月別アーカイブ: 2018年4月

内藤文雄(経営学部)『会計学エッセンス(第3版)』

<教員自著紹介>

本書は、会計学初心者向けに、企業が公表する財務諸表をどのように読み解くのかを解説し、読者自らが企業の業績を分析できる力をつけていただくことをねらっています。確かな企業経営を行っているのはどの会社か、これから成長していく会社はどこか、利益が出ていても隠されている問題は何かなど、本書で「会計」を理解し財務諸表を分析すればさまざまなことを自力で発見できるはずです。

■『会計学エッセンス(第3版)
■ 内藤 文雄[著]   中央経済社  ,2018年 2月
■請求記号 336.9//2958                                          ■配架場所 図書館1F シラバス
■著者所属   内藤 文雄(経営学部 )

倉本宜史 (マネジメント創造学部) 足立泰美 (経済学部) 『実践財政学 : 基礎・理論・政策を学ぶ 』

<教員自著紹介>

この本は財政学の取り扱う様々な課題を個別の章で扱い、各章で基本的な経済理論や現状の制度、政策の歴史について、同じ体系のもとで学ぶ形式を採用しています。具体的には、全ての章が「1財政の今(国・地方の役割)」、「2理論・歴史を学ぶ」、「3仕組み・政策・課題を学ぶ」という3パートで構成されている所に特徴が有ります。財政学をバランスよく学びたい学生にお勧めします。

■『実践財政学 : 基礎・理論・政策を学ぶ
■ 倉本宜史・足立泰美 他 [著]   有斐閣  ,2017年 4月
■請求記号 341//2104                                          ■配架場所 図書館1F 教員著作
■著者所属   倉本宜史(マネジメント創造学部 )・足立泰美(経済学部)

ハーバート・フーバー著『裏切られた自由 : フーバー大統領が語る第二次世界大戦の隠された歴史とその後遺症 上・下』

裏切られた自由

書名: 裏切られた自由 : フーバー大統領が語る第二次世界大戦の隠された歴史とその後遺症 上・下
著者: ハーバート・フーバー著; ジョージ・H.ナッシュ編; 渡辺惣樹訳
出版者: 草思社   出版年: 2017.7-2017.11
場所: 1階開架  請求記号: 209.74/1/2032

 本書は、第二次世界大戦時のアメリカ大統領 ルーズベルトの外交政策を批判するものです。
 これを読むと「歴史をみる目が養われる」、そのような1冊です。
 1,200頁を超える大著ですが、記述は平易です。臆することはありません。

(1)著者フーバーがルーズベルトの前の大統領であること
(2)ルーズベルト政権当時からフーバーは批判を公にしていたこと
(3)批判が十分な資料に基づいていること

 この3点により、本書のルーズベルト批判には説得力があると思わせます。
 もっとも、ルーズベルトの外交政策に一定の理解を示す見解もあります。
 (例えば、『第二次世界大戦外交史』芦田均〔岩波文庫〕)

 本書をきっかけにして、第二次世界大戦をめぐる様々な見解に接すると、歴史の見方が広がり、深まるのではないでしょうか。
 そうすると、現在の国際問題に対する見方も変わってくると思います。
 その意味で、すべての学生の皆さんにお薦めします。

 

古田清和先生(共通教育センター)「紙の本と電子書籍」

☆新入生向けの図書案内
 大学入学前に、本を読む場合は多くは教科書類・文庫・漫画であろう。日常生活での情報については、ネット上に溢れている情報をスマホやパソコンで簡単に入手していたのではないだろうか。
 大学では学びの中で様々な情報を入手する必要が出てくる。1年生が選択する共通基礎演習の学生も課題の作成過程ではほとんど本・文献によることなく、ネット検索やHP にアクセスして得た情報を議論し加工している。これらの学び方も一つの方法としてはありうるだろう。では大学生の日常に本は関係してこないのだろうか。ここでは、紙の本と電子書籍について学習・資格・趣味に分けて考えてみる。
 文献としての本には、誰が(著者)いつ(出版年月日)どこで(出版社)出したものかが明示され責任の所在が明確である。基本文献や参考文献は本から入手し理解することが多い。レポートの提出にあたり引用・参考文献を明示するのは当然である。ただ最近は電子ジャーナル化しているものも利用可能である。一方、ネット上の情報は、誰が・いつ・どこで、出したものか明示されていないものも多数あり、その場合、情報の信憑性に疑義が残り、利用にあたっては十分に注意する必要がある。
 資格試験(例えば日商簿記検定・税理士・公認会計士)の取得を目指す場合は、紙のテキストが中心であり電子化されたテキストでは使いにくいのではないだろうか?講義はウェブ上で行われることも多いが、本番の試験は答案用紙に記述するので、紙のテキストに書き込んで使い込む必要があるだろう。
 一方、小説や漫画はどうであろうか、最近では、紙の本と電子書籍の同時発売や、中には電子書籍が先行するものもある。電子書籍はスマホやタブレットで読める手軽さと、例えば文庫本5冊とタブレットの中にある5冊では持ち運び等を考えるとスペースをとらないという大きな利点がある。
 大学では、本に接する機会は増えるが、TPO に応じて情報の内容種類を選択し、有意義な学生生活を送ってもらいたい。

甲南大学図書館報「藤棚」(Vol.35 2018) より

伊東浩司先生(スポーツ・健康科学教育研究センター)「学園のルーツ」

☆新入生向けの図書案内
 3年連続で図書館報「藤棚」を書かせていただきました。昨年書かせていただいた「藤棚」を読み返してみると年月が過ぎていくのが早いのと自分自身を取り巻く環境が目まぐるしく変化していることに驚いています。自分自身、新たな扉を開いて入学してくる学生の皆さんに読書の大切を、この「藤棚」に書かせていただいていますが、自分自身どれぐらいの本を読んだかというと、雑誌などを流し読みはしていましたが、じっくりと一冊の本をほとんど読んでいないかったことに気がつきました。何かを読んだり、調べたりすることのほとんどがインターネットでした。その本を読むことがなかった1年を振り返ってみると、自分自身の生活にゆとりを持ててなかったことに気がつきました。
 2018 年度入学された皆さんは、これからの学生生活に夢や希望に満ち溢れていることだと思います。勉学・スポーツなど多くのことに取り組んで欲しいと思いつつ、現実を忘れて本を読むゆとりの時間を持ってほしいと思います。私自身、仕事のことなどで悩んだことがあったときは、吉沢理事長先生にご相談することがあります。その時、理事長先生から必ず、私自身が悩んでいることを乗り越えるためのヒントとなる言葉を紹介していただいています。何を紹介していただいているかというと、本学園創立者の平生釟三郎先生の本を通じて、平生先生の言葉や実際に行動した出来ことなどを紹介していただいています。当然、その時代と現代の時代背景は異なりますが、その一言一言などで、私自身を一歩踏みとどまらせて、冷静に物事と向き合うことができています。この平生先生の考えを4年間かけて学んでいただき、建学の精神でもある「人格の修養と健康の増進を重んじ、個性を尊重して各人の天賦の特性を伸張させる」甲南生になっていただきたいと思います。この「藤棚」を書くことをきっかけにして、私自身、平生先生のことが書かれている「平生釟三郎・伝」を読んでみました。皆さんも、平生先生を初めてとする様々な分野で活躍された方々の本を読んでみたらいかがでしょうか、自分自身の成長にきっとつながるかと思います。

甲南大学図書館報「藤棚」(Vol.35 2018) より

吉田桂子先生(国際言語文化センター)「本が読めるのも…」

☆新入生向けの図書案内
 留学準備・英語集中コースの中級英語Writingという授業では、TOEFLR やTOEICR テストを実施している米国のETSR という会社が作成した、CriterionR オンライン・ライティング添削システムを活用しています。教員がリストから選択したテーマについて、学生のみなさんが自分の意見を英語で書いてSubmit(提出)ボタンをクリックすると、瞬時に点数とコメントが表示され、どこをどのように直せば良いかがわかるようになっている自主学習用ツールです。秋学期に4つのテーマについて、このCriterionR オンライン課題を実施しました。その1つ目のテーマがExperience or Books でした。「経験から得た知識と書物から得た知識を比較し、どちらが自分にとっては重要だと思うか理由とともに論じなさい」という課題です。書物にあることは必ずしも自分には当てはまらない、経験した方がインパクトがある、スポーツのフォームなど感覚的な知識を書物から学ぶのには限界がある、といった理由で、経験からの学びを重要だとする意見。現代の社会では、一般的に人は多くの経験をする前に、学校で書物からさまざまなことを学ぶのであり、そのことには意味があるという理由で、書物からの知識が重要だとする意見。それぞれ、説得力のある例をあげて、意見を論じていきます。
 このテーマExperience or Books に含まれる2つの選択肢を見た時に、その前提として、人はこの2つから学べるのだということを改めて考えました。その時に、私が大学生の頃に読んだ本、鹿取廣人・重野純訳 『言葉をもった哺乳類』(思索社 1985 年)(原書はJ. Aitchison, The ArticulateMammal, Hutchinson, 1983)を思い出しました。Aitchison は、大部分の動物は一定数のメッセージを運ぶ決まった数の信号をもっていることを紹介しています。例えば、セミやサルはいくつかの音声を使い分けてメッセージを送り、ハチやイルカはより複雑なコミュニケーション・システムを持ち、ワシューという名のチンパンジーは身振りを自発的、創造的に組み合わせることができます。書き言葉についてはどうでしょうか。チンパンジーのサラは、ふじ色の三角形「りんご」、赤い四角形「バナナ」などの記号を用いて作られた指示文を正確に理解することができました。しかしいずれにしても、彼らが学んだシステムは人間の言語よりも複雑ではなかったと報告しています。このようにわたしたちは、Aitchison の記したこの本を通して、多くの研究者の実験や経験から得られた発見について学び、Experience とBooks の両方から学ぶことができるヒトという種の特性とありがたさについて、再認識することができるのです。

甲南大学図書館報「藤棚」(Vol.35 2018) より