  2年生 卜田 真輝さんからのおすすめ本です。

書名 : 地方を結び、人々を結ぶリージョナルジェット
著者 : 鈴木与平 著
出版社:ダイヤモンド社
出版年:2014年

甲南大学に最も近い空港である神戸空港に近年就航したフジドリームエアラインズ(以下、FDA)の社長がお書きになった本です。この本では、航空ビジネスの基礎から、現在の日本の航空業界、日本社会が抱ええる課題、そしてそれらを解決するために生まれたFDAの経営理念や就航までの苦労、会社の未来について記されています。
私はこの航空会社が「地方空港の救世主」と言われ話題を呼んでいた事から注目していました。本を読み進めていくと、東京一極集中が叫ばれる中、「地方同士の交流を深める事が日本を再び盛り上げるきっかけになるのではないか」という著者である鈴木与平氏の熱意やこの会社の理念には非常に共感させられました。
しかし、新型コロナウイルスが猛威を振るい人と人との交流が制限される中で、著者が大切に思われている「地方と地方の人々の交流」をどう今の生活スタイルに合わせ、維持、発展させていくのか、という疑問が湧きました。
この航空会社を利用した際には、この本の内容を思い起こしながら、また、感じた疑問について自分なりの考えを突き詰めてみたいと思います。

皆様もぜひご一読ください。

尾原 宏之 (法学部)『日本思想史事典』

 

 

<教員自著紹介>

「日本思想史事典(辞典)」という名の本は過去に何度か出版されていますが、一番新しいこの本の特長は「興味深く読み通せる事典」であることです。

天皇、神道、武士道、イエ、アジア主義などの重要語を最新研究に基づいて解説するだけでなく、項目を通読することで時代の思想が立体的に把握できるように編集されています。
私は主として近代や政治関連項目の編集・執筆に加わりました。

■ 『日本思想史事典
■ 日本思想史事典編集委員会編 ,  丸善出版 , 2020.4
■ 請求記号  121.02//2021
■ 配架場所  図書館   1F 教員著作
■ 著者所属  尾原 宏之 (法学部)

 

村上 龍 著『コインロッカー・ベイビーズ』

法学部  1年生  Oさんからのおすすめ本です。

書名 : コインロッカー・ベイビーズ
著者 : 村上 龍 著
出版社:講談社
出版年:2009年

 みなさんは「コインロッカーベイビー」という社会現象を知っていますか。

 コインロッカーベイビーとは、鉄道駅などに設置されているコインロッカーに遺棄された新生児のことです。コインロッカーに新生児を入れることには、遺棄した側の匿名性が保持されやすい、異変に気づいても第三者が中を確認することは難しい、そもそもコインロッカーに人間を入れることが想定外であるという特徴があります。

 そのため、1971年にコインロッカーで乳幼児の死体が発見されて以来この問題はどんどん深刻化し、1973年には大都市のターミナル駅を中心に46件の遺棄事件が発覚しました。この問題を題材にして書かれたのが、『コインロッカー・ベイビーズ』です。

 この本の主人公のキクとハシは、生まれてすぐコインロッカーに入れられます。コインロッカーに入れられた子どもは殺されてから捨てられている場合もありますし、生きたまま入れられても亡くなってしまうことが多いのですが、キクとハシは奇跡的に助かりました。

 それから2人は乳児院で育てられますが、行動から病気かもしれない、ということで精神科医に連れていかれました。そこで乳児院のシスターたちは精神医から、生後わずか数十時間でコインロッカーの中で死に直面し覚えたであろう無意識下の恐怖、自分の肉体がそれに抵抗して打ち勝ったこと、2人を生き延びさせた強大なエネルギーの3つが脳のどこかにセットされており、そのエネルギーが自分で制御できないほど強くなっている、ということを告げられます。そして、2人はそのままでは正常な成長が出来ないので、そのエネルギーを眠らせる治療をすることになります。その治療法が、胎児が母親の体内で聞く心臓音を聞かせて2人をもう一度母親の体内にいた状態(強大なエネルギーを持つ前)に戻す、というものでした。

 治療は順調に終わり、シスターたちは最後に精神医から、変化した(変化をもたらした?)のが自分たちであることや、心臓の音を聞いて治療をしたことは人には教えてはいけないと言われました。

 乳児院で過ごしていたキクとハシは小学校入学の一年前に養子縁組が決まり、それからは里親に育てられました。2人が中学生になってしばらく経ったある日、あることがきっかけで、ハシが幼い頃病院で聞いた心臓の音をもう一度聞いてしまいます。それからというもの、ハシはあの日病院で聞いた音が分かるまで学校に行かないと言いだし、家にこもり、心臓の音を探すためにテレビから流れる音をずっと聞いていました。そしてついには理由も言わず東京へ家出をしてしまいます。ですがキクにはハシの行動が、母親を探すためだとすぐに分かりました。そんなハシを追うため、キクも東京に行きます。

 ここからコインロッカーで生まれた2人の人生は大きく変わり、壮絶な人生を送ることになります。

 私たちも、思い通りにならない事がたくさんあり、誰もが見えないコインロッカーに閉じ込められているかもしれません。そんな時にこれを読むと、閉ざされたコインロッカーから1歩踏み出すヒントをもらえるかもしれません。

 ハシは自分の生みの親に出会えるのか、キクはハシを追って東京に行き何をするのか、2人の破壊劇を見届けてみませんか。

横山 泰行 著『「のび太」という生きかた』

 

法学部  1年生  Kさんからのおすすめ本です。

書名 : 「のび太」という生きかた
著者 : 横山 泰行 著
出版社:アスコム
出版年:2014年

 国民的アニメの「ドラえもん」。誰でも1度は見たり聞いたりしたことがあると思います。

 ドラえもんに登場するのび太に着眼点をおいた『「のび太」という生きかた』という本をご紹介します。
 のび太にどのようなイメージを持っていますか?運動や勉強ができない、いつもお母さんや先生に怒られる、ジャイアンやスネ夫にはいつもいじめられている。それでも、遊ぶ時にはいつも大切な友達としてジャイアンとスネ夫を誘うし、母や先生ものび太を1度も見捨てたことはありません。

 この本にはのび太が人生の重要な節目ごとに着実に夢を叶え、「負け犬のび太」から「勝ち組のび太」になった話がたくさん書かれています。

 1つ例を挙げてみます。皆さんは約束事をうっかり忘れて破ったことはありませんか?
 のび太はうっかり約束を破ってしまいますが、そのことを反省して直ぐに対策を考え実行し、「何とかしよう」としています。そのように、もし失敗してもその結果から自分のやり方を考え反省し、挑戦すれば良いのです。

 ぜひ読んでみてください。

ダニエル・キイス 著『アルジャーノンに花束を』

 

法学部  1年生   鶴巻 茜さんからのおすすめ本です。

書名 : アルジャーノンに花束を
著者 : ダニエル・キイス 著
出版社:早川書房
出版年:2015年

 皆さんは、賢くなれる、知能を上げることができる手術を受けられるとしたら、受けたいですか?

 ダニエル・キイスによる『アルジャーノンに花束を』の主人公であるチャーリーは、ニューヨークのベーカリーで働いている知的障がいのある32歳の男性です。チャーリーは優しい心の持ち主で、周りから親しまれていました。周りの従業員たちはなぜかいつも笑っていて、その笑顔を見てチャーリーは自分も幸せな日々を送っていました。

 そのような中でチャーリーは医師と出会い、知的指数を上げる手術を受ける機会を得ます。先にその手術を受けて賢くなっていくアルジャーノンという一匹のネズミを見て、自分もアルジャーノンのように賢くなりたいと願い、手術を受けることにしました。日に日にチャーリーの知能は上がっていき、側にいた教授の知能をも超えるまでになりました。しかし、知能が高くなっていくことと引き換えに、手術を受ける前の頃には気づかなかった多くのことに気付いてしまい、絶望してしまいます。

 この本を読んで結末だけを見ると、客観的に考えて、チャーリーは手術を受けたことを後悔したんじゃないかと思う人もいるかもしれません。しかし、チャーリー自身は「後悔はしていない」と言いきります。

 チャーリーは幸せだったのでしょうか。自分にとっての幸せって何なのか。世間における人の存在意義とは何なのかということを考えさせられます。

 幸せを感じるためには「外に出たくないな」とか「課題をしたくないな」などの嫌なこと、つまり負の感情も必要であると思います。負の感情があるからこそ、美味しいものを食べたり、自分の好きなことをしたりして幸せを感じることができると思います。つまり、幸せの定義は人それぞれです。

 誰もがチャーリーになったような気持ちで飽きずに読むことができる本です。この本は「結果報告」という形で、チャーリーによって書かれている形式をとっています。チャーリーの感情や手術の効果が読み取れ、楽しむことができます。そして、チャーリーの優しさは、最初から最後の一文まで変わらないというところに感動します。

 チャーリーが絶望してしまった多くのこととは一体何なのか、ぜひ読んで確かめてみてください。