2-1. 学生オススメ」カテゴリーアーカイブ

稲盛 和夫 著 『生き方』

経済学部  4年生 Sさんからのおすすめ本です。(KONAN ライブラリ サーティフィケイト)

書名 :  生き方
著者 :  稲盛 和夫
出版社:サンマーク出版
出版年:2014年

人は生きているうえでどうしても他人に嫉妬してしまったり、己の利益を優先して行動してしまったりする。このようなことがなく心に余裕を持つにはどうすればよいのだろうか。

この本は京セラやKDDIを創設した稲盛和夫氏の考え方や心がけていることについて書かれた人生哲学の本である。仕事に対しての心の持ちようや困難に直面した時の考え方が、稲盛氏の実体験を通して書かれているので非常に説得力がある。

その中でも「同じような能力を持ち、同じ程度の努力をして、一方は成功するが、一方は失敗に終わる。この違いはどこから来るのか。―中略― 願望の大きさ、高さ、深さ、熱さの差からきているのです。」という言葉がとても印象に残った。確かに、私も就職活動を通してここで働きたいと強く思ったところとそうでないところでは結果が異なった。こうなりたい、そうでありたいと強く切望することでその願いをかなえるために自分自身の行動が変わってくる。能力だけではなく思いの強さも結果に影響するのだ。

また、稲盛氏は仕事への意欲がなくなった場合にどうすればよいのかも説いている。稲盛氏いわく、どんな仕事であってもそれに全力で打ち込んでやり遂げれば、大きな達成感と自信が生まれ、また次の目標へ挑戦する意欲が生まれてくる。そうなれば、どんな努力も苦にならなくなり、すばらしい成果を上げることができるそうだ。

この本はよく読んでみると当たり前のことではないかと感じることが多々ある。例えば、一生懸命働くことや感謝の心を忘れないことである。しかし、これらの当たり前を現代の人々は忘れているからこそ心に響き納得させられるのだろう。特に2020年は新型コロナウイルスの影響で例年と異なる部分が多く、リモートワークやオンライン授業、マスクの常時着用など変化に対応しなければならない1年であった。今までできていたことができなくなり、不満やストレスを感じる今だからこそ自分の考え方や生き方を見つめなおす良いきっかけになるのではないかと思う。

森本 千賀子著 『後悔しない社会人1年目の働き方』

経済学部  4年生 Sさんからのおすすめ本です。(KONAN ライブラリ サーティフィケイト)

書名 :  後悔しない社会人1年目の働き方
著者 :   森本 千賀子
出版社:西東社
出版年:2014年

就職活動を終え、新社会人になることへの期待と不安が入り混じっている4年生は多いのではないだろうか。私はどちらかというと不安の方が大きい。

そんな中、リクルート人材センター(現社名:リクルートキャリア)で転職エージェントとして働き、1年目からトップの成績で走り続けている森本千賀子さんが、社会人1年目にどのように働けばよいのかを紹介している本に出合った。

この本には社会人1年目ならではの効果のある働き方が58個も紹介されている。それぞれが6つのパートに分かれており、絶対に心得ておきたい6か条、基本のスキル・知識の身につけ方、求められる人材になるための方法、人間関係の築き方、壁を乗り越える方法、心を強くする方法で構成されている。加えて、新社会人によくある悩みに森本さんが回答しているページがあったり、自分の強みは何かを診断できるページがあったりして、かしこまらずに空いた時間を利用して気軽に読むことができる。

この58個も紹介されている中で私が最も印象に残った事柄は、常に笑顔で元気よく素直でいることである。森本さん曰く、新社会人はみんな知識やスキルが無いためできないことが多いのは当たり前のことだそうだ。しかし、新社会人だからこそフレッシュさがあり、仕事が最初はうまくできなくても元気よく挨拶をしたり、上司が言ったことを素直に受け入れたりすると、この子をもっと伸ばしたいと思ってもらえるのだそうだ。

また、私が粋だなと思った心遣いが、一筆箋を常備してさりげなく感謝の気持ちを伝えるところである。森本さんは資料を渡すついでに一筆箋をクリップで留めたり、顧客先で相手が不在だった時にもメッセージを残したりするそうだ。現代はパソコンが普及し字を書く行為そのものが少なくなっていると感じるが、やはり手書きの文字は字のうまい下手に関係なく相手の誠意が伝わり記憶に残りやすい。ただ仕事をこなすだけではなく、相手への気配りが仕事をお互いに気持ちよく進めるために必要なのではないかと考えさせられた。

この本は、就職活動を終えた人だけでなく就職活動を始める前に読んでも、社会人になることへのイメージがわきやすくなる本だと思う。働くことに不安を感じている人にぜひ読んでもらいたい1冊だ。

ウィリアム・ギブスン著, 黒丸尚訳『ニューロマンサー』

法学部1年 和田颯太朗さん(「基礎演習(濱谷)」リサーチペーパーより)

 まず、作者のウィリアムギブスンは1948年にアメリカに生まれたSF作家である。幼少期に引っ越しを繰り返したことによりSF小説をよく読む内気な性格へと成長し、1984年にビブリオバトルで紹介したニューロマンサ―で小説家デビューする。作中でも日本が舞台となっているように日本への関心も深い。脳とコンピューターの融合や、サイバースペースという概念は彼が生み出したと言われている。彼の描くSFはサイバーパンクというジャンルに属するが、このサイバーパンクというジャンルも彼が生み出したジャンルである。
 第二に、ニューロマンサーが与えた影響については、後のサイバーパンクと名のつく作品すべてに影響を与えていると言ってもいい。「攻殻機動隊」や「マトリックス」などは特に影響を受けている。ニューロマンサーが与えた影響は作品だけではなく、現在開発されているVRなどのデザインのモデルになるなどテクノロジー自体への影響も大きい。影響とは言えないが、作中で登場しているものが既に実現しているものはいくつかある。高度な知能を持つAIや、体を一部機械にかえる義体化技術などニューロマンサーが出版された1984年には誰も想像していなかったようなことが次々と実現している。
 第三に、あらすじ及び世界観についてである。サイバネティックス技術が進歩した世界でと電脳ネットワークが地球を覆い尽くしており、宇宙でも月などのコロニーで生活している人間もいる。財閥とヤクザとよばれる多国籍企業が経済を管理している社会で、戦争も頻発していおり、社会は荒廃している。AIもかなり発達しており、人格を有するAIが存在し、AIが完璧な存在となり人間を超えないように管理するチューリング機関がある。あらすじについては非常に登場人物が多く、長くなってしまうのでかなり省略して説明する。まず、主人公のケイスはハッカーとして仕事をしていたが、とある失敗により、二度と電脳ネットワークに接続できない体にされてしまう。そこに謎のアーミテジという男に強引に仕事を依頼され、サイボーグのモリィと共にアーミテジからの仕事をこなしていく。しかし、実際はアーミテジという男は存在せず、人格を失った男をウインターミュートというAIが操っているだけである。仕事の目的も宇宙に居る高度なAIとウインターミュートが融合するためのもので、ケイスなどを雇っていた理由は先述したチューリング機関に捕まらないようにAIと融合するためであった。最後には融合を果たしたウインターミュートが遠い宇宙から「同族」の信号を受信し、宇宙に旅立つというシーンで終わる。
 ニューロマンサーの最も重要な部分はただテクノロジーが進化した世界を描いている訳ではないということである。世界は電脳ネットワークに覆われているが、この技術を使うことのできない人と使うことのできる人の格差は拡大し、経済は「財閥」「ヤクザ」とよばれる多国籍企業に管理されている。こういった問題は現実となり始めている。アメリカと中国の巨大企業が競争を繰り返し、インターネットを使える人と使えない人との差は拡大する一方である。進化するテクノロジーという点についても、人格を有するAIと人間をどう区別するのか、AIの進化をどこまで許すのかという問題がある。作中でもチューリング機関というAIの進化を管理する機関が存在するが現実でもそういった機関又は規則が設立されるのは時間の問題であると考える。作中ではほとんどの人間が脳とコンピューターを融合させているが、脳をコンピューターに置き換えたとき、意識はどこに有るのか、ロボットに人間の区別はどうつけるのか、生と死の境はどこに有るのかといった課題もある。実際に死後脳を取り出し、完全な脳のコピーをつくり新しい体とつなげ生き返らせるという研究が行われている。生き返った後意識は脳のコピーに宿るとされているが、それが本当に生前の自分であるのかといったことは実際にやってみなくてはわからない。こうした近い将来実現するであろう問題を考えることができるということが、ニューロマンサーを含むサイバーパンク作品の面白いところであると考える。

朝霧カフカ原作, 春河35漫画『文豪ストレイドッグス』

法学部1年 吉川史華さん(「基礎演習(濱谷)」リサーチペーパーより)

 まず、文豪ストレイドッグスという作品について紹介する。
 文豪ストレイドッグスとは、現代横浜を舞台に、中島敦、太宰治、芥川龍之介など様々な文豪たちがキャラクター化され、それぞれの文豪にちなんだ作品の名前を冠した「異能力」という超常能力を駆使して活躍するアクションバトル漫画である。原作の漫画本編は、孤児院を追い出された中島敦が、入水自殺を図って川に流されていた自殺愛好家の太宰治を助ける場面から始まる。そのあとに起こるある事件をきっかけに中島敦は「武装探偵社」という異能力集団に入社し、横浜の港を縄張りとする兇悪な闇組織「ポートマフィア」や、北米を拠点とする異能力者集団「組合(ギルド)」、「魔人」ドストエフスキーと対峙するなど、次々と難事件に直面しては解決していく。作品内での重要な要素である「異能力」とは、例えば中島敦の「月下獣」は巨大で凶暴な白虎に変身する能力で、実在する文豪中島敦の「山月記」をモデルとしている。他にも、全ての異能を無効化する太宰治の「人間失格」、自身の外套を不定形かつ何でも喰らう「黒獣」に変化させ操る芥川龍之介の「羅生門」など、登場人物によって多種多様な異能力が存在する。漫画、小説、アニメ、実写化など多岐に渡り展開されるこの作品は「文スト」と呼ばれ、主に若い女性を中心に親しまれている。
 文ストは原作を朝霧カフカさんが、作画を春河35さんがそれぞれ担当している。朝霧さんは文ストの小説版の大半も自らが執筆を担当しており、他にも「汐ノ宮綾音は間違えない。」や「水瀬陽夢と本当は怖いクトゥルフ神話」の漫画原作なども手掛けている。この作品が生まれたきっかけについて、朝霧さんは「文豪がイケメン化して能力バトルしたら絵になるんじゃないかと編集と盛り上がったから」と述べている。また、舞台が横浜になったのは春河さんが横浜出身であるからである。文ストは、このように存外軽い気持ちで生み出された作品なのだ。
 現在、日本では活字離れの深刻化が騒がれている。確かに、10代、20代の若者で、好んで活字を読む人は決して多くはないと思う。特に大正・昭和期の文豪の作品となると、現代文の教科書や夏の読書感想文で、多くても両手で足りるほどの冊数を読んだことがある程度の人が大半だろう。そうした中で、「文豪ストレイドッグス」という作品に出合ってから、それらの本を手に取ってみたり、あるいは電子書籍などで読んでみたという人は実際かなり多い。角川文庫と文ストのコラボカバーの書籍も多く発売されているので、そちらを購入した人も多いだろう。私も、文ストを知ってから文豪の作品に興味が湧き、電子辞書に入っているものを読み漁ったり、コラボカバーの「人間失格」を購入したりして読むようになった。他にも、若者の文学離れを背景に来館者が伸び悩む全国各地の文学館が、文ストを扱ったイベントを開催して来館者を増やしているという記事もある。同記事には、「出版社や文学館は『若者が文学に関心を持つ入り口になれば』と期待してる」とも書かれている。
 ある意味軽い気持ちで生み出されたひとつの作品が、漫画やアニメという枠を大きく超えてこれほどまでに多大な影響を与えることはそうそうないのではないかと私は思う。

池井戸潤著『七つの会議』

法学部1年 山本みちるさん(「基礎演習(濱谷)」リサーチペーパーより)

 今回リサーチする「七つの会議」は、グータラ社員の八角が歳下エリート課長の坂戸をパワハラで社内委員会に訴えるところから始まります。そして委員会が下した不可解な人事に一体この会社で何が起こっているのかを、事態の収拾を命じられた原島が大掛かりな会社の秘密に迫る、というのが大まかなあらすじになります。
 最初に、著者の池井戸潤氏といえば、「半沢直樹」や「下町ロケット」など数々の名作を生み出したことで知られています。作家としてのデビュー以前はコンサルタント業の傍らにビジネス書などを執筆していました。
 しかし、限られるテーマに将来の不安を感じ、作家としてデビューして元銀行員の経験を生かした作品などを世に出し始めます。この「七つの会議」は「空飛ぶタイヤ」と同じく、企業の不正について描いた著書になります。現代の社会問題であるパワハラやブラック企業の生々しさが、綿密に練られた人物設定と話の構成によって読み手にありありと伝わる作品です。
 この話の面白いところはやはり、登場人物それぞれの生まれと境遇や意図することなどが細かく描写されていることだと思います。大筋となる東京建電での不正を行った坂戸ですが、課せられたノルマを達成するために異常とも取れるコスト削減で基準値を下回るネジの納入をしていた悪役、という認識でした。しかしその実情は、社長である宮野の某策による被害者に過ぎなかったのです。坂戸は兄を見返してやりたいという対抗意識と過激なノルマが自分を追い詰め、そこを宮野らにつけ込まれ不正に手を染めてしまった弱さと救いのなさにこの物語の全てが詰まっていると考えました。話が動き出すきっかけである坂戸による八角へのパワハラですが、私はこのシーンを権力やノルマに振り回されずマイペースな働き方をする八角への嫉妬がもたらしたものであると考察しました。しかしこれは坂戸からの視点に過ぎません。では、八角から坂戸はどう見えていたでしょうか。
 まず、坂戸と八角は歳が20離れていることが書かれており私はそこに注目しました。20年前の八角といえば、ノルマを達成するために違法まがいの押し売り商売をし、その結果一人の顧客が自ら命を絶ったことが語られています。このことが原因で彼は権力から遠ざかり、誰からも期待されないように振る舞い始めました。
 しばらくして20年後の坂戸も、以前の八角と同じようにノルマのために顧客の信用を裏切る行為に手を染めはじめます。
 このことから、彼は坂戸を20年前の自分と重ね合わせており、取り返しのつかないことになる前にその過ちを正すため行動を起こしたのだと推考しました。作中で彼は何度も坂戸への怒りを吐露していますが、おそらくその怒りは過去に同じ過ちを犯した自身に向けたものでもあったと思います。
 次に、それぞれの登場人物の視点から見る東京建電の不正問題についてです。元凶である社長の宮野は子会社の東京建電をのし上げるために坂戸を利用し、万が一不正が明るみに出た場合でも自分だけは助かるよう彼に全ての責任を押し付ける算段まで立てていました。顧客の安全と信用より会社の利益を優先し、果てには部下も捨て駒にするという考えがこのような事態を引き起こしたのだと思います。営業部長である北川らも同じ考えであり、八角はこれを東京建電の体質であると発言しています。二課課長の原島は坂戸とは違い不正をはたらこうとはしませんでしたが、ノルマを達成できず組織への貢献力は芳しくありませんでした。しかし、一課課長に任命され八角から坂戸の行いを聞いてまもなくネジの発注先を切り替えた姿勢から、顧客の信頼を裏切った代わりに組織に貢献して地位を得た坂戸とは対照的な人物だと感じました。
 しばらくして組織内で不正が認知され始めた東京建電では、ヤミ改修と呼ばれるリコール隠しが指示されます。結果的に八角によってこの悪事が世間へ公表され、宮野は背任罪で起訴、東京建電は事実上の解体という処分になりこの物語は終わります。
 組織のパワハラや隠蔽体質は決してこの話だけに限ったフィクションではなく、過去に公に報じられた大手自動車企業などが例に挙げられる通り、現代の日本社会の大きな課題であると思います。「七つの会議」は、世間のこれらの重大な問題に対する関心の向上に、大いに貢献する傑作であると感じました。

参考:【映画】七つの会議 / 福澤克雄監督 ; 丑尾健太郎, 李正美脚本 ; 池井戸潤原作

ジョン・バーニンガム作, まつかわまゆみ訳『ねぇ、どれがいい?』

法学部1年 山下知希さん(「基礎演習(濱谷)」リサーチペーパーより)

 作者であるジョン・バー二ンガム氏は1936年にイギリス ファーンハムで生まれた。彼は英国の作家であり、子供向け、特に幼児向けの絵本のイラストレーターであった。この「ねえ、どれがいい?」は1983年に出版された。
 バーニンガム氏は1963年と1970年にイギリスの児童書イラストでケイトグリーナウェイメダルを獲得した。1963年の方はデビュー作、‘ポルカ:羽毛のないガチョウの冒険’で1955~2005年の優勝作品の中でトップ10の一つに選ばれた。1970年の‘ガンピーさんのドライブ’は、ワールドキャット参加図書館で最も広く公開されれた彼の作品となった。
 ところで、私の家にはバーニンガム氏作の絵本が数多くあったことに私は気づいた。ウクライナ民話をモチーフとした‘てぶくろ’、‘ガンピーさんのドライブ’もあったのを思い出した。絵本製作上の時代背景は調べても出てこなかったが、バーニンガム氏の絵本がこうして国を時代を超えて愛されていることがとても感じられる。
 個人的にも、この本やそのほかのバーニンガム氏の手掛けた本はとても好きで、小さいころに読んだ内容を今でも鮮明に覚えている。読んでいて楽しめるだけでなく子供の想像力をひきたてる内容、からくりがほどこされほどこされていると感じた。つまり、バーニンガム氏の本は子供の読むものとしてはとてもふさわしいと思われる。
 この3ヶ月間の取り組みを通じて、昔読んでいたもの、またバーニンガム氏の手掛けたほかの本をもう一度読読みたい気になった。