<教員自著紹介>
今日の子育てをめぐる状況は、二極化しているように見えます。一方は虐待・
ネグレクトなどの子ども拒否の問題。もう一方は少数のわが子を大事に抱え
込んで育てる密着の問題です。親子の密着は、子どもが小さいうちは「よい親
とよい子」の二人三脚として社会からも肯定的に受け止められますが、
そのまま時間が経過したとき、親と子が相互に依存し合い、子どもの巣立ちを
阻害することにもつながります。本書は、そのような今日の子育てのあり方について、
敢えて「親と子の分離」、そして子育てのゴールである「子別れ」という視点から、
心理学・社会学・現代思想など学際的な考察を行った論考集です。親子の心理、
子育て支援などに興味のある方に、広く読んでいただきたいと思います。
なお、本書は文部科学省の「私立大学戦略的研究基盤形成事業」の助成を受け、
甲南大学人間科学研究所が展開してきた共同研究プロジェクトの成果をまとめた
叢書の1冊であり、同様の書籍として、これまで「現代人と母性」(新曜社)、
「育てることの困難」(人文書院)も刊行されています。
■『子別れのための子育て 』(編)
■編者所属:高石 恭子 文学部 教授
■その他の近著・訳書
「臨床心理士の子育て相談」 人文書院 2010年
「学生相談ハンドブック」(共編) 学苑社 2010年
「12人のカウンセラーが語る12の物語」(共編) ミネルヴァ書房 2010年
「学生相談と発達障害」(共編) 学苑社 2012年
「ヒルガードの心理学」第15版 (分担訳)金剛出版) 2012年
「4.教員自著紹介」カテゴリーアーカイブ
森 茂起、港道 隆編集『<戦争の子ども>を考える- 体験の記録と理解の試み』
<教員自著紹介>
第二次世界大戦が終結して七〇年近くになる。そこに吹き荒れた暴力は
その後の世界に、物的・人的な被害ばかりでなく、トラウマという形で
人々の心に深い傷跡を残した。その意味では戦争は終わらない。
その後も戦争、地域紛争、テロリズム、差別は絶えることなく、被害を
生みだし続けている。そして東関東大震災、幾多の犠牲者、幾多の恐怖、
幾多の苦悩、見えない未来。こうしたコンテクストを踏まえて本書は、
子供時代の戦争体験に注目した調査研究をメインに、次の四部構成からなる。
第一部「〈戦争の子ども〉の時代の記録と検証の試み」には、関西地区を
対象に、心理学および歴史学という二つのアプローチから行なった戦争体験の
聴き取り調査をもとにした報告と考察、「関西地域における「戦争の子ども」」
(藤原雪絵)と「疎開体験の調査——精道国民学校の場合」(東谷智)を収め、
その間に、口述証言をテーマに二つのアプローチの関係を方法論的に考察する
「「国民の子ども」における心理学的研究と歴史学的研究の相補性」(人見
佐知子)が介在する。「序論——「戦争の子ども」研究の意義」(森茂起)は
、第一部の序説であるとともに、全巻の序説でもある。
第二部「戦争を生きた子どもたち」は、ミュンヘン大学のM.エルマン氏を
招いて本学で開催したシンポジウムの記録である。第二次大戦における「加害者」
として自らを位置づけてきたために埋もれてきたドイツ市民の被害者性を掘り
起こした調査研究についての氏の発表、東京都墨田区立すみだ郷土文化資料館で、
描画によって空襲体験者の「語りえない記憶」を蒐集し展示してきた経験の報告
「語りうる戦争体験、語りえない戦争体験」(田中禎昭)、NHKで戦争体験の継承
を模索しつつ番組「祖父の戦場を知る」に携わった経過の発表「戦争を生きている
子どもたち——祖父の戦場」(大森淳郎)は、大学における学術研究とは異なる場
での実践報告であり、討論会の記録がそれに続いている。
第三部「〈加害‐被害〉関係と和解、そして赦し」は、暫定的綜合である「戦争
体験にみる「加害」と「被害」」(森・人見・エルマン)と、和解と赦しの関係の
哲学的考察「喪、赦し、祈り」(港道隆)からなる。
本書は、文部科学省の「私立大学戦略的研究基盤形成支援事業」の助成を受けて
甲南大学人間科学研究所が2008年から続けてきた研究成果の一つである。
■『 <戦争の子ども>を考える- 体験の記録と理解の試み 』平凡社 2012年
■編者所属:森 茂起 人間科学科 教授、港道 隆 人間科学科 教授
森 剛志,後藤 励共著 『日本のお医者さん研究』
<教員自著紹介>
収入・世代間格差や機会不平等は医師にもある!
超多忙な勤務医、地方の医師不足、厳しい医療財政など問題山積の中、
医師自身は子の教育や日本の医療制度をどのように考えているのか。
全国の医師へのアンケート調査とデータから、日本の医療問題と医師
の実態を浮き彫りにした書籍である。おそらく、このような「日本の
医師に関する実態調査を本格的に行いまとめた書籍」は、21世紀に
なって初めてであろう。
「医師の団塊ジュニア世代」以降に生を受けた医師は、医師不足や過酷
な勤務状況下で疲弊し、開業するにも不安がつきまとい、自分の子も医師
になって欲しいという願望は強くない。一方、年配の開業医は裕福で、
半数以上が男の子を医師にしたいと考えている。
年代や勤務形態で格差が広がりつつある中、医師たちは、どのような医療
システムが望ましいと考えているのか。財源の公私分担をどのようにすべきか、
どんな医療技術を保険適用すべきか、限られた医療資源をどのような患者に
優先すべきかなどのテーマを、アンケート調査から分析し、望ましい医療シス
テムを探ってみた。
■森 剛志、後藤 励共著 『日本のお医者さん研究』東洋経済新報社 2012年
■著者所属:森 剛志:経済学部 准教授
:後藤 励:元・経済学部 専任教員
北川 恵 他訳『アタッチメントを応用した養育者と子どもの臨床』
<教員自著紹介>
親子関係には、世話、しつけ、楽しい時間の共有などのたくさんの要素が含まれて
いますが、子どもが親に健全なアタッチメントを持てることがとりわけ重要であると
発達心理学の研究からわかっています。虐待、発達の問題、里親養育などの実際問題
を抱えた親子に、アタッチメントの質をアセスメントし、健全なアタッチメントへと
介入する方法や実践について事例を交えて紹介している本です。
■北川 恵 他訳『アタッチメントを応用した養育者と子どもの臨床』
ミネルヴァ書房 2011年
■翻訳者所属:文学部人間科学科 教授
■先生からのお薦め本
・補足説明
「アタッチメント」とは、一人では対処できないような危機的場面で信頼できる他者
(子どもの場合は養育者)に接近して保護と安心感を求める本能的欲求を指しています。
「愛情」とは同義でありません。皆さんも、本当にまいってしまった時に信頼できる人
の顔を思い浮かべると心丈夫ではないでしょうか?“何かあった時には誰かの助けを頼る
ことができる”という期待を持てるような経験を積み重ねられることが、健全なアタッチ
メントであり、基本的信頼感や自尊心、ストレスを克服していける力などに影響します。
アタッチメントの正しい理解については、次の図書がお勧めです。
数井みゆき・遠藤利彦(2005)アタッチメント:生涯にわたる絆、ミネルヴァ書房
数井みゆき・遠藤利彦(2007)アタッチメントと臨床領域、ミネルヴァ書房
古田 清和 編集代表『20歳になったら知っておきたい会計のはなし』
<教員自著紹介>
若い人たちに会計の面白さと必要性を知ってもらい、会計に興味関心を持ち、
会計の裾野を広げたいとの思いから、身近な話題を題材にして、わかりやすく
項目を絞って記述しています。また、執筆は、会計大学院の教員・特別講師に
加え、当会計大学院出身の公認会計士試験合格者(うち13名)で分担しており、
オール甲南会計大学院で構成しています。若い読者を対象としたビジネスの入門書
として、興味や関心がある項目が一つでも目にとまれば、拾い読みができるのでは
ないかと思っています。会計的な用語も今後の学習に備えて会計用語集として分類し、
ブックガイドや資格ガイドを付録としてつけていますので参考になると思います。
また、この本を使う講座だけではなく、会計大学院では会計に関連する様々なオープン
講座を実施する予定です。気軽に11号館の事務室を訪ねてみて下さい。
■古田 清和 編集代表『20歳になったら知っておきたい会計のはなし』
TAC株式会社出版事業部 2012年
■著者所属:会計大学院 教授
古川 顕著『R.G.ホートレーの経済学』
<教員自著紹介>
R.G.ホートレーという経済学者がいた。 95歳の生涯を通じて数多くの著書を
残しているが、それらの著書は、第2次世界大戦以前はしばしば批判の対象とされ、
大戦以降はJ.M.ケインズの名声に隠れてほとんど無視され、忘れ去られてしまった
感のある経済学者である。けれども、多くの著作によって展開されたホートレーの
理論はケインズを凌駕し、近年になればなるほど輝きを増している。しかし、ホート
レーに関する体系的な書物は極めて少ない。本書はこうした現状に鑑みて、ホートレ
ー経済学の豊かな内容を様々な角度から論じている。
■古川 顕(あきら) 著『R. G. ホートレーの経済学』ナカニシヤ出版 2012年
■著者所属:経済学部 教授
■古 川 先 生 出 版 物
・『 旅の途上で 』(2010年) ナカニシヤ出版
・『 現代日本の金融システム ー 金融リテールの経済分析 』
古川先生 他編集 郵便貯金振興会貯蓄経済研究室 刊
・『 現代日本の金融システム ー 金融機関行動と公的支援 』
金融システム研究会編、第9集
・『 テキストブック 現代の金融 』(2002年) 東洋経済新報社 刊
・『 日本銀行 :知られざる ”円の司祭” 』(1989年) 講談社現代新書 965
など