☆新入生向けの図書案内
読書の効用について、説得力のある答えが見つからない。世間では本を読むと思考力が深まり、想像力が豊かになると言うが、私自身にその実感がない。論説や論文を読むほうが思考力を鍛えてくれるし、想像力は子どものころのほうが豊かだった。歴史小説はいまでもよく読むが、 SF やファンタジーはもう読めない。人気のハリポタ・シリーズも、『ハリーポッターと秘密の部屋』で断念した。
とは言え、バッグのポケットには文庫本を入れている。本屋に立ち寄ると文庫本を買ってしまい、読みはじめると次がどうなるのかを知りたくて落ちつかない。藤沢周平『用心棒日月抄』や桐野夏生『柔らかな頬』のたぐいの読み物を携行していると、電車が遅れてもいっこうに気にならない。むしろ、お礼を言いたいくらいである。
自立した人の心の動きに興味がひかれる。困難な状況で気高い人間がどう考えるのかは文字にしてもらわないと分からない。シャーロット・ブロンテ『ジェーン・エア』は読み返す本の一つだが、出勤途中に淀屋橋駅のベンチに座って読んでいたら講義に遅れた。目の前を忙しく行きかう人たちよりも、19世紀のイギリスで貧しい孤児院に入れられた女の子に共感するのはなぜだろう。ちなみに、ニュースでストーカー事件を目にすると、シャーロットの妹エミリーが書いた『嵐が丘』を思い出す。
最近、ジェイン・オースティン『自負と偏見』の新訳が出たので再読している。外国人は他人の気持ちにうといと言う人がいるが、これは身近な人たちを的確に描いて笑わせる。おそらく世界で一番読まれた小説だろう。私はこの本をゼミの学生にすすめるが、精神的に成長した学生からは例外なく「おもしろかった」という感想が返ってくる。著者は20 歳のときに下書きを書いたから、学生がそう感じるのは当然なのかもしれない。オースティンの本は、「大学生」にふさわしい内面をもつかを知るリトマス試験紙だと思う。
甲南大学図書館報 藤棚(Vol.32 2015) より
投稿者「図書館」のアーカイブ
須佐元先生(理工学部)「乱読のすすめ」」–藤棚vol.32より
☆新入生向けの図書案内
新入生の皆さん、ご入学おめでとうございます。これからの新生活に心踊らせていることと思います。その中に読書の習慣をちょっとだけ入れて欲しいと思います。読書にはルールはありません。読書はまずは楽しみであり、同時に知識を得るための一つの方法です。読みたい本を読みたいだけ読んでください。みなさんの選書の助けとなるかどうかわかりませんが、私が最近気に入った本を紹介しておきます。
原発事故と科学的方法(岩波科学ライブラリー)牧野淳一郎著
この本は福島原発事故に関する対応・報道の問題を明らかにするというものです。ただ私はむしろ原発事故を題材として、理論天文学者である著者が「科学的に思考するということはどういうことか」を述べたものであると思います。手元にあるアクセス可能な情報から論理的にどのように必要な結論を導き出すのか、すなわち所謂フェルミ推定のやり方に関するお手本のような本です。このような科学的推論の方法論は理工系の学部上級生・大学院では頻繁に使われるものです。また実社会においても間違いなく武器となる能力でしょう。たとえば「神戸に理髪店は何軒あるか」とか「高校無償化には国家予算はいくらいるのか」とか「大震災の時には自分はいくらほど寄付するべきなのか」など言う問いにみなさんはどう答えるでしょうか。「Google で検索する」のでしょうか?もしWebの情報が間違っていたらどうにもなりません。キーとなる確かな情報が得られれば概算でこのような数は計算できます。その方法論の醍醐味を味わいつつ、検索するのではなく、自分で思考し物事を理解するということを学べる良書だと思います。
天切り松闇がたりシリーズ(1~5巻、集英社文庫) 浅田次郎著
うって変わってこちらは私の大好きな小説です。明治から昭和初期にかけて「目細の安吉」盗人一家の活躍を描いたものです。私は一度読んだ小説はあまり繰り返して読まない派なのですが、このシリーズだけは何度も読みます。戦前の東京の美しい習俗とそこにいた人々の「心意気」に涙すること請け合いです。昨今の日本で失われてしまった「何とも表現しようのない何か」がそこにあります。是非ご一読ください。
以上選書の助けとなるかどうかわかりませんが、とにかく自分の興味の赴くままに読書を習慣として生活の中に取り入れてもらいたいと思います。実り多き4 年間を!
甲南大学図書館報 藤棚(Vol.32 2015) より
吉村(八亀)裕美先生(文学部)「すてきな出会いを」」–藤棚vol.32より
☆新入生向けの図書案内
通販は便利だ。重たいものを持って帰らなくても、自宅まで届けてくれる。さらにありがたいことに、購入商品の履歴から、私が興味を持ちそうなものを類推して、「こんなものもありますよ」と、勧めてもくれる。おかげで、新製品情報も漏らさずゲットできるし、すでに購入した電化製品の消耗品も探すことなくすぐに購入できる。
本も、通販で買うことが多くなった。某通販大手では、私の著作をわざわざ取り上げて「この本があなたにお勧め」と、著者本人に推薦してくることがある。笑ってしまうが、考えようによっては、きちんと私の読書傾向を分析できている、ということの証明にもなるだろう。
最近では、ネット上での「おともだち」探しでも、同様のお勧めがあるらしい。入力したプロフィールを基に、同じような趣味の人の「紹介」が来たり、「おともだち申請」が届いたりするという。
便利なのだが、これでは何だか、人との出会いも、本との出会いも、データ分析から導き出されるよくあるパターンに押し込められてしまうような気がする。
出会いというのは、未知との遭遇であり、ドキドキ感を伴うものだったはずだ。それまでの人脈では出会うはずのない人との出会いは、戸惑いもあるが、新しい価値観へのブレークスルーになる。本との出会いも同じである。書店で、そして図書館で、ある本を探して書架まで行く。そんな時に、お目当ての本の一段上や、隣の書架に、キラッと光るタイトルの本を見つけることも少なくない。「あ、こんな本があったんだ」と、手に取るときのドキドキ感は何ものにも代え難い。
一つの出会いが人生を大きく変えることもある。そんな出会いを大学四年間の中で見つけてほしい。パターン化された出会いの枠を超え、広い範囲で人とも本ともつきあっていってほしい。すてきな出会いがあなたにありますように。
甲南大学図書館報 藤棚(Vol.32 2015) より
『藤棚』vol.32を発行しました。
新入生の皆さん、ご入学おめでとうございます。
図書館では、4月2日から9日まで新入生オリエンテーションを実施しています。
この機会にぜひ図書館に来てみてください。
図書館では、館報「藤棚」を発行しています。
『藤棚』vol.32では先生方から新入生に向けておすすめの図書を紹介しています。
先生方が新入生にぜひ読んでもらいたい図書を紹介されていたり、おすすめの読書法などが書かれていますので、ぜひ一度読んでみてください。
『藤棚』は図書館内でも配布しているほか、図書館HPで読むこともできます。
紹介されている図書が図書館に所蔵されている場合もあります。
図書の配架場所などがわからない場合は、お気軽に図書館のカウンターでお尋ねください。
3月25日、図書館1階エントランスホールに「図書館カフェ」オープン!
卒業式が行われた昨日、図書館エントランスホールに図書館カフェがオープンしました。
図書館カフェでは、甲南大学オリジナルコーヒー「KOCO Cafe NO.836」を飲むことができます。
昨日、オープニングキャンペーンとして図書館前で試飲会を行いました。
学長をはじめ、卒業生や先生方などたくさんの方々がコーヒーを楽しまれました。
コーヒーを飲んだ方からは、
「苦みと香りはしっかりしているが、酸味が少なく飲みやすい」
「少し濃い目のコーヒーだが、香りがとてもよい」
「飲みやすくて、おいしい」
などの感想が出ていました。
図書館カフェは、図書館1階エントランスホール、入って右側にあります。
今日から1杯100円で販売していますので、カウンター席で景色を眺めながら、コーヒーを楽しむことができます。
*図書館内には持ち込むことができません。
学生デザインによる2015年度ブックカバーが決定しました!!
図書館で募集していた2015年度ブックカバーデザインに6件の応募がありました。
そのうち最終的に提出された4つの作品の中で、2015年度グランプリは中屋敷 建さんの作品に決定しました。
2015年度 グランプリ受賞者
文学部 日本語日本文学科 3年 中屋敷 建さん
昨年度も図書館ブックカバーデザインに応募されていた中屋敷 建さんは、今度こそグランプリを受賞したいと思い二度目の挑戦に至ったそうです。
子供の頃に絵を習っていたこともあり、絵を描いたりデザインをする事が好きとのこと。
今回のブックカバーデザインは、お菓子をメインに描こうと思っていたところ、たまたま
妹さんが手にしていたコンパクトがチョコレートのデザインだったそう。その瞬間にチョコレートが溶けていく様子を描こうと閃いたそうです。
デザインを思いついてから応募し、半日余りで出来上がった作品がこのデザインです。
中屋敷 建さんのデザインのブックカバーは、2015年4月から図書館で提供いたします。
皆さんもブックカバーデザインを作成してみませんか。
図書館では皆さんのご応募をお待ちしております。