月別アーカイブ: 2022年1月

横井軍平, 牧野武文著 『横井軍平ゲーム館 : 「世界の任天堂」を築いた発想力 』

知能情報学部  4年生  Hさんからのおすすめ本です。

書名 : 横井軍平ゲーム館 : 「世界の任天堂」を築いた発想力
著者 : 横井軍平, 牧野武文著
出版社:筑摩書房
出版年:2015年

 「任天堂」は今や誰もが名前を知っている有名なゲームメーカーだろう。しかし初めから今のようにテレビゲームを作っていたわけではない。はじめは花札といったアナログなおもちゃを作る会社であった。本書では、そんなアナログ時代の開発とデジタル時代の開発の両方を経験した横井軍平さんのインタビューから構成されている。「ウルトラハンド」、「ゲーム&ウオッチ」、「ゲームボーイ」といったヒット商品の開発経緯を知ることができ、レトロゲーム好きな人はその内容だけでも楽しむことができるだろう。しかしこの本はそれだけではとどまらない。本書には「枯れた技術の水平思考」というキーワードがしばしば登場する。先端技術ではなく、使い古された技術の使い道を変えてみることによって、まったく新しい商品が生まれるという考え方である。余っていて誰も使っていないもの、値段が安く大量に流通しているものから新しいヒット商品を作り出すストーリーは興味深い。今や毎日のように新しい技術は生まれているが、古いものに一度焦点を当てる考え方はすごく良い刺激だった。

 ゲームでもおもちゃでも、今から何か新しいものを作り出そうとしている人にはぜひ一度手にとってもらいたい本である。20年以上も前の本だが内容は現代の開発に通じるところがたくさんあり、未来のクリエイターにはぜひオススメしたい一冊である。

村田 紗耶香著 『コンビニ人間』

 

知能情報学部  4年生  Hさんからのおすすめ本です。

書名 : コンビニ人間
著者 : 村田 紗耶香著
出版社:文藝春秋
出版年:2016年

 「普通に生きる」って難しい。主人公は36歳で独身、コンビニアルバイト歴18年の女性。これを聞いてあなたは彼女にどんなイメージを持つだろうか。もし自分の身近にいたら、「なんで就職しないの?」、「まだ結婚しないの?」と思う人もいるはずだ。おそらく私もそう思うだろう。なぜならそれが社会において普通だから。ならば普通の基準は誰が決めるのだろうか。おそらく自分ではなく他者からの評価で生まれる。

 コンビニという様々な年齢や国籍の人が集まる場所で、主人公は他者から評価され続ける。主人公は自分以外の真似をして、自分らしさを殺し続ける。普通じゃない自分のせいで家族が悲しまないように。多様性を謳う今の社会において個性の否定はマイナスなイメージを持つ人も多いだろう。普通と呼ばれる人間らしい生き方とコンビニにあるマニュアルのような無機質な生き方はどちらの方が良いのか。どちらが幸せなのか。普通であることが正義なのか。

 結末は人によって感じ方が分かれるだろう。ハッピーエンドと捉える人もいれば、バッドエンドと捉える人もいるだろう。普通という名の圧力による生きることの難しさ、まさに今の時代が生んだ小説である。ぜひ読んでみて、判断してほしい一冊である。

高野 和明 著 『ジェノサイド』

 

経済学部  1年生  Mさんからのおすすめ本です。

書名 : ジェノサイド
著者 : 高野 和明 著
出版社:角川グループパブリッシング
出版年:2011年

 今回紹介する本は、高野和明の代表作であり、日本推理作家協会賞や山田風太郎賞など多数の賞を受賞した『ジェノサイド』である。題名である「ジェノサイド」は、大量殺戮や大量虐殺という意味の言葉である。しかし、本書のテーマは「人類の未来」となっており、その中で、人類のために何かに必死に取り組むひとが描かれている。

 本書は、世界を舞台にした、壮大で予測不能な、人類全体の平和をかけた物語である。アメリカ大統領はアフリカで新種の人類が誕生し、人類が滅亡の危機にあるという報告に対し、極秘の計画を進める。それと同時期に、アメリカ人傭兵のジョナサン・イエーガーは難病の息子の治療費のため、アフリカでの極秘任務に就くことを決断する。彼が知らされているのは「人類全体に奉仕する仕事」ということだけであった。さらに、日本では創薬科学専攻の大学院生である古賀研人のもとに、数日前に亡くなったはずの父から一通のメールが届く。それをきっかけに、研人は成功すれば10万人の命を救える難病治療の新薬を開発することになる。

 本書の見どころは、アフリカ、日本、アメリカでの場面が頻繁に切り替わり、展開していく点である。一見全くかかわりのない人々がなぜ繋がっているのか、なぜイエーガーと研人が選ばれたのか、交錯する物語の中で徐々に明らかになっていく。著者が脚本家としても活動していることもあるためか、まるで映画を見ているような感覚で読み進めることができる。また、アメリカが隠していた本当の目的、そして、死んだ父の成そうとしていたことが明らかになるとき、イエーガーと研人がどのような行動をとるのかも注目すべき点である。そこには、他人のために危険な選択をするという人間の優しさと素晴らしさが表現されている。

 以上のように本書には「ジェノサイド」という恐ろしい題名がつけられ、人類は「ジェノサイドを行う唯一の生物」であるとされている。しかし、同時に家族愛や友情なども描かれ、ハッピーエンドではないものの、読者が人類に対し希望を持てる終わり方になっている。「人間とは」ということを深く考えてみたい方に是非読んでいただきたい。

七月 隆文著 『ぼくは明日、昨日のきみとデートする 』

 

知能情報学部  4年生  Iさんからのおすすめ本です。

書名 : ぼくは明日、昨日のきみとデートする
著者 : 七月 隆文 著
出版社:宝島社
出版年:2014年

南山高寿は、電車で一目惚れした人に声をかけて断られてしまい、帰ろうとすると本当に携帯を持っていないと伝えられる。そこから、話していくと同い年とわかり少し仲良くなり福寿愛美が立ち去っていった。そこから次の日も会うことができ無事連絡先を交換することができた。

文章越しではあるが、自分もドキドキしながら本を読んでいてどこか引き込まれるような感覚があった。そこからデートに行き、付き合いひとり暮らしを始めた高寿は、愛美にカレーを作ってもらうが実家の味がして隠し味も同じだった。ここで思い出すと、愛美が時々未来を予知することがあり不思議な感じがしていた。そこから、家でご飯を食べて愛美が帰った後家には手帳が残されていた。そこには、未来のことがぎっしりと書かれており、今までの愛美はそれをなぞって過ごしてきたと知る。

自分であれば、ショックで立ち直れないと感じたが主人公も同様にショックは受けたが最終的にそれでも良いから一緒にいたいと決心して過ごしていくのがすごく感動的だった。そこからは、決められたところにデートに行くが全力で楽しんでいるところが素敵だと感じた。

SFに近い内容の本で難しく読みにくいところもあったが今までにない設定だったから新鮮味を持って読むことができた。5年に一度40日間だけ同じ世界に来ることができるが時間の進む方向が逆のため高寿が5歳の時愛美は、35歳である。逆に高寿が35歳の時は愛美が5歳である。このような設定のため2人が同い年でいられるのは20歳の40日間だけである。このような切ない設定を知ったあともう一度最初から読むとまた違った捉え方ができる一冊となっている。

住野 よる著 『君の膵臓をたべたい』

知能情報学部   4年生  Iさんからのおすすめ本です。

書名 : 君の膵臓をたべたい
著者 : 住野 よる著
出版社:双葉社
出版年:2015年

始まりは、クラスの人気者山内桜良が書いていた「共病文庫」を拾って読んでしまった。日記には、膵臓の病気によって余命半年と書かれていた。彼女の「僕」に対する想いがどんどん変わっていく面白い小説だ。

設定として、人気者の山内桜良といつも本ばかり読んでいる「僕」というところで名前もなく僕となっているのが面白く感じた。しかし、登場人物によって呼び方が変わっていく。秘密を知っているクラスメイトや大人しい生徒、地味なクラスメイトと変わっていく。桜良の秘密を知ってからよく話しかけられるようになった。そして、デートに行くことになったが焼肉だった。膵臓の病気だが、ホルモンを好んで食べるジョークも混ざりつつ話が進んでいく。

恋愛ものと思っていたが、意外とジョークなども出てきて読みやすかった。九州旅行に行った際に、ホテルで酔った勢いに任せて本音を聞こうとゲームをする姿が可愛く高校生らしいと感じた。

映画を見てから本を読んだが、映画と変わらずに読みながら泣くことができました。特に本の最後の部分では映画とは異なる内容だったため余計に涙が出てきた。本を読んでいて映画に沿ったストーリだったが、また違った受け取り方ができた。是非、読んで欲しい一冊だ。

クリストファー・ピーターソン著 ; 宇野カオリ訳 『幸福だけが人生か? ポジティブ心理学55の科学的省察』

知能情報学部   3年生 Kさんからのおすすめ本です。

書名 : 幸福だけが人生か? ポジティブ心理学55の科学的省察
著者 : クリストファー・ピーターソン著 ; 宇野カオリ訳
出版社:春秋社
出版年:2016年

この本を選んだ理由はタイトルとしか言えません。
このタイトルを見た時、私はもちろん幸せになりたいけどポジティブに生きられた事は無いしこの性格が治ることは一生ない幸せにはなれないのかなと思ったけど、ポジティブに生きているからといって本当に幸せな未来を掴めるのかなとも少し自分でも考えてしまいました。大学で心理学を学んだことは無いですが、そこに触れることによって何か考え方や生き方が変わるかもしれないと思いとりあえず読んでみようと思いました。

著者であるクリストファー・ピーターソンは本書のタイトルにもあるポジティブ心理学の創始者のひとりで、心理学者として世界的に有名な方だそうです。

この本には幸せを研究対象とするポジティブ心理学についての研究結果が具体例と共に書かれていました。
米国の人気心理学サイト「サイコロジー・トゥディ」で大人気であった連載に最新の研究結果を織り交ぜ作成されています。良い生き方について、幸福はいいことなのか、不幸は悪いことなのかが基本的に中立の立場で書かれていました。

頑張ってポジティブになれるものでもないし、かと言ってネガティブなオーラを振りまいて他人を嫌な気持ちにさせたくないので、私はとりあえず表向きだけでもにこにこしてポジティブを装って生きています。なので、”できないならできるふりをすればいい”という引用には救われました。私のこの生き方は間違っていなかったのだなと思えました。

タイトルにある「幸福だけが人生か?」という問いかけに対する答えはどこにも書いて無かったけど、この本を通して私の中での答えはなんとなく見つかった気がします。ポジティブ思考の方も、ネガティブ思考の方も良い生き方について考えるいい機会になるので1度は読んでみる価値はあると思います。
とりあえず”良い一日”が自分に相応しいものだと思って生きてみようと思いました。