5-0.KONAN ライブラリ サーティフィケイト」カテゴリーアーカイブ

岸見一郎, 古賀史健 著 『嫌われる勇気』

文学部  4年生 Kさんからのおすすめ本です。(KONAN ライブラリ サーティフィケイト)

書名 :  嫌われる勇気
著者 :  岸見一郎, 古賀史健
出版社:ダイヤモンド社
出版年:2013年

他人に嫌われることを恐れるなというような内容ではなく、他人を満足させるために自分の人生を生きるなということがアドラーの哲学でわかりやすく教えてくれる本です。

アドラーは、フロイト、ユングと並ぶ世界的に心理学界の三大巨匠とされる人物です。この本では、「哲学者と青年との対話」という物語形式でアドラーの思想(アドラー心理学)を解き明かしています。

アドラーは「どうすれば人は幸せに生きることができるのか」という哲学的な問いに極めてシンプルかつ具体的な答えを提示し、「トラウマ」の存在を否定し、「人間の悩みは、すべて対人関係の悩みである」と断定しています。対人関係を改善するこのアドラー心理学は、現代人にとって必要な思想であるといえます。

我々は無意識のうちに他人と比較しています。例えば、他の人はこうだから同じようにしなければいけない。こうした方がいいに決まっている。それは世間的に当たり前のことだからと思ってしまいます。しかしそれは「「他人」の人生を生きている」ことだとこの本では述べています。我々が無意識のうちに意識していることが何であるのか、どうして生きづらいのか、なぜ対人関係で悩んでいるのかを気付かせると共に、考え方を変える方法をも教えてくれます。

アドラーの思想を知って、これからのあなたの人生や、考え方を変えることになるその手がかりになる一冊であるといえるでしょう。この嫌われる勇気は、次回作の「幸せになる勇気」で完結します。嫌われる勇気を読んだら、次に幸せになる勇気を読んでみてください。

 

国立がん研究センター研究所 編 『「がん」はなぜできるのか』

 

文学部  4年生 Kさんからのおすすめ本です。(KONAN ライブラリ サーティフィケイト)

書名 :  「がん」はなぜできるのか
著者 :  国立がん研究センター研究所 編
出版社:講談社
出版年:2018年

日本人の二人に一人ががんになると言われており、死亡者の三人に一人にあたる37万人ががんで亡くなっています。男性だと四人に一人が、女性だと六人に一人が、がんで死亡するものと推計されています。高齢化に伴い、今後もがん患者が増えていくといわれています。
一生のうちにがんにならない人と、何度もがんになる人と分かれるようですが、がんは国民病だと言えるのではないでしょうか。

医療の発達、治療技術が発達したことにより、がん患者の生存率は60%を超えているようです。その一方でがん撲滅に向けて研究者たちが多くの時間をかけ努力をしているにも関わらず、いまだがんを根治する治療法は見つかっていないようです。しかしながら、最先端のゲノム医療の進展で、「がん根絶」のための手がかりが見えてきたようです。喜ばしいことですね。

この本の中で私が一番驚いたのは、がん細胞はおしゃべりをして、正常な細胞を騙すということです。本当にお喋りをしているのではないようですが、がん細胞は、攻撃されないように生き残るために、正常な細胞を騙すということを知らなかったので、大変興味深い記述でした。

このようにして、知らなかったことを知ることができる有益な本であり、がん研究に取り組んできた、国立がん研究センター研究所の研究者たちが、なぜがんができるのか、どのようなものなのかというメカニズムから、最先端のゲノム医療までをわかりやすく説明してくれている一冊で、勉強になりました。

 

2021年度 ブックカバー 決定しました!

 文学部人間科学科1年次生 杉本夏穂子さんの作品が、2021年度甲南大学図書館オリジナルブックカバーに決定しました!

 イラストやデザインが得意な杉本さんは、自分の特技を活かしたいと思い、応募したそうです。おいしいものを飲みながら本を読むのが好きなので、読書をする皆さんにも本と飲み物で一服してもらえたら…という思いでデザインされたそうです。

 2021年4月より、甲南大学図書館でブックカバーを提供します!!

 ドリンク柄のブックカバーをかけて、飲み物を飲みながらほっこり♪とひと息、読書時間を楽しんでみませんか?

※上記ブックカバーの画像データはこちらからダウンロードできます。

伊坂 幸太郎 著 『ゴールデンスランバー』

 

経営学部 4年生  大堀 舞佳さんからのおすすめ本です。(KONAN ライブラリ サーティフィケイト)

書名 :  ゴールデンスランバー
著者 :  伊坂 幸太郎
出版社:新潮社
出版年:2010年

 私は、伊坂幸太郎の単行本はほぼすべて読んでいる。伊坂作品を好きになり、読み進めていた時にこの作品と出会った。もちろん一気読み。ご馳走をお腹いっぱい食べたような気分で読後の余韻を味わったことを覚えている。 

 物語の構成は、大きく分けて「事件の始まり」「事件から二十年後」「事件」となっている。この事件というのが、金田首相暗殺事件である。首相の凱旋パレードが仙台で行われる(仙台を舞台にした伊坂作品が多いが、これは彼が仙台に住んでいるからであろう)。その最中にラジコン爆弾が爆発し、金田首相は暗殺される。この犯人として指名手配されるのが、主人公の青柳雅春である。彼はごく普通の宅配ドライバーだが、事件の2年前にあるアイドルを不審者から守ったというヒーロー的行動で時の人となった。その彼が国家から追われる身となるのである。

 なんと、この作品のほぼほぼが、青柳の逃走劇で構成されているのである。私は友人に「この本ってどんな話?」と聞かれるとたいてい「ざっくりいうと鬼ごっこ」と答えている。それほどまでに青柳と、彼を取り巻く登場人物の個性や伏線が面白い。青柳は2日間逃走し、みごと逃げおおせる。とはいえ、「事件から二十年後」の話では、青柳が真犯人だと考えている人は一人もいない。それもそのはず、彼は金田首相暗殺の犯人ではないからである。この作品の奇妙でどことなく皮肉に感じる点は、なぜ彼に矢面が立ったのかわからないままなことである。現実ではそういうことの方が多い。なぜ自分が被るのか納得できないことにも向き合わなくてはならない。小説などのフィクションにはそのような謎をきれいに解決し、納得するという楽しみ方ももちろんあるが、伊坂幸太郎さん曰く”物語の風呂敷は広げるけど、いかに畳まないまま楽しんでもらえるのか”に挑戦した作品であるとのこと。

 その逃走劇のスリル&伏線盛りだくさんの展開だが、助け舟として登場するのは青柳の元彼女、花火師、大学時代のサークルの後輩、青柳が助けた元アイドルなど、個性的なキャラクター達。シュールでテンポの良い会話に引き込まれた。私が一番「やられた」と思ったのは、青柳雅春の父母に送られた書初めである。この作品、主役堺雅人で映画化もされている。しかし映画の方ではこのシーンがない。映画を見た人も、本の味わいはしっかり楽しめるはずである。逆に映画では、タイトルでもあるビートルズの名曲、ゴールデンスランバーのBGMが流れるシーンがとても良い。

 ぴりっとした緊張感と、要所要所のにやりと笑えるユーモアが満載だ。ぜひ一気読みしてほしい。

(KONANライブラリ サーティフィケイト学生企画)『本に「ふれる」本。』第3回

KONAN ライブラリ サーティフィケイトの学生企画
『本に「ふれる」本。』第3回

 3回目の連載となりました。法学部3年のK・Rです。

 突然ですが、皆さんは書店でブックカバーをつけて頂くことはありますか。
私は、よく断ってしまうのですが、先日ブックカバーをつけて頂く機会がありました。
その際、書店のブックカバーが、新しくデザインを変更していて大変驚きました。それ以降、ブックカバーに興味がわき、特にデザインについて気になるようになりました。

 そのようなことから、本日はブックカバーの魅力について教えてくれる1冊をご紹介します。

 今回のおすすめ本は、書皮友好協会の『日本のブックカバー』(グラフィック社、2016)です。

 本のタイトル通り、日本のありとあらゆる書店のブックカバーをカラー写真で見ることができます。また、各書店のイメージがブックカバーから表れているように感じます。

 書店の周辺地域の地図をモチーフにしたものや、地域の文化をモチーフにしたものまで、ブックカバーの魅力がこの本にぎゅっと詰まっています。

 私の自宅で書店のブックカバーを調べたところこのようになりました。

 建物をモチーフにしたものや、文字面だけのシンプルなもの、さらには、アート作品と表現できるほどのデザイン性が凝ったものまで、3つの書店だけでもこのように個性があって驚きました。

 皆さんもぜひ、本に身近なブックカバーに注目してみてはいかがでしょうか。

 次回は「本について考える物語」をご紹介します。

 また、次回お会いしましょう。

 法学部法学科3年 K・R

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【紹介した本】

日本のブックカバー』、書皮友好協会、グラフィック社、2016

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図書館に所蔵している本は、連載期間中、図書館入館ゲート前の特設コーナーで展示しています。
貸し出しもできますので、お手に取ってご覧ください。(本が貸出中の場合は、MyLibraryから予約できます。)

文学部 中辻 享先生へのインタビュー

文学部 2年生 畑田 亜美さんが、文学部  中辻 享 先生にインタビューを行いました。(KONAN ライブラリ サーティフィケイト)

Q. 本はよく読まれますか。

A. 研究や授業準備のために専門書や論文をよく読みます。

 

Q. 幼少期からよく読まれたのですか。

A. 小学生の頃はよく読みました。中学高校の頃は少し減りましたが、高校時代に友達の影響で読んだロマン・ロランの『ジャン・クリストフ』が本当に面白かったです。

 

Q. 大学生時代に読んだお気に入りの本はありますか。

A. ロシアの文学者、トルストイの本を読みました。同時代のロシアの文学者としては、ドストエフスキーもたいへん有名ですが、私はトルストイの方が好みです。トルストイの本は、風景描写が綺麗です。また、 『青年時代』の主人公や『アンナカレーニナ』のレーヴィンといった主人公に共感しました。日本なら太宰治です。著作をすべて読みました。その中でも『惜別』が特に面白いと思います。この他にも面白い著作がたくさんあります。太宰の作品は人間の弱みをさらけ出していますが、ユーモアがあるのでクスッと笑えます。サービス精神があります。そして、語りかけるような語り口に引き込まれます。また、太宰も風景描写が綺麗です。

 

Q. その本は現在の専門と関係していますか。

A. 直接は関係ありません。しかし、好きな作品はどれも風景描写が綺麗でした。太宰治の『津軽』は地誌のようで、読んでいると背景が浮かんできます。院生の頃に読んだロレンスの『息子と恋人』もそうでした。

 

Q. 地理学に関心を持ったきっかけとなった本はありますか。

A. 地理学へは中学高校の授業や時々テレビで見た旅番組から興味を持ちました。大学に入ってから梅棹忠夫の『モゴール族探検記』を読み文化人類学に興味を持ち、人文地理へ進みました。

 

Q. 現在のお気に入りの本は何ですか。

A. エミリー・ブロンテの『嵐が丘』です。授業のない夏季休暇中に読み、久しぶりにハマった一冊です。風景や景観描写が綺麗で、文章から光景が思い浮かびます。ブロンテは三姉妹で、全員作家です。今は姉のシャーロット・ブロンテの『ジェーン・エア』を読んでいます。

 

Q. 大学生におすすめしたい本は何ですか。

A. ・『嵐が丘』

・ルソー『告白』 これはルソー自身の半生におけるありとあらゆることを告白しています。「普通の小説より面白い」です。

『ジャン・クリストフ』

・五木寛之『大河の一滴』

・アラン『幸福論』

・トルストイ『アンナカレーニナ』

 

感想: 教授の読まれている本には昨年初めて研究室に入った時から興味を持っていました。普段の授業のプリントなどに記されている参考図書で研究に関する本は目にすることがありますが、趣味の本を聞く機会は滅多にありません。

本は人柄をよく反映するので、今回話を聞く中でも教授の新しい面を知ることができたように思います。また、話を聞く中で興味を持った本がいくつかあるので、時間を作って読んでみます。

 

<中辻 享 先生おすすめの本>

エミリー・ブロンテ 著   鴻巣友季子 訳 『嵐が丘』 新潮文庫 , 2003年

(インタビュアー:文学部  2年  畑田 亜美  )