☆新入生向けの図書案内
私の父は、既に亡くなりましたが、陸軍士官学校卒業、戦争が終わるまでは職業軍人でした。私が生まれる前で、生前あまり父も積極的に語る事はなかった。大学に入り、少し父と同じ本を読み、同じ思索が出来ないか、或いは父と共有できるものはないかと思い、士官学校時代勉強になった本はないかと尋ねると、「クラウゼヴィッツ著の戦争論だ」とニヤッと笑った。何、まだ軍隊を引き摺っているの?と言うと、これは経営の原点としても通用する。お前も読むと良い。確か岩波文庫だったと思う。翻訳も複雑で、すっと読めない。ドイツの特徴であろう論理の几帳面さ、使われた言葉の硬質さ、難解だった。
米国大学院留学前はJerome D. Salinger, のThe Catcher in the Rye、Kurt Vonnegut(カート・ヴォネガット)のモンキーハウスへようこそ、ハイアニスポートなど、雑誌The NewYorker に掲載される短編的、いかにもアメリカ的、都会的文章を読んでいた。当時の読解力では分厚い小説は難しく、ショートストーリーは助かった。
戦争論はMBAを卒業し、NYで働き始めた際何冊かの本と共に、時間がある時読み直した。著者のクラウゼヴィッツ(Carl PhillipGottfried von Clausewitz:1780 - 1831)はプロイセンの軍人。戦争の研究に没頭し、政治、軍事政策の中枢でプロイセンのために働き、軍事教育者としても有名になった。「戦争論」の執筆途中で病いにたおれ、51歳でこの世を去った。
「戦争論」が有名なのは、近代戦争を体系的に研究した最初の著作であり、戦略だけでなく、戦争と政治の関わりを包括的、体系的に論述しており、軍事戦略、政治学、そして経営戦略を学ぶ者にとって基本書とされている。科学的な分析方法(彼自身は「戦争は科学ではない」と言い切っているが)や哲学的手法をつかい、戦争研究を学問として確立させたという点で、それまでの戦術・兵法書と大きく異なる。そこでは勝つ事よりも負けない事を優先、そして補給線(兵站)の確保を強調している。ビジネスにも大切な点である。難解だが一読に値する。薦めます。
甲南大学図書館報 藤棚(Vol.32 2015) より
投稿者「図書館」のアーカイブ
灘本明代先生(知能情報学部)「専門に関係するいろいろな本を読んでみよう。」–藤棚vol.32より
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みなさん、高校と比べて大学は教科数が多く、それに伴い教科書もたくさんあり、驚きませんでしたか?
教科書をぺらぺらとめくると難しい事がたくさん書かれていてびっくりされたかもしれません。
1年生のうちは様々な一般教養を学んで行きますが、徐々に学部毎の専門教科の授業が増えてきて、卒業するころには様々な専門知識を習得することが出来るかと思います。専門に関する事は授業で先生方が教えて下さいますが、それに付随した様々な知識を自ら習得することも心がけて下さい。
この時、みなさんはインターネットを用いて知識を習得することが多いかと思いますが、是非一度図書館に行って本棚を見てみて下さい。
図書館は学部毎に本棚があり、専門書やそれに付随する本がたくさんあります。難しそうな専門書の隣には、皆さんにとって興味深い本があるかもしれません。そして是非、隣の本棚も見てみて下さい。意外と興味深い本がたくさんあるかと思います。知識の宝を是非図書館で発見して下さい。
例えば、コンピュータの授業を受けているときに、スティーブ・ジョブスやビル・ゲイツ等のコンピュータに関する人々の伝記本を読んでみると、新たな発見があったり、コンピュータが身近に感じることが出来ると思います。科学者の伝記本も同様におもしろいです。松下幸之助や本田宗一郎等の著名な経営者の伝記本もたくさんあります。もちろん歴史上の人物の本や、政治家の本等、様々な伝記本があります。
「伝記なんて小学生の時読んだよ。」と言わずに、大学生になってから、自分の専門や様々な人々の伝記本をよまれると、授業が身近な物になると思います。
甲南大学図書館報 藤棚(Vol.32 2015) より
伊東浩司先生(スポーツ・健康科学教育研究センター)「想像の翼をひろげよう」–藤棚vol.32より
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新入生の皆さん、大学入学おめでとうございます。大学生活は、授業はもちろん、課外活動やサークルなど皆さんにとって新しい生活が待っています。それと同時に、多くの自由な時間を得ることが出来ます。今は、ネットから多くの情報を得られる時代ですが、少し時間が出来た時には, 本を読んでみてはいかがでしょうか。
私の専門は、スポーツ(陸上競技)です。スポーツの世界で成功する人は、知らないこと・出来ないことを理解してから物事に取り組む人だと言われています。そのスポーツに関する本には、本格的に競技を取り組む現場で必要とされている最先端の情報が書かれているスポーツ医科学の専門書から、初めてスポーツに取り組もうとしている人むけの入門書まで幅広くあります。また、スポーツビジネスやスポーツ心理学など、学部で学ぶ内容ともリンクするものも多くあります。もちろん、そのようなジャンルの本を読むことも大切だと思いますが、私自身がお勧めするのが、オリンピックなどで金メダルをとった選手やチームなどが書かれている本です。なぜ、勧めるかというと、そこには、我々が想像することが出来ない練習や人間ドラマ、そして、人としての成長過程が詳しく書かれていることが多くあります。近年の本になると最先端の医科学などの取り組みが書かれていて大変興味深いものもありますが、少し時代を過去に遡ったものになると、スポーツ医科学が進んでおらず、人としての頑張り(根性)や発想などが多く書かれています。とんでもない発想が、今の最先端の取り組みと似ていることや今、当たり前にスポーツの現場で行われていることの出発点はここだったのかなど、驚いたり、勉強になることが多く、読んでいて楽しくなっていきます。
昨年(2014 年)秋まで放送されていたNHK連続テレビ小説「花子とアン」の番組内でのフレーズになりますが、本を読むことで想像の翼をどんどんひろげて、立派な甲南生になって行って欲しいと思います。
甲南大学図書館報 藤棚(Vol.32 2015) より
KIRK Stanley Arthur先生(国際言語文化センター)「Reading for Enjoyment in English: Some Hints」–藤棚vol.32より
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Have you ever tried to read a book inEnglish, but it took too much time and yougave up? Maybe the answer to your problemis reading for enjoyment instead of justreading to study. Many books have been rewrittenin easier English for language learners.These books are called‘ graded readers’, andyou probably read a few of them in your firstyearEnglish class. Reading graded readersis one good, low-stress way to continue yourEnglish study outside of the classroom. Hereare some hints that will help:
Hint 1: Choose a book that is not too difficult.First, you should find a book that is writtenat a suitable level for you. To do this, read 2or three pages of a book, and count the wordsthat you do not know. If there is an average of2 or 3 new words on each page, the difficultylevel is suitable for you. If there are more than2 or 3 new words per page, the book is toodifficult. Put it back on the shelf and choose aneasier one.
Hint 2: Choose a book that suits yourinterests. For example, how about a bookabout a famous person you like, or a story thatyou already enjoyed reading in Japanese, or abook about one of your favorite movies? If youalready know about the topic and you like it, itwill be more interesting (and easier!) to readabout it in English.
Hint 3: Read when your mind is most alert:Some people can concentrate on readingbetter in the morning, but others concentratebetter at night. I like to read in the morningbecause that is when my mind is fresh, butyou might be a ‘night person.’ You need tofind the time that is best for you.
Hint 4: Find the most suitable environmentfor reading: The best place to read alsodepends on each person’s preference. Ilike to read in a quiet coffee shop with softbackground music, but some people like toread on the train. Others prefer to read alonein their room.
Hint 5: Share your reading with a friend.Meet regularly with friend who also likes toread, and talk together about your reading,sharing your reactions and opinions. This willmake reading in English even more enjoyableand will motivate you to read more!
Please try!
甲南大学図書館報 藤棚(Vol.32 2015) より
馬場大治先生(経営学部)「読書遍歴」–藤棚vol.32より
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子供のころから「趣味は読書」と称してきたが、最近はちょいと怪しい。
「趣味は読書」は、小学生の時、翻訳物の推理小説や冒険小説に目覚めたことを出発点とする。中学時代から大学を卒業するころまで、1日1冊とまではいわないまでも、 平均すると2日に1冊位のペースでこの種の本を読んでいた。当時は、必ず本を持ち歩き、時間があれば頁をめくり、口角泡を飛ばしてどの外国作家が面白いかを友人と議論する、立派な「おたく」であり、わが読書遍歴における全盛時代であった。
大学を卒業したころから読む本の傾向は微妙に変わった。依然として、推理小説や冒険小説を主として読んでいたが、翻訳物ではなく、日本の作家の小説が中心となってきた。大学院進学後は、研究のために、多くの翻訳調の書物や外国語の論文を読む必要があり、お楽しみの時間にも翻訳の文章と付き合うのがしんどくなったことが理由として大きいと思われる。また、勉強のための書物を読む必要が多くなったため、お楽しみのための本を読んでいる時間をあまり取れなくなり、読書量がかなり減り始めた。
三十前に就職し、教壇に立つようになったが、このころ、読書の傾向に第二の変化が起こった。つまり、推理小説や冒険小説よりも、歴史小説や時代小説、または、現代文学が読書の中心となった。要するに趣味が「おっさん化」してきたということであろう。さらに、就職後も学生時代と同じく学校で時間を過ごしているのにかかわらず、月給がもらえるようになった分に、教員として色々な仕事をする時間が多く発生し、ますます読書量が減り始めた。
四十を過ぎて、読書量の減少はさらに拍車がかかり、最近では、若いころの2日に1冊などは夢の話で、へたをすると1カ月に2冊読むか読まないかといった程度の読書量になってしまっている。これは、老眼が始まり、本を読むこと自体が以前よりも億劫になったことと、毎晩かなりの晩酌をするようになったことによる。ここ数年、あまりの読書量の減少と現在の年齢を考え、死ぬまでに、あと何冊の本を読めるのかということに怯え始めた。そのため、今まであまり本気で読んだことのない、国語の教科書に載っているような作家の、日本文学の「名作」といわれる小説に手を出しかけたが、何だか知らんがこれが「実にいける」ことが発見され、少ないながらも最近の読書の中心となっている。
五十をすぎて、読書量そのものは激減し、「趣味は読書」といえるかは怪しくなってしまったが、翻訳推理小説のおたくだった中学生が、遅ればせながら純文学にめざめた、老眼で酔っぱらいのおじさんへと変貌を遂げているのである。
甲南大学図書館報 藤棚(Vol.32 2015) より
金丸義衡先生(法学部)「読書で世界旅行」–藤棚vol.32より
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本を手にするということは、知識と情報を手に入れることにつながります。森羅万象について自分の頭の中に独占することができるのです。そして(私にはまだまだ難しいですが) 言語の壁さえ乗り越えることができれば、洋の東西を問わず人類5000年の歴史の旅をすることができるのです。
ところが、読書によって著者の思考や経験を追体験しようとするときには、一つ知っておかなければならないことがあります。たとえば「ビロードのような」という表現を聞いたことがあると思いますが、『広辞苑』(第6版・岩波書店・2008年)によると「もと西洋から舶来したパイル織物の一つ。経または緯に針金を織り込み、織り上げたあと抜き取る時、輪奈を切り取って毛を立たせたもの。」とあります。たしかに、知識としてはこれで十分なのかもしれませんが、「ビロードのような手触り」と説明を受けたときに、実際にビロードに触ったことがなければ、 知識だけからではどのような手触りなのかがわかりません。つまり、読書によって知見を広めていくためには、その前提としての経験や知識が必要となるのです。
また、映像作品、場合によっては三次元映像なども容易に見ることができる現代においても、文字だけでその世界を構築しなければならない読書という体験では、想像力を働かせなければなりません。「折り重なるように積み上げられた古書の山」に埋もれる古書店の様子は、新刊本を扱う一般的な書店の様子しか知らなければ想像することは難しいでしょう。
読書によって知見を広げることは大切ですが、それと同時に様々な体験を通じて、自らも経験を重ねていくことが、読書にとっての勘所ではないかと思います。比較的自由な時間の多い大学生となった今こそ、経験と読書の双輪を上手く舵取りしていってください。
甲南大学図書館報 藤棚(Vol.32 2015) より