【第11回 甲南大学書評対決】 新田次郎著 『孤高の人』

10月14日(火)に開催された第11回 甲南大学書評対決(主催:甲南大学生活協同組合)で紹介された本です。

 

フロンティアサイエンス学部教授 藤井敏司 先生からのおすすめ本です。

 

 

 

 

 

 

 

書名:孤高の人 (上・下)
著者: 新田次郎
出版社:新潮社
出版年:1973年

藤井先生3冊目のおすすめ本です。山岳小説として名高いこちらの本です。

以下、先生の書評です。

甲南大学は山の麓にあり、皆さんにとって六甲山は身近な存在ですが、「六甲全山縦走路」という登山ルートがあることを知っているでしょうか?このルートは、現在も年間何回か大会が開かれている須磨浦公園から宝塚まで山を繋いで歩く全長56kmともいわれる長大な登山ルートです。
このルートが整備されるきっかけとなったのが、本書の主人公、兵庫県新温泉町浜坂出身の加藤文太郎です(加藤は須磨から宝塚まで六甲山を歩き、その日のうちに平地から須磨まで歩いて帰った、という逸話をもつ体力オバケ)。
大正から昭和にかけて、当時ガイドをつけてグループで登ることが主流だった登山界のしきたりを覆し、単独で数々の困難な登攀を行なった加藤の生涯を描いた本書は、登山シーンの面白さは言うまでもありませんが、人間付き合いが下手であった加藤の苦悩とその反動とも言える山への情熱を描いた人間ドラマとしても秀逸です。
是非、加藤の人生を追体験してみてください。本書を読んだ後、きっとあなたも山に登りたくなりますよ。

 

第11回 甲南大学書評対決、生協書籍部で実施中!

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【第11回 甲南大学書評対決】 鈴木俊貴著 『僕には鳥の言葉がわかる』

10月14日(火)に開催された第11回 甲南大学書評対決(主催:甲南大学生活協同組合)で紹介された本です。

 

フロンティアサイエンス学部教授 藤井敏司 先生からのおすすめ本です。

 

 

書名:僕には鳥の言葉がわかる
著者: 鈴木俊貴
出版社:小学館
出版年:2025年

藤井先生2冊目のおすすめ本です。第24回新潮ドキュメント賞、第13回河合隼雄学芸賞を受賞した今話題の本です。

 

以下、先生の書評です。

 

昔から、「言葉を持つのは人間だけだ」と言われてきました。ところがその定説を本書の著者である鈴木先生が覆したのです。
本書には、鈴木先生が卒業研究のテーマとしてシジュウカラという鳥と出会い、その後シジュウカラが鳴き声を使って様々なコミュニケーションを取っている、ということを発見し、動物言語学という新たな学問領域を切り拓いていく過程が書かれています。誰も知らない、誰も辿ったことのない道を進むことは不安で簡単なことではありませんが、自分しか知らない道の事柄を発見していくことは知的興奮にあふれ、不安や苦労を凌駕するものです。
是非、皆さんも本書でその興奮を追体験し、自分なりの未知領域への挑戦の参考書にしてください。

 

 

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【第11回 甲南大学書評対決】 桜井弘著 『生命にとって金属とはなにか : 誕生と進化のカギをにぎる「微量元素」の正体』

10月14日(火)に開催された第11回 甲南大学書評対決(主催:甲南大学生活協同組合)で紹介された本です。

 

フロンティアサイエンス学部教授 藤井敏司 先生からのおすすめ本です。

 

 

書名:生命にとって金属とはなにか : 誕生と進化のカギをにぎる「微量元素」の正体
著者: 桜井弘
出版社:講談社ブルーバックス
出版年:2025年

藤井先生1冊目のおすすめ本です。先生の専門分野の本です。

 

以下、先生の書評です。

 

私の専門は「生物無機化学」という学問で、生物の中で鉄や銅などの金属イオンがどのような働きをしているか、を調べることが主たる研究テーマです。
本書は、もともと金属イオンを薬物に利用する研究をされていた桜井先生が、我々、生き物がいかにして地球上に生まれてきたか、また、その際に種々の金属イオンがどのような役割を果たしたか、を最新のデータを交えながら平易に解説してくださっています。
今、これを読んでいるあなたも、金属イオンの働きがなければ、この世に存在していなかったのです。文系の皆さんには少し難しい部分もありますが、是非一読して、自分の存在がいかに奇跡的か、を追体験してみてください。

 

 

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[藤棚ONLINE]経営学部・杉山善浩先生推薦『成瀬は天下を取りにいく』シリーズ

図書館報『藤棚ONLINE』
経営学部・杉山善浩先生より

『成瀬は天下を取りにいく』シリーズは、宮島未奈氏による『成瀬は天下を取りにいく』、『成瀬は信じた道をいく』、『成瀬は都を駆け抜ける』の3作品で構成される青春小説シリーズです(完結編の第3作は2025年12月1日発売予定)。第1作目の『成瀬は天下をとりにいく』は、型破りな主人公・成瀬あかりの突飛な行動を通して、自己表現と青春の輝きを描いた傑作と言えるでしょう。滋賀県大津市を舞台にしたこの第1作では、主人公の中学校2年から膳所高校3年までの期間が描かれています。西武大津店への通い詰め、M-1挑戦、坊主頭からの髪の成長実験など、常識をはるかに超える主人公の姿は、読者に爽快感と勇気を与えます。奇抜でありながらも、友人との絆や別れに揺れる繊細な心情も丁寧に描かれ、笑いと涙が交錯します。社会の枠にとらわれず、自分らしく生きることの大切さを教えてくれる青春小説であると実感します。シリーズを通して言えることは、主人公の揺るぎない個性が、周りの人々に影響を与え、彼らの人生に新しい光をもたらす様子が描かれているということでしょう。主人公のキャラクターの魅力と読後感の良さが特徴の小説です。

参考: 宮島未奈「成瀬あかりシリーズ」特設サイト | 新潮社

語学学習室展示のお知らせ

語学学習室では、「ムーミン」関連本を展示しています。
ムーミン誕生80周年に併せ、小説9作品や絵本、コミック、作者トーベ・ヤンソンの自伝など、語学学習室に所蔵している英語で書かれた本を集めました。
ムーミンの世界を英語で読んでみませんか?
図書館に来られた際には、ぜひご覧ください🌷

上林朋広(文学部)『剝き出しの帝国 : レイシズムと植民地主義はいかに世界を支配し続けているのか』

■『剝き出しの帝国
明石書店 , 2025.9
■ 請求記号 316.8//2096
■ 配架場所 図書館1階・教員著作コーナー
■ 編著者 上林朋広 (文学部) [ほか]訳

<自著紹介>
本書『剥き出しの帝国』は大胆な見取り図を提示しています。世界各地に版図を広げた西洋帝国主義は、人種主義、先住民の虐殺、植民地支配に基づいている。そして、帝国主義によって築かれた不平等な構造は、第二次大戦後の脱植民地化の時代を経ても、絶えず「アップデート」されて現在まで継続している。この二つです。啓蒙主義の時代からトランプ再選の現在まで、長い射程を持つ本書を読み、刺激を受けてもらえればと思います。