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2017/12/26
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【理工学部/統合バイオ研】久原教授が第14回日本学術振興会賞受賞

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 久原篤教授がこのたび、第14回(平成29年度)日本学術振興会賞を受賞しました。
 同賞は日本学術振興会が、日本の学術研究の水準を世界のトップレベルにおいて発展させるために、創造性に富み優れた研究能力を有する若手研究者を顕彰し、支援していくとして、平成16年度に創設された賞です。(>>>
 授賞式は、平成30年2月に日本学士院(東京都台東区)において行われる予定です。

◇久原教授の研究業績の解説
 ヒトを含む生物は、環境の「温度」を常に感知して、生存しています。久原篤教授は、これまでにシンプルな実験動物である「線虫」を使い、 (1) 温度の感知、(2)温度の記憶学習、そして(3)低温に体が慣れる時に働く、新規の遺伝子や細胞ネットワークを見つけました。
(1) 温度の感知が、ヒトの嗅覚や視覚と同じ仕組みで行われることを見つけました。
(2) 温度の記憶学習のための最少の神経細胞ネットワークを見つけました。
(3) 低温に体が慣れる際に、頭部の神経細胞が「腸」や「精子」に指令を出すことを見つけました。その際、精子が頭部の神経細胞をフィードバック制御していました。

◇授賞対象研究業績◇
「線虫を用いた温度応答を司る分子細胞機構の解明」
(Molecular and Cellular Mechanisms Underlying Temperature Response in Nematoda)

◇授賞理由◇
動物は温度に対して様々な生体応答を示すが、温度の感知から個体の行動に至るまでの間には、神経回路やその他の器官を介した情報処理や記憶学習の形成などが関わっている。久原篤氏は線虫を用いたモデル系で、温度に対する組織、細胞レベルでの制御に関する数々の創造性、独創性に富む業績を挙げてきた。久原氏は3量体Gタンパク質を介した温度受容の経路を初めて明らかにした。また、温度と餌の関連づけ学習がわずか3つのニューロンで制御される最小の学習に関する神経回路を明らかにした。さらに、温度が低下すると頭部の感覚ニューロンからのインスリンシグナルが腸で受容され、頭部の感覚ニューロンへのフィードバック制御によって全身の低温耐性が獲得されること、このフィードバックに腸から放出されるステロイドホルモンを受容する精子が介在することを示した。いずれの業績も温度生物学において世界をリードするものである。

◇専門用語の解説:
「線虫」
解説: 土壌に生息する体長約1mmの非寄生性の雌雄同体の線虫で、正式名称はケノラブディティス・エレガンス。古くから遺伝学解析に使われており、人間の遺伝子数に匹敵する約2万個の遺伝子を持ち、人間の遺伝子と類似のものが多く含まれる。生命現象の分子メカニズムを解析する上で有用なモデル生物である。
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「3量体Gタンパク質」
解説: ヒトの目の光受容体や、鼻の嗅覚受容体などの細胞膜に存在する様々な受容体タンパク質と結合し、受容体タンパク質で受け取った環境情報を、生化学的反応に切り替える「スイッチ」として機能する分子。正式名称はヘテロ三量体グアニンヌクレオチド結合タンパク質。
17122512「フィードバック制御」
解説: 末端の器官に伝わった情報を入力の器官に戻して調節すること。今回は、線虫において、頭部の神経細胞に入力された温度の情報が精子に伝わり、精子が頭部の神経細胞の働きを抑えていた。
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関連情報は以下のホームページをご覧ください。
 ・日本学術振興会>>>
 ・生体調整学 久原篤研究室>>>

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